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風ほろしは「愛のウイルス」か [医学・医療・雑感小文]

 ほろしの語釈

 風疿(かざほろし)発熱のあとに生じる皮膚の発疹。

 風邪によるものとされた─と「広辞苑」にはあるが、これ、一言足りないのではないかなあ?

 というのは、子どものころ口の角にブツブツができたとき、「ほろしだね。三日もすれば治るよ」と言った祖母の言葉が耳の底に残っているからだ。

 つまり私見では、風疿イコール口唇ヘルペスなのだが、手元の辞書のどれを見ても、広辞苑の説明と似たり寄ったりだ。

 となれば、困ったときのネット頼み。「風ほろし 口唇ヘルペス」と打ち込んでみたら、どさっと出てきた。

「体は元気なのに『ほろせ(口唇ヘルペス)』のため化粧もままならず…」と、「おひとりさまの食卓」さんは歎き、

「Cold Feverを解説文に含む用語…」という項目には「fever blister かざほろし(名詞)は、cold soreや口唇ヘルペスの同義語(feverは熱、blisterは水ぶくれ)」とある。

 このほうが適切で詳しい説明だ。

 これは研究社版「新英和中辞典」からの転載のようだが、国語辞典の語釈が、英和辞典に劣るというのは、どうしたことか。

 愛のウイルス

 唇や口の角に小さな水ぶくれや赤い発疹ができる、口唇ヘルペスの原因は、単純ヘルペスウイルスだ。

 単純ヘルペスは感染力が強く、直接的接触のほか、ウイルスがついたタオルやグラスなどを介しても感染する。

 だから親子、夫婦など親密な間柄で感染しやすいので「愛のウイルス」と呼ばれる。

 このウイルスの特徴は初感染で免疫を獲得し、抗体ができても、再感染や再発を繰り返すことだ。

 大人に見られる口唇ヘルペスはほとんど再発型。

 風邪、疲労、紫外線、胃腸障害、ストレス、老化、抗がん薬・副腎皮質ホルモン薬など、免疫力の低下が誘因となる。

 単純ヘルペスには1型と2型がある。

 1型は唇、2型は性器を中心とした下半身に主に発症する。

 1型に対する抗体を持っていると、2型も発症しにくく、発症しても軽症だ。

 昔はみんな乳幼児期に1型に感染し抗体を持っていたが、衛生状態の向上と核家族化の影響で、今は20~30代でも半数の人は抗体を持ってなく、症状が重くなりがちだという。

 抗ウイルス薬(注射、錠剤、軟こう)がよく効く。

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せきもいろいろ、見分け方 [医学・医療・雑感小文]

 せき鑑別法

 風邪をひくとせきが出る。

 風邪をひいてるわけでもないのに、せきがよく出る。

 結核かもしれない。

 COPD(慢性閉塞性肺疾患)かもしれない。

 小さなかわいいせき、重たい湿ったせき、いろんなせきがある。

 診察するときは「まず患者さんの話を聞きます」と、赤柴恒人・日本大学教授(呼吸器内科)。

 せきはいつから出始めたか? 

 3週間以内は急性、3~8週間は遷延(せんえん=長引く)性、8週間以上は慢性。

 急性のせきはほとんど上気道炎(鼻風邪、のど風邪)などの感染症だ。

 遷延・慢性のうち、乾性のせきは感染後咳嗽(がいそう=風邪の後のせき)、気管支ぜんそく、胃食道逆流症、百日ぜき、降圧薬のACE阻害剤によるせき、肺炎クラミジアなど。

 たんが絡む湿性のせきはCOPD(慢性気管支炎・肺気腫)、気管支拡張症、肺がん、心不全など。

 せきの出やすい時間帯は? 

 起床後~午前中なら胃食道逆流症、気管支拡張症など。

 就寝後~夜明け前なら気管支ぜんそく、心不全、肺結核など。

 一日中なら後鼻漏(鼻汁が絶えず喉へ流れ込む)、感染後咳嗽。

 風邪のせきと、その他の病気のせきはどう違うか?

