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医療機関、サプリメント活用 [健康短信]

医療機関でサプリメント活用を  病気や不調の改善を効率化
 
 第18回日本抗加齢医学会(5月25~27日)で、田中消化器科クリニック(静岡市)の田中孝院長が、医療機関でのサプリメント活用の意義について報告した。

 食生活の変化やストレスの増大、高齢化の進展などに伴い、慢性的な不調を訴える人が増えている。

 その改善に、サプリメントが奏効するケースは確かにあるという。

 こうしたことから医療機関には、患者に不足している栄養素を分析し、より的確なオーダーメイドサプリメント指導を行うことが求められていると主張した。

 日本人の栄養状態は良いとは言えない

 田中院長はまず、

「日本人の栄養状態は必ずしも良いとは言えない」と指摘した。

 厚生労働省の2016年国民健康・栄養調査では、特に若い世代でビタミンやミネラルの不足が目立った。

 20~29歳の女性では、カルシウムは基準の60.9%、鉄は61.9%、ビタミンCは65.0%しか摂取できていなかった。

 その背景には、若い世代が生鮮食品を十分に取っていないという事情がある。

 総務省の家計調査によると、「生鮮食品への家計支出」は1992年から低下し始め、2000年ごろに「外食+調理食品への家計支出」に逆転されて以降、両者の差は拡大を続けている。

 すなわち、食事を自宅でつくらない人が増えたのである。

 生鮮食品の代わりに微量栄養素が不足した加工食品や、ミネラルの吸収を阻害する食品添加物を含むコンビニ食を多く取るようになったために、ビタミンやミネラル摂取量が低下していると考えられる。

 田中院長は、

「こうした問題を解決するためには、本来は生鮮食品を自分で調理してバランスの良い食生活を目指すべきだが、それは現代では容易ではない。

 次善の策として、栄養剤やサプリメントを活用すべき」と述べた。 

 例えば、電子伝達系に関わるミネラルの一つでもある鉄は、欠乏すると貧血の他、食欲不振や神経過敏、出血しやすくなるなど、さまざまな症状を引き起こす。

 ヘモグロビン値が基準範囲内であっても、貯蔵鉄(フェリチン)が不足していれば不調を来す。

 こうした場合に一般的に用いられるのは、保険が適用される無機鉄である。

 しかし、吸収率の面で無機鉄はヘム鉄に劣っており、ヘム鉄をサプリメントで補うのは良い方法だという。

 もちろん、鉄欠乏の原因を探り、医薬品の投与、運動や食生活改善の指導を行った上で、サプリメントを活用することが重要となる。

 栄養療法の中に正しくサプリメントを位置付ける

 医師の間では、医療機関でのサプリメント販売に批判的な意見がある。

 この問題について田中院長は、2014年に厚生労働省が、医療機関によるサプリメント販売は、患者に利益があれば問題ないという通達を発出したことを指摘。

 これにより医療機関でサプリメントの使用を推奨する環境が整ったことを受け、田中消化器クリニックでは年間700万円ほどのサプリメントを販売していることを紹介した。

 その上で同院長は、

「医師が正しい知識を持ってサプリメントを患者に提供することが重要である。

 そのためクリニックではスタッフとともに栄養療法の講習を実施しており、患者がスタッフに質問すれば的確な答えが得られることを目指している。

 こうした取り組みの結果、サプリメントを一度購入した患者は、リピートすることが普通」と述べた。

 抗加齢医学会は現在、このような栄養療法のアドバイザーあるいはコンサルタントを養成する制度を整えようとしているという。

医学新聞「Medical Tribune」による。
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汗をかきにくい、要注意、熱中症 [健康短信]

暑いのに汗をかきにくい人は熱中症に要注意

【Q】真夏でもあまり汗をかかず、猛暑でも、脇や胸のくぼみにねっとりとした汗が出る状態です。さらさらの汗が出るような体質改善は可能でしょうか。(川崎市、女性、63歳)

【A】熱中症のリスクがあるので半身浴、適度な運動を心がけましょう

 汗は血液を原料に汗腺で作られて分泌され、皮膚の表面から熱を奪って体温を調節する働きをしています。

 汗をかきにくいと体温が上昇し、熱中症を起こすリスクが高まります。

 運動不足の人や高齢になると汗腺が萎縮して、汗をかきにくくなります。

 半身浴や適度な運動を心がけて汗をかく習慣をつくると、さらっとしたいい汗をかけるようになるでしょう。

 汗をかきやすい環境でも発汗のない「無汗症」の可能性も

 一方、運動や入浴など汗をかきやすい環境でも発汗がなかったり、少なかったりする状態は、無汗症と呼ばれます。

 無汗症には、汗腺ができない形成不全や末梢(まっしょう)神経の異常で汗をかけないといった先天的な病気と、特発性後天性全身性無汗症(AIGA)のような後天的な場合があります。

 AIGAはあらゆる年代で発症しますが、10~30代の若い男性に多く、激しい運動をしていた人が目立ちます。

 原因はわかっていませんが、汗腺の神経伝達物質の受容体の働きが低下するためと考えられます。

 診断基準では、発汗の検査などをして汗をかきにくい部分が全身の25%以上とされていますが、夏に外を歩くと汗がかけず気分が悪くなる、微熱が出る、動悸(どうき)がするなどの症状で生活に支障があれば、治療を検討します。

 まずは熱中症を避けるために、運動の制限▽適切な冷房使用▽体を冷却するクールベストの着用や水の携帯--などの生活指導をします。

 重症の場合には、ステロイド薬を点滴したり、服用したりする治療法があります。

 回答者 横関博雄教授(東京医科歯科大・皮膚科) 

