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胆管の常識 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(57) 

 胆管の常識

 医師からの説明によると、胆のうから肝臓に胆汁を送っている管ががんに侵されて、胆のうも肝臓もすでに機能が死んでしまい、あと数日の命だとのことでした。(毎日新聞1992年7月11日「読者の目 医療問題を考える」)

 千葉県八日市場市に住む「ゴルフ場勤務」の35歳の女性(新聞紙面には氏名明記)の投稿文の一節だ。

 「胆のうから肝臓に胆汁を送っている管」というのはとんでもないウソ。

 ホントは「肝臓から胆のうに胆汁を送っている管」で、その管を胆管という。

 これくらい中学生でも知っている常識ではないか。

 投稿が、新聞紙上に掲載されるまでには、この「読者の目」という欄の係、デスク、校閲と少なくとも3人の「記者の目」を経ているはずだが、だれもこの幼稚な誤解に気づかなかったわけだ。

 おソマツというほかない。20年前の毎日新聞はずいぶんタルんでたんだなあ。

 いま、毎日は発行部数では朝日や読売に負けているようだが、紙面づくりでは決して負けてない。

 スクープもあるし、企画面も面白い。いちばん好きな新聞だ。

 もしも「購読を一紙のみにせよ」と家計担当者から厳命が下ったならば、迷わず毎日を残すだろう。

 先年の、印刷会社の従業員に胆管がんが多発している問題についての報道でも、毎日が一歩リードしていた。

 さて、本題。

 胆管は、肝臓でつくられる胆汁を十二指腸へ送る長さ約10㌢の管だ。

 肝臓の中の「肝内胆管」と、肝臓を出てから腸までの「総胆管」に分かれ、その途中に胆汁を一時ためておく袋=胆のうがある。

 胆管と胆のうを合わせて「胆道」と呼ぶ。

 胆汁の80%以上は水分で、ほかに胆汁色素(ビリルビン)、胆汁酸、コレステロールなどがある。

 ビリルビンは、赤血球が分解されてできる黄色い色素だ。

 雲古が黄色いのはそのためだし、肝臓や胆道の病気で、胆汁の腸への流れが妨げられ、血液の中に入ると皮膚や目が黄色くなり(黄疸=おうだん)、雲古は白くなる。

 胆汁がかたまってできる石が、ご存じの胆石だ。

 肝内結石、胆管結石、胆のう結石とあるが、圧倒的に多いのは胆のうの中でできる胆のう結石だ。

 胆石は、石の成分によってコレステロール系石、ビリルビン系石、その他に分けられる。昔の日本人の胆石はたいていビリルビン系だったが、いまは大部分がコレステロール系だ。食生活が欧米風に変わったせいだ。

 美食、飽食の家族には胆石が多い。胆石になりやすい食生活は、大腸がんにもなりやすいし、心臓病や脳卒中にもなりやすい。

 みんな前提に脂肪の過剰摂取があるからだ。

 一方、胆管がんには、肝臓の中の肝内胆管がん、肝臓の外の総胆管がん、十二指腸の入り口の十二指腸乳頭部がんなどがある。

 初めは無症状だが、わりあい早くから黄疸が現われ、進行や転移がとても早い。

 胆管がんによる日本人男性の年間死亡率は10万人当たり10.5人。50歳以上の中高年に多い。

 ことし1月に亡くなった柔道家の斉藤仁さん(享年54)は肝内胆管がん、5月に亡くなった詩人の長田弘さん(享年75)は胆管がんだった。

 上掲の投稿者の父親(62歳)は、「体がだるい、背中が痛い」と言い始めて(なかなか病院へは行かず)、1ヵ月後に入院したときはすでに末期で、4日目に亡くなったという。

 胆管がんの原因はよくわかってない。

 印刷会社の従業員の胆管がんは、印刷機の洗浄液に含まれていた化学物質が原因ではないかとみられている。

 早期発見・適切治療が肝要であるのは、胆管がんも同じ。

 ジャーナリストの大谷昭宏さんは、人間ドックで「肝内胆管がんの疑い」と診断され、肝臓の3割を切除する手術を受けて、完治した。

 「早く見つけてたたけば、がんは怖くない」と大谷さんは話している。(毎日新聞7月2日夕刊)。
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