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「風」の誤解 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(69)  

 「風」の誤解

 問 痛い風と書いて、痛風といいますね。これはどういう意味なんでしょうか。
 答 読んで字の如く、この病気になると、風がサッと当たるだけでも痛いのです。(西岡久寿樹 痛風=『病気とからだの読本』1=暮しの手帖社)

 風が当たるだけても痛いから痛風、あるいは、風が吹いても痛いから痛風。

 これはまあ、じつによく耳にする俗説で、もっともらしいけど、ウソである。

 『広辞苑』を見てみると、「風」の語義は、第一義の「空気の流れ。気流。特に、肌で感じるもの」のほか、「なりゆき。形勢。風向き」「ならわし。風習」など、いくつかに分かれるが、その一つに「風の病」がある。

 風の病とは、「①邪気にあたって受けるという病気。②神経系統の病気、すなわち頭痛・骨節疼痛などの俗称。③感冒」である。

 漢和辞典『字源』の「風」の項には、<○手足、又身体の一部がしびれて自由ならざる病。「中─」「大─」○かぜひき(感冒)「─邪」>とある。

 おわかりのように、痛風の「風」は、中風や風邪の「風」と同じように「病気」のこと(骨の関節が痛む病気という意味)で、空気の「風」とは関係ない。

 しかし、痛風治療でも名医として知られる人(西岡久寿樹先生は、東京女子医大教授、聖マリアンナ医大教授・難病治療センター長を経て、現在は東京医大医学総合研究所所長)でさえ誤用するほど、「風が当たるだけでも痛い」説は一般に流布している。

 じゃ、風が当たらなければ痛くないのか、と突っ込みたくなるが、風にも当てないようにそっとしていても激烈に痛むのが痛風発作である。

 痛風のもとは血液中に尿酸という物質がふえる「高尿酸血症」。

 ふえ過ぎた尿酸が主に足の親指(血流の末端で体温が低い)の関節内に結晶をつくり、炎症が生じ、激痛発作が起こる。

 尿酸の正常値は血液1㌥㍑あたり7㍉㌘以下、7以上だと高尿酸血症と診断され、9を超えると尿酸値を下げる薬が処方される。

 高尿酸血症の原因は、尿酸が体内で過剰に作られるか、または体外への排出が滞るため。

 尿酸は、細胞の中の核酸や、体のエネルギー源となる物質(ATP)などに含まれるプリン体が、分解されてできる。

 動物はみなプリン体をもっているし、植物の中にもプリン体はある。

 だからプリン体の多い食物(レバー、マイワシ干物、イサキ白子、干しシイタケなど)をどっさり食べると、尿酸値が上がる。

 だがそういう食物を一切シャットアウトしても、尿酸値は1ぐらいしか下がらない。

 体の中で作られる尿酸の量のほうがずっと多いからだ。

 要は、これはいけない、あれはいけない、と神経質に制限するのではなく、食べ過ぎないようにすればよい。

 酒の飲み過ぎも禁物。

 アルコールには尿酸値を上げる作用があるからだ。

 日本酒なら1合、ビールなら500㍉㍑1缶、ウイスキーならダブル1杯まで。

 そして、水を飲むこと。

 尿の量がへると、尿酸の排出が低下する。1日2㍑は飲もう。

 激しい運動(乳酸が多くつくられ、尿酸の排出を抑制する)は避け、ウォーキングのような軽い運動を日常の習慣にする。

 ストレスの解消も大切、ストレスがかかるとアドレナリンなどの“ストレスホルモン”が出て尿酸値を上げる。

 以上のセルフケアをきちんと行えば、痛風発作は防げる。痛風は「明るい病気」である。

 夏は痛風の好発シーズン。

 汗をかき尿量がへる×ビールをどっさり飲む=尿酸値上昇という悪条件が重なるからだ。

 ご用心ください。
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