 気管支ぜんそくのせきは、ゼイゼイ・ヒューヒューの喘鳴(ぜんめい)で、息切れ、呼吸困難を伴う。

 胃食道逆流症のせきは、胸焼けや胸部の痛みを感じ、横になったときとか前かがみしたとき、のどや口に胃液が逆流する。

 COPD(慢性閉塞性肺疾患)のせきは、労作時のゼイゼイ・ヒューヒューの喘鳴と、息切れ、呼吸困難を伴い、喫煙者に多くみられる。

 後鼻漏(こうびろう)は、鼻水が喉に流れてくる。夜間にせき症状が強くなる。

 せきは体力を消耗し、夜の眠りを妨げる。

 吐いてしまうこともある。

 OTC(市販)薬のせき止めを上手に使うとよい。

 そのさいの注意事項。

 ①せきの症状をよく見きわめ、薬局・薬店で薬剤師などに説明、相談する。

 ②OTC薬で対処できるようなら数回使用し、改善しなかったら病院へ行く。

 ③睡眠時のせき対策には就寝前の服用を─。

 ぜんそくには、コデイン、ジヒドロコデインを含むせき止めは絶対禁忌

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ネギと風邪 [医学・医療・雑感小文]

 ひき始めの風邪には「ねぎ湯」や「ねぎ湿布」がよく効く。

 ネギを細かく刻み、小さじ一杯のみそを加え、熱湯を注ぎ、フーフーしながら飲む。

 喉が痛いときは、焼いた長ネギを手ぬぐいでくるみ首に巻く。

 発熱・発赤・腫れ・痛みなどの炎症を鎮める、ネギの精油成分の効能によるといわれている。

 富山大学大学院の林利光教授(生薬学)らは、ネギのインフルエンザ予防効果を実験的に確かめた。

 マウスを二つのグループに分けて、A型インフルエンザウイルスに感染させた。

 A群には、感染の1週間前から1週間後までの2週間、ネギの熱水抽出物を口から与え、B群には与えなかった。

 感染から3日後、肺や気道のウイルスの量と、体を防御する抗体の産生量を測定したところ、A群のウイルス量はB群の3分の1に抑えられて、抗体は逆に3倍に増えた。

「感染から3日後に優位な差が出たのは、ネギ抽出物を1週間前から与えたため抵抗力ができていたからで、ネギを食べると風邪にかかりにくく、かかっても軽く済む効果があるといえる」と林教授。

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OL三重苦は循環症候群 [医学・医療・雑感小文]

 OL三重苦

 パソコン作業が1日8時間を超える若い女性の7割が冷え、肩こり、眼精疲労に悩んでいる。

 先年、参天製薬が首都圏と関西在住の20~30代女性400人に「現在悩んでいる体の症状とその対策」を聞いたインターネット調査の結果だ。

 冷え78%、肩こり77%、眼精疲労72%、肌荒れ71%と7割を超え、むくみ58%、腰痛56%、ドライアイ50%も半数以上にのぼった。

 パソコン使用時間が増えるほど症状の数も重積し、1日1時間未満の女性は平均5・5個だが、1日8時間以上の女性では平均7・1個に達した。

 なかでも肩こり86%、眼精疲労86%、冷え84%が突出し、三大症状であることが分かった。

 三症状の併発率を作業時間別に比較すると、1日8時間以上では、三症状すべてに悩む女性が68%を占めた。

 肩こりと眼精疲労には目の周りや首筋から肩にかけての血液循環が、冷えには手足などの末梢の血液循環が深く関与している。

 三症状は、パソコン長時間作業女性の「循環三重苦」といえるようだ。

 それにしても、なぜ男性の調査はしなかったのだろう?
 
