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脳梗塞の薬の意外な効果 [医療小文]

アルツハイマー薬応用でリハビリ効果アップ

 昨日、心房細動が認知症のリスクに─という記事をご紹介した。

 そのあと、認知症の藥が脳卒中後のリハビリ効果を高める可能性がある、と横浜市立大などの研究グループが6日付の米科学誌「サイエンス」に発表したという記事を毎日新聞で読んだ。

 この薬は脳卒中で損傷した部分に効き、リハビリと併用すると脳の情報伝達をつかさどる「受容体」の働きを増やす効果がある。

 グループは脳を損傷させたマウスと、同じく脳を損傷させたカニクイザルでは、効果を確かめた。
 今秋以降に約40人規模の患者に治験を始めるという。

 話は少しさかのぼるが、2015年8月、国立循環器病研究センター(大阪)の猪原匡史(まさふみ)・脳神経内科医長は、脳梗塞再発防止薬のシロスタゾールが認知症の進行予防にも有効、と報告している。

 論文はアメリカの科学誌にも掲載された。

 淡路島の洲本伊月病院でアルツハイマー型認知症の進行抑制にドネペジル塩酸塩(アリセプト)を服用している患者のなかで、シロスタゾールを併用している人と、のんでいない人のミニメンタルステート検査(MMSE)を比較したところ、シロスタゾール併用組の認知機能低下が抑えられていることがわかったという。

 特に記憶の再生や自分が置かれている状況の把握能力(見当識)の低下にブロックがかかった。

 併用患者69例、アリセプトのみの患者87例で調査した結果である。

「この調査はあくまでカルテの記録を基にした後付け的な解析です。

 今回の治験では、アリセプトとの併用ではなくシロスタゾール単体を使う。
前向きの解析ができると期待しています」と、猪原医師。

 研究は、アルツハイマー病のモデルマウスでシロスタゾールが脳に蓄積する老廃物の排泄を促進する作用があることまでを、すでにつきとめている。

 MRI画像でわかった脳の微小出血が認知症と大きな関係があることは以前から知られていた。

 アミロイドβの増加によって血管に亀裂が起き、出血して認知症が発症するという見方だ。

 これがシロスタゾールによって回避できるのではないか、というのが猪原医師らの考え。

 シロスタゾールは脳梗塞再発防止の既存薬で副作用についても周知されている。

 認知症になる前の軽度認知障害(MCI)の段階で歯止めをかけることが急務。

 猪原医師はこんなふうに話している。

「シロスタゾールの服用で頭痛などを起こす人もいますが、投薬を止めると治ります。

 安全性も確かめられていますし、使いやすいと思います」

「高血圧と脳卒中の関係と一緒だと思います。

 高血圧の患者さんに血圧降下薬を処方しないといつかは脳卒中になってしまいます。

 製薬会社は近い将来、MCIは疾患として認められると判断、シロスタゾールが処方薬として活用されると予測していると思います」

「治験前の予測は控えなければなりませんが、これまでの調査からシロスタゾールは認知症の中でもレビー小体型に最も効果的で、次にアルツハイマー型、脳血管性認知症はその次というような報告もあります」
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