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晩年の幸福 [雑感小文]

 昔―私などが田舎の子供だった時代―は、老人はだれからも敬愛されていた。

 いわば一年中が敬老の日だった。

 爺さん、婆さん、長生きしやれ、米も安なろ、世もよかろ。

 こんな里謡が耳の底に残っている。

 貧しい村ではあったが、日々の暮らしのなかに人の心の通い合いがあったと思う。

 今は、米は求めやすくなったが、世はあまりよくなったとは思えない。

 老人の一員として現状を観じるに、9月のある1日以外の364日は「軽老の日」ではないかと思われる。

 今は一般に年をとることは「老化」で、能力の減退とされる。

 いわゆるエイジズム(高齢者差別)もそんな考えから生まれるのだろう。

 セクハラの類語のようなシルハラというのもあるらしい。

 シルバー・ハラスメントの略だ。

 昔は、老人の知恵が、若い者の生活に役立つことが多かった。

 おじいさんは故事来歴の生き字引だったし、おばあちゃんの体験は家事や子育てに活用された。
 老人は先導者だった。

 だから尊敬された。

 昔の人のほうが晩年は幸福だったか?
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