 「毎日新聞 医療プレミア」<質問者の年齢や回答者の肩書は取材時点のものです>
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人工甘味料と血糖値の関係 [医療小文]

人工甘味料は血糖値に影響しない可能性/米研究

 人工甘味料は砂糖の代替として飲料や菓子などの食品に広く用いられているが、人工甘味料を摂取しても血糖値には影響を及ぼさないことが、29件のランダム化比較試験を対象に行ったメタ解析で示された。

 ただし、研究を行った米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校食品栄養科学部のAlexander Nichol氏は、

「この結果から、血糖値が気になる場合でも人工甘味料の摂取は安全だと言えるが、人工甘味料入りの飲料や食品を好きなだけ食べてよいという意味ではない」と強調している。

 研究の詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」オンライン版に掲載された。

 砂糖の替わりに人工甘味料(非栄養甘味料とも呼ばれる)を用いると、甘みを減らすことなく食品や飲料のカロリーを抑えられることから、人工甘味料は肥満や心臓病、特に糖尿病のリスクを低減させると期待されている。

 米国では、その使用量は急激に増えており、1999~2000年から2009~2012年にかけて子どもでは約3倍に、成人でも約1.5倍に増加した。

 現在では、子どもの4人に1人、成人の5人に2人が人工甘味料を習慣的に摂取しているとの推計もある。

 米国では8種類の人工甘味料が認可されており、これらには今回のRCTで検討対象とされたサッカリンとアスパルテーム、ステビオール配糖体、スクラロースが含まれる。

 また、「無糖(sugar-free)」と表示された食品の一部には、糖アルコールと呼ばれる甘味料(ソルビトール、マンニトール、キシリトール、イソマルトース、水素化デンプン加水分解物)が含まれているという。

 今回の研究で、Nichol氏らは、対象者が人工甘味料を他の食品やカロリーを含む飲料なしで単独で摂取したRCT論文を抽出。

 計741人が参加した29件のRCTを対象にメタ解析を実施し、4種類の人工甘味料(アスパルテーム、サッカリン、ステビオール配糖体、スクラロース)が血糖値に及ぼす影響について調べた。

 対象者のほとんどは健康な人で、2型糖尿病患者は69人、健康状態が不明だった人は150人だった。

 その結果、人工甘味料を摂取しても血糖値にはベースライン時から上昇はみられず、人工甘味料は血糖値には影響しないことが分かった。

 また、4種類の人工甘味料の間で血糖値への影響に差はみられなかった。

 論文共著者の一人で同校食品栄養科学部のMaxwell Holle氏は「過去の研究の多くでは、他の食品と一緒に摂取した場合の人工甘味料の影響のみが検討されていた。

 今回の結果は、人工甘味料を単独で摂取した場合を検討しており、信頼性が高いと言えるだろう」と述べている。

 専門家の1人で米コロンビア大学のMaudene Nelson氏は、「無糖」表示については誤解が多いと指摘する。

「たとえ砂糖が含まれていなくても、食品や飲料そのものには炭水化物や脂質、たんぱく質が含まれており、摂取すれば血糖値に影響する。また、カロリーもあるので体重にも影響を及ぼすことに気を配る必要がある」と話している。

 また、今回の解析には含まれなかった糖アルコールについて、「(糖アルコールを)摂取し過ぎると、腹部膨満感や下痢の原因になることにも注意する必要がある」と同氏は付け加えている。

<「毎日新聞 医療プレミア」による

 
合成甘味料

 合成甘味料は、食品に存在しない甘味成分を人工的に合成したもの(人工甘味料)です。

 サッカリン、アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなど。

 低カロリー甘味料や、カロリーゼロ、糖類ゼロの商品によく使用されています。

 過去には、「チクロ(サイクラミン酸ナトリウム)」が発ガン性が高いとして、食品添加物の指定を取り消しとなり、使用が禁止されました。

 人工甘味料の危険性や副作用

 人工甘味料による体への影響は不明な点が多いですが、近年様々な研究結果が発表されています。

 糖尿病のリスク

 人工甘味料が糖尿病のリスクを高めている可能性があるという論文がイギリスの科学誌「ネイチャー」で発表されました。

 その論文によると、人工甘味料入りの水を与えられたマウスは糖尿病につながり得る耐糖能障害が起きやすくなったそうです。

 カロリーゼロなのに太る?

 カロリーゼロとうたっている食品を取っても、人工甘味料により血糖値が上がってインスリンが分泌され、体内に脂肪を蓄え逆に太ると言われています。

 依存性

 人工甘味料にはコカイン以上の強い依存性があると言われています。

 依存することにより、どんどん食べたくなり買ってしまうということは、メーカーにとっては都合のいいことになりますね。

 下痢の副作用

 キシリトール、ソルビトール、マルチトール、スクラロースなど、人工甘味料が入っている商品に「一度にたくさん食べると、お腹がゆるくなることがあります」と書かれていることがあります。

 なぜ、下痢の副作用がでるかというと、人工甘味料は天然に存在しないので、人間が持つ消化酵素では分解できないからです。

 人工甘味料の種類

 サッカリン

 砂糖の200~500倍の甘さで水に溶けにくく、チューインガムにのみ使用されます。

 1960年代に行われた動物実験で発ガン性があると発表され、一度は使用禁止になりました。

 しかし、サルに対して試験が行われ、発ガン性が見られなかったため、使用禁止は解かれることに。

 現在は、アメリカや中国では大量に使用されていますが、日本では発ガン性の懸念より、使用量が制限されています。

 ナトリウム塩にして水に溶けるようにした「サッカリンナトリウム」は、菓子類、アイスクリーム、清涼飲料水、乳飲料などに使用されています。

食品表示:

