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パピローマ [医学・医療・雑感小文]

 パピローマ

 先ごろ、2008年のノーベル医学生理学賞受賞者の一人、フランスの女性研究者、フランソワーズ・バレシヌシ教授が来日、東京大などで講演した。

 この年のノーベル医学生理学賞は、いずれも性感染症の原因となる二つのウイルス──エイズウイルス(HIV)と、ヒトパピローマウイルス(HPV)──の発見者に贈られた。

 前者は、世界エイズ研究予防財団のリュック・モンタニエ名誉教授と仏パスツール研究所のバレシヌシ教授。後者はドイツがん研究センターのハラルド・ツア・ハウゼン名誉教授だった。

 HPVには、100種類もの型があるが、そのなかの15種類が子宮頸(けい)がんのリスクを高める。

 ごくありふれたウイルスで、性交渉によって男性から女性へ、女性から男性へ感染する。
 
世界で年間50万人の女性が感染し、生涯感染率は80%といわれる。

 感染しても90%以上は自然治癒する。

 が、10%は感染が長期化し(持続感染という)、無治療のままだとそのまた10%が子宮頸がんへ進展する。

 パピローマとは「乳頭腫(しゅ)=いぼ」という意味で、HPVのほかのタイプは、性器にできる尖圭(せんけい)コンジローマ(湿ったいぼという意味)や、手や足の甲などにできる尋常性いぼ、顔に小さないぼが密集する青年性いぼなどの原因となる。
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身は医者に 心は神に  [雑感小文]

 女性化乳房

 緒方知三郎先生は、唾液(だえき)腺ホルモン剤「パロチン」の開発者としても知られ、趣味の手品は玄人はだしだった。

 70代で前立腺がんを発病、当時の定番的治療法だった女性ホルモン薬をずっと常用していた。

 先生のあと日本医大老人病研究所所長を継いだ金子仁先生から聞いた話。

「女性ホルモンを長く使っていると、女性化乳房といって、おっぱいがふくらんでくる。

 洒脱(しゃだつ)なお人柄だったので、よく冗談をおっしゃった。 おい、触らせてやろうか」

 当時(1960年代)、日本人の前立腺がんはごく少なく、治療法も現代とは格段の差があったはずだが、90歳という長寿を全うされ、80歳からの5年間で、ユニークな項目分類を行った『常用医語事典』(金原出版刊)の執筆・編さんを成し遂げた。

 人の名のついた病気や体の器官などを集めた「第Ⅲ部人名編」は、ページをめくっていてあきない。

「身は医者に 心は神に任すべし 智慧(ちえ)ありて 苦しむ者を 人という」

 緒方先生、晩年の一首だ。
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ハゲの六型 [雑感小文]

ハゲの六型

 男性型脱毛症は、男性ホルモンの影響で発症することがわかっている。

 男性ホルモンのテストステロンが分解されたDHT(ディハイドロテストステロン)というものが、毛髪細胞に作用し、毛の成長を抑える。

 そのため太い硬い毛(終毛または硬毛)が、先祖返りして赤ん坊のときの軟らかい毛(軟毛)に戻る。

 ハゲるのは主に前頭部から頭頂部にかけてで、側頭部と後頭部はハゲないのが普通だ。

 男性ホルモンに対する毛髪細胞の反応が違うためだ。

 ハゲの型を、

 ①総退却型

 ②てっぺんハゲのち雪だるま型

 ③知恵ハゲ型

 ④②と③の混合型

 ⑤法界坊型

 ⑥かっぱ型 

 ─の六つに分類した人は、ご自分もハゲていた緒方知三郎先生だ。

「おがた・ともさぶろう 病理学者。東大教授。唾液(だえき)腺内分泌、老化機構などを研究。共著『病理学総論』など。文化勲章。(一八八三─一九七三)」と「広辞苑」にはある。

 補足すると、江戸後期の蘭医、緒方洪庵の孫で、東大退官後は東京医大初代学長、日本医大老人病研究所初代所長を歴任された。
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政治家の頭髪 [雑感小文]

