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多剤服用を防ぐ10カ条 [医学・医療・雑感小文]

 高齢患者の多剤服用は以前から問題になっている。

 要因としては、

「高齢者は数多くの慢性疾患を抱えている」

「複数の診療科が別々に処方する」

「薬の副作用に対してまた処方する」

「患者が薬を欲しがる」

 などが言われている。日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」(2015年)をまとめ、その中で抗精神病薬や睡眠薬、抗血栓薬、糖尿病薬など19分類の「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」を作った。

 このリストの中に睡眠薬のベンゾジアゼピン系薬物(抗不安薬にも使用)がある。

 長期にわたってベンゾジアゼピン系薬物を服用すると認知機能の低下、転倒や骨折の増加、昼間の倦怠(けんたい)感などを起こすリスクがあるからだ。

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会も17年3月、ベンゾジアゼピン系薬物を「長期の服用で依存を生じやすい」と使用に注意を促した。

「睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン」(14年)によると、国内では約500万人が不眠症の治療薬を服用している。

 日本の不眠症治療の問題点として、「睡眠薬の長期服用」を挙げる内村直尚・久留米大副学長(神経精神医学)は「ベンゾジアゼピン系薬物に限っても、3割近くの人が2~4剤を処方されるケースがあるのが実態だ」と話し、多剤服用の傾向はいまだに改善されていないと指摘する。

 ベンゾジアゼピン系薬物は長期間服用すると薬への依存が高まり、急にやめると震えや興奮などの離脱症状が起きることがあるという。「類似薬品の重複処方がないかを確かめてほしい」と強調する。

 ただ、患者自身が「薬が多すぎる」と疑っていても、そのことを医師に言いにくい面があるのも事実だ。

 医薬品のリスクコミュニケーション問題に詳しい山本美智子・昭和薬科大医薬品情報部門教授は、

「医師と患者はパートナーシップに基づいて治療するという共通認識をもち、正直に気持ちを伝えることが大事だ」と多剤服用を防ぐ10カ条をアドバイスする。

 多剤服用を防ぐ10カ条

 (1)患者と医師は治療の協働パートナーだという意識をもつ

 (2)使っている薬は必ず医師に伝える

 (3)いつでも気軽に相談できるかかりつけ薬剤師をもつ

 (4)薬が多いと思ったら、正直に医師に伝える勇気をもつ

 (5)ある薬をやめるか変更した場合、どんな不都合が生じるかを医師や薬剤師に聞く

 (6)自己判断で薬の使用を中断しない(勝手にやめると効き目が悪いと判断され、処方薬が増える場合がある)

 (7)「薬の使用は最小限に」との意識をもち、どうしても必要な薬なのか、お薬手帳を活用しチェックする

 (8)患者自身も安易に薬を欲しがらない

 (9)高齢者は若いころと同じだと思わず、薬の数が増えると副作用が出やすいことを自覚する

(10)医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページにある「患者向医薬品ガイド」や「くすりのしおり」を活用する
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