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高血圧と脳卒中 [医学・医療・雑感小文]

高血圧と脳卒中

脳卒中ネズミが開発されるまでは、高血圧によって起こる脳卒中は、血管が破れる脳出血のほうだけで、血管が詰まる脳梗塞(こうそく)は関係ないとされていた。

しかし、それは間違いで、高血圧によって壊死(えし)を起こした動脈に小さなコブができ、それが破れると脳出血になるが、そこに血栓ができると脳梗塞になることを、脳卒中ネズミは教えてくれた。

一般的に高血圧がゆっくり起こると脳梗塞に、急激に起こると脳出血になりやすいし、高血圧の治療が中途半端だと、脳出血は減るが、脳梗塞はあまり減らない。

治療の仕方が非常に大切だということもわかった。

また、脳卒中ネズミに多量の食塩を与えると、急速に重症の高血圧になり、つづいて脳卒中を起こすが、その経過をよく調べてみたら、高血圧が起こる前に、一時期、尿中のナトリウムの排せつが減少して、ナトリウムが体内にたまる傾向が認められた。

したがって、高血圧症になる前に体内にナトリウムがたまる傾向を見つけることができれば、正常血圧の時に脳卒中を予知することができる。
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ネズミの恩恵 [医学・医療・雑感小文]

 ネズミの恩恵

家森幸男・京大名誉教授は、高血圧ネズミにストレスを加えて、脳卒中を起こしたネズミの子孫同士を掛け合わせるという選択交配を何代も重ねて、100%脳卒中を発症する遺伝因子をもつネズミの一族=脳卒中ラットを作り上げた。

たいへんな根気と労力と時間のかかる仕事だった。

今はそんな手間暇は要らない。

特定の遺伝子を遺伝的に壊し(ノックアウト)、働けないようにすることで多種多様なネズミ(ノックアウトマウス)を作ることができる。

ともあれ、そうしたネズミたちの恩恵を、現代の医学生物学がどれほどこうむっているか。

脳卒中ラットでいえば、普通に飼育しているうちに必ず脳卒中を発症するから、脳卒中の原因の究明や予防の研究が思いのままできる。

しかもネズミの寿命はせいぜい2年で、その9カ月から13カ月の間に脳卒中を起こしてくれる。

人間では何十年もかかることが、短い観察期間で研究できる。

むろんネズミに限らない。

多くの実験動物のそうした命の集積が、人類を救うヒントを与えてくれている。
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日本発ネズミ [医学・医療・雑感小文]

 日本発ネズミ

普通に飼っているうちにだんだん高血圧になってくる高血圧ネズミ(高血圧自然発症ラット)と、成長するにつれ高血圧になり、やがて脳卒中を起こす脳卒中ネズミ(脳卒中易発症ラット)は、高血圧と脳卒中の研究に画期的な進歩をもたらした。

どちらも日本生まれのネズミたちだ。

高血圧ネズミは、1960年代の初め、京都大学・病理学教室の岡本耕造教授らによって開発された。

高食塩食で血圧が上がるネズミ同士を何代にもわたって交配させ、遺伝的に高血圧を発症するネズミの系統を作った。

が、このネズミは脳卒中にはならなかった。

ネズミの体を縛りつけて動けなくしたり、電灯の点滅や騒音にさらすなど強いストレスを与えた。

すると血圧は即座に上がるのだが、脳卒中まではいかない。

「ネズミは頭を使わんから脳卒中にはならんのかなぁ、とあきらめかけたころ、1匹が脳出血を起こしてくれました」

と、脳卒中ラットの開発者として世界的に知られる家森幸男・京都大学名誉教授。

1973年のことで、当時は岡本教室の助手だった。
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ネズミおばさん [医学・医療・雑感小文]

 ネズミおばさん 

多田富雄著『免疫の意味論』からの受け売りだが、現代の医学生物学の研究に必要不可欠な実験用純系マウスの大半の祖先は、もとをたどれば、米国マサチューセッツ州南東部の小さな町、グランピーの「ミス・ラスロップのネズミ小屋」に行き着く。

