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ネギとセレン [医学・医療・雑感小文]

 この冬はネギをよく食べた(食べさせられた)。

 風邪をひかなかったのはそのおかげだ、と強く主張する者(女性1名)もある。

 そうかもしれない。

 以下のような記事を新聞で読んだ。

 インフルエンザに感染させたネズミの実験で、ネギのエキスを与えた群は、与えなかった群に比べ症状が軽く、早く治った、とか。

 動物園では、寒さに弱いチンパンジーにネギを食べさせた、とか。

 ネギやタマネギに比較的多く含まれるセレンは、近年注目のミネラルだ。

 生体になくてはならない炭素や酸素や水素など26の「生体必須元素」のうち、きわめて微量ながら不可欠の元素(微量必須元素)が15ある。

 セレンもその一つだ。

 化学的性質は硫黄に似ていて、欠乏するとうっ血性心筋症になりやすく、乳がんや肺がんなどによる死亡率も高まる。

 精液中のセレン濃度が低いと精子の数も少なく、不妊に関係しているかもしれないという。

 また、ビタミンEのような抗酸化作用もあるらしい。

 過酸化物ができないようにするのがEで、減らすのがセレンだ、と聞いた。

 セレン今昔談

 昔、セレンは有害物質とされた。

 土壌中にセレンを多く含む地方があり、そこに生えたセレン含量の高い草を食べると、家畜のヒズメが落ちる中毒症状が起こる。

 この家畜の風土病は、マルコポールの「東方見聞録」にも記されてあるほど古くから知られていた。

 だがその原因は、土地の水がアルカリ性であるためと誤認され、「アルカリ病」と呼ばれた。

 1930年に真因が明らかになり、以来、セレンは動物に対しては常に毒性を示すものとされてきた。

 50年代後半になって、鶏、羊、牛、豚などにみられるある種の病気(白筋病、食餌性肝障害その他)が、少量のセレンを与えると、予防や治療ができることがわかった。

 そうした病気は、土壌中のセレンが乏しいために生じるセレン欠乏症で、ニュージーランドやスカンジナビア諸国に多いそうだ。

「昨日の敵は今日の友」ではないが、かつては有毒元素とみなされたセレンが、栄養学上必要な微量元素であると認められたわけだ。

 しかし、その生理作用には不明な点が少なくなかった。

 近年の研究で、セレンの生理作用がかなり解明された。

 一つは、赤血球の中のグルタチオン過酸化酵素の構成分としてセレンが含まれていて、セレン欠乏症の動物の赤血球は、この酵素の活性が低いことが分かった。

 セレン欠乏症は、セレンを与えると治るし、ビタミンEの投与によっても防いだり治したりすることができる。

 二つを併用すると効果がさらに大きくなることから、ビタミンEとセレンには共通の性質─抗酸化作用があると考えられる。

 体の中で脂肪が酸化された過酸化脂質が増えると、赤血球が壊されて貧血が起こる。

 肝臓や心臓の機能が低下することもある。

 セレンを含むグルタチオン過酸化酵素は、細胞内に生じた過酸化脂質を取り除く働きをする。

 過酸化脂質からつくられる老化物質リポフスチンの生成を抑える作用もあるといわれる。

 セレンは、肉や魚、貝、トマト、ネギ、タマネギ、ニンニク、キノコなどに比較的多く含まれる。

 偏食せず、普通に食べていれば、セレンに限らず、ビタミンもミネラルも欠乏することはない。
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