 循環症候群

 パソコン長時間作業女性の7割が肩こり、眼精疲労、冷えの〝三重苦〟に悩んでいる。

 これらに共通して伴うのは局所的な血液循環の低下だ。

 これを「循環症候群」と呼ぼう、と御茶の水・井上眼科クリニックの井上賢治院長は話した。

「女性は自律神経やホルモンのバランスの乱れなどから、冷えをよく訴えますが、西洋医学には冷えの概念がありません。

 冷えの原因は複合的なので、疾患や症状の原因を特定し、対応する西洋医学の方法論になじまないためでしょう。

 冷えを循環症候群として捉えると、解決のヒントが得られるのではないでしょうか。

 パソコンの画面を固まった姿勢で長時間見続ければ、眼、肩だけでなく、足先などの末梢の血液循環が低下するのは当然です。

 眼精疲労や肩こりへの対処法が、ひいては冷えの解消法にもつながると考えられます。

 眼精疲労の対策は、まず眼鏡やコンタクトレンズの度が適正かどうかのチェックを眼科でしてください。

 作業中はときどきパソコンから目を離して目を休ませ、目薬をさすことが効果的です」

 眼精疲労と肩こりへの対処法が、冷えの解消にも通じるという眼科医、井上賢治先生の話のつづき─。

「パソコンの画面を見続けている状態はまばたきが減り、ドライアイを招きやすいのですが、目薬は涙を補充し、ドライアイを防ぎ、必要なビタミンなどを眼に補ってくれるのに加えて、目薬をさす行為自体が眼の休養になります。

ところが、調査では眼精疲労がありながら、目薬をさす習慣をもつ人が半数以下にとどまっているのは残念なことです。

 目薬をさすときには首や肩を動かしますので、肩こりの予防にもなります。

 一方、1日8時間以上パソコンに向かう女性の3人に1人が、肩こり対策として仕事の合間にストレッチを行っていますが、こうした軽めのエクササイズやマッサージ器などを用いることは、肩こりのみならず、眼の休養にもなり、眼精疲労の緩和にもつながります。

 このように肩こり、眼精疲労、冷えを別々の症状ではなく、循環症候群として一体的に捉え、アイケアやエクササイズなど複合的に対処するのが、賢明な方法といえます」

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体内リズム服薬法 [医学・医療・雑感小文]

 なによりもリズムがだいじ!
 
