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ゼロの小点 [それ、ウソです]

それ、ウソです(33) 

 ゼロの小点 

 上出院長は、麻酔がかかった耳の中に機械の細長い先端部を入れ、鼓膜にレーザーを当てた。1秒もかからなかった。その後、直径9ミリ、長さ12ミリのフッ素樹脂製のチューブを差し込んだ。(「患者を生きる 中耳炎①」=朝日新聞2010年4月13日)


「直径9ミリ」といえばエンピツ大だ。

 そんな太いものが耳の中に入るだろうか?

 そう思ったのは、自分も数日前に同じ失敗をやらかしたばかりだったからだ。

 あるメーカーの歯みがき剤について「(薬用成分を)2ミリのゲルカプセルに閉じ込めたミクロの技術」と書いて編集部に渡したら、「2ミリじゃなく0・2ミリでは?」と言ってきた。

 そうか、2ミリで「ミクロ」はないな。

 資料を見直したらそのとおりだった。

 さすが! と敬服。

 一方、数日後の朝日の紙面には、

<訂正 13日付「中耳炎①」の記事で、耳の中に入れたチューブの直径が「9ミリ」とあるのは、「0・9ミリ」の誤りでした。訂正します>という訂正文が出た。

 当方の編集部は、朝日新聞以上だゾ(笑)。

 ─というところで、中耳炎の話。

「上出院長」が行ったのは、幼児のこじれた中耳炎を治すためにレーザーで鼓膜に穴を開け、チューブを入れて膿(うみ)を外に出す治療だ。

 中耳炎は、鼓膜の奥にある中耳に炎症が生じたり、粘液がたまったりする病気で、幼児に多いのは急性中耳炎と滲出(しんしゅつ)性中耳炎だ。

 急性中耳炎は、3歳までに70%の子が1回はかかるといわれる。

 どうしてか?

 乳幼児の耳管(中耳と鼻の奥をつなぐ管)は未発達なため太くて短く、水平に近い形をしているので、風邪をひいたときなど、細菌がいっぱいの鼻汁が中耳に侵入しやすいからだ。

 風邪をひいた子が、「耳が痛い!」と泣くときは急性中耳炎を起こしている。

 たいていはその状態で治っていくが、鼓膜に穴が開いて耳だれが出てくることもある。

 抗生物質をのませると、痛みはなくなり、耳だれも止まる。

 鼓膜に開いた穴も閉じる。

 親は「治った!」と安心するが、医師は鼓膜の状態を診て、治ったかどうかを判断する。

 痛みがなくなっても、中耳の炎症はなかなか治まらず、キチンと治さないと、滲出性中耳炎に移行するからだ。

 親の自己判断で通院や服薬を止めると、後で悔いることになる。

 滲出性中耳炎に移ると、痛みなどの症状はない。

 聴こえが悪くなるだけだが、子どもは難聴なんて知らないから、何も言わない。

 呼びかけても反応しなかったり、「えっ? えっ?」という聞き返しが増えたり、テレビの音を大きくしたりするような場合は、すぐ耳鼻科に連れて行こう。
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