政治家の頭髪

 ①チビ②デブ③ハゲは男の外見の三ペケとされる。

 自慢じゃないが、当方は三つとも完備している。
 
 も一つおまけに④ガニマタだ。

 むろん初めからそうだったわけではない。

 20代では①と④だけだったが、30代後半までに②が完成し、40代で老眼が始まったころ③が加わった。

 秋、落葉の季節(木の葉髪という季語もある)にちなみ、③の話を─。

 一口にハゲといっても20種類以上もあるというが、最も一般的なのは円形脱毛症と男性型脱毛症だ。
 
 前者は病気で、後者は体質だ。

 普通、ハゲと呼ばれるのは後者のほうで、日本人男性の約30%にみられる。

 少数派だ─と書いて、気づいたのだが、政治家にはわれらの仲間がきわめて少ない。

 歴代総理の頭部を思い浮かべてみても、吉田茂と中曽根康弘ぐらいだ。

 これ、なにか理由があるのだろうか。このごろの政治がダメなのは、まさかそのせいではあるまいな。
     
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銀嶺の果て [雑感小文]

銀嶺の果て


 誤嚥(ごえん)性肺炎で思い出す人がある。

 映画監督の谷口千吉さん。2007年の10月29日、亡くなった。95歳、誤嚥性肺炎だった。
 
生前、親しくお話を聞く機会があり、感銘を受けた。

 谷口さんは戦前、早稲田大を出て、PCL(東宝の前身)に入り15年間、助監督。

 3年間兵隊にとられ、戦後、『銀嶺(ぎんれい)の果て』で監督デビューした。

 「会社からはプロデューサーになれと言われたのです。

 ぼくはガッカリして、15年も助監督やったのにそれはあんまりだ。

 ほれ通した女なんだから1度くらいは思いをかなえさせてくださいヨ。
 
それじゃ1本撮らせてやる。1本だけだぞ。

 ええ、いいです。

ぼくは腹の中で1本撮って東宝をやめようと思って、そのことが結果的によかったんですね。


どうせ、これ1本だからってんで、思いきり全力投球で、やりたいようにやった。

 山が好きだから山のシャシンをやりたい。それに黒澤(明監督=谷口さんの親友だった)が非常に相談にのってくれて、シナリオができて、それが思いがけずヒットしたことで、会社もこれはいけるかもしれんなと思ったのですね。

 で、まぁ契約したわけです」

   

 谷口千吉監督の第一作『銀嶺の果て』(1947年)は、登山経験を生かした山岳アクションで、新人の三船敏郎を一躍スターダムに押し上げた。

「1本だけ…」の約束だったが、大当たりしたので正式契約。

「ジャコ万と鉄」(49年)、「暁の脱走」(50年)などヒット作を連発、「芸術の黒澤、娯楽の谷口」といわれた。

「ですからね、契約してもいつクビになるかわからない時期のものは、下手は下手なりにどこか土性骨が通っていたと思うんです。

 それが5年、6年たって映画監督という名が定着してくると、なにか器用に巧くまとめようとしてね、かえって駄作になっちゃった。

 現状に安住すると、人間、どこかゆるんでくるんじゃないですか。

 そこへいくと、黒澤(明)なんてね、撮り終わって5分もたてばもう後悔が始まって、それがどんどん増殖していくものなんだ、と。」

 一期一会。

 多くの人に会って、話を聞き、記事を書いてきたが、話の面白さ、魅力あふれる人柄…、最も忘れ得ぬ人の一人が谷口千吉さんだった。
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最後の友 [医学・医療・雑感小文]

 最後の友

 肺炎は、がん、心臓病に次ぐ死因の3位。その9割以上を高齢者が占める。

 高齢者はなぜ、肺炎になりやすいのか。

 病原菌などの異物を押し戻す気道(気管や気管支)の防御機能が低下し、同時に気道の免疫力も弱くなるためといわれる。

 普通、声帯から下のほうは、若い人だと無菌になっているが、老人では必ずしもそうではない。

 防御機能の低下による反応として、白血球(体内に入った細菌や異物を殺す働きをする)がみられることが多い。
 
口の中には無数の細菌が生息している。

 若い健康な人の口内細菌叢(そう)では、酸素があると生きられない嫌気性菌が優位で、病原性細菌の好気性菌の繁殖が抑制されている。

 年をとると唾液(だえき)の分泌が減るし、いろいろな持病とその治療薬の作用が重なり、口内細菌叢が変わり、病原性細菌が増えてくる。

 これが眠っている間に肺に吸引される。

 また、加齢による低栄養も肺炎が起こりやすい一因になる。

 救いは肺炎による死は安らかであること。

 「肺炎は老人の最後の友」と言われる。

 近代内科学の父、ウイリアム・オスラーのことばである。
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誤嚥性肺炎 [医学・医療・雑感小文]

