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脳細胞=常識の逆転 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(76)   

 脳細胞=常識の逆転

 脳を組み立てている神経細胞、すなわち脳細胞は、生まれたときに、数だけはちゃんとそろっており、大脳皮質には、エコノモとコスキナスの推算によると、百四十億の脳細胞があるという。
 生まれてからは、脳細胞の数はふえないし、また、こわれても決して再生しない。(時実利彦著『脳の話』=「岩波新書」1962年発行)

 世界的に知られた大脳生理学者の名著にも記されてある、脳細胞の数と再生に関するこの医学的定説は、現代人の常識でもあった。「脳細胞は1日10万個ずつへっていく」といわれ、だれもがそう信じていた。

 その常識がくつがえされたのは、1998年である。

 スウェーデンのエリクソンとアメリカのゲージは,解剖学的実証にもとづき、「海馬をはじめとして脳のいくつかの部位では、ニューロン(神経細胞)が新たに生まれ続けている」と発表した。

 この驚くべき発見に触発されたその後の多くの研究によって、「海馬の神経細胞はへりやすい一方で、年をとってもふやせる」ことが明らかにされた。

 海馬は、大脳辺縁系(大脳の深層に位置し本能・情動を支配する中枢)の一部で、左右に一つずつある。

 日常的な体験や学習で得た情報はまず海馬に入り、短期的に記憶・保管される。

 海馬に保管された情報のなかで、思い出す、話す、書くなどの刺激(記憶の再生)を受けたものが、長期に記憶されるべき情報として半永久的に脳内に残る。

 「記憶の司令塔」の海馬が働かなくなると、新しいことが覚えられなくなり、昔のことは覚えていても、新しいことはすぐさま忘れてしまう。

 海馬の神経細胞は、脳細胞のなかでもとりわけ繊細で、こわれやすい。

 虚血、酸欠、衝撃、ストレスなどで脳がダメージを受けると、まず海馬の神経細胞から死んでいく。

 アルツハイマー病が海馬の萎縮(神経細胞の減少)から始まるのもよく知られている。

 その海馬の神経細胞が再生するのなら、経験値が上がれば上がるほど(年をとればとるほど)、「脳力」は高まる可能性を秘めていることになる。

 そこが体の各部位とは違う脳のおもしろさである。

 体は老けても、脳は老けない─というわけだ。

 脳のアンチエイジング(抗加齢)、どうすればよいか。簡単だ。

 頭を使えばよいのだ。

 使わない筋肉が萎縮する(「廃用性萎縮」という)ように脳も使わないと萎縮する。

 本を読む。文章を書く。計算をする。物をよく見る。考える。人の話を聞く。自分も話す。歩く。料理を作る。よく噛んで食べるなどなど…すべて、脳を刺激し、脳細胞をふやすことにつながる。

 研究者の解説を紹介しよう。

 「海馬の刺激には軽い運動で充分。
 心拍数1分間90~100ぐらいの速歩程度のジョギングを1日10分、2週間続ければ脳細胞がふえ、6週間で認知機能が向上します」と、征矢英昭・筑波大学大学院人間総合科学研究科教授。

 小野塚實・神奈川歯科大学「咀嚼と脳の研究所」所長らは、fMRI(機能的磁気共鳴画像装置)を用いて、咀嚼(そしゃく)運動による脳への影響を調べた。

 「2分間ガムを噛むと、とりわけ高齢者では海馬の活性化が増強、記憶力の向上が確かめられました。
 日常、しっかり、ゆっくり、意識して噛む習慣を身につけるだけで、神経細胞の数が増加、脳の神経活動が活発になります。咀嚼は脳のジョギングです」

 だいじな補足=睡眠は、脳を休ませるだけでなく、記憶を整理し、定着させるアクティブなはたらきもしている。

 しっかり眠ろう。

 余談=睡眠時間の長い子ほど海馬の体積が大きかったという研究もある。

 寝る子は脳も育つのだ。
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