甘味料(サッカリン)

甘味料(サッカリンナトリウム)

 発ガン性の危険性があるサッカリンを製造したモンサント社は「遺伝子組み換え作物」の種も製造。

 アスパルテーム

 砂糖の100~200倍の甘さです。

 食品表示では「L-フェニルアラニン化合物」と併記されます。

 この理由は、フェニルアラニン化合物を代謝することができない病気「フェニルケトン尿症」を悪化させるからです。

 使用されている商品は、低カロリー甘味料のパルスイートをはじめ、洋菓子、ヨーグルト、お菓子、飲料水などです。

 安全性については、がん、脳腫瘍や白血病との関連も強く疑われています。

 なぜ、アスパルテームは、これらの危険性が疑われたのに食品添加物の申請が許可されたのか?

アスパルテームについて詳しく知りたい方は下の記事もおすすめです。

 ⇒危険性や害は?アスパルテームが含まれている食品、妊娠中の安全性

 2015年の日本アレルギー学会で、人工甘味料はアレルギー性気道炎症を増悪させるとの発表がされました。

 この発表内容は、喘息があるマウスに人工甘味料「アスパルテーム」を投与すると、アレルギー性気道炎症が発症したというものです。

人工甘味料は用量依存性にマウスアレルギー性気道炎症を増悪させる

【結果】
 ダニアレルゲン感作及び気道内投与により、好酸球を主体とする炎症細胞浸潤と杯細胞過形成を特徴とするアレルギー性気道炎症が発症した。

【結論】
アスパルテーム投与によりアレルギー性気道炎症の増悪が認められた
出典:日本アレルギー学会
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牛乳で暑さに強くなる [健康短信]

運動直後の牛乳で暑さに強くなる
能勢博 / 信州大学教授

梅雨が明けると、いよいよ本格的な夏の到来です。

私が子どもの頃は、ヒマワリが咲いて、青空に入道雲が出て、どこかからセミの鳴き声が聞こえると、もう体がムズムズしたものです。

学校の授業もうわの空で、終業式の日に学校から渡される薄っぺらなワークブックは「勉強はしなくてよい」という免罪符だと思っていたし、夏休みは永遠に続くとさえ感じられました。

でも最近は、ニュースで「熱中症に注意」「水分を取るのを忘れずに」と連発されます。

子どもでさえ、ついつい外に出るのがおっくうになるでしょうし、大人の私たちならなおさらです。

でも大丈夫、朝夕の涼しい時間帯(気温25℃以下)にインターバル速歩をすれば、本格的な夏が来ても「今年の夏は、去年に比べて過ごしやすい」と感じるようになります。

そして夏を恐れるより、子どもの頃のようにむしろ楽しんでやろう、という気持ちになります。そのコツをお教えしましょう。

暑さに強い体とは

私たちの体温は37℃付近に調節されています。

ここでいう体温とは体の中心の温度で、厳密に言えば脳の温度です。

この体温がわずか0.1℃上昇しただけで、私たちは暑いと感じ、皮膚の血流を増やし、皮膚表面から熱を放散させようとします。

あるいは、汗をかいて皮膚表面から蒸発させ、体温が上がり過ぎないように調節します。

すなわち皮膚の血管が広がりやすく血流が増えやすい人、汗をかきやすい人ほど、暑さに強いといえるのです。

運動直後の乳製品摂取がカギ

ではどのようにすれば、皮膚の血管が広がりやすく、汗をかきやすい体になるのでしょうか。

答えは簡単。

30~60分間インターバル速歩をした直後に、糖質や乳たんぱく質を多く含む乳製品を取ればよいのです。

例えば、牛乳ならコップ1~2杯です。牛乳の苦手な人はヨーグルト、チーズなどでも効果があります。

ただ、乳製品は一般に糖分の含有量が少ないので、一緒にクラッカー、蜂蜜、ジャムなどを摂取することをおすすめします。

糖質から合成されるエネルギー源が、運動により減って不足すると、筋肉が分解されてエネルギー源として使われ、筋力が弱くなってしまうからです。

1回の摂取量は糖質30g、乳たんぱく質10gを目安にしてください(病気にかかっている人は主治医に確認してください)。

これを1~2週間続ければ、グッと暑さに強い体になります。

次に、インターバル速歩の後に乳製品を取ると、暑さに強い体になる仕組みを解説しましょう。

それはズバリ、血液量が増えるからです。

通常、運動習慣のない人の血液量は、体重の7%と言われます。

一方、マラソン選手はその倍近くの血液量があります。

血液量が多くなると、多くの血液が心臓に戻ってきますから、心臓は多くの血液を皮膚に流すことができます。

皮膚に多くの血液が流れれば、当然、汗を作る汗腺にも、汗の原料となる水分、電解質が行き渡り、汗をよくかけるのです。

血液量が増えるわけ

ではなぜ、運動をすると血液量が増加し、さらに運動直後の乳製品の摂取がそれを促すのでしょうか。

インターバル速歩のように本人が「ややきつい」と感じる運動の直後には、肝臓でアルブミンというたんぱく質の合成が進みます。

そのタイミングで乳たんぱく質をとると、それはアルブミンの原料となり、ますます合成が促されます。

合成されたアルブミンは血液中に放出されますが、分子量が大きい、つまり分子のサイズが大きくて、血管の壁を越えて外に出ていきにくいのです。

結果、血液の浸透圧が上昇して、血管外から水分を引き込み、血液量が増加します。

ごく簡単に言うと、アルブミンの増加で血管内の血液が「濃い」状態になり、それを適正な薄さに戻すために、血管外から水分が入ってくる、そのため血液の量が増える、という仕組みです。

若年者が5日間運動トレーニングをして、糖質60g、乳たんぱく質20gを摂取した場合、乳製品を取らなかったグループに比べて、血漿(けっしょう)量、血漿アルブミン量が著しく増加しています。

血漿は、赤血球、白血球、血小板を除いた血液中の液体成分のことで、これが増えているということは血管外から水分が引き込まれたということを示します。

暑さに強い人は汗をかく量は少ない?