 誤嚥性肺炎

 肺炎というのは、その名のとおり肺に病原菌が入って起こる急性炎症だ。

 その菌の入り方・炎症の起こり方で、高齢者に非常に多くみられるのが誤嚥(ごえん)性肺炎だ。

 誤嚥の起こり方を、米国の医師バートレットは、三つの型に分類している。

 第一は、食事中にむせて、飲食物と一緒に口の中の病原菌が気管から肺に入り、肺炎が起こる。
 
第二は、胃液が逆流して気管から肺に入る。

 胃液は強い塩酸だから肺に化学的な炎症をつくってしまう。

 第三は、サイレント・アスピレーションと呼ばれるもので、眠っているときなど、無意識のうちに、口の中やのどの辺りの病原菌を肺にアスピレート(吸引)してしまう。

 高齢者の肺炎で特に重要視されている。

 誤嚥性肺炎を防ぐには、口の中をいつもきれいにしておくこと。
 
寝たきりの高齢患者を毎食後、歯をみがき、うがいをさせ、上体を起こして2時間ほど座らせておくようにしたら肺炎の発症が減ったと、老人医学の専門医が報告している。
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老にして聾、聾なれど朗。 [老聾ぐちぐち]

 老にして聾、聾なれど朗。

 夕暮れにはまだいくらか間がある。淡い青色が空いっぱいにひろがっている。

 週日のこの時間、荒川左岸の堤防上につくられた、自転車と歩行者専用の「健康の道」にはほとんど人影がない。

 河口のほうへぶらぶら歩いていくと、外灯の台座にジャンパー姿の小柄な男性が腰かけていた。
 
六十がらみの人のよさそうな顔に笑みを浮かべて立ち上がり、口を開いた。

 こちらはあわてて頭を下げる。

「あ、ごめんなさい。わたし、耳がダメなんです。よかったら書いてもらえますか」

 メモ帳とボールペンを差し出すと、ちょっと困惑した感じながら受けとり、ゆっくりと文字を記してよこした。

『向こうに見えるのは 富士山ですか』

 横罫のページに縦に書いた2行がすこし曲がって傾いている。

「はい、そうです」

 西の方角のはるかに遠い空と海とが接するところに、逆扇形の山容がくっきり見える。

「秋のいまごろからと冬の晴れた日には、とくによく見えるようになるんです。空気が澄むからでしょうね」

 なにかつぶやいてうなずく相手へ、会釈を返し、背を向けて、ぶらぶら歩きをつづけながら、思った。
 
ここから富士山が見えるのが意外だったのかな? 
 
どこから来たんだろう。最近、近くに越してきたんだろうか。

 ずいぶん久しぶりに妻以外の人と言葉を交わすことができて、うれしかった。

   

 両耳の聴力を失ってもう10年になる。

 正確にいえば、24年前にまず右耳がダメになった。

 肝臓を3分の1切除する手術の、全身麻酔からさめたとたん、脳が破裂しそうな激痛に襲われた。

 そのとき同時に聴覚伝導路のどこかがこわれたのだろうか。

 退院して数日たったころ、右耳の聴こえがおかしいことに気づいた。

 手術を受けた病院の耳鼻科で診てもらい、「重度感音難聴」といわれた。60歳だった。
 
それからの14年間は左耳だけで暮らしてきた。
 
日常、多少の不便は感じても、別段悩んだりするようなことはなかった。

「昼寝のときの耳栓が1個ですむからトクだ」などバカな軽口を叩いたりして……。

 ところが10年前、その左耳もこわれてしまった。

 5月半ばの朝、目が覚めたら左耳がボァーンと詰まっていた。
 
飛行機に乗ったときに生じる耳閉感に似ている。

 家の近くの耳鼻咽喉科医院に駆け込み、耳管に空気を送る通気治療をやってもらったが効果なし。

「大きい病院へ─」と医師。

 翌日、妻に付き添われて、都心の専門病院を受診したときは、もうほとんど何も聴こえなくなっていた。

 医師が質問を机上の紙に記し、こちらは口で答える問診、聴力検査、頭部X線検査その他の結果、「急性感音難聴」と診断された。

「突発性難聴とはどう違うのですか」と聞いたら「ほぼ同じ」、

「原因はなんでしょう」には、首をひねり「? ? ?」、疑問符が三つ、横並びに記された。
 
早速その日から始まった高気圧酸素療法、副腎皮質ステロイド、血液循環改善薬、血管拡張薬、代謝賦活薬など併用の、2ヵ月余にわたる総攻撃的な治療もむなしく、ほぼ全聾にひとしい両耳の失聴が完成した。
   
