SSブログ

喀血と吐血 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(36) 

 喀血と吐血

 胃の筋肉が強張って、満足に息ができなくなる。─略─出血性胃炎が悪化して駅のトイレで喀血(かっけつ)することもたびたびだった。(柳美里「祭と沈黙」=『波』2007年2月号)


「出血性胃炎」で血を吐くことを「喀血」とはいわない。

「吐血」である。

『広辞苑』を見てみよう。

「喀血 肺・気管支粘膜などから出血した血液をせきとともに吐くこと。」

「吐血 口から血を吐くこと。また、その血。多く消化管の出血についていう。」

 大河ドラマ「龍馬伝」のなかに、若き日の高杉晋作と、年老いた岩崎弥太郎が、血を吐く場面があったが、労咳(ろうがい=肺結核の漢方名)を病んでいた晋作は「喀血」で、「胃が痛い」と散薬を飲んでいた(胃がん?)弥太郎は「吐血」である。

 喀血の血は鮮やかな赤色だが、吐血の血はたいていどす黒い。

 出血部位が違うからだ。

 昔─昭和30年ごろまで、肺結核が日本人の死因第1位の「国民病」だったころは、そんなことは誰でも知っていた。

 だが結核が激減し、人々の結核知識が薄れていくにつれて、喀血と吐血の別もわからなくなったのだろう。

 すぐれた小説をいくつも書いている芥川賞作家でさえ──。

 結核は激減したといっても、消滅したわけではない。

 エイズ、マラリアと並ぶ世界3大感染症のひとつである。

 日本でも年間2万人以上が新たに患者となり集団感染も続いていて、先進国の中ではきわだって結核罹患率が高い(人口10万人当たりの新規患者数を比べると、日本は19、アメリカは4、スウェーデンは5、ドイツは6)。

 けっして過去の病気ではない。

 毎年40件程度の集団感染が起こっている。感染場所は病院や職場のほか、パチンコ店、学習塾、ネットカフェ、高校のスクールバスなど。

 発見の遅れがもとで感染者が増えるケースが多いという。

 結核菌は、人から人へ空気感染する。

 感染しても発病する人は1~2割で、発病しても約半年間、医師の指示に従って薬による治療をきちんとすれば完治する。

 たんの中に菌を出していない軽症の場合は、他人にうつす心配もない。

 先年、結核入院で話題になった若手女性お笑いコンビの一人も、1ヵ月ぐらいで退院、元気に復帰した。

 コンビの相方やマネージャ、家族への感染もなかった。

 結核の初期症状は軽い風邪とよく似ている。

 せきやたん、微熱が2週間以上続くようなときは、早く病院へ行こう。

 放っておくと、寝汗や体のだるさ、息切れが起こり、やせてきて、たんに血がまじり、ついには喀血してしまう。

 そうなる前に、ぜひ!
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:健康

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

「室房」のきわみ鎌倉以来の誤解 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。