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お茶をどうぞ! [医療小文]

「京都人は色が白くなるとさえ言ったら、どんな草でも喜んで食べる」

 とは、明治・大正の詩人にして卓抜なコラムニストだった薄田泣菫の警句だ。(完本『茶話』富山房百科文庫所収)

 現代女性はやせるとさえ言えば、どんな草でも喜んで食べるし、現代人はがんにならないとさえ言えば、どんな物でも好んで食べる──ようなところがある。

 お茶はこの二つの条件にかなう飲み物だ。

 ご期待に応えてか、〝食べるお茶〟というのもある。

 お茶が肥満防止にいいのは、成分の一つのサポニンに体内での脂肪の吸収を抑える作用があり、カフェインが脂肪細胞にたまった脂肪の分解を促進させるからのようだ。

 熊本県立大学の奥田拓道教授(食・健康環境学)らが実験で確かめた。

 がんについてはじつに多くの研究報告がある。

 緑茶の生産地でいろいろながんの発生率が低いことはかなり以前から知られていた。

 緑茶のカテキン類はがん細胞のアポトーシス(自滅)を促進させるというので、アメリカでは緑茶を治療薬として使う臨床試験も行われているそうだ。

 注=細胞の死には、アポトーシス(自然死)と、ネクローシス(壊死)の二つのパターンがある。

 アポトーシスは、個体をよりよい状態に保つために管理・調節された生理的な細胞死。

 がん化した細胞や内部に異常を起こした細胞のほとんどは、アポトーシスによって取り除かれ、腫瘍の成長が未然に防がれる。

 ネクローシスは、血行不良、外傷などによる細胞内外の環境に悪化によって起こる病理的な細胞死だ。

 緑茶やコーヒーをよく飲む人は糖尿病にもなりにくい。

 大阪大学の磯博康教授(公衆衛生学)らによる文部科学文科省研究班が、全国の40~65歳の男女約1万8000人に飲食習慣などを聞き、5年間追跡調査した結果だ。

 緑茶を1日6杯以上飲む人は週1杯未満の人に比べて糖尿病の発症リスクが33%減っていた。

 コーヒーを1日3杯以上飲む人も、週1杯未満の人に比べ42%減だった。

 カフェインの効果だろうと考えられている。

 ただし、一つ注意したいのは、コーヒーに砂糖を入れると逆効果になること。

 そうした気づかいが要らないのが、緑茶の大きな利点だ。

 欧米人の砂糖消費量が日本人よりはるかに多く、肥満や動脈硬化性の病気の発症率が高い一因は、日常飲料のコーヒーや紅茶に砂糖やミルクを加えることだといわれる。

 折から新茶の季節。

 急須に少し多めに茶葉を入れ、少し待ってつぐと、茶わんに緑色の光がみちる。

 さわやかな香りが立ちのぼる。法悦のひととき...。

 おーい、お茶...が、入ったぞ!

 しづくまで等分にして新茶のむ  佐橋節子
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