SSブログ

たばこに関する異論・反論(2) [医学・医療・雑感小文]

たばこに関する異論・反論(2)

「変な国・日本の禁煙原理主義」と題する養老孟司(解剖学者)/山崎正和(劇作家)対談のつづき─。


◎「受動喫煙の害」に科学的根拠なし

 山崎 数年前に、乞われて旧厚生省による「二十一世紀のたばこ対策検討会」の審議委員になったことがありました。体裁上、たばこを吸う人間も入れないと公平性を疑われると思って、厚生省は私に声をかけたのでしょう。少数派になるだろうとは思いましたが、会議は一般公開されるというので、禁煙運動のおかしさを世間に広めるいい機会だと思って行きました。

 出てみると、会議は予想以上に異様なものでした。

 ─略─。

 驚いたのは、反喫の根拠になっているという調査の開示を請求すると、反喫の医者でもある座長に「この資料は反喫煙論者にしか見せられません」と言われた(笑)。まさに正体見えたり、です。あれは元国立がんセンターの疫学部長の平山雄氏の三十年にわたる研究に基づくものとされている。でも原資料は見せないんです。

 養老 平山さんは世界で初めて「受動喫煙の害」を指摘した人ですが、彼の疫学調査にはその後、多くの疑問が寄せられています。なかでも彼が主張した、いわゆる副流煙の危険性は問題外です。喫煙者本人が吸い込む煙よりも、周囲の人が吸い込む煙の方が有害だという説ですが、低温で不完全燃焼するたばこから発生するので有害というのに科学的根拠はないのです。

 山崎 疫学とは、原因と結果の関係が見えにくい事柄について相関性を述べる学問ですよね。

 養老 そうです。毒を飲んだら死んだ、というように因果関係が明白なら、疫学の出番はありません。

 山崎 では、ある原因とある結果を任意に選択するときに、基準はあるのでしょうか。

 例えば、肺がん患者が増えた原因は素人の私でもいくつも思い当たる。その第一は長生きでしょう。長生きすればがん発症の確率が高くなる。もうひとつ疑わしいのは大気汚染です。しかしなぜ、たばこだけをがんの原因として取り上げて、大気汚染は問題にしないのかと私は言ったんです。

 疫学が多くの伝染病の発見に貢献したことは認めますが、任意の原因と結果を選択するにあたって、科学的根拠を明示できないかぎり、素人考えと何ら変わりがないのではないでしょうか。それなら、人類にとって最も危険なのは畳とベッドの普及であるとも言えますよ(笑)。審議会の席でそう言ったら、皆さんいやな顔をなさっていましたけど。

 養老 そうそう。私もそこが気になるんです。なぜたばこが「悪玉」に選ばれたのか。

   

 長くなったのでこの辺でやめるが、「歴史上、社会的な禁煙運動を初めておこなったのはナチス・ドイツ」といった興味深い話その他について、もっとお読みになりたい向きは、バックナンバーを版元から取り寄せるか、古本屋やアマゾンでお探しください。

「総力特集 最高の医療 カリスマ医師10人 治療革命報告」「日野原重明 健康10ヵ条」「天才・阿久悠 五○○○曲の舞台裏 都倉俊一/小林亜星」「新発見 吉田茂VSチャーチル会談秘録」など、いま読んでも―いや、いま読むからかえって面白い記事、いっぱい載っています。『文藝春秋』2007年10月号です。


 ひとこと追加。

「禁煙によってストレスが高じてしまうほどの状態になるなら、無理して禁煙するストレスの害のほうが大きい」=奥村康・順天堂大医学部特任教授(免疫学)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:健康

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。