 ─といっても、カラオケのことではありません。

 1日24時間の体内リズム「サーカディアン・リズム」の話です。

(サーカはラテン語で「約」、ディアンは「一日」です)。

 現在わかっているサーカディアン・リズムは、体温、脈拍、血圧、いろいろなホルモンの放出時間、血液や尿に含まれる化学成分の濃度......など300種類以上。

 それらすべてのリズムが互いに調和し合うことで、健康な体の状態が保たれているのです。

 たとえば、夜になると熱が上がったり、夜中に胃が痛くなったりするのも体内リズムのしわざです。

 ですから、薬も体内リズムに合わせて、その薬が少量で一番よく効く時間に飲むのがよいと、体内リズム医学の専門家は言います。

 上手な薬の飲み方を聞いてみました。

 鎮痛薬=夜間は多めに、午後は少なめに飲むのが賢い飲み方です。

 痛覚は夜11時ごろが最も敏感で、午後3時ごろに最も低下するからです。

 コレステロールの薬=夕食後の服用が合理的。

 コレステロールは夜、合成されるからです。

 心臓病の薬=狭心症や心筋梗塞は午前7時から11時ごろに多く発症します。

 これを予防するため真夜中から明け方に飲むと効果の上がる薬があります。

 真夜中に飲むのは無理ですから朝起きたらすぐに─。

 降圧薬=早朝に血圧が上がるタイプの人は、就寝前に長時間持続型の降圧薬を飲み、夜中に上がるタイプの人は夕方に飲むのがベターです。

 ただし、夜間の血圧は正常な人が夕方以降に降圧薬を飲むと、脳梗塞を誘発する恐れがあります。

 ご自分の高血圧のタイプと降圧薬の種類を医師によく確かめて服用してください。

 ステロイド薬(副腎皮質ホルモン薬)=副腎の機能は、朝の目覚めと同時に高まり、午前中にピークに達します。

 薬もそれに合わせて朝、集中的に飲み、午後からの服用は控えめにしたほうがいいでしょう。

 抗アレルギー薬=アレルギー反応を引き起こす物質(ヒスタミンなど)に対する体の感受性が最高になるのは夜の11時から12時ごろ。

 かゆみや腫れが強く出ます。抗アレルギー薬は夜はやや多めに─。

 育毛剤=毛髪も皮膚も、夜半零時から明け方の4時くらいまでに古い細胞が脱落して、新しいものに再生します。

 だから育毛剤は夜寝る前に振りかけるのが効果的。

 女性がお休み前に化粧水などで肌の手入れをするのも、皮膚の細胞分裂が盛んになる時間に向けて栄養を補給しておくという意味で、理にかなっています。

 また、血流は昼間が最も盛んなので育毛剤の成分もよく吸収されますが、反対に朝は血管が収縮しています。

 朝ジャブジャブかけるのはムダということになるようです。

 こうした体内リズムの活用法は、当然、サプリメントにも通じます。

 たとえば梅肉黒酢、これはなんといっても朝一番にコップ一杯の水で─。

 血液をサラサラにし、便通を促し、頭をスッキリさせる、体に優しいベスト・サプリメントです。

 じつは私、18年前の秋、前立腺にガンが見つかって、ずっとホルモン療法を受けているのですが、ホルモン療法の副作用として起こりやすいといわれる心筋梗塞と全く無縁でいられる理由の一つは、毎日欠かさず朝晩飲んでいる梅肉黒酢のおかげと信じています。

 余白がなくなりました。

 急いで言います。コエンザイムQ10製剤は食後すぐに─、

 体への吸収効率がいいからです。

 コラーゲン製剤は夜寝る前に─、

 皮膚や骨の新陳代謝は寝ているときに最も盛んに行われるからです。
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正月男の先輩とぽっくり病 [医学・医療・雑感小文]

