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睡眠の役割 [医学・医療・雑感小文]

 眠り下手の対処法

「健康は何から出てくるかというと、三つある。よう食べて、よう働いて、よう寝る。この三つやの」

 ―とは、30年以上も昔、百寿の名僧、京都・清水寺の大西良慶和上に聴いた言葉だ。

まさに至言、よい睡眠は健康の元だ。

睡眠には四つの役割があると、専門家は解説する。

「一つ目は、体や脳を休めて疲れを回復させること。

二つ目は、睡眠中に分泌される成長ホルモンによって、ケガなどを修復し成長を促すこと。

三つ目は、記憶を固定すること(脳にたまった情報を睡眠中に整理し固定する)。

四つ目は、夢を見ることでストレスを発散させることです」(伊藤洋・東京慈恵医大教授)。

世間には不眠症の人、その一歩手前の眠り下手の人(プア・スリーパー)がとても多い。

それへの賢明な対処法は、規則正しい生活と、適度な運動など日中の活動をきちんとやることをはじめとする「睡眠衛生」を実行し、その上で必要なら睡眠薬を上手に用いることである。

「睡眠薬に怖いイメージがあったのは、昔の話。今の睡眠薬は安全です」

睡眠実態調査 [医学・医療・雑感小文]

熟眠障害が最も多い

久留米大・精神神経科の内村直尚教授らは、04年から06年まで3回にわたって、6000人近い勤労者(35歳~59歳)に対する睡眠実態調査を行った。

3年間の調査でわかったことは、

1 第一線ビジネスマンの25%以上が不眠を経験していた。

2 睡眠の質、不眠と夜間頻尿の間にも相関がみられた。

3 不眠への対応は「何もしない」や「寝酒」が多くみられ、医師に相談した人は少ない。

4 生活習慣病をもつ不眠患者に、睡眠を改善する指導を、医師が積極的に行うことで生活習慣病自体も改善される例が多くみられた。

また、3回目の調査で新たにわかったことは、

1 不眠のタイプでは熟眠障害が最も多い。

2 交代勤務者は日勤の勤労者に比べ、より不眠、抑うつに悩む人が多い。

3 平日と休日の起床時間の差が大きい人ほど、不眠、抑うつに悩む人が多い。

4 「集中力を要する重要な場面での深刻な眠気」を、睡眠時間5時間以下の人の2分の1が自覚していた。

その割合は6時間台では3分の1、7時間台では5分の1一となった。

眠れ、万国の労働者!

熟眠障害  [医学・医療・雑感小文]

最も多い不眠のタイプ

 春は眠い。

唐代の詩人も、明治の文豪も、そう言っている。

当方などは年中、眠くてしようがない。

ま、それはさておき、春に眠くなるのは、寒暖の差が激しいために自律神経のバランスがくずれやすく、ホルモンの働きにも変化が起こるかららしい。

これが疲労感を増し、眠い、だるいに結びつき、「時には自分の魂の居所さへ忘れて正体なくなる」(夏目漱石『草枕』)。

しかし、まぁ、眠いときにすぐ眠れて、熟睡できるのは健康な証拠だ。

生活習慣病をもつ人や抑うつ患者には不眠を訴える人がとても多い。

不眠には、

寝つきがよくない入眠障害、

途中で目がさめる中途覚醒(かくせい)、

朝早く目がさめる早朝覚醒、

眠りが浅く寸断される熟眠障害とあるが、

久留米大・精神神経科の内村直尚教授らが行った「働く世代の睡眠実態調査」によれば、

生活習慣病や抑うつのある群、ない群とも、最も多い不眠のタイプは熟眠障害だった。

これには「超短期作用型」の催眠薬がよく効く。

医師に相談しよう。

薬代の自己負担分も、市販の催眠薬を求めるよりも格段に安い。

いい禁煙 [医学・医療・雑感小文]

