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8月15日の記  [雑感小文]

8月15日の記 

数年前の8月15日、後期高齢の男たち数人が、仲間の一人の家に集まり、昭和20年のあの日の思い出を語り合った。

いまやあの日を体験的に知る日本人は、昭和ヒトケタ以上の年寄りばかりになったが、そのすべての人がめいめい自分自身の「昭和20年8月15日」の記憶をもっている。

70年も前の特定の1日を、親が死んだ日と同じように覚えている。

そんな日はほかにはないだろうと思う。

高見順などの日記にも明らかだが、あの日は日本全国、快晴でセミが鳴きしきっていた。旧制中学1年の夏休み中だった私は、郷里屋久島の山の中の小屋で暮らしていた。

なぜ山の中かというと、集落が米軍艦載機グラマンの空襲と、潜水艦の艦砲射撃を(各1回)受けたことにたまげて、村中こぞって山奥に「疎開」していたからだ。

戦争が終わったと聞き、ではもう安心だなと、山から村の家への道を歩いているうち、不意に胸の底から歓喜が突き上げてきた。

すると、足がひとりでに動き、夏草の茂る小道を全力で走り出していた。

それが私の昭和20年8月15日だ。
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