 正月男の先輩

 毎年、正月の二日、三日に必ず思い出す人がいる。

 医学記者の先輩、伊藤正治さんだ。

 伊藤さんは、戦後間もなくのころ、「箱根駅伝」の慶応大チームの一員だった。

 先年の「三田評論」に回想記を寄せていたが、都心の10区を走るアンカー伊藤選手の写真の背景には、焼け跡に建つバラックが映っていた。

…そんなわけで、テレビで箱根駅伝を観戦中つい「伊藤さんも見てるだろうな」とつぶやき、「去年も同じことを言った」と笑われる。

 当家の「正月男」だ。

 共同通信記者時代の伊藤さんは「ぽっくり病」のスクープで名を馳せ、地方新聞各紙の長期連載「痛みのカルテ」は、中公文庫のロングセラーとなっている。

 伊藤さんの年賀状の印刷文─当方も卒寿を過ぎて2年目の新春を迎えました。

 本年も「生涯現役・生涯一記者」として牛歩で参るつもりです─

 の余白には、「難聴の人は長命だそうです。ますます元気にお過ごしを─」とあり、

 激励ありがたく拝読したが、さて、92ヒク85ハ? 先輩にはとても追い付けそうもないないなあ。

 ぽっくり病

 共同通信記者時代の伊藤正治さんが、「ぽっくり病」をスクープしたのは、1956年だった。

 だから1955年発行の広辞苑第一版に間に合うわけはないが、

 69年の第二版には採録され、

「ぽっくり病 一見、健康で栄養状態良好な若い男性に、主として睡眠中に起こる急性死。過労・飲

酒・心臓障害・体質などが挙げられているが、真の原因は不明」とある。

 この解説が、全く同文のまま2008年発行の第六版まで引き継がれている。

 十数年前、ぽっくり病の発症に、食物中の脂肪の分解産物(燃えかす)が関与していることを、九州大と東海大が、共同研究で明らかにした。

 ぽっくり病の疑いのある約300人の解剖所見から、心臓の冠動脈が収縮したため心筋に血液が流れなくなったことが原因と推測。

 血中の「レムナントリポたんぱく(RLP)」という物質がかかわっていることを、ブタを使った動物実験で確かめた。

「血中の中性脂肪値の高い人は、RLPが多い傾向がある」という。

 気をつけよう。


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塩リンゴ [医学・医療・雑感小文]

「リンゴはダイエットにも絶好の一品」

 と「ニンジン・リンゴジュース」や「半断食」など独特の医療で知られる石原結實医師が、「朝だけ塩リンゴダイエット」(講談社=1000円)で勧めている。

「いかにして体内の余分な水分を、汗や尿で排せつして水太りを解消するか」

「どのようにして体温を上げ(代謝をよくして)、同じもの、同じ量を食べてもやせやすい体質にするか」

 という2点に重点を置き、リンゴと自然塩による簡単ダイエットを伝授した一冊だ。

 朝食はリンゴに自然塩(体を温める)をふったものだけとし、昼食はソバなど消化がよく軽いものにする。

 それさえ守れば、夕食はアルコールも含めて好きなものを食べてよい。

 リンゴには食物繊維が豊富な上、利尿作用のあるカリウムも含まれるため尿量が増え、腸内の温度が上がり、腸の働きが活発になって便通がよくなり水太りが解消される。

 朝は塩リンゴでなくニンジン・リンゴジュースか、黒砂糖かハチミツ、ショウガを入れた紅茶1~2杯でもOKだそう。

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リンゴはすごい [医学・医療・雑感小文]


 妻の郷里が信州安曇野なので、冬になるとリンゴの大箱が二つも三つも到来する。

 これを毎日1個(両名で半分こ)食し、5月ごろ全部の箱が空いたらスーパーで求めて、1年中欠かさず食べている。

 そんなリンゴ党だから10数年前、田澤賢次・富山医科薬科大教授(当時。現名誉教授)の取材でリンゴの食物繊維(リンゴペクチン)の効用を知ったときは、うれしかった。

 消化器外科専門の教授は、大腸がん予防の研究からリンゴペクチンのすぐれた効果を発見した。

 それまでは食物繊維の大腸がん予防は、穀物やいも類、ゴボウなどのセルロースとかリグニンといった不溶性(水に溶けないタイプ)の食物繊維が有効だろうというのが通説だった。

 大腸がんを誘発するAOM(アゾキシメタン)を与えたネズミに、水溶性のリンゴペクチンを飲ませたところ、大腸がんの発生を強力に抑制したばかりか、肝臓への転移を抑える効果も高いことがわかった。

 さらに活性酸素の消去力がきわだって強いことも実証できたという話だった。

 リンゴの大腸がん抑制効果は、日本発の朗報だった。

 近年、米マサチューセッツ大の研究チームは、リンゴが脳内の神経伝達物質アセチルコリンを増やすことを動物実験で確かめた。

 アルツハイマー型認知症の人の特徴の一つは、アセチルコリンの激減だ。

 65歳以上の男女1836人を7~8年間追跡した疫学研究では、コップ1杯のリンゴジュースを主とした果物・野菜ジュースを週3回以上飲む人は、週1回未満の人に比べて、アルツハイマー病の発症リスクが73%も低下したという。

「まだ厳密な科学的証明まではされていませんが、私たち研究者はリンゴの摂取が(認知症の)予防に役立つと考えています」と、農業・食品産業技術総合研究機構研究員の田中敬一さんは話している(毎日新聞09年11月24日)。

