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ふうちゃんの詩 [雑感小文]

 ふうちゃんの詩

まいとし元日の朝、読むことにしている詩がある。

昭和27(1952)年、大阪府下の小学校の2年生だった男の子の詩だ

ご一緒に読んでいただこう。


 お正月     二ねん 野上房雄

 お正月には

 むこうのおみせのまえへ

 キャラメルのからばこ

 ひろいに行く

 香里の町へ

 えいがのかんばん見に行く

 うらの山へうさぎの

 わなかけに行く

 たこもないけど たこはいらん

 こまもないけど こまはいらん

 ようかんもないけど ようかんはいらん

 大きなうさぎが、かかるし

 キャラメルのくじびきがあたるし

 くらま天ぐの絵がかけるようになるし

 てんらんかいに、一とうとれるし

 ぼく

 うれしいことばっかしや

 ほんまに

 よい正月がきよる。

 ぼくは、らいねんがすきや。

             (理論社刊『つづり方兄妹』所収)。


「らいねんがすきや」と書いた「ふうちゃん」は、その「らいねん」の春に病死した。

 学校からの帰り道の野っぱらで雨にふられ、傘がなくてびしょぬれにぬれてしまい、肺炎になったのだ。

 この国にこんな時代があったことを、こんな少年がいたことを─いまもいるかもしれないことを─忘れてはならないと思う。
タグ:野上房雄
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