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女性の悲しみ [医学・医療・雑感小文]

女性の悲しみ

 大森安恵・海老名総合病院糖尿病センター長(東京女子医大名誉教授)は、1956年に東京女子医科大学を卒業した。

 そのころは「糖尿病があったら妊娠してはいけない。生んではいけない」といわれていた。

 数年後、若い大森医師は、死産のあと糖尿病とわかって産科から回されてきた患者を担当した。

 悲嘆に沈む同性の姿に接し、

「こんな悲しい思いを女性にさせていることに男性医師は気づかず、長いあいだ放置してきたのだ」と思い至った。

「女性の悲しみは、女性が解決しなければならない。

 私の医学的ライフワークは『糖尿病と妊娠』にしようと決意しました」

 大森先生はそう話した。
 
診断薬・診断機器メーカー、ロシュ・ダイアグノスティックス主催のシンポジウム「妊産婦を守る」で──。

 言うまでもないことだが、

「糖尿病の女性は生んではいけない」など大間違いだ。

 血糖コントロールをし、「計画妊娠」をすれば、大丈夫。

「糖尿病の合併症から母児を守るためには、まず妊娠の可能性がある女性は、検診を受けることです。

 特に家族に糖尿病がある人は必須です」と大森先生。

 先年、医療情報誌『JMS JAPAN MEDICAL SOCIETY』で、大森先生の話を読んだ。

 畏敬する先輩、伊藤正治さんが同誌に長期連載したインタビュー形式の医人列伝「Medical Who‘s Who」の118人目の登場者が、大森先生だった。

 一部をご紹介する。

<私が医師になりたてのころ、年配の患者さんから、「お前が診るんか?」と女医であることにあからさまな不信の言葉をぶつけられ、悔し泣きしたことがあります。給料も女医は男性の6割という有り様でした。>

<男性が失敗しても、「だから男はダメだ」とは決して言われないのに、女性の場合は「だから女はダメだ」と言われます。

 そう言われないために人の3倍働こうと思い、大学の医局に入ってから定年退職するまで、朝早く出勤し、一番遅くまで仕事をしてきました。>(『JMS』2012年4月号)

 大森先生の座右の銘は、

「まて己 咲かで散りなば 何が梅」。

 若き日の野口英世が、刻苦勉励の修行時代に詠んだ句だそうだ。
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