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食塩と高血圧のウソ・ホント [医学・医療・雑感小文]

食塩と高血圧のウソ・ホント

◎高血圧の98%は「本態性」

高血圧は、「一次性高血圧」と「二次性高血圧」に分類される。

一次性高血圧は「本態性高血圧」とも呼ばれる。

本態性とは、原因不明の症状や病気にかぶせる医学的な冠詞のようなもので、症状それ自体が病気の本態だという意味である。

二次性高血圧は、腎臓病やホルモン異常などのために起こる。「続発性高血圧」である。

原因となった病気が治れば高血圧も改善する。

普通、単に「高血圧」といえば一次性高血圧のことで、高血圧症の98%を占める。

明確な原因はわかっていないが、血圧を上げる要因として、食塩のとりすぎ、加齢による血管の老化、ストレス、過労、運動不足、肥満、そして遺伝的素因(体質)があげられている。

なかでも最大の要因とされているのが、食塩のとりすぎである。

食塩(ナトリウムと塩素の化合物)を過剰にとると、体内のナトリウムの濃度を一定に保とうとして水分がふえる。

そのため体内をめぐる血液の量と、心臓から送り出される血液の量がふえるので、血圧が高くなる。

だから食塩の摂取を抑えることは、高血圧の予防・治療の必須条件─とされている。

だがこの「健康常識」は必ずしも正しくない。食塩をとりすぎても高血圧にならない人がけっこう多いし、逆に食塩をとりすぎなくても高血圧になる人もずいぶん多いからだ。


◎減塩で悪化する高血圧もある!

現に一生懸命、減塩食を励行してもさっぱり効果の得られない高血圧の人もたくさんいる。

もともと食塩をとりすぎたために上がった高血圧ではないのだから、食塩をへらしたからといって、おいそれと下がる道理はないのである。

それどころか、減塩によってさらに高血圧が増悪することさえある。

血液中のナトリウムの濃度が極度に低下すると、ノルアドレナリン(副腎などから分泌されるホルモン)とかレニン(主として腎臓から分泌される酵素)といった血圧上昇物質がふえてくるからだ。

このような場合は、一時的に食塩をすこし多くとると、血圧が下がってくるという。

「減塩食にしたことによって生命を失った人と、食塩をとりすぎたために生命を失った人と、どちらが多いだろう。それは当然、前者である」

と言ったのは、高血圧の生理学的原因や疫学研究で重要な業績を残した、英オックスフォード大学教授のサー・ジョージ・ピッカリングである。

同じような警句を日本の医学者からも聞いたことがある。

「ビタミンの欠乏は特定の病気を引き起こすだけだが、塩の欠乏は命を奪うことになる」=青木久三・元名古屋市立大学医学部第二内科教授。

高血圧自然発症ラットの開発と、本態性高血圧症の原因を解明する「カルシウム膜学説」を提唱、1983年、米高血圧学会賞を受賞した、高血圧の専門医である。

むろん、だからといって、食塩などいくらとってもかまわないとは、ピッカリングも言ってないし、青木教授も言われなかった。

食塩の過剰摂取によって起こる高血圧があるのも、厳とした事実である。

だがそれは高血圧症の一部でしかない。

青木教授によれば、食塩のとりすぎ、肥満、ストレスなどによる高血圧は、食塩過食性高血圧、肥満性高血圧、ストレス性高血圧と呼ぶべきものである。

◎高血圧の真因は「遺伝」である

純然たる本態性高血圧症は、そうした血圧上昇のトリガー(引き金)なしの、自然に起こってくる高血圧のことである。

その原因は、血管の筋肉(動脈平滑筋)の細胞の中に、筋肉を異常に収縮させる作用をするカルシウムがふえてくるためで、それを決定づけるのは遺伝的素因=主遺伝子である。

治療には動脈平滑筋へのカルシウムの流入を抑える「カルシウム拮抗薬」を用いるとよい。

一方、食塩をとりすぎたり、太ったりすると血圧が上がる人も、そうした遺伝的素因をもっているが、それは副遺伝子のはたらきによる。

そういう人は、食塩のとりすぎを避けることによって、あるいは標準体重を保つことによって、高血圧を防いだり、治したりすることができる。

反対に、いくら塩辛いものを食べても、けっこう太っていても、血圧が上がらない人も少なくない。高血圧の遺伝子をもってないからである。

「単純明快ですね」と言ったら、

「ええ、自然はその本質において単純である。湯川秀樹博士のことばです」と、青木先生は答えた。
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