 COPDはたばこ病

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の最大の原因は、たばこだ。

予防も治療もまず禁煙が絶対条件だ。

しかし、これが極めて難しい。

たばこをやめたいのにやめられないのは、「喫煙病という全身疾患であり、喫煙者は、積極的な禁煙治療を必要とする患者」

 ―というのは、日本循環器学会、日本肺がん学会、日本呼吸器学会など禁煙関連九学会の定義。

厚生労働省は「ニコチン依存症管理料」を設け、禁煙治療は保険適用となった。

ところが、製薬会社ノバルティスファーマの調査では、禁煙挑戦者の7割が、禁煙外来や禁煙補助薬の保険適用を知らなかった。

そして8割が、禁煙できないのは「意志が弱いから」であり、それが「病気」であることを認知してないことが分かった。 この調査結果を踏まえ、同社は、「ND(ニコチン依存症)は、喫煙をやめられない病気であり、医師による治療が必要」と、ウエブサイトで啓発活動を展開している(「いい禁煙」http://www.e-kinen.jp/)。

禁煙を成功させたかったら「意志の力」よりも「医師の力」に頼ろう。

禁煙クリニックへ─。

スパイロ検査 [医学・医療・雑感小文]

 COPDの早期発見

世界の四大死因の一つとされるCOPD(慢性閉そく性肺疾患)は重症化すると治療が非常に難しい。

早期診断・治療がなによりも大切だ。

40歳以上で、風邪をひいてもいないのにしつこくせきやたんが出る。

階段や坂道を上がるとき息切れがするようだったら、COPDの初期症状かもしれない。

COPDは初期の段階で発見し、適切な治療を受ければ、病気の進行を食い止め、呼吸困難と全身状態の悪化を軽くすることができる。

だが、せきやたんはありふれた症状なので見過ごされがちで、その段階で呼吸器科を受診する人は少ない。

また、この病気はこれまであまり知られていなかったため、せきやたんは風邪やぜんそく、息切れは心臓病と間違えられることもあったようだ。

COPDの早期発見に役立つのが、スパイロメーターという器械による肺機能検査(スパイロ検査)。

人間ドックの項目に取り入れられ、一般の内科医院でも受けられるところがふえている。

口に筒をくわえて、息を大きく吸い込み、吐き出すだけの簡単な検査だ。



呼吸の幸せ! [医学・医療・雑感小文]

 COPDは肺の生活習慣病

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、長年の喫煙、あるいは汚れた空気を吸い続ける環境によって起こる。

肺の生活習慣病だ。

推定患者数530万人以上、40歳以上の有病率8・5%。

糖尿病並みの国民病になりつつある。

だが、多くの人がその症状(たんが絡むせき、軽い息切れ)を、風邪やたばこの吸い過ぎと思い、COPDの初期症状だとは気づいていない。

重症になってからでは、治療による症状の改善は非常に難しい。

COPDとはどんな病気なのか、分かりやすく詳しく、そして面白く描いたメディ・シネマ(医療映画)が『ため息は辛い時、呼吸は幸せな時─今なら未来を変えられる』だ。

50代半ばの有能なビジネスマン(西岡徳馬)が、COPDに心身を侵され、仕事への意欲を失い、家庭の日常にもかげりが生じる。

しかし、適切な治療によって病状は快方へ向かい、家族の幸せと再生が図られる。
タグ:COPD

あくびの効用 [医学・医療・雑感小文]

 
あくびは無意識の深呼吸

呼吸によって、空気の中の酸素を体に取り込み、体内で生じた炭酸ガスを吐き出す作業を「ガス交換」という。

この生体の換気作業を行っているのが、肺の中の肺胞だ。

肺胞は、健康な成人では両肺で約3億個もあるが、普通に呼吸しているときは、肺が完全にはふくらまないため、3億個の肺胞の約20%は十分に開かず、つぶれたままになっている。

その分、取り込まれる酸素の量は少なくなるわけで、そんな状態が長く続いていると、動脈の血液の中の酸素の割合(酸素分圧という)が下がってくる。

20代前半くらいまでの健康な青年の酸素分圧はほぼ100トルだが、年をとるにつれて次第に下がってきて、60代では70トルを切るようになる(トルは圧力の単位)。

酸素分圧の低い血液が全身を回っていると、当然、脳細胞をはじめ、あらゆる内臓の細胞は100%の活動ができない。

頭が疲れたときに出るあくびには、つぶれた肺胞を開き、酸素の取り込みを増やす働きがある。

脳の酸欠を救う、無意識の深呼吸なのだ。

ああ~、おっと失礼しました。

稀勢の里! [雑感小文]

根性と努力

いやあ、すごかったなあ! 稀勢の里! 

