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足から肺へ血栓症 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(88) 

 足から肺へ血栓症

 地震から一たんは逃れながら、後になつて死んだ人がゐた。高齢者のショック死。襲ひかかる現実に、肉体が耐へ切れなかつたのか。
 避難所へ行かず、車の中で寝起きするうちに、身体に不調を来たしての死。エコノミークラス症候群といふのださうである。もつと何とかした病名が付けられないものか、と思ふ。(高井有一「夢か現か」=『ちくま』2005年1月号)

 いや、「エコノミークラス症候群」は通称で、何とかした病名は、「肺血栓塞栓症」といってちゃんとあるのです。

 長時間、同じ姿勢をとることで足の静脈にできた血栓(深部静脈血栓症)が、血管を流れて肺に運ばれ、肺の動脈に詰まる病気である。

 だが新潟中越地震のさい、車中泊を続ける人たちにそれが多発したことを報じる新聞記事はほとんどすべて「エコノミークラス症候群」となっていた。

 作家がそう思ったのも無理はない。ツミ?は新聞にありか。

 「エコノミークラス症候群」という名前は、2000年のシドニー五輪を取材した英国人女性記者が、ロンドン到着直後に死亡したことをきっかけに広まった。

 が、ビジネスやファーストクラスの乗客にも起こっているし、新幹線や長距離バスなどでの発症例もある。

 関連学会は「ロングフライト血栓症」「旅行者血栓症」を提唱、いまはそう呼ばれることも多い。

 しかし実際は、それよりも日常生活の中や手術・出産などの入院中の発症率のほうが高い。

 欧米では虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脳血管障害(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)と並ぶ3大血管疾患とされている。

 日本麻酔科学会の調査(09年)によると、学会認定1155施設での年間発症数は427例で67人が死亡した。

 飛行機での発症率の約100倍も高い。

 どんな人に発症しやすいのか。

 「肥満や脂質異常症、糖尿病、寝たきりの人に発症しやすい傾向はあるが、健康な人も含め、だれにでも起きる危険性はある」と専門家は警告している。

 全身麻酔をして数時間かかるような大手術なら、消化器外科、心臓外科、整形外科、婦人科などあらゆる分野の手術で、年齢に関係なく起こりうる。

 特に発症リスクが高いのは、ひざや股関節など下肢の手術。

 ギプスが取れて、歩き始めたとたん、胸痛や息苦しさを訴えて倒れる例がままみられるそうだ。

 長時間のフライトでの発症は、成田赤十字病院や日本医大千葉北総病院などのデータ分析によると、窓際の席や女性客に多い。

 海外では男女差はないとの報告があるが、日本の女性に多いのは、身長が低く足が椅子に密着し圧迫されやすいことや、通路側の人に遠慮してトイレを我慢、席を立たないことが影響しているようだ。

 日本旅行医学会がすすめる予防7ヵ条。

 ①2~3時間ごとに歩く。

 ②不自然な姿勢で寝込んでしまったり、長時間歩かないままになってしまったりするので、睡眠薬は使用しない。

 ③水分を補給する(飛行中は1時間に80ccの水分が失われる)。

 ④ゆったりした服装を。男性はズボンのベルトをゆるめる。

 ⑤女性や高齢者は通路側に座る。

 ⑥血行を悪くするので足は組まない。

 ⑦座席でかかとやつま先の上下運動と腹式呼吸を1時間ごとに3~5分。

 手術後の発症を防ぐための弾性ストッキングの着用やマッサージなどは、多くの病院で行われている。抗血栓薬も2種類ある。

 それでも完全に血栓を予防し、肺塞栓症を防げる保証はない。

 抗血栓薬を用いれば止血が難しくなる面もあり、出血の危険性が高い人には使用できない。

 医療者まかせでなく、寝ているときは足を高いところに置く。足首を前後に動かし回すなど自力の対策も欠かせない。
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