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冷酒は体に悪い?  [医学・医療・雑感小文]

冷酒は体に悪い? 

◎益軒が広めた迷信

白玉の歯にしみとほる秋の夜の 酒は静かに飲むべかりけり    若山牧水

新酒が出盛る酒飲みにうれしい季節が到来する。

「熱燗」「人肌」「冷や」といろんな飲み方が楽しめるのが、日本酒のうれしい特長だが、ときどき「冷酒は体にわるいよ」といわれることがある。

子どものころ、ばあさんが、おやじにそう言ってたしなめているのを聞いたこともある。

この古い俗信の出どころは、貝原益軒の『養生訓』だと、昭和時代の著名な医学評論家だった故・石垣純二氏が著書『常識のウソ』に述べている。

同書収載の「冷酒は胃によし」と題された一文は、

「各地を講演旅行していて男性からよく聞かれる質問が、『冷やはからだに良くないそうですね』というのです」と始まり、

「実はこれは二百五十年昔、貝原益軒先生がその『養生訓』で日本中にひろげたトンデモナイ迷信の一つです。

その巻三に『酒は夏月も温なるべし、冷酒は脾胃をやぶる』とあります。それがずっと口から耳へ、耳から口へと口伝され、今日なんとなく信じこまされているわけです」と続いている。

◎冷えは万病の元

この石垣説に対して、それこそ「トンデモナイ迷論」だと、冷え症に詳しい統合医療の専門医、川嶋朗・東京有明医療大学教授は言い切った。

健康雑誌『壮快』の「名医に聞く」という記事の取材で、東京女子医大付属青山自然医療研究所クリニック所長だった川嶋先生の話をうかがったときのことである。

「冷えは万病の元」についての解説・助言のなかで先生が、

「とにかく、まずは冷たいものをやめる、極力、避けることから始めるべきです。

こういうと、口の中に入れてあっためてから体の中に入れれば同じではないかという人がいますが、それは違います。

体はつながっていますから、口の中にポンと入れた瞬間、胃腸はたちまち収縮して血液を減らすのです」と話した。

そこで、聞き手(丸山)が、

「かつて医師で医学評論家の石垣純二さんが、冷や酒が体によくないというのはウソだ。

冷酒だろうが、冷たいビールだろうが、数秒で食道を通過して胃に入ると、数分間で体温の37度になるのだから……といっていて、説得力あるなと思ったのですが」と聞いたのに対して、先生は、こう答えている。

◎臓器別医療の誤解

「それこそ、臓器別医療、体の全体を診ないで、個々の臓器だけを診ようとする今の西洋医学の考え方です。

人の体は全部つながっていて、口にものが入ると、その情報を脳は瞬間的に感知し、腸が反応する。当然です。脳と腸はつながっているのですから。

ですから、冷え症を治すには、まず冷たいものをとらない。次は火を通す。それでもダメなら最後は食材を考える。食物には、温める食材、冷える食材があります。

例えば、夏野菜は体を冷やしますから、できるだけ火を通したほうがいいし、最終的にはとらないほうがいいということになります」(雑誌『壮快』2006年1月号「名医に聞く」より)

むろん、これは冷え症を治すための心得であって、そうではない頑健な体の持ち主が冷酒を愛飲するのは、まあ、よいのではないだろうか。飲み過ぎさえしなければ─。

もっとも、なぜ「冷酒が胃によい」のかの理由については、石垣さんも、

「いんちきなおかみが二級酒を特級といつわって出すとき、熱カンにするのでもわかるとおり、冷酒の方がよく味覚を刺激し、のどごしのデリケートな味をよく伝えることは事実です」としか述べていないのだが。
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