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ゴルフと心臓 [医学・医療・雑感小文]

 ゴルフ場で心臓発作を起こして倒れたという話を聞くことが、ままある。

 スポーツ中の突然死をまとめた統計を見ても、若い人ではランニング、水泳、サッカーなどが上位を占めているが、40~65歳ではゴルフが1位、65歳以上では1位がゲートボールで、2位がゴルフだ。

 中高年者には競走、競泳、サッカーといった激しい運動をする人は少なくなるので、そのほうの事故はへるのだろう。

 それはわかるのだが、ゴルフやゲートボールのようないわばスタティック(静的)なスポーツで致命的な事故を招くことになるのは、なぜだろう。

 最大の原因は、たぶん精神的緊張だろう。

 その証拠にゴルフ場での突然死はほとんどグリーンで起きている。

 ここ一番というパットのプレッシャーが、血圧を押し上げ、心臓の血管を収縮させて、心臓発作の引き金を引くことになるのだろう。

 心筋梗塞や狭心症の発作が最も多く発症するのは、寒冷刺激によって、血管が収縮し、血圧が上がる冬だが、冬に次いで多いのは夏だ。

 夏場は、大汗をかいたとき、水分を補給しないと、脱水が生じ、血液が粘っこくなる。

 そのため、血液の流れが悪くなり、血栓ができ、血管が詰まりやすくもなるのだろう。

 コースへ出る前、プレイ中、水分の適切な補給を──。

 もっとも、グリーンで倒れたからといってすべて心臓発作とは限らない。

 脳卒中のこともあるだろうし、夏場だと熱中症のこともある。

 心臓発作でも、狭心症は、グリーンよりもむしろ坂道などを歩いているときに起きることが多いようだ。

 過去に狭心症の発作を経験している人は、ニトログリセリンの錠剤を携帯しているはずだから、腰を下ろし、ニトロを舌下にふくめば、ほどなく症状は落ち着く。

 初めての発作だったが、パートナーが持っていたニトロで助けられたという例も少なくないようだ。

 意識がしっかりしている場合の対応はそれでよい(むろん、プレイは中止する)が、問題はパッタリ倒れて、意識を失った場合だ。

 このとき、パートナーがまず行わねばならないのは、呼吸と脈の確認だ。

 1 鼻と口に手のひらを当て、吐く息が感じられるかどうかを調べる。

 吐く息が感じられない場合、舌根が沈下して気道をふさいでいるのだ。

 2 人差し指と中指をあごの先に当て、もう一方の手を額に当て、あご先を持ち上げるようにしながら、額を静かに押し下げるようにして、頭を後ろに反らせる。

 3 人差し指と中指を頸動脈に当て、脈がふれているかどうか確かめる。

 呼吸と脈拍が確認できたら、安静にして救急車を待つ。

 4 呼吸と脈拍が確認できなかったら、大声を上げて、AED(自動体外式除細動器)を持ってきてもらおう。

 5 AEDがくるまで心臓マッサージ(胸骨圧迫)を休まずに行う。

 6 心臓マッサージのやり方=倒れている人の胸の真ん中(乳頭と乳頭を結ぶ線の真ん中)に手のかかとの部分を重ねてのせ、肘を伸ばしたまま真上から強く(胸が4~5センチ程度沈むまで)押す。

 7 AEDには、だれでも使えるように音声のガイドと図がついていて、自動的に心臓の状態をチェックし、使わなくてもいい場合は、器械は動かない。

 使用法を間違える心配はない。 ためらわず、使おう。

 こうした事故を招かないため、心臓病の既往歴をもつ人は、なるべく坂道の少ない、慣れたゴルフ場を選び、少しでも体調が悪かったら(不義理を恐れず)コースに出るのをやめることだ。

 なお、ニトロには「使用期限」がある。

 期限を過ぎた薬や、期限内でも錠剤をむきだしにしていると、成分が揮発して薬効が薄れてしまう(舌先でなめてみてピリッとこなかったら薬効が薄れた証拠)。

 シートなどに明示された使用期限を確かめて、いつも新しい薬を携帯するようにしよう。
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