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「比率」の変転 [それ、ウソです]

それ、ウソです(31)

「比率」の変転

 老人性痴呆は、アルツハイマー型痴呆症と脳血管型の痴呆症があり、日本ではこれが七対三の比率で発生している(欧米は逆で三対七といわれている)。=水野肇「病気をだます 熟年健康法」読売新聞社刊。


 いまから21年前─1989年発行の書籍の中の記述である。

 一読すると(再読、三読しても)、日本の「七」は「アルツハイマー型痴呆症」で、欧米ではそれが「三」であるというように読める。

 事実はそうではない。

 当時、日本では「脳血管型」が圧倒的に多く、欧米では「アルツハイマー型」が老人性痴呆の大半を占めていた。

 むろん、そんなことぐらい医事評論の第一人者がご存じないわけはない。

 筆がすべったというか、うっかり書き損なったのを、編集者も校正者も、その間違いに気づかなかったのだろう。

 ところが、20年経った現在、このウソはほぼホントに変わった。

 というのは、その後、日本でもアルツハイマー型が増え、脳血管型は減り、欧米並みの比率に近づいたからである。

「痴呆症」という病名は、2005年に「認知症」に変更されたが、現代日本人の3大認知症は、①アルツハイマー型=50%、②脳血管型=20%、③レビー小体型=20%─といわれている。

 簡単に説明すると、

 ①は、脳の神経細胞が変性し脳が萎縮するために起こる。

 ②は、脳の血管が詰まる脳梗塞がもとになるものが最も多い。

 ③は、日本人の精神科医が発見した認知症。レビー小体と呼ばれるたんぱく質のかたまりがたまって、神経細胞が変性するために起こる。

 1976年、小阪憲司・現横浜市立大学名誉教授が世界に初めて報告し、1995年に国際的な診断基準ができた。

 まだあまりよく知られていないため、正しい診断、治療を受けられずにいる人も少なくないようだ。

 そこへもってきて、近年、ピック病という新手の難敵が注目を集めている。

 40~64歳に発症する若年認知症ではアルツハイマー病に次いで多い。

 これが他の認知症と異なる特徴は、初期には記憶障害(物忘れ)はほとんどみられないが、他人を顧みず自分勝手な言動をする性格変化や社交性の消失、物事への無関心、ワンパターン行動が目立つ。

 抑制が欠如し、万引きなどの軽犯罪を犯しても、なぜ悪いか説明できない。

 やがて物忘れも出てきて、話したいのに言葉が出にくく、同じ言葉を繰り返し、言葉の意味がわからなくなるなどの言語障害も現れる。

 若年認知症は、働き盛りに発症するため周囲への影響が大きい。

 異変に気づいたら産業医や認知症の専門医に早めに相談しよう。
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