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「もやもや病」って? [医療小文]

日本人に多いという「もやもや病」 いったいどういう病気?

シンガーソングライターの徳永英明さんは、2001年に「もやもや病」を発症したといいます。

翌年症状が落ち着いて歌手活動に復帰しましたが、2016年、もやもや病による脳梗塞発症予防のため手術をしました。

徳永さんのもやもや病との闘いは、この病気が一般の人に知られるきっかけとなりました。

もやもや病は、脳に血液を送る血管が徐々に詰まり、脳の血液不足や出血を起こす難病。

日本で最初に見つかった疾患です。

脳に血液を送っている血管で「内頚動脈(ないけいどうみゃく)」という太い2本の動脈があります。

内頚動脈は、心臓から出た大動脈から枝分かれし、首から頭へ上がってすぐに二股に分かれます。

左右の内頚動脈は、それぞれ左右の大脳半球へと走って酸素や栄養を送っています。

この内頚動脈の終末部にあたる二股に分かれる部分に狭窄(すぼまって狭くなる)や閉塞が起こるのが「もやもや病」です。

それとともに「側副血行路(そくふくけっこうろ)」という、大脳半球に血液を届けようと異常な血管が網の目のように形成されます。

側副血行路は「もやもや血管」とも呼ばれていますが、本来の太さ以上に拡張して多量の血液を送るので切れやすく、頭蓋骨のなかで出血を起こすこともあります。

もやもや病は血管が細くなると道路のロータリーのような血管の環状交差点ができます。

これを「ウィリス動脈輪」というため、もやもや病は別名「ウィリス動脈輪閉塞症」とも呼ばれます。

日本に多い「もやもや病」

もやもや病は、1957年に東京大学の研究グループによって初めて報告されました。

その後、1960年代終わりに東北大学の研究グループ(鈴木二郎医師)によって「もやもや病」と命名されました。

当時の解像度の低い脳血管造影写真では、側副血行路(もやもや血管)がタバコの煙のように「もやもや」と見えたことから名づけられたといわれています。

現在では世界的に通用する正式名称となっており、英語では「Moyamoya disease(モヤモヤ・ディジーズ)」と表記します。

「もやもや病は、前述のとおり脳の血管が徐々に詰まってしまう病気ですが、加齢による動脈硬化の進行で脳が詰まるのとは違い、子どもや若い世代にも発症します。

現在、最も多く診断されているのは日本で、国内には16,000人ほど患者さんがいます。

韓国や台湾など東アジアや黄色人種に多い病気とされています(人口の多い中国では正確な統計がありません)

発症年齢は5歳ころと30~40歳ころの二回山があり、男女比は1:1.8で女性に多いという傾向がわかっています。

もやもや病の症状

もやもや病によって、内頚動脈や大脳半球の後半部に血液を送る「後大脳動脈(こうだいのうどうみゃく)」が狭くなる患者さんもいます。

こうして脳血管が詰まることで脳に血液不足が起こり、手足のまひや言語障害などを起こすのが「虚血型もやもや病」です。

また、側副血行路に長年負担がかかり続けて血管が切れ、脳出血を起こすタイプが「出血型もやもや病」です。

虚血型は小児に多く、出血型は成人の半数を占めています。

脳虚血

内頚動脈が細くなることで「もやもや血管」が発達しますが、それでも大脳は血液不足状態に陥ります。

そうすると「一過性脳虚血発作」や「脳梗塞」が起こります。

一過性脳虚血性発作は、手足が動かしにくい、手足や顔面がしびれる、うまくコトバが出ないなどの症状が突然起こり、数分から数時間で回復する症状です。

小児では過呼吸からこの発作が起こりやすいといわれています。

また、ラーメンやうどんなどを「フーフー」と吹き冷ましながら食べる、リコーダーやハーモニカを吹く、などの動作が引き金になったり、歌ったり大声を出したりすると発作が起こることもあります。

一過性で自然に治まりますが、脳梗塞の前兆発作という面も指摘されていますから要注意です。

脳梗塞

血液が不足して脳の一部が死んでしまうのが「脳梗塞」です。

起こった場所によって「手足の運動障害」「言語障害」といった症状が後遺症として残ります。

そして、もやもや病で起こる脳梗塞のきっかけは、側副血行路にかかる負担によって発症する「脳出血」です。

しかも、いったん出血すると何度も繰り返すようになることも指摘されています。

その他の症状

もやもや病の患者さんには頭痛を訴える人が多く、拍動性の痛みや吐き気をともなう場合もあります。

また、頻度は高くないのですが「ひきつけ(けいれん)」発作で検査を受けてもやもや病と診断されるケースもあります。

国立循環器病研究センター病院には、2012年から「もやもや病専門外来」が開設されました。

ほんの10年前までは原因がまったく不明の病気でしたが、日本がリードして研究を進め原因や検査、治療法などが解明されてきている疾患といえるでしょう。

<執筆 藤尾 薫子(保健師・看護師)
監修 株式会社 とらうべ
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