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認知症を認知せず!? [それ、ウソです]

 それ、ウソです(53)  

 認知症を認知せず!?

 認知症は、長年「痴呆症」と呼ばれていました。─略─。
 英米などではこの病気を一番最初に研究したドイツの精神科医アロイス・アルツハイマー博士の名前を取って疾患名としています。
 日本でも「アルツハイマー病」と改称して世界の仲間入りをしてはどうでしょうか。(日野原重明「病名のつけ方を見直そう」=朝日新聞2011年5月21日)

 心から尊敬する日野原先生のお言葉ではあるが、これはちとおかしい。

 「認知症」イコール「アルツハイマー病」ではないからだ。

 認知症にはいくつものタイプがある。

 多い順に挙げると、

 ①アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)

 ②レビー小体型認知症

 ③混合型認知症 

 ④脳血管性認知症(20年ぐらい前までの日本では、これが最も多かった)

 ⑤ピック病

 ⑥そのほか多くの種類の認知症

 ──となるが、ほとんどは①~⑤のどれかである。

 ①は、大脳にアミロイドと呼ばれる異常物質が沈着し、老人斑というシミができて、大脳全体が徐々に萎縮していくタイプの認知症だ。

 ②は、大脳の神経細胞にレビー小体という異常物質ができるために起こる。

 ③は、①と④の両方をもつ認知症である。

 ④は、脳卒中(脳出血、脳梗塞)の発作のあと徐々に症状が現れてくる。

 また、無症状の小さな脳梗塞が多数できる多発性脳梗塞によるものもある。

 ⑤は、大脳の前頭葉が萎縮する。

 ⑥のそのほか多くの認知症と似た症状を示す病気のなかで、特に重視すべきものとして慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症がある。

 慢性硬膜下血腫は、転倒などで頭部を打撲したとき、頭蓋骨の膜の一つである硬膜の内側に血液がたまり、脳を圧迫するために起こる。血腫を取り除けばよくなる。

 正常圧水頭症は、脳脊髄液が過剰になって脳を圧迫し、認知症の症状が起こる。脊髄に針を刺して髄液を抜けば治る。

 手術で治せる認知症があるわけだ。

 なお、アルツハイマー型認知症とアルツハイマー病は、脳の病変(老人斑)と症状はほぼ同じだが、発病年齢が前者は高齢者群、後者は初老者群と異なるため、専門的には区別される。

 以上が「認知症」を「アルツハイマー病」と「改称」してはまずい理由である。

 英米でも、痴呆(つまり認知症)はDementia(ディメンスィア)で、アルツハイマー病はAlzheimer disease(アルツハイマー ディジーズ)だ。

 では、なぜ、日野原先生は、認知症を“認知”されないのか?

 上の引用文の冒頭で、こういっておられる。

 「認知力のなくなった患者を『認知症』と呼ぶのは自己矛盾に思えるからです。
  正確に表現するなら『不認知症』ではないでしょうか」

 厚生労働省が、「痴呆」を「認知症」と改称したのは、2004年12月である。

 同年4月、同省に設置された〈「痴呆」に替わる用語に関する検討会〉は、「認知症」「認知障害」「もの忘れ症」「記憶症」「記憶障害」「アルツハイマー(症)」という六つの用語を提示し、ホームページなどで国民の意見を求めた。

 応募総数6333件中のトップは「認知障害」だったが、これはすでに統合失調症の症状を示す用語として用いられているため、2位の「認知症」が選ばれた。

「認知」を学術語として厳密に用いる心理学や神経科学系の学会は、いまも「認知症」には反対している。
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