余談ですが周囲を見渡してみると、汗っかきの人ってちょっと肥えていて、運動もしない……。

暑がりで、真夏になると冷房をガンガンかけるタイプが多いような気がします。

一方、運動習慣のある人は筋肉質、痩せ形。あまり汗をかかないので着ているTシャツも乾燥していて、どちらかというと冷房が嫌いなタイプです。

だから「汗をかきやすくなることは、必ずしも暑さに強い体になることではないのでは」と思われるかもしれません。

しかし、それは誤解です。

暑さに弱い人は、「暑い」と意識するまで体温が上昇しないと、皮膚の血管が拡張しません。

体温の上昇が進んだ分、かく汗も多くなります。

すなわち、「暑い、暑い」と言いながら汗をかいているのです。

そして、肌と下着の間の汗が「蒸れ感」を引き起こし、ますます冷房をつけたくなるのです。

一方、暑さに強い人は、体温が少し上がるだけで皮膚の血管が広がり、大量の血液を体の表面に流すことができます。

すなわち、このような人は「暑い」と意識する前に、熱を放散して体温が下がります。

そしてたとえ汗をかいたとしても、体温が上昇していない分、うっすら皮膚表面をぬらす程度です。

さあ、「インターバル速歩」と「牛乳」で快適な夏を過ごしませんか。

「毎日新聞 医療プレミア」より。
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警告!「F.A.S.T.」と「三つのヘン」 [医療小文]

脳卒中の警告サイン「F.A.S.T.」で確認、直ちに受診を-米国脳卒中協会


 冬場に脳卒中が多発するのはよく知られているが、夏も油断できないと、脳卒中の権威、山口武典・日本脳卒中協会理事長(国立循環器病センター名誉院長)が警告している。
 
 脳内の血管が破れる脳出血と血管が詰まる脳梗塞は、生活習慣病をバックにして起こる兄弟のような関係の病気だが、クモ膜下出血は、生活習慣とは直接の関係はなく、もともと脳の中にあったコブ(脳動脈瘤)が破裂する病気だ。

 昔の日本人の脳卒中といえば、たいてい脳出血(当時は脳溢血といった)だったが、今は脳梗塞が7割を占める。

 夏場の発症が多いのも脳梗塞のほうだ。


 脳卒中には、脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血と、三つの病型がある。


 高齢者は、温度に対する適応能力が下がるが、循環器系にその影響が現れやすい。


 夏の暑さで発汗し、脱水状態が起き、血液が濃縮されると、血管が詰まりやすくなり、脳梗塞を招きやすい。

 また、血液の量も減るため、毛細血管を含む微小血管の領域では局所的な虚血(血液不足)が起こりやすくなる。

 たとえば、炎天下でのゴルフの後にクラブハウスで倒れた例、夏風邪で寝込んでしまったが、単身赴任でほとんど食事がとれず、脱水を生じ発症した例など、夏の脳梗塞は脱水が引き金になったケースが多い。

 夏はなるべく多く水分をとったほうがよい。

 人は寝ているときにも汗をかくが、夏の夜は汗の量が増えるので、翌朝、脳梗塞を起こしやすい。

 夜中にトイレに起きたくないからと、夜は水を飲むのをひかえる人が多いようだが、夏場は「夜寝る前にコップ一杯、朝起きたら一杯飲みなさい」と、山口先生。

 脳卒中の予防は、まず正しい生活習慣だ。

 食べすぎ、(酒の)飲みすぎ、(たばこの)吸いすぎ、働きすぎ(のストレス)、怠けすぎ(の運動不足)の「五すぎ」が重なると、高血圧、糖尿病、脂質異常症(血液中の悪玉コレステロールのLDLと、中性脂肪が異常に多く、善玉のHDLが少ない状態)などを招いて脳卒中になりやすい。

 脳梗塞の発症を防ぐには、前ぶれのTIA(一過性脳虚血発作)を見逃さず、きちんと対処すること。

 TIAとは、脳の血液循環が一時的に悪くなったために起こる、軽い脳梗塞のような症状だ。

 いちばん多い症状は、顔面を含む体の片側の運動障害だ。

 手足に力が入らない、片側の顔面や手足のしびれ感、ろれつが回りにくくなる...といった症状が出るが、たいていは十数分以内、長くても24時間以内に自然に回復する。

 そこで安心してはいけない。

 TIAは脳梗塞が起りかけている警戒警報なのだ。すぐ循環器内科を受診しよう。

 万一、脳梗塞で倒れたら、一刻も早く脳卒中センター機能をもつ病院へ─。

 脳梗塞の治癒率を飛躍的に高めた薬、血栓溶解薬t-PAは、発症後4.5時間以内に投与しなければ効果が期待できない。

 Brain is time(脳は時なり)─アメリカの脳卒中キャンペーンの標語だ。

  米国脳卒中協会(ASA)は毎年5月を「脳卒中月間(American Stroke Month)」と定めており、脳卒中予防のための合い言葉「F.A.S.T」を掲げ、一般の人々を対象に脳卒中の理解を深めるための啓発活動を行っている。

