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愚かで残酷な「麻薬迷信」 [医学・医療・雑感小文]

愚かで残酷な「麻薬迷信」

明日10月20日は、10(とう)2(ツー)、0(ぜろ)の語呂合わせで「疼痛(とうつう)ゼロの日」。

がんの疼痛治療の普及と理解を促進するNPO「JPAP(ジャパン・パートナーズ・アゲンスト・ペイン)」が決めた。

JPAPは2003年、「ともに痛みとたたかう」の考えに賛同した医療従事者によって設立された。

「We are Partnetrs Against Pain.」

「私たちは、患者さん・家族の声に耳を傾け、すべての痛みから解放し、支えていきます」と第1回全国大会で「宣言」した。

がん末期、患者の約7割が直面するといわれるのが、激しい痛みだ。

痛みは、生きる気力、治療への意欲を奪い、家族との大切なひとときをも奪う。

しかし現在のがん治療の現場では、痛みに対する配慮は十分ではない。

その最も苛烈な一例が、俳優の今井雅之さんの場合だろう。

生前最後の壮絶な記者会見をテレビで見て、すごい! 強い! 男だ! 胸がふるえ、目頭が熱くなった。

それだけにモーレツに腹が立った。

「夜中に痛みと戦うのはつらいです。モルヒネで殺してくれ、と言いました。安楽死ですね」

今井さんがしぼり出すような声でそう話したときだ。

今井さんに対してではない。

どこの病院の何という医者か知らないが、緩和ケアを怠った、能天気なバカ医者に対してである。

そもそも今井さんが最初に受診した病院では誤診があったという話もある。

ステージⅣの大腸がんを「腸の風邪」と診断したというのだが、これはちょっと信じられない。

いまどきそんなとんでもないヤブ医者がいるだろうか?

もしかしたら、それは今井さんが周りの人を心配させまいとして、つくった病名だったのかも?

事実はどうだったのか、わからないから、この件はひとまず保留としたい。

いま、ここで問題にしたいのは、今井さんが最後の病床で受けた治療のことである。

末期がんの患者を苦しめる「がん性疼痛」について、WHO(世界保健機関)は1986年、鎮痛薬の段階的使用法などを含む「WHO方式がん疼痛治療法」を公表、各国で80~90%の患者が痛みから解放された。

だが、日本のみ先進国中最低の成績が続いている。

日本のがん疼痛治療がなかなか進まない要因として、次の三つを専門家は指摘している。

①医師に遠慮して患者が痛みを積極的に訴えない。

②医師が抗がん治療のみを考え、痛みを病気が示す症状の一つにすぎないとみて、痛みへの関心が浅い。

③痛みの治療に用いる「医療用麻薬」に対する偏見と誤解がいまだに強い。

①には「我慢が美徳」という日本人的心情も働いているようだ。

緩和医療の専門医は強くこう言っている。

「痛みの感じ方は人それぞれで、他人にはわかりません。はっきりしているのは、痛みは伝えてもらわなければ、無いものとして扱われかねないということです。我慢せずに、まずは訴えるべきです」

さらに問題は、③だ。

「モルヒネは怖い、寿命を縮める」というまことしやかなウソを信じる人が、まだずいぶん多いようなのだ。

事実は全く逆で、モルヒネなどで痛みを抑えたほうが病状も安定し、延命効果につながることが医学的に証明されている。

なのに、今井さんにあのような苦痛を強いた原因は、②に属する担当医の無知な怠慢以外にはかんがえられない。

テレビも今井さんの苦闘を伝えるだけではなく、がんの痛みは緩和できることを報じるべきだったのではないか。
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