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「室房」のきわみ [それ、ウソです]

それ、ウソです(35)

「室房」のきわみ

 ダイドウミャク【大動脈】①心臓の左心房から出る動脈の主幹。②鉄道などの最も重要な幹線。=『新潮国語辞典』昭和40年発行初版。

 この説明のどこに大ウソがあるのか。

 心臓に関する小学生レベルの知識があれば、すぐわかり、「バッカだなあ」と笑うだろう。

 心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室という四つの部屋に分かれている。

 心臓の右側(右心)にある右心房と右心室は、肺へ血液を送る作業を、心臓の左側(左心)にある左心房と左心室は、全身へ血液を送り出す作業を受け持っている。

 全身をくまなく回って、組織に酸素や栄養分を供給し、炭酸ガスや老廃物を取り込んだ血液(静脈血)は、大静脈から右心房に戻ってくる。

 右心房に入った血液は、右心室へ流れ、右心室のポンプ作用によって肺動脈を経て左右二つの肺に送り込まれる。

 肺のなかをめぐるあいだに炭酸ガスや老廃物を放出し、酸素と栄養分を受け取った血液(動脈血)は、肺静脈を経て左心房に入る。

 左心房に入った血液は、左心室へ流れ、左心室のポンプ作用で大動脈から全身へ送り出される。

 つまり、心臓の内部の上半分にあり血液を受け入れる部分が「心房」、下半分にあり血液を送り出す部分が「心室」である。

「新潮国語辞典」は、心房と心室を取り違えたのである。

 房然自室(呆然自失)、室房(失望)のきわみ、房っとするな、室かりせよ─と下手な地口や駄じゃれでからかってみたくなる。

 ウソではない説明は、例えば「大動脈 心臓の左心室から全身に血液を送り出す動脈の本幹」(『大辞泉』)といったふうである。

 大動脈は、体のなかで一番大きい血管で、直径が胸部で約3㌢、腹部で約1.5㌢。血管壁は内側から内膜、中膜、外膜の3層構造になっている。

 大動脈のある部分にできたコブ状のふくらみを大動脈瘤といい、コブが破れる「大動脈瘤破裂」や、コブの内膜に亀裂が生じて中膜がはがれ、そこに血液が流れ込む「解離性大動脈瘤」を招きやすい。

 石原裕次郎さんの最初の大患が解離性大動脈瘤で、藤田まことさんの死因が大動脈瘤破裂だった。

 心臓から横隔膜までの胸部大動脈瘤が直径5~6㌢、横隔膜から下の腹部大動脈が横経6㌢以上になると、破裂や解離性の危険が迫っているといわれる。

 動脈瘤ができる主な原因は動脈硬化で、60歳以上の男性に比較的多く、胸部より腹部のほうがずっと多い。

 へその辺をさわると、拍動する半球状のふくらみに気づくことがある。

 親しい友人はそうやって発見し、すぐさま受診してことなきを得た。

 その心がけ、見習いたい。
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