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メタボ腹のエビデンス [医学・医療・雑感小文]

メタボ腹のエビデンス

メタボリックシンドローム(メタボリック=代謝、シンドローム=症候群)。略してメタボ。別名、内臓脂肪症候群。

2005年4月、日本動脈硬化学会が中心となって、日本内科学会など生活習慣病関連の8学会が、「内臓脂肪の蓄積」に加えて、「脂質代謝異常」「糖代謝異常」「血圧高値」のうち二つ以上を合併する状態─という診断基準を発表した。

ひらたくいえば、腹のなかに脂肪がどっさりたまっていて、中性脂肪やコレステロールの数値が異常、血糖値が高い、血圧が高い─のうち二つ以上が重なると、やばいよ。

心臓病や脳卒中になりやすい条件がそろっているので気をつけよう─というのである。

2008年4月からこれに基づく「特定健診(メタボ健診)」が始まり、「メタボ」はたちまち全国的流行語となり、同時に異論・反論が続出した。

真っ先に槍玉に上がったのが、メタボの第一条件とされる「男性85㌢、女性90㌢」という「腹囲基準」だった。

腹回りが基準値以上の人をまず選び、さらに血圧測定と血液検査で、血圧、血糖、脂質のうち二つ以上が異常だと、「メタボ」と診断される。

だが、「腹回りが基準値以下でも生活習慣病の予備群はいる」「世界で唯一、男性の基準が女性より小さい」など異論が根強く、専門家の間で再検討を求める声が相次いだ。

各国の基準を検証した研究者の、

「男性よりも女性のほうが大きいとする腹囲基準は日本以外にはない。日本の基準は奇妙だ」という論文が、英国の学会誌に掲載されたりもした。

男性の腹囲85㌢は、40~69歳の日本人男性の平均(84.7㌢)とほぼ同じ。標準範囲の真ん中だ。

中高年男性の半数を占める「メタボ腹」は、むしろベストサイズではないのか。

ちなみに、同年齢の女性の平均は79.3㌢。男性よりも約5㌢小さい。

なのに、メタボの基準は逆に男性よりも5㌢も大きい。「奇妙」といわれるわけだ。

そもそも、この数字にはいわゆる「エビデンス(科学的根拠)」というものがあるのか? 

厚生労働省研究班は、地域住民を対象にメタボ健診を実施している全国の12の施設の追跡調査による、40~74歳の男女約3万1000人の腹囲と心血管病の発症状況を分析した。

男性は、80㌢以上がそれ未満の1.48倍、85㌢以上1.56倍、90㌢以上1.70倍。

女性は、80㌢以上1.75倍、85㌢以上1.79倍、90㌢以上1.62倍。

いずれも腹囲が大きいほうが発症割合も高かった。

しかし、どの数値で区切っても発症者の割合はほぼ変わらず、危険性の高い集団を選び出すのに最適の数値は算出できなかった。

つまり特定の腹囲を超えると、危険性が急激に高まるという線引きは難しいことがわかった。「男性85㌢」のエビデンスは示せなかったわけだ。

この発表を、「メタボ腹囲 根拠なし」と1面トップで報じた新聞もあった(読売新聞2010年2月9日夕刊)。

「腹囲の最適値が示せないとの結果は、病気の危険性のある人を見つけ出す項目としては無意味ということだ」

と、大櫛陽一・東海大医学部教授。

健康診断のデータ分析を長年続けている医療統計学の第一人者である。

「診断基準というのは本来、医学的研究の統計判断に基づかなければ、科学的根拠があるとはいえない。科学的に効果が判断できない施策を実施することは税金のムダづかい」と手きびしい。

結論。

メタボの基準に一喜一憂するのは無意味。

「ちょっとメタボ気味」の小太りのじいさんやばあさんが長生きすることもわかっている。

とはいえ、超肥満がよくないこともハッキリしているのだから、適当な自制心はもつようにすべえ。

「肥満度は知性と比例する」といった人もいる。
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