ミス・ラスロップは、この町の小学校の教師だったが、悪性貧血を患い30代で退職、生計を立てるためハツカネズミ(マウス)の飼育を始めた。

初めはペットや教材用に販売していたが、そのうち実験動物として使いたいという医学者からの注文がくるようになり、このほうの需要がずっと多くなった。

丹念に交配を繰り返し、きちんと記録を残していた、ミス・ラスロップのマウスは、実験動物の適性を満たしていたからだ。

1918年、彼女が50歳で死去したあと、残された1万1千匹のマウスは、メーン州にあるジャクソン研究所が引き取り、やがて全世界に実験用マウスとして供給されるようになった。

「グランピーのネズミおばさん」が果たした現代医学への貢献は計り知れぬほど大きい。
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毒とハサミ [医学・医療・雑感小文]

 毒とハサミ

乳児ボツリヌス症は、ハチミツなどに含まれるボツリヌス菌の芽胞が、腸内で発芽・増殖して毒素を出すために発症する。

しかし1歳以上だったら腸内細菌が芽胞の発芽・増殖をさまたげるから大丈夫だ。

また、ハチミツに含まれている芽胞のままなら毒素は産生しない。

食中毒の心配はない。

ボツリヌス中毒で問題になるのは、ハチミツ以外の食物だ。

「ボツリヌス」という語が、ラテン語の「腸詰め」に由来するように、欧米ではソーセージが感染源になることが多かった。

日本ではカラシレンコンによるボツリヌス中毒が大騒動になったことがある。

しかし、いまボツリヌス菌と聞いて、まず思い浮かぶのは、眼瞼(がんけん)けいれんなどの治療法とプチ整形だろう。

目の周りがピクピクし、ひどくなると両目が開かなくなる眼瞼けいれんや、顔半分の筋肉がけいれんする片側(へんそく)顔面けいれんには、ボツリヌス治療がよく効く。

ボツリヌス毒素が神経をマヒさせ、筋肉が動かなくなるはたらきを利用した治療法だ。

しわ取りのプチ整形に盛んに用いられている「ボトックス」、あれもボツリヌス毒素だ。毒とハサミは使いようということか。
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ハチミツの毒 [医学・医療・雑感小文]

ボツリヌス症

何年か前の話だが…。

宮城県内の0歳の男児が、自宅の井戸水から感染したとみられる「乳児ボツリヌス症」を発症した。

厚労省は、乳児に与えるミルクや水は、水道水か水質基準を満たす井戸水などを使うよう都道府県に通知した。

同症は、1歳未満の乳児の腸内に入り込んだボツリヌス菌の芽胞が、発芽して増殖、毒素を出すことで発症する。

全身の筋力低下、呼吸困難、呼吸停止などの症状があらわれ、ひどい場合には死亡する。1歳以上だったら腸内細菌が芽胞の発芽・増殖をさまたげるから大丈夫だ。

乳児ボツリヌス症の感染源としてよく知られているのはハチミツ。

過去20年間で報告された乳児ボツリヌス症は20例。

確認できた12例の感染源はすべてハチミツだった。

以前、厚生省研究班が行った調査では、輸入、国産ハチミツ512検体のうち27検体(5・3%)から芽胞が見つかった。

井戸水が感染源とされた報告は世界でもないそうだ。

酸素を嫌う嫌気性細菌のボツリヌス菌は、土の中や、海、湖沼、川などの泥の中にすんでいる。

井戸水にいても不思議はない。
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一茶と啄木 [医学・医療・雑感小文]

 耳鳴りの分類


夜の霜しんしん耳は蝉(せみ)の声


遠方に電話の鈴(りん)の鳴るごとく

今日も耳鳴る

かなしき日かな


 小林一茶59歳の歳末の一句と、石川啄木の処女歌集『一握の砂』中の一首だ。

一茶は蝉、啄木はベル。

こうした耳鳴りの音質や大きさによって、耳鳴りの原因を知ることができるか?