   

 病院で紹介された補聴器専門店を訪ねて、「認定補聴器技能者」が選んでくれた三つばかりの機種を試し聴きして、機能(重度難聴用)と懐具合の折り合った「ポケット型補聴器」(5万3千円)を購入した。

 そして補聴器生活が始まって、まずなによりもうれしかったのは、自分の声が聴こえるようになったことだ。

 人が口から言葉を発するときは、自分の耳でもその言葉を聴いている。

 自分の口から出た言葉が自分には聴こえないというのは、なんだか妙な感じでへんにくたびれる。一言二言ならともかく、長話などとてもできない。

 補聴器をつけたら、口から出た言葉がそのまま耳から入ってきて、気もちが落ち着き、普通にらくに話せるようになった。
 
人の声も、イヤホンとつながったコードを伸ばし、補聴器の本体を相手の口元へ近づけるとちゃんと聴こえる。が、声が聴こえることと、言葉を正しく聞き分けられることは、全然同じではない。
  大きめの声で、ゆっくり話してもらうとすっとわかるときもあるが、そうでないときのほうがずっと多い。

最近の一例―。

 プロ野球日本シリーズ実況放送のテレビに映ったダッグアウトを見て、妻がいった。

「栗山は1週間、風呂に入ってない」

「へぇ、げんかつぎってやつか。シャワーは使ってるのかな」

「えっ!?」

「1週間、風呂に入ってないんだろう?」

 妻はげらげら笑いながら、正解を記した手持ちボードを見せる。

「栗山は自信たっぷりの顔」
 
勝利を確信した監督の表情についての感想が、なぜ「1週間、風呂に入ってない」になるのか。これはもう笑うしかない。

 10年も経って、毎日、同じ家で暮らしている相手の言葉でさえこうなのである。

 まして、よその人の言うことなど――である。だから私の補聴器は人の話を聞くのにはほとんど無力、もっぱら自分の声を聴くためのものといったほうがよい。

 人の話が聞けないと、人と会ってもあまり楽しくない。ときには苦痛でさえある。すっかり出不精になった。

 年に一度、「長寿健診」を受けるさいに提出する「生活機能に関する基本チェックリスト」の、

「バスや電車で1人で外出していますか」

「友人の家を訪ねていますか」

「家族や友達の相談にのっていますか」

「週に1回以上外出していますか」

「自分で電話番号を調べて電話をかけていますか」といった項目の「いいえ」にレ印を入れるのにも(最初は抵抗感があったが)慣れた。

 ことしはついに、「(ここ2週間)自分が役に立つ人間だとは思えない」の「はい」をチェックした。

「ここ2週間どころじゃないよ、年中だよ」とつぶやきながら――。

「目が見えないことは、人と物を切り離す。耳が聴こえないことは、人と人を切り離す」とカントがいっているそうだが、自分の実情もそれにとても近いと思う。

 人と話をしないことが長く続くと、やがて声がかすれてついには出なくなる。

 声帯も筋肉だから使わないと萎縮するのだという。

 その「声帯萎縮」を防ぐべく、私が日常つとめて励行していることは、歌を歌う、文を朗読する、の二つである。

  歌えば気も晴れる、読めば頭もしゃきっとする。

 これ、うつや認知症の予防にも役立っているのではないだろうか。同居人(と、台所のぬかみそ)にはだいぶ迷惑をかけているようだが…。

   * 

 お年玉はがきの売り出しが始まった、晴れた日の昼過ぎだった。

 団地のなかにある郵便局へ行こうと、コンクリート長屋の4階から1階へ降りて外へ出たら、路上にぽつんと一つ、幼い女の子の姿があった。

 いたいけな小さな歩みがなんともかわいく、後ろからずっと見ていたくて、追い越しそうになった足をゆるめようとしたとき、その幼稚な歩行がぴたっと止まった。

 と、次の瞬間、わっと泣きだした。

 おどろいて駆け寄り、ひざを折って声をかけた。

「どうしたの?」

「まいごになっちゃった」

 口元へ向けた補聴器を通して高く澄んだ声が耳を打った。おおっ、いいぞ!

