SSブログ

音楽と脳/楽器別性格 [「ヘルシーエッセイ」再録]

「One's Life」という健康総合ニュースサイトの片隅の小さな欄に毎週1本、「健康常識ウソホント」というタイトルの拙文を寄稿している。
そこへさらに「ヘルシーエッセイ」なる短文を追加することになった。
だが、こちらは30年以上も前に書いた旧稿の再利用である。
なんだかずいぶん無精なことをしますが、それをさらにここへ再々録させてもらいます。

ヘルシーエッセイ(9)

音楽家の個性/音楽の効用

「カネを借りるならラッパ吹きに借りろ」と音楽家仲間ではいうそうだ。

どうしてかというと、トランペットみたいに脳天に突き抜けるような音を出す楽器を長年吹きつづけていると、どうしても脳がイカれてしまう。

頭がおかしくなって、気がよくなって、つまりお人よしが揃っているから、カネを借りるならラッパ吹きにかぎる。

すぐ貸してくれて、間違っても催促なんかしない。そのうち忘れてくれるだろう。

むろん冗談だが、しかし、楽器によって性格が変わるのか、性格が楽器を選ぶのか、多分その両方が相互に作用し合うのだろうが、それぞれの楽器ごとにその奏者に共通の性格パターンがみられるのは事実である。

─と、ある音楽関係者が、音楽の秋にさいして、次のような話をしてくれた。

男のピアニストには女性的な性格の持ち主が多い。さらにいえばホモ・サピエンスないしゲイ能関係の人が多い。

ビオラという楽器は、バイオリンとチェロの間に挟まれて、“おいしいメロディー”はみんなほかの楽器にとられてしまうため、しぜん心情的に屈折しがちで、組合つくったり、宿屋のメシがまずいと文句をいったりするのは、たいていビオラ奏者である。

コントラバスときたらあのどでかい図体に似つかわしく、事態はいっそう個性的である。

なにしろ、あの巨漢力士のような鈍重な低音だから受け持つメロディー(それをしもメロディーというならばだが)も単調そのもの。

ベートーベンをやっても、ドミソの3音くらいしか弾かないですむ。

このコントラバスの奏者は、仮にオーケストラの全員が普段着姿で楽器は持たずに集まっていたとしても、知らない人でもすぐに言い当てることができるだろう。

一団の中で最もだらしのない、汚い恰好をしている男性を探し出せば、彼がコントラバス奏者である。

楽屋の便所が30分以上もふさがっているようなときも、コントラバスが入って、なかで本を読んでいるのである。

そのかわり(というのはヘンだが)、コントラバスは気がよくて人の面倒をよく見る、小事にこだわらぬ好人物が多い。

好人物といえば、実際にそうであるかどうかは別として、バリトン歌手がしゃべっているのを聞いていると、その声が高くもなく、低くもなく、中庸を保って、いかにも穏やかな人柄が現れているようで、この人はいい人だなぁ、と感じさせられる。

だいたい、人間は感情のオクターブが高くなると声の音程も高くなる。

ケンカ口論というのは双方、高いキーの声の応酬だが、一方だけが高音で、もう一方は低音というのは、叱責あるいは抗議と、それに対する弁解あるいは陳謝といった関係になる。

声の高低がそのまま人間関係の立場の差を示しているわけで、人間の声のキーが最も高くなるのは子供の泣き声と女性の金切り声である。

だから泣く子と女房のヒステリーには勝てないのである。

もっとも、高い声で叱られると、単に叱られたとしか感じないが、低い声で叱られると諭されたという感じで、このほうが骨身にしみてこたえる場合もある。

第一、二日酔いの頭にキンキンとひびかないだけまだしも助かる。

音楽家の話がどこかへいってしまったが、音楽は医療にもいろいろと利用されている。

精神病やノイローゼの音楽療法はよく知られているが、ある大学の産婦人科では、産婦に対する音楽の効果について調べた。

それによると産婦が強くいきんで分娩をおこなうのに最も効果があったのは、ベートーベンの第五交響曲『運命』の第一楽章だったそうだ。

ペイン・クリニック(痛みの治療)でも、音楽が用いられている。

アメリカの臨床テストでは、ベートーベンの『月光』、ドビュッシーの『月の光』、ワグナーの『夕べの星』などがすぐれた鎮痛作用を示した。

しかし、日本人の場合には、クラシック音楽よりもむしろ演歌や民謡のほうが、痛みをよくいやしてくれる。

なかでベスト1は石川さゆりの歌う『津軽海峡冬景色』だった、と大阪医大麻酔科の兵頭正義教授はいっている。

筆者は目下、アルコールとカラオケ音楽の併用療法の効果を実験中である。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

ヤマイモが効く理由現代家相考 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。