「耳鳴りを引き起こす可能性のある部位は、外耳から脳までと広範囲で、高血圧、低血圧、糖尿病など全身性の病気やストレスなどで起こることもある。

耳鳴りの特徴だけで耳鳴りの原因を特定することは難しい」

というのが、坂田英治・埼玉医大名誉教授の答え。

おおまかな推定だが─、

1 高音性(キーン、ピーン、カチカチなど、金属音や電子音に似ている高い音の耳鳴り)=内耳や聴神経など感音系の障害が疑われる。

2 低音性(ブーン、ゴー、ボーなど低い音の耳鳴り)=中耳炎など伝音系の障害が原因になることが多い。

3 拍動性(脈と一緒にキンキン、ザーザーと聞こえる耳鳴り)=脳血管障害の一部症状が疑われる─という。
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陰徳の症状 [雑感小文]

陰徳の症状

劇作家の木下順二氏は、戦後ずっと耳鳴りに悩まされていたそうだ。

夜となく昼となく頭の中で鳴り続ける執拗(しつよう)な「神経音」を聴きながら「夕鶴」を書き、「子午線の祀(まつ)り」を書き、「オットーと呼ばれる日本人」を書いたのだろう。

「耳鳴り(を持つ者)は陰徳の士なり」とかいう。

本人以外には聞こえない、目にも見えない症状にじっと耐え続けるさまは、人に知られぬようひそかにする善行に似ているというのだろうか。

木下さんは、ご母堂を亡くしたときのあいさつ状に、「花一輪といえども御辞退申し上げます」と記し、自身の死に際しては、葬儀無用、墓無用、母の遺灰と共に海へ流してくれるよう遺言した。

耳鳴りはそのように自分を律するのに厳しかった作家にふさわしい?症状のようにも思われる。

耳鳴りは、難聴の多くに伴って起こるが、耳鳴りだけ単独に起こることもある。

長く続く耳鳴りは、現在進行中の病気の症状か、病気が治った後の〝傷あと〟として耳鳴りが固定したかのどちらかだ。

その見きわめが肝心だという。
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睡眠不足死 [医学・医療・雑感小文]

 睡眠不足死

それまでは普通に生活していた人が、突然倒れて、24時間以内に亡くなることを「突然死」という。

英語ではサドンデス。

通夜や葬儀の席には、「あんなに元気だったのに…」と驚き嘆く声が飛びかう。

あらゆる突然死に共通するのが、この普段の元気。

逆にいえば元気だからこそ突然死するので、病気療養中の人が、卒然と死去しても突然死とはいわない。

突然死の直接の死因は、くも膜下出血や心筋梗塞などだが、その背景には多くの場合、ストレスと過労がある。

労働医学では、1日の労働時間が10時間を超えると職業性疲労を増し、翌日に持ち越される慢性的蓄積疲労が強められるとされる。

そして1日ごとに心身のエントロピー(不可逆的な劣化の現象)が増大する。

その究極に過労死がある。

過労死を防ぐ方法は、ただ一つ。

疲れたなぁ…と思ったら休むこと。

ぐっすりたっぷり眠ろう。

「1日5時間以上眠ること。それ以下の睡眠時間だと心臓や脳の疾患発生率が高まる」と専門家は警告する。

過労死とはつまるところ「睡眠不足死」にほかならないと思う。
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寒中ご用心! [医学・医療・雑感小文]

 寒中ご用心!

日増しに寒さがつのっている。

寒冷ストレスをもろに受けて、血圧が上がる。

脳卒中や心臓発作が怖い。

寒さが血圧にどれくらい響くかは「寒冷昇圧テスト」でわかる。

洗面器の4℃の水の中に片手を突っ込むと、1、2分間で血圧が20~50㍉も上がる。

血管が収縮するからだ。

最高血圧180㍉の人が50㍉も上がると、230㍉!

急激な血圧上昇に耐え切れず、脳の血管が破れる脳出血を招きかねない。

血圧が高い人は、寒暖差によくよく気をつけよう。

暖かい部屋や車の中から外へ出るときは、こまめにマフラー、コート、マスクなどをつけよう。

反対に暖かい所に入ったら、必ずコートを脱いで温度調節をはかるといった、細心の配慮を─。

雪の日や寒風の吹く日は、てきめんに血圧が上がる。

高齢者、壮年でも血圧の高い人は、不急不要の外出は避けよう。

寒風に吹きさらされながらのジョギングなど、言うまでもない。

風呂にもご用心。

冷えた体でいきなり熱い湯に飛び込まないこと。血圧がぶれる。

ぬるめの湯にゆっくり入ろう。
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