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ヘディングのリスク [医療小文]

サッカーのヘディングと脳震盪リスク


 国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップロシア大会の熱戦が世界中のサッカーファンを魅了している。

 サッカー選手はヘディングにより頻繁に頭部でボールと接触する機会があり、頭部への衝撃による潜在的な脳震盪(のうしんとう)のリスクが懸念されている。

 米コロンビア大学医学センターのJames Noble氏は、

「サッカーでの脳震盪リスクは高いが、サッカーに限らず全てのコンタクトスポーツの選手は脳震盪のリスクに曝されている」

 と、同大学アーヴィング医療センターのウェブサイトで解説している。

 ヘディングも選手同士の衝突もリスク

 アマチュアサッカー選手を対象とした研究では、頭部衝撃(ヘディングおよび意図的ではない頭部の衝突)による潜在的な脳震盪のリスクが、米国の著名な神経学会誌「Neurology(神経学)」に報告されている(2017年)。
 「
 Noble氏は、

「ヘディングによるボールとの接触、ボールを奪い合う選手同士の偶発的な衝突のいずれにも脳震盪のリスクがあると考えられる」と述べている。

 また、「スポーツでは年齢、体格、性、競技に対する積極性など他の要因が脳震盪リスクに影響する可能性がある」とし、

「若いアマチュア選手とプロ選手では損傷を負うリスクのレベルが異なると考えられ、研究者はそれぞれに特有のリスク因子があるかどうかを判断する必要がある」と指摘している。

 同氏はスポーツ選手の脳震盪リスクについて専門的に研究しており、頭部の衝撃に対するスポーツ選手の曝露を評価するためにヘルメット、ヘッドバンド、マウスガードに埋め込まれた加速度計を使用している。

 しかし、それらのツールは衝撃力になる動きを測定できるものの、その衝撃の影響に対して脳がどのような反応を示すかは測定できないという。

 医師は、頭部への影響をよりよく知るための検査を行うことが可能である。

 脳震盪の徴候を調べるための神経学的検査、MRIやその他の特殊なスキャンによる脳外傷の物理的証拠の探索も有用である。

 また、脳波検査(EEG)により脳震盪に関連する脳波パターンを識別することもできる。

 選手は損傷を隠す場合も

 しかし、スポーツ選手は損傷を負ったことを隠すケースがある。

 Noble氏は、

「したがって実際の課題は、脳への影響を評価する必要な選手を選定することにある」と言う。

 同氏らは現在、選手が脳震盪を起こしたときに競技場の外やベンチにいる試合に参加していない人へリアルタイムで信号を送る、小型化されたEEG技術を組み込んだヘルメットを開発中である。

 この技術はサッカーなどヘルメットを使用しないスポーツにも応用可能であるという。

 同氏は、

「われわれは、選手が競技キャリアを積み重ねるうちに蓄積する脳震盪に至らない程度の微細な脳の損傷(明らかな徴候や症状が見られない脳損傷など)は、脳損傷の観点からより重要であると考えている。脳震盪は脳損傷の氷山の一角かもしれない」と指摘している。

 若年選手でリスク高い可能性

 米国では近年、FIFA、米国サッカー連盟(USSF)、米国ユースサッカー協会(AYSO)に対して、ヘディングの年齢制限を定めるよう求める訴訟が起こされている。

 Noble氏は

「年齢に関するリスクは、選手が脳震盪、身体発育、既存の医療問題、遺伝的危険因子などを申告しているかどうかににかかわらず、脳の成熟や損傷への反応と関連するかもしれない。年齢によってリスクを分類する必要がある」と述べている。

 しかし、ヘディング禁止による影響は十分に分かっていない。

 同氏は、

「組織スポーツで何かを禁止するには、説得力のあるエビデンス(科学的証拠)が必要である。

 どんなスポーツでも頭部外傷を避けることは必要で、特に若年選手にとって重要になると考えている。

リスクが明らかになるまで、10歳以前では練習時を含めてヘディングを避けようという動きは良いことだと思う」と述べている。

 教育とトレーニングが重要

 しかし、他のスポーツにおいても頭部衝撃の影響や短期的および長期的リスクについての理解が進み始めたばかりである。

 具体的なヘディングの長期的影響やヘディングを始めた年齢、回数(1日当たり、1週間当たり、シーズン当たり、選手期間中)などを気にかける必要がある。

 リーグの主催者、保護者、監督、コーチ、選手、研究者が一丸となって取り組めば、これらも明確になると思われる。

 スポーツをすることにより、生涯にわたって継続可能な健康やさまざまな社会的な恩恵が得られる。

 同氏は、
「目標はサッカーなどのスポーツを避けることではない。われわれは、選手が安全に競技ができるように短期的および長期的なエビデンスを蓄積して用いるべきである。

 これは、特にどのように競技すべきかどのように試合を進めるべきかをまだ自分自身で決断できない若い選手に当てはまる」と指摘。

「脳震盪を完全に防御するヘルメットやヘッドギアはない。しかし、われわれは教育とトレーニングによって選手がヘディングする、またはヘディングを避ける準備をさせることができる」と述べている。
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