 ASAの理事で米コロンビア大学神経疫学教授のMitchell Elkind氏は、

「特に、米国のような多文化社会においては、脳卒中を減らすことは公衆衛生上、重要な課題である。若年者を中心に、脳卒中の知識を広める啓発活動を積極的に行っていく必要がある」と述べている。

 ASAは、覚えておきたい脳卒中の基礎知識を協会のホームページで紹介している。

 脳卒中は脳の血管が詰まる脳梗塞と血管が破れる脳出血に大きく分けられる。脳卒中の4分の3以上を脳梗塞が占めており、この中には、脳梗塞の前触れとされる一過性脳虚血発作(TIA)も含まれる。

 TIAは脳梗塞の症状が突然、一過性に現れて24時間以内に改善するもので、「ミニ脳卒中」とも呼ばれる。

 また、脳梗塞で脳の血管が詰まると、脳の神経細胞に十分な血液が流れなくなることで多くの障害が引き起こされる。

 脳梗塞を発症し適切な治療を施さないと1時間に1億2,000万個の神経細胞が失われるほか、正常な脳と比べて脳の老化速度が速まるとする研究報告もあるが、治療をより早期に受けることで回復するチャンスは高まるとされている。

 さらに、脳卒中の6割以上は発症時に居合わせた人(バイスタンダー)が発見したとされるが、脳卒中が疑われる危険な症状について十分に知っている米国人は半数に満たないのが実情だ。

 ASAは脳卒中の警告サインを簡単に覚える合い言葉に「F.A.S.T」を掲げ、脳卒中が疑われたら、

「Face:顔の麻痺(顔がゆがんだりする)」
「Arm:腕の麻痺(腕に力が入らず、だらりと下がったままになる)」
「Speech:言葉が出ない、ろれつが回らない」

 の3つの症状の有無と「Time:発症時刻」を確認するよう呼び掛けている。

 ASAはプレスリリースで、「誰もが脳卒中になる可能性があり、その準備をしておく必要がある。

 F.A.S.Tを知っていれば、脳卒中になっても命を守れるかもしれない」と記している。

 なお、顔や手足のしびれ、片方の目が見えなくなる、経験したことのない激しい頭痛、ふらふらして歩けなくなるといった症状もみられるという。

 では、脳卒中が疑われたら、どう対処すべきか? 

 ASAは「脳卒中が疑われたら、直ちに救急車を呼んで専門病院を受診する」ことが先決で、たとえ症状が軽くても、患者本人や家族が車を運転して病院に行くことは危険な上、時間のロスにつながるので止めるように強く勧めている。

 また、脳卒中の生存者は4人に1人で再発がみられるが、その際に患者が受ける身体的ダメージは初発時をはるかに上回るため、治療に成功しても油断せず、再発予防に努める必要がある。

 脳卒中の最も重要なリスク因子は高血圧であり(米国成人の半数近くが高血圧患者と推定されている)、その他にも肥満や糖尿病、脂質異常症、喫煙、脳卒中の家族歴などが挙げられる。

 米国では毎年13万3,000人が脳卒中で亡くなっている。近年は30歳代から40歳代の若年者で脳卒中の発症率には上昇傾向がみられている。

 どうして早く病院へ行った方がいいの?

 脳卒中を疑ったら、躊躇せずに直ちに119番に電話して救急車を呼んで下さい。

 ”脳卒中を起こしたら動かしてはいけない”というのは大きな間違いです。

 一刻も早く専門病院での治療が必要です。

 できる限り早く、正確な診断をして治療を開始するほど、良い治療結果が期待できます。

  意識を失って風呂場やトイレで倒れた場合には、注意深く居間に運んで、呼吸がしやすい楽な姿勢で横にして、救急車の到着を待ってください。

 また、嘔吐があった場合には、吐物で窒息することのないように気をつけてください。

 特に脳梗塞の場合には、発症してから数時間以内に治療を開始すれば、症状を早期に回復させ、後遺症を最小限にくいとめることができる可能性があります。

 また、上記のような症状が出現した後、数分間で全て回復してしまったとしても安心はできません。

 これは” 一過性脳虚血発作”と言って大きな脳梗塞の発作が起こる前触れであり、重要な危険信号です。直ちに専門医を受診してください。

 ACT FAST

 米国脳卒中協会では、脳卒中を疑う人に対して、3つのテストをすることを推奨しています。

 そのうち1つでもあれば脳卒中を疑います。「ACT FAST」というキャンペーンです。

Face:フェイス・顔
• 笑って下さい。
• 片方の顔が下がっていませんか?
• 口角が下がっていませんか?

Arms:アーム・腕
• 両手を挙げてください。
• 片方の手が下がってきませんか?

Speech:スピーチ・言葉
• 簡単な文章を言って下さい。
• ろれつがはっきりと回っていますか?
• 文章を正しく繰り返せますか?
• 言葉が理解できていますか?

Time:タイム・時間
• これらの症状がどれかひとつでもあれば、時間が勝負です。
• 119番に電話するか一刻も早く病院に行って下さい。
• 脳梗塞は1分1秒でも早く治療を開始することが大切です。
• 脳細胞はどんどん死滅していきます。

脳梗塞の症状は3つの「ヘン」:日本脳卒中協会

日本脳卒中協会では、

1. 口がヘン!
2. 言葉がヘン!
3. 手がヘン!

