献血に三徳あり [「ヘルシーエッセイ」再録]
「One's Life」という健康総合ニュースサイトの片隅の小さな欄に毎週1本、「健康常識ウソホント」というタイトルの拙文を寄稿している。
そこへさらに「ヘルシーエッセイ」なる短文を追加することになった。
だが、こちらは30年以上も前に書いた旧稿のリサイクルである。
なんだかずいぶん無精なことをしますが、それをさらにここへ再々録させてもらいます
ヘルシーエッセイ(14)
献血に三徳あり
だれでも知っていることだが、女性の平均寿命は男性のそれよりも5年ばかり長い。
つまり女は男よりも長生きする。これは、なぜか?
女のほうがラクしているから。女はバカだから。女はズウズウしいから─というような大胆にして独断的偏見に満ちた理由ならいくらでも挙げられる。
しかし、医学的に説得力のある理由となると、まず、女のほうが男よりも心臓が強くて、脳も強いからである、といわねばならない。
心臓が強いといっても鉄面皮だというのではない。
脳が強いといっても知能が高いという意味ではない。
ここでいう心臓や脳は、言葉の第一義的な意味のそれである。
身体器官の一つとしての心臓や脳である。
それらが、女の場合、男よりもだいぶ丈夫にできている。
なので、女は男よりも長生きできることになっている。そういっていいだろう。
厚生省の人口動態概況をみると、30歳から54歳までに虚血性心疾患(心臓の筋肉への血流が不足するために起こる病気。狭心症や心筋梗塞など)で死亡する女性は、男性のわずか5分の1くらいにすぎない。
同じ年齢層の脳卒中の発生率をみても、女性は男性の3分の1以下である。
虚血性心疾患も脳卒中も、ともに血管の障害によって―もっとハッキリいえば動脈硬化が原因になって―起こる病気である。
こうした病気が、なぜ、男性よりも女性に少ないのか、その有力な理由の一つは、女性ホルモンの一種のエストロゲンに、動脈硬化を抑制する作用があるからだ。
エストロゲンは卵巣でつくられ、排卵や受精に欠かせぬ働きをしているホルモンだが、これが血管の壁を強くしなやかに保ったり、血圧の上昇をおさえたり、HDLコレステロール(動脈硬化を防ぐ善玉コレステロール)をふやしたりする作用をしている。
子を生み、育てるための生理的なしくみが、同時にその母なる体を丈夫に保つ働きをしているわけだ。
第2の理由は、さらにその女性の生理と密接にかかわっている。
つまり女性のあの周期的な子宮出血が、動脈硬化を防ぐうえでとても効果的なものらしい。
この興味深い説は、イギリスのシーリィという心臓病学者によって、権威ある専門誌『アメリカン・ハート・ジャーナル』に発表された。
シーリィ博士の述べるところによれば、女性の月々の生理による出血は、体内に生じた動脈硬化を促進するような物質を含むもろもろの代謝産物を、体外に排泄する役割を果たしている。
だから毎月の定期便(というような用語はシーリィは使ってないが)がある間は、女性は男性に比べて心臓病にも脳卒中にもなりにくい。
だが閉経後はしだいにその発生率がふえて、70歳ごろにはほとんど男女差がなくなる。
かいつまんでいえば、シーリィ博士はこう指摘している。
実さい、潟血といって、高血圧などのときには血液を抜く治療法があるくらいだから、このシーリィ説の信ぴょう性はかなり高い。一概に否定することはできない、というのが専門家の意見である。
では、生理による周期的な出血のない男性が動脈硬化を防ぐにはどうしたらいいか。
それは定期的に献血をすることだと、専門家はすすめている。
女性の生理による出血量は、個人差や年齢による差もあるが、平均はだいたい35mlくらいだといわれる。
献血の1回分の採血量は200mlか400mlだから、半年か1年に1回献血をすると、女性なみに“潟血”をしたことになる。
ご存じのように献血をすれば血液型はもとより、梅毒反応テストや肝炎ウィルスの保有者かどうかもわかるし、血液中のたんぱく、酵素、コレステロールなどの生化学的検査で、肝臓や腎臓の働きに異常はないか、といったこともわかる。
これらの検査を病院で受けると、ざっと1万円はかかるからバカにはならない。無料の血液検査は人助けになって、動脈硬化が防げて、健康状態のチェックができるのだ。
まさに、献血に三徳あり、という所以である。
そこへさらに「ヘルシーエッセイ」なる短文を追加することになった。
だが、こちらは30年以上も前に書いた旧稿のリサイクルである。
なんだかずいぶん無精なことをしますが、それをさらにここへ再々録させてもらいます
ヘルシーエッセイ(14)
献血に三徳あり
だれでも知っていることだが、女性の平均寿命は男性のそれよりも5年ばかり長い。
つまり女は男よりも長生きする。これは、なぜか?