千秋楽の本割と優勝決定戦。

いまもまだまぶたの裏に鮮やかに残る壮絶、感動の二番を再生しながら眠るのが、あの日以来の入眠儀式になっている。
  

大相撲の世界はまことに厳しい。

毎年の新弟子約100人のうち十両以上の関取になれるのは10人足らずだろう。

まして異郷の地からやって来て、大関、横綱に昇りつめるのは並大抵の力量ではない。

琴奨菊との一番、巨体に似合わぬこすい立合いですっかり人気を落としたが、照ノ富士もなかなかの力士であるのは間違いない。

 *

昔、元出羽錦の田子ノ浦親方(故人)にこんな話を聞いたことがある。

「昭和30年ごろ、私に付いていた若い者のなかで一番素質があって相撲も強く、これはもしかしたら大関になるかもしれないと思ったのは、途中で止めました。

一方、佐々田は十両までいけば上出来だろうと言われていたのですが、やはり根性と努力がちがったのですね」

 ─佐々田とは、第50代横綱・佐田の山だ。

「しごかれて、しごかれて、根性ができる。力がつく」と田子ノ浦さんは話した。

春温を病む [医学・医療・雑感小文]

 春の物思いは「季節性うつ症」

花が咲き、鳥が鳴き、風が光る。

暖かくてのどかでさわやかな春は、身も心も明るくのびやかになる。気力が満ちる。

半面、なにか憂うつで気分が沈み込むこともある。

そんな心の移ろいを「春愁」とか「春温を病む」というそうだ。

「春愁 春の物思いであり、憂えであり、哀愁である」と俳句歳時記にある。

現代医学的には「季節性うつ症」か。

冬の「寒邪」が体に残ったまま春になり、陽気に当たるので病を起こすとか、春の南風が原因といわれる。

「南風」を「ようず」と呼び、頭痛や眠気を誘う風としている地方もあるそうだ。

春に心身のバランスが崩れやすいのは、気温の上昇とともに悩内の神経伝達物質が減るためだという説がある。

萩原朔太郎が「春の感情」という詩で、

「うれはしい かなしい さまざまのいりこみたる空の感情」

  とうたったのは、そんな気分か。

新入生や新社会人は無我夢中の約1カ月が過ぎるころ、心身の変調を感じる。

いわゆる「五月病」がしのび寄る。

睡眠と休息を十分とり、リフレッシュして春愁を乗り切ろう。

脂肪肝と血糖値 [医学・医療・雑感小文]

NASH(ナッシュ=非アルコール性脂肪性肝炎)

脂肪肝は、アルコール以外の原因─肥満、糖尿病、薬剤(副腎皮質ホルモン剤、抗生物質)や毒物の中毒など─でも起こる。

肥満による脂肪肝が起こると、肝臓のブドウ糖処理がとどこおり、血液中のブドウ糖の量が増える。

食後だけの高血糖がみられるようになる。

それでもまだ過食をやめないと、脂肪肝は一段とひどくなる。

肝臓は夜中にも必要以上のブドウ糖を放出、朝の血糖値も高くなる。そして、脂肪肝がさらに進展して炎症を起こすと、NASH(ナッシュ=非アルコール性脂肪性肝炎)になる。

ナッシュは肝硬変から肝がんを引き起こすというので、近年大きな注目を集めている。

しかし、ラットに食後高血糖改善薬を投与していると、ナッシュにはならないという実験報告がある。

ブドウ糖と脂肪が同時に肝臓に流れ込んでいると、脂肪肝やナッシュになりやすいが、せめてブドウ糖だけでもゆっくり流れ込むようにすれば、炎症が起こりにくい─ということらしい。

ともあれ、肥満はいかん。

糖尿病ばかりか肝臓がんの原因にもなる。

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