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血液型異聞 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(42) 

 血液型異聞

「母親のつる代さんの血液型はA型で、娘の奈保子さんがO型。ところが会長はAB型。奈保子さんは、会長の子ではありえない」(「やめ判 新藤謙介 殺しの事件簿」2011年4月4日=TBSテレビ)

 これは血液型の一般的な常識だ。

 「ウソ」ではない。だが、100%ホントとはいえない。

 AB型とA型の両親からO型の子が生まれることが、ごくまれではあるが、あり得るのである。

 血液型は、A、B、Oという3種類の遺伝子の組み合わせで決まる。

 A型になるのは、両親からもらった遺伝子が「AA」か、「AO」の組み合わせの場合だ。

 「AA」は、父からも母からも「A」遺伝子をもらい、「AO」は、父母のいずれかから「A」を、もう一方からは「O」をもらったわけだ。

 Oは劣性遺伝子なので、AAもAOも同じA型になる。

 同じように「BB」と「BO」はB型になり、「OO」の組み合わせのみO型になる。

 そしてAB型は、両親の一方から「A」を、もう一方から「B」をもらった場合にみられるのが、普通だ。

 つまりA遺伝子とB遺伝子が、2本の染色体の上に一つずつ、のっかっているわけである。

 ところが、1本の染色体の上にAとB、二つの遺伝子が並んで乗り、もう1本の染色体には乗ってない「シスAB」と呼ばれる特殊なタイプのAB型がある。

 シスとは同じ側という意味だ。

 シスAB型は、染色体の交叉、あるいは突然変異によってできるもので、その発生率はAB型のなかの0.012%といわれている。

 もしもドラマの会長が、シスABのAB型で、母親のつる代さんがAOのA型だったとして、遺伝子が乗ってないほうの会長の染色体と、つる代さんのO遺伝子の染色体が結合すると、娘の奈保子さんの血液型はO型になる。

「会長の子ではあり得ない」とは、言えないわけである。

 シスAB型は、血液学では常識だが、専門外の医師にはあまり知られていない。

 また、専門家でさえ手こずるボンベイ型というものがあり、これは表面的にはO型だが、A遺伝子やB遺伝子を持っていて、それが子どもに現れる。

 この場合、O型同士の両親からA型やB型の子が生まれることがあり得る。

 実際、そうした例が報じられたこともある。

 1990年10月16日号の『週刊女性』には、「独占取材 衝撃学会報告 父=B型、母=AB型からO型の子が生まれた!! Aくん・和歌山県。母が不倫? 取り違え? トンでもない!」という記事が、 
 97年8月11日の朝日新聞には、「父O型+母B型=子はA型 大阪医大 DNA鑑定で確認」という記事が、掲載されている。

 朝日の記事を一部引用する。

「これまで血液型の常識ではあり得ないと考えられていた、B型とO型の両親からA型の子供が生まれたという実例が、大阪医科大法医学教室の鈴木廣一教授によって確認され、このほどドイツの医学誌に発表された。

 デオキシリボ核酸(DNA)による鑑定では間違いなく両親の子供と確認されており、原因は血液型を決める遺伝子で組み換わりが起こり、O型とB型の遺伝子から、A型のものによく似た遺伝子ができてしまったことらしい。」

 このように血液型には非常に難しい問題が潜在しているのである。

 軽々しく論じるべきではない。いわんや、人の性格をたったの4種類に分けてしまう血液型性格判断においてをや……である。
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