 また、リンゴなどに含まれるポリフェノールのケルセチンには、09年ノーベル医学生理学賞で話題を集めたテロメア(染色体の末端にあり、細胞のがん化や老化にかかわる部分)が短くなるのを抑える効果もあるようだという。

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日本発ネズミの貢献 [医学・医療・雑感小文]

 日本発ネズミ

 普通に飼っているうちにだんだん高血圧になってくる高血圧ネズミ(高血圧自然発症ラット)と、成長するにつれ高血圧になり、やがて脳卒中を起こす脳卒中ネズミ(脳卒中易発症ラット)は、高血圧と脳卒中の研究に画期的な進歩をもたらした。

 どちらも日本生まれのネズミたちだ。

 高血圧ネズミは、1960年代の初め、京都大学・病理学教室の岡本耕造教授らによって開発された。

 高食塩食で血圧が上がるネズミ同士を何代にもわたって交配させ、遺伝的に高血圧を発症するネズミの系統を作った。

 が、このネズミは脳卒中にはならなかった。

 ネズミの体を縛りつけて動けなくしたり、電灯の点滅や騒音にさらすなど強いストレスを与えた。

 すると血圧は即座に上がるのだが、脳卒中まではいかない。

 「ネズミは頭を使わんから脳卒中にはならんのかなぁ、とあきらめかけたころ、1匹が脳出血を起こしてくれました」と、脳卒中ラットの開発者として世界的に知られる家森幸男・京都大学名誉教授。

 1973年のことで、当時は岡本教室の助手だった。

 ネズミの恩恵

 家森幸男・京大名誉教授は、高血圧ネズミにストレスを加えて、脳卒中を起こしたネズミの子孫同士を掛け合わせるという選択交配を何代も重ねて、100%脳卒中を発症する遺伝因子をもつネズミの一族=脳卒中ラットを作り上げた。

 たいへんな根気と労力と時間のかかる仕事だった。

 今はそんな手間暇は要らない。

 特定の遺伝子を遺伝的に壊し(ノックアウト)、働けないようにすることで多種多様なネズミ(ノックアウトマウス)を作ることができる。

 ともあれ、そうしたネズミたちの恩恵を、現代の医学生物学がどれほどこうむっているか。

 脳卒中ラットでいえば、普通に飼育しているうちに必ず脳卒中を発症するから、脳卒中の原因の究明や予防の研究が思いのままできる。

 しかもネズミの寿命はせいぜい2年で、その9カ月から13カ月の間に脳卒中を起こしてくれる。

 人間では何十年もかかることが、短い観察期間で研究できる。

 むろんネズミに限らない。多くの実験動物のそうした命の集積が、人類を救うヒントを与えてくれている。
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ネズミおばさん [雑感小文]

 多田富雄著『免疫の意味論』からの受け売りだが、現代の医学生物学の研究に必要不可欠な実験用純系マウスの大半の祖先は、もとをたどれば米国マサチューセッツ州南東部の小さな町、グランピーの「ミス・ラスロップのネズミ小屋」に行き着く。

 ミス・ラスロップは、この町の小学校の教師だったが、悪性貧血を患い三十代で退職、生計を立てるためハツカネズミ(マウス)の飼育を始めた。

 初めはペットや教材用に販売していたが、そのうち実験動物として使いたいという医学者からの注文がくるようになり、このほうの需要がずっと多くなった。

 丹念に交配を繰り返し、きちんと記録を残していた、ミス・ラスロップのマウスは、実験動物の適性を満たしていたからだ。

 1918年、彼女が50歳で死去したあと、残された1万1千匹のマウスは、メーン州にあるジャクソン研究所が引き取り、やがて全世界に実験用マウスとして供給されるようになった。

「グランピーのネズミおばさん」が果たした現代医学への貢献は計り知れぬほど大きい。
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