 と三つの「ヘン」な症状が「突然に」現れたら、脳梗塞のサインなので すぐに救急車を呼んで(119番をして)、病院へ行くことを推奨しています。

 もう一度、言います。 

 万一、脳梗塞で倒れたら、一刻も早く脳卒中センター機能をもつ病院へ─。

 脳梗塞の治癒率を飛躍的に高めた薬、血栓溶解薬t-PAは、発症後4.5時間以内に投与しなければ効果が期待できない。
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「定性分析」「定量分析」 [医療小文]

がん恐怖の非科学性

紀州のドンファンなるご仁の不審死をめぐつて、病理検査の専門家がテレビで「定性分析」「定量分析」について解説していた。

聞いていて、ふと思いだした。

友人にいわゆるキャンサー・フォビア(がん恐怖症)みたいな男がいて、焼き鳥、焼き肉、焼き魚などはいっさい口にしない。

動物性たんぱく質に多く含まれるトリプトファン(必須アミノ酸の一種)が焼けると、発がん物質に変わるから─というのだ。

目玉焼きの焦げた部分も絶対、食べない。

パンの耳もむしり取って自分は食わないのだが、近所の小公園に集まるハトに投げ与えている。

ハトはがんになってもいいと思っているのか?

ま、なにを食おうが食うまいが、他人に強制さえしなければ、当人の勝手である。

しかし、それを一般論にされては困る。

焼け焦げを食べても、がんにはならないことがわかっているからだ。

こう言うと、国立がんセンターの「がんを防ぐための12ヶ条」には「焦げた部分はさける」とあるではないか─と反問する人がいるかもしれない。

あなたも古いのです。

2011年発表の「がんを防ぐための新12か条」ではその条項は削除されています。

肉や魚にたくさん含まれているアミノ酸が焼けると、細胞の遺伝子に突然変異を起こす物質(変異原性物質)ができる。

なかでもトリプトファンからできる2種類の物質〈トリプP1、トリプP2〉は、特に強い変異原性=発がん性をもつことが動物実験によって確かめられた。

そのため肉や魚の焼け焦げを食べるとがんになる─ということになった。

だが、その発がん実験は、合成された純粋なトリプP1やP2を、マウスに大量に与えて行ったものである。

実際の肉や魚の焼け焦げのなかに含まれるトリプP1やP2は、1㌘当たり1ナノ㌘というきわめて微量なものでしかない。(1ナノ㌘は10億分の1㌘)。

もし実験で与えたトリプP1やP2と同じ量を、本物の焼け焦げの状態で食べさせるとしたら、体重30㌘のマウスが、真っ黒焦げに焼いたイワシを毎日70㌔㌘、1年以上も食べ続けなければならない計算になるそうだ。

仮にマウスと人間の、発がん物質に対する感受性が同質のものだとして、これを人間に当てはめてみると、体重60㌔の人が毎日140㌧もの真っ黒に焼いたイワシを食べ続けることになる。

つまり、現実の問題として重要なのは、発がん性があるかないかではなく、どれだけの量あるか─なのである。

物質の性質をみることを定性分析、量をみることを定量分析というが、定性分析だけにこだわると、人は往々にして科学的迷信のとりこになる。

焼け焦げ恐怖はその最たる一つといえるだろう。

むろんパンの焼け焦げも問題外だ。

それはあのハトたちのためにもよろこばしいことである。
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急性膵炎の原因 [医学・医療・雑感小文]

急性膵炎の原因は胆石4割、飲酒3割、デパケン、ACE阻害薬も!
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正

 吉本芸人の初代M-1王者の兄弟漫才コンビの兄の中川剛氏や、チュートリアル福田氏、大木ひびき氏も急性膵炎を起こしたと報道がありました。

 チュートリアル福田氏は毎日ビール1.5L、焼酎をロックで3杯飲んでいたとのことです。

 膵炎で体重は60kgから45kgに減ったとのこと。

 急性膵炎は小生、自分で治療することはありませんが、コモンな疾患ですし以前から気になっていた総説でしたのでまとめてみました。

 この数年で急性膵炎の治療はかなり変わったようです。

 1. 毎日ビール1.5L or ワイン1本 or ウイスキー200mL、5年で慢性膵炎

 急性膵炎のうち、30%はアルコールが原因です。

 アルコールによる膵炎は1日4~5 drinksを5年以上飲んでいる人に多いそうです。

 アルコール1drinkとはアルコール換算14gのことで、ビール350mL、ワイン150mL、ウイスキー45mLぐらいです。

 ということは、「膵炎を起こすのが1日4~5 drinksを5年」ですから、毎日ビール1.5L or ワイン750mL or ウイスキー200mLくらいを5年間飲むということでしょうか。

 森鷗外の『独逸日記』を読むと鴎外は、ビールは1.5Lが限界とのことでしたが同僚のドイツ人たちは10~11Lくらい平気で飲むと驚いています。

 ベルリンで鷗外が下宿していた部屋が現在、マリーエン通りに保存されており外壁にでかでかと「鷗外」と漢字で書いてあります。

 鷗外は、この下宿の娘が頻繁に鷗外の部屋にやって来てベッドに座り長々と話し込んでいくのに耐えかねて下宿を替えています。

 鷗外はこの下宿からすぐ近くのCharite病院に通っていたのです。

 ここはコッホやウィルヒョウがいたところです。

 Charite病院は現在もあります。敷地内にベルリン医学史博物館があり法医学の特別展示をやっていました。

 この辺りからベルリンの行政中枢に至るモルトケ橋は、独ソ戦の際の激戦地です。

 鷗外はベルリンに到着した日に日本公使館を訪ねています。

 青木周蔵公使から「学問とは書を読むのみをいふにあらず。欧州人の思想はいかに、その生活はいかに、その礼儀はいかに、これだに善く観ば、洋行の手柄は十分ならむといはれぬ。」とあり青木公使なかなか良いことを言うなあと感心します。

