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コレステロールに関する諸問題 [医学・医療・雑感小文]

コレステロールに関する諸問題


◎リポたんぱくはシュークリーム

 なぜ、高LDLコレステロール血症が問題なのか?

 血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が異常に多いと、血管の内壁にアテロームとか粥腫(しゅくしゅ)と呼ばれる、お粥のような脂質がたまってくっつき、動脈硬化を進めて、心臓病や脳卒中のもとになるからだ。

 では、LDLコレステロールとはどんなものか?

 コレステロールの約90%は体内(肝臓と腸)でつくられ、血液によって全身の組織へ運ばれる。

 血液はほとんど水のような血清(血漿)と、血球などでできているから、脂肪であるコレステロールは溶け込むことはできない。

 そこで、水と親しみやすい物質でくるんで運ぶようになっている。

 コレステロールにかぎらず、トリグリセライド(中性脂肪)、リン脂質など脂肪性のものはみな同じようにして運ばれる。

 そのかたちをリポたんぱく(リポは脂肪の意)といい、シュークリームにたとえると、クリームにあたるのがコレステロールなどで、皮に当たるのがたんぱく質である。

 この「シュークリーム」には、いくつか種類があるが、主なものは4種類─カイロミクロン、VLDL(超低比重リポたんぱく)、LDL(低比重比重リポたんぱく)、HDL(高比重リポたんぱく)─である。

 カイロミクロンは、比重が小さく、最も軽く大きい。中身はほとんどトリグリセライドで、大きすぎて細胞の中へ入ることができない。

 VLDLは、カイロミクロンに比べると、トリグリセライドの割合がへり、コレステロールとリン脂質がふえる。これも大きいため細胞膜を通りにくい。

 この二つのリポたんぱくは、肥満、糖尿病などメタボリック症候群にかかわる中性脂肪の増減に関しては問題になるが、コレステロールの害についてはノープロブレムである。

 LDLは、比重が小さく、コレステロールを半分近く含んでいる。大きさは中型で、肝臓から全身の組織へコレステロールを運ぶ役目を担っている。

 一定量は必ずなくてはならないが、多過ぎると血管壁にたまって動脈硬化の原因となる。で、「悪玉コレステロール」と呼ばれる。ホントは「悪玉リポたんぱく」と呼ぶべきなのだが─。

 HDLは、比重が最も大きく、たんぱくが半分含まれている。大きさは小さく、コレステロールの割合はLDLに比べると少ない。

 その役目は、全身の余ったコレステロールを回収して肝臓に戻すことだ。
 血管壁にコレステロールがたまるのを防ぐ(動脈硬化を防ぐ)ので、「善玉コレステロール」と呼ばれる。

 HDLが少ないと、余分なコレステロールが回収し切れず、残ったコレステロールが血管壁にたまる

 つまり、LDL値は高すぎるのが、よくない。HDL値は低いのが、よくない。

 LDL値を下げて、HDL値を上げることで動脈硬化は退縮する。

 LDL値をHDL値で割った「LH比」が高いほど動脈硬化は進展し、低いほど抑えられる。

 LH比2以下で、動脈硬化は退縮し始め、1・5以下でさらに顕著になる。
 

◎三種の脂肪酸

 さて次は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸について、かんたんに──。

 脂肪は、脂肪酸とグリセリンでできている。

 脂肪酸は、多数の炭素同士が手をつないで鎖をつくり、それに水素と酸素がつながった構造になっている。

 炭素と炭素が全部、1本の手でつながっているのが「飽和脂肪酸」で、炭素と炭素が部分的に2本の手でつながっているのが「不飽和脂肪酸」である。

 飽和脂肪酸は、炭素の鎖すべてに水素がつながっている(つまり炭素が水素で飽和されている)。

 だから飽和脂肪酸を多く含む食品は、バターやラードのように常温では固体である。

 不飽和脂肪酸は、炭素同士が2本の手でつながった「二重結合」部分の炭素の片側には水素がつながってない(炭素が不飽和の状態になっている)。

 で、不飽和脂肪酸を多く含む植物油や魚油は常温では液体である。

 トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種。

 液体の植物油をマーガリンやショートニングなどの固体に加工するときにできる。

 ケーキ、ドーナツ、フライドポテト、マヨネーズ、クリーム類には、トランス脂肪酸が多く含まれる。

 飽和脂肪酸もトランス脂肪酸も、摂り過ぎると、「悪玉」のLDLコレステロールをふやし、「善玉」のHDLコレステロールをへらし、動脈硬化を進め、心筋梗塞、脳梗塞のリスクを高める。

 ─といったようなわけで、

「コレステロール摂取量と血中コレステロール値との関連を示すエビデンスは不十分」ではあるが、高LDLコレステロール血症患者は、3種類の脂質成分(飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール)の摂取量に注意する必要がある。

 高LDLコレステロール血症患者のみならず、健常者も飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂りすぎはひかえたほうがよい。

 日本動脈硬化学会の「声明と見解」は、そのことも示唆しているのだろう。
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