SSブログ

COPDは「たばこ病」 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(85)

 COPDは「たばこ病」

 NHKの健康番組で木田厚瑞(こうずい)医師の話を見た。
 「肺気腫や喘息、気管支炎などを総称して、COPDという呼称で世界的に統一されています。駅の階段や坂道が苦しく、特に同年代の人に遅れてしまう方はCOPDを疑うべきです」。まさに私のことである。(松平康隆「監督と選手」=『文藝春秋』2003年11月号)

 いいえ、「喘息」はCOPDには含まれません。

 「気管支炎」も正しくは「慢性気管支炎」とすべきです。

 インフルエンザなどにかかったときに起こる「急性気管支炎」は、COPDとはまったく別の病気だからです。

 呼吸器内科のすぐれた専門医である木田医師(日本医科大学教授)が、そんな言い間違いをするわけはないので、これは松平監督の聞き違いだったのでしょうね。

 COPDは、英語のChronic(コロニク)=慢性、Obstructive(オブストラクティヴ)=閉塞性、Pulmonary(パルモナリィ)=肺、Disease(ディジィズ)=疾患の頭文字をとった略語、日本語だと「慢性閉塞性肺疾患」。

 気管支や肺の空気の通りが慢性的に悪くなり、呼吸がしにくくなる病気の総称である。

 以前は、咳と痰が長期間にわたって続く気管支の病気を「慢性気管支炎」、それがさらに進行し、肺が破壊されて呼吸が十分できなくなる病気を「肺気腫」と、診断していた。

 だが実際にはこの二つの病気は混在しているケースが多く、明確に分けることが難しい。

 世界の専門家会議は、二つをまとめてCOPDと呼ぶことにし、2001年、「COPDの診断、管理(治療)、予防のための国際ガイドライン」を発表した。

 WHO(世界保健機関)と世界銀行の調査では、全世界の死亡原因に占めるCOPDの順位は、1990年は第6位、2004年には第4位である。

 しかし、最近は割合よく知られるようになっているが、当初は一般の人だけではなく、医師のあいだの認知度も低かった。

 事実、上掲の文によれば、松平氏が階段や坂で息苦しさを感じるようになったのは60歳のときで、「何人かの医師」に診てもらったが、

 「心電図もレントゲンも問題なく、『六十歳だから息切れぐらい当然ですよ』と慰められて終り」だった。

 偶然、テレビで知った木田医師の診察を受けてCOPDとわかり、こう述べている。

 「この時は実にスッキリした感じだった。約十年間、老化現象か病気かで悩んできた症状に診断がついたのだ。

 バレーボールでも、敵さえ判れば戦いようは必ずある。

 『COPDは完治しません。しかしこれ以上悪化しないよう、人生の質を大切にしていきましょう』と言う木田先生に、『これからはあなたが監督、私が選手です』と指導をお願いした」。

 そして適切治療を始めて3年、

 「今は坂道も歩道橋もずいぶん楽に歩ける。年に六、七回は海外にも出かけ、人生の質は落ちていないどころか、むしろ上昇している思いだ」。

 以来8年、「優等生患者」だった松平さんは、充実した余生を生き抜き、2011年12月31日に亡くなった。

 COPDの患者の8~9割は喫煙者なので別名「たばこ病」と呼ばれる。

 が、長年喫煙しているからといって、必ずなるわけではない。

 なるか、ならないかは、本人のもつ遺伝的な素因=感受性がかかわっている。

 しかし人によって感受性が違う原因はわからず、感受性の有無を調べる方法もない。

 したがってだれでもたばこの吸いすぎは控えるべきである─というのが、COPDの予防・治療の基本的な考え方である。

 壊れた肺は元には戻らないが、軽症のうちから適切な管理を行えば、進行を防ぐことができる。

 まずは禁煙。おかしい? と感じたらすぐ専門医(呼吸器内科)を受診しよう。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:健康

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

〈おわび〉の検証肝臓病、長き誤解 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。