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粥と芋 [雑感小文]

粥と芋

書家の榊莫山さんは、土、女、母、樹などの文字を何十年も書き続けた。

晩年はそれに粥(かゆ)が加わった。

「わたしの粥へのイメージは、子供のころの負のイメージがある」と述べている(「莫山つれづれ」)。

「子供のころの朝の食事は、かゆだった。

茶がゆのときもあれば、芋がゆのときもあった。

昭和のはじめである。

世界恐慌がおこって、農村をささえていた生糸が暴落。飢饉(ききん)が重なった。

子供らは、日本中貧乏になったので、かゆをすすって、しんぼうせえ、と思わされていた。

──略──

みんな痩(や)せた子ばかりで、太った子なんていなかった」

そうだった。莫山さんより六つ年下の当方の子ども時代も似たようなものだった。

戦中戦後の食糧難に伴って、常食の芋めしのイモの割合がどんどん増え、しまいにはイモとイモの間に米粒がこびりついているようだった。

ごくごくたまにメザシの1匹などもらえると、胸がふるえた。

思い出は死んだ親たちにつながり、なにか妙に切ない。

莫山さんも、そうだったのではないだろうか。
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