 鷗外はベルリン市内を散策し、「遠く望めばブランデンブルグ門を隔てて緑樹枝をさし交はしたる中より半天に浮かび出でたる凱旋塔(Siegessaeule、ジーゲスゾイレ)の神女の像」とあります。

 金色の女神が頂上に立つジーゲスゾイレ(勝利の円柱)は現在もあり明治10年代に鷗外はこれを目にしていたのだなあと感動します。

 鷗外はライプチヒ大学にも留学しています。

 ライプチヒに、鷗外も訪れたアウエルバッハ酒場(Auerbachs Keller)が今でもあります。

 ここはゲーテの『ファウスト』の中で「ライプチヒなるアウエルバハの穴倉」として出てくる舞台です。

 ファウストはもし「時間よ止まれ。おまえは美しい!」と叫べるほど充実した人生の時間があれば命を取られてもよいと独り言を言います。

 それを聞き付けた悪魔メフィストフェレスがファウストにありとあらゆる楽しみや恋愛を経験させるのです。

 しかしファウストは最終的にかんがい工事の最中、「人の役に立つことをする時が一番充実している」と気付くのです。気が付いた瞬間に「時間よ止まれ。おまえは美しい、Verweile doch du bist so schoen、フェアヴァイレ ドッホ ドゥ ビストゥ ゾー シェーン」と叫びその瞬間にメフィストフェレスに命を奪われるのです。

 130年前、明治19年1月、鷗外は友人の井上とこのアウエルバッハ酒場を訪れ『独逸日記』に「ギョオテのファウストFaustを訳するに漢詩体を以てせば如何かと語りあひ...」と記しました。

 小生、ウエートレス(フロイライン)に「森鷗外の...」と一言言ったら、森鷗外、井上、悪魔メフィストフェレスを描いた壁画の前に連れて行ってくれました。

 ビールと旬のアスパラガスをおいしく頂きました。

 そういえば「ギョエテ(Goethe)とは俺のことかとゲーテ言い」という川柳があります。

 2.たまの過飲で急性膵炎は起こさない

「へー」と思ったのは、たまの過飲では急性膵炎は起こさないというのです。

 酒飲みでは膵炎の生涯リスクは2~5%で女性より男性に多く、たいてい慢性膵炎があって急性増悪(フレア)を起こします。

 以前、知り合いの医師がアルコール性肝硬変の患者さんのアナムネを取っていて「俺の飲酒量の方がよっぽど多い」とぼやいていました。

 ただなぜアルコールが膵炎を起こすのかよく分からないようです。

 機序はアルコールの直接の毒性、免疫関与などではとのことです。

 意外に基本的なことが分かっていないんだなあと思いました。

 3.アル中の診断はCAGE : Cut、Annoy、Guilty、Eye openerの4つ

 アルコールによる膵炎は30%ですが、慢性膵炎があって急性フレアを起こします。

 アルコール中毒かどうかは次のCAGEの質問をするのだそうです。

 要するに、「人に迷惑をかけて罪悪感を感じつつ、分かっちゃいるけどやめられない」と朝酒を飲むのがアル中です。

【アル中は病歴と次のCAGE質問で診断】

 ① アルコールをCutすべきと思ったか?

 ② 「酒を断て」と他人を煩わせた(Annoy)か?

 ③ 飲酒について罪悪感(Guilty)を感じたか?

 ④ 二日酔いをさますために朝酒(Eye opener)を飲むか?

 民謡『会津磐梯山』で小原庄助さんが「朝寝朝酒朝湯が大好きでそれで身上潰した」とありますが、「朝酒(eye opener)って、アル中のキーワード」だったのかあと驚きました。

 Cut、Annoy、Guilty、Eye openerでCAGEです。

4.急性膵炎の原因は胆石4割、アルコール3割、デパケン、ACE阻害薬も

 急性膵炎の原因は胆石が40%、アルコールが30%で、この2つが最も多いそうです。胆石による膵炎の診断は、膵炎に胆石・胆泥の合併、肝酵素異常によります。

 内視鏡エコーで小さな胆囊結石、胆管結石も分かります。

 画像上、総胆管結石(choledocholithiasis)であれば内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は妥当です。

 膵臓の偽性囊胞や被包化壊死(WON;walled-off pancreatic necrosis)では内視鏡下エコーをプラットホームにして最小侵襲手術が行われます。

 ただERCP自体が膵炎の原因になるのだそうで、急性膵炎の5~10%に上るそうです。

 ERCP後に膵炎が起こるのです。

 だから不必要なERCPはやるなとのことです。

 ERCPによる膵炎症状はNSAID坐剤や一時的な膵管stent留置で治まります。

「へー」と思ったのは、心肺バイパスを行った患者で膵虚血を起こし膵炎を起こすことがあるというのです。膵炎の5~10%だそうです。

 その他、膵炎の1%未満ですが外傷もあります。鈍的外傷、穿通外傷で起こるのです。

 特に脊椎を横断する膵臓中部で起こります。

 さらにウイルスや寄生虫による感染も膵炎を起こします(1%未満)。

 ウイルスではCMV、Mumps、EBVがあります。

 寄生虫ではascaris (回虫)、clonorchis (肝吸虫:第一中間宿主マメタニシ、第二中間宿主コイ科、ワカサギなどの生食で胆管炎、岡山、琵琶湖、八郎潟、利根川)があります。