女のほうがラクしているから。女はバカだから。女はズウズウしいから─というような大胆にして独断的偏見に満ちた理由ならいくらでも挙げられる。
しかし、医学的に説得力のある理由となると、まず、女のほうが男よりも心臓が強くて、脳も強いからである、といわねばならない。
心臓が強いといっても鉄面皮だというのではない。
脳が強いといっても知能が高いという意味ではない。
ここでいう心臓や脳は、言葉の第一義的な意味のそれである。
身体器官の一つとしての心臓や脳である。
それらが、女の場合、男よりもだいぶ丈夫にできている。
なので、女は男よりも長生きできることになっている。そういっていいだろう。
厚生省の人口動態概況をみると、30歳から54歳までに虚血性心疾患(心臓の筋肉への血流が不足するために起こる病気。狭心症や心筋梗塞など)で死亡する女性は、男性のわずか5分の1くらいにすぎない。
同じ年齢層の脳卒中の発生率をみても、女性は男性の3分の1以下である。
虚血性心疾患も脳卒中も、ともに血管の障害によって―もっとハッキリいえば動脈硬化が原因になって―起こる病気である。
こうした病気が、なぜ、男性よりも女性に少ないのか、その有力な理由の一つは、女性ホルモンの一種のエストロゲンに、動脈硬化を抑制する作用があるからだ。
エストロゲンは卵巣でつくられ、排卵や受精に欠かせぬ働きをしているホルモンだが、これが血管の壁を強くしなやかに保ったり、血圧の上昇をおさえたり、HDLコレステロール(動脈硬化を防ぐ善玉コレステロール)をふやしたりする作用をしている。
子を生み、育てるための生理的なしくみが、同時にその母なる体を丈夫に保つ働きをしているわけだ。
第2の理由は、さらにその女性の生理と密接にかかわっている。
つまり女性のあの周期的な子宮出血が、動脈硬化を防ぐうえでとても効果的なものらしい。
この興味深い説は、イギリスのシーリィという心臓病学者によって、権威ある専門誌『アメリカン・ハート・ジャーナル』に発表された。
シーリィ博士の述べるところによれば、女性の月々の生理による出血は、体内に生じた動脈硬化を促進するような物質を含むもろもろの代謝産物を、体外に排泄する役割を果たしている。
だから毎月の定期便(というような用語はシーリィは使ってないが)がある間は、女性は男性に比べて心臓病にも脳卒中にもなりにくい。
だが閉経後はしだいにその発生率がふえて、70歳ごろにはほとんど男女差がなくなる。
かいつまんでいえば、シーリィ博士はこう指摘している。
実さい、潟血といって、高血圧などのときには血液を抜く治療法があるくらいだから、このシーリィ説の信ぴょう性はかなり高い。一概に否定することはできない、というのが専門家の意見である。
では、生理による周期的な出血のない男性が動脈硬化を防ぐにはどうしたらいいか。
それは定期的に献血をすることだと、専門家はすすめている。
女性の生理による出血量は、個人差や年齢による差もあるが、平均はだいたい35mlくらいだといわれる。
献血の1回分の採血量は200mlか400mlだから、半年か1年に1回献血をすると、女性なみに“潟血”をしたことになる。
ご存じのように献血をすれば血液型はもとより、梅毒反応テストや肝炎ウィルスの保有者かどうかもわかるし、血液中のたんぱく、酵素、コレステロールなどの生化学的検査で、肝臓や腎臓の働きに異常はないか、といったこともわかる。
これらの検査を病院で受けると、ざっと1万円はかかるからバカにはならない。無料の血液検査は人助けになって、動脈硬化が防げて、健康状態のチェックができるのだ。
まさに、献血に三徳あり、という所以である。
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