「だいじょうぶだよ、おじいちゃんと一緒にさがそうね。お名前は?」

「みやした ひろみ」

「いくつ?」

「四さい」小っちゃい手の親指を内側に折って見せた。

 ああ、ありがたい! よく聞こえる。

 さあ、正念場だ。祈るような思いを込めて言葉をつなぐ。

「ひろみちゃんね、おじいさん、耳がきこえないんだ。大きな声でお話ししてくれる。おうちはどこ?」

「わかんない」

「そうか、おうちはずうっと遠くなんだね」

「うん」
「きょうはどこに来たの?」

「ようちえん、ママときたの」

「あ、わかった! もうだいじょうぶだよ。連れてってあげる。おいで」

 立って、手を差し伸べると、ぎゅっとつかまってきた。

 団地の一角にある幼稚園は、荒川の堤防の内側に沿う道路に面している。
 
幼児の足に合わせてゆっくりいま来た道を引き返す。

かわいい手から伝わってくる小さな握力をしみじみうれしく感じながら……。

 二つの住居棟(当家もその一棟の一室)のわきを抜けて、小学校の校庭と団地の間の細長い路を行くと、幼稚園の裏門に突き当たる。

 何かの催しでもあったのか、園庭で子どもたちが遊び、若い母親たちが少人数の輪をいくつかつくって、立ち話をしている。

 その場景が間近に見えたとたん、右手のなかからすっと小さな手が離れた。

 ママのもとへ駆け寄る後ろ姿を見届けて、ほっとし、きびすを返した。

 歩く足が軽い。

 郵便局は明日にしよう。

 思いがけぬ贈り物をもらった幸福感をこのまま胸に抱いて家に持ち帰ろう。

 ローエンドロー ローエンドロー

 聾後のマイテーマソングをひとりでに口ずさんでいた。

 老&聾 聾&朗……。
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脳とホルモン [医学・医療・雑感小文]

 脳とホルモン

 更年期障害の最も多い症状は、ほてり、のぼせ、発汗だと教科書には書いてある。

 だが、慶応大学病院の更年期外来の受診者519人に聞いたアンケートの結果は、首や肩がこる(82%)、眼が疲れる(75%)、もの忘れが多い(74%)が三大症状で、顔がほてるは8位、汗をかくは9位、のぼせるは18位だった。

 一方、夜眠っても目をさましやすい、くよくよし、憂うつになることが多い、興奮しやすく、イライラすることが多い、いつも不安感があるといった精神症状の訴えが、10位前後にずらりと並んでいる。

 こうした更年期のうつ症状は、うつ病とは違う。

 したがって抗うつ剤を用いてもあまり効果がない。

 ホルモン剤がよく効くそうだ。

 女性ホルモンのエストロゲンは、脳神経に対して保護作用、修復を促進する作用、栄養的な作用をする。
 
だからホルモン補充療法(HRT)は、もの忘れにも効くし、アルツハイマー病の予防にもなるといわれる。

「閉経後、早い時期からのHRTは、記憶機能の維持に一定の効果がある」と専門家は指摘している。
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更年期症状 [医学・医療・雑感小文]

 更年期症状


 更年期障害の症状はざっと200もあるという。

「更年期に出てきたそれまで経験しなかった症状は、みな更年期障害を疑っていいと思います」と、東館紀子・東京女子医大成人医学センター講師(婦人科)。

 人によってさまざまな症状が現れるが、最も多い訴えは、ほてり、のぼせ、発汗─と婦人科学の教科書には記されてある。

 気温とは関係なく、寒いところでも、昼でも夜でも突然、顔がほてったり、汗をバーッとかいたりする。

 寝具に寝汗の跡が人型についたり、人前で汗がポタポタしたたり落ちたり、顔が急に真っ赤になって、どうしたの? と不思議がられたりする。

 これらは自律神経が乱れて、一時的に血管が拡張する血管運動神経障害だ。

 逆に血液の循環が悪くなって手足が冷えることも多い。

 冷えとのぼせ、あべこべの症状が同じ人に起こるのは、その根に自律神経の乱れがあるからだ。

 大本の原因は、女性ホルモンの急激な減少。ホルモンの中枢と自律神経の中枢は、どちらも間脳の視床下部にあり、交差しているためだという。
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