 以前、東京から来た腹痛の観光客に腹部エコーを当てたら肝臓内に石灰化性の隔壁が幾つもありました。

「あのー、もしかして山梨のご出身ですか?」と聞いたところ、「えっ、なんで分かるんですか?」とひどく驚かれました。

 昔、山梨の笛吹川流域は日本住血吸虫の流行地でした。

「確かに13歳の時、日本住血吸虫で入院しました」とのことでした。

 隣にいたナースに「先生すごい!」と尊敬されました。まるで刑事コロンボになった気分でした。えっへん。

 また小生、知らなかったのですが、薬剤による膵炎が5%未満であるというのです。特に多いのアザチオプリン(商品名イムラン、アザニン)、メルカプトプリン水和物(ロイケリン)、ジダノシン(抗HIV薬:ヴァイデックス)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)、ACE阻害薬だというのです。

 なおGLP-1受容体刺激薬(インクレチン製剤:ビクトーザ、バイエッタ)が膵炎を起こすデータはないそうです。

 デパケンやACE阻害薬による膵炎なんて小生今まで考えたこともありませんでした。

 ただ薬剤性膵炎はたいてい軽症だそうです。

 また薬剤による膵炎の診断は難しいとのことです。

 義父がくも膜下出血の術後にデパケンを内服していました。

 脳外科の外来で「デパケンはまだありますか?」と聞かれてついうっかり正直に「あーる、ある。馬にくれるほどある」と答えて義母に「余計なこと言わないで!」と怒られていました。

 そういえばこの間のサラリーマン川柳の2位が

「ちがうだろ!」妻が言うならそうだろう  でした。痛いほどよく分かります。

 ノーメイク、会社入れぬ顔認証  も感動でした。

 以前のサラリーマン川柳

 定年後、犬もいやがる5度目の散歩  も心に残る名作です。

5.中性脂肪>1,000mg/dLで膵炎起こす。1,000以上は下げよ

 また高中性脂肪血症による急性膵炎が2~5%あります。

 診断は空腹時TG 1,000mg/dL超によります。以前、N Engl J Med(2007; 357: 1009-1017)に高中性脂肪血症の総説がありました。

 この高中性脂肪血症総説のポイントは、次の3点です。

 ・中性脂肪1,000~1,500mg/dL以上は膵炎を起こすのでフィブラートなどで治療

 ・家族歴に早期冠動脈疾患(男性55歳前、女性60歳前)あればTG下げよ

 ・数百の中性脂肪血症を治療することの善しあしは不明

 というわけで、これを読んでから小生は、家族歴に早期冠動脈疾患がない限り1,000mg/dL未満のTGは放置しています。

 LDLは必ずしっかり下げなければいけませんが、中性脂肪はよいのです。

6.IgG4関連疾患による自己免疫膵炎がある

 この総説に日本の信州大学発のIgG4関連疾患による自己免疫膵炎も取り上げられていて感動でした。

 自己免疫膵炎の頻度はごく少なく、1%未満ですがType1とType2があります。

 Type1がIgG4関連です。先日CTで上腸間膜動脈周辺の肥厚がありIgG4関連後腹膜線維症疑いで紹介した患者さんがいました。

 自己免疫膵炎Type1は閉塞性黄疸、血清IgG4高値、ステロイドに反応し全身疾患で唾液腺、腎臓が侵されます。

 一方、Type2は若年者で急性膵炎の発症があり、IgG4は低値、ステロイドに反応しますが全身疾患ではなく膵臓のみ侵されます。

 なお以前はOddi括約筋不全や、膵管癒合不全(pancreas divisum)が膵炎を起こすのではといわれていたのですが最近は懐疑的だそうです。

7.肥満、喫煙、糖尿病は膵炎のリスク

 なお病的肥満、喫煙、糖尿病も膵炎の危険因子です。

 2型糖尿病は急性膵炎リスクが2~3倍になります。

 また肥満と糖尿病は慢性膵炎、膵がんの危険因子でもあります。

 肥満と糖尿病は改善しなければいけません。

 先日神戸での日本整形外科学会学術総会で鈴木大地スポーツ庁長官の特別講演がありました。

 長官は毎日朝、13階の長官室まで階段を歩いているのだそうです。

 そういえば聖路加国際病院の故・日野原重明先生も6階の院長室まで歩かれていました。

 昔、日経新聞に鈴木大地選手がエッセーで泳法の極意を数百字の中に実に単純明快に書いていて感動しました。

 まるで宮本武蔵の秘伝書、『五輪書』みたいだと思いました。

 一流選手は、極意中の極意を明快に言語化できる人たちなんだなあと思いました。

 長女が5歳のころ、有名なピアノの先生に教わったところその直後から劇的に奏法が改善したのを見て大変驚きました。

 それまで子供のピアノの先生なんて誰に付いたって同じだと小生思っていたのですが、そのとき初めて、「良き師を選ぶことがいかに重要か」がよく分かりました。

 次男は小学生のころ、下田の水泳教室で国体選手にたまたまマンツーマンで教わりましたが(参加者が他にいなかった)、今でも4種目で実にきれいな泳ぎ方をします。

 日本の教員で体育以外スポーツ経験なしが中学で45.9%、高校で40.9%なのだそうです。

 鈴木長官は、東京都で中学に外部指導員を入れテニスやサッカーの指導をさせるようにし、これにより生徒が都大会上位に入るようになったそうです。

 長官には指導者の重要性が分かっているのでしょう。

 また日本の中学、高校の部活動時間があまりに長過ぎるので、平日は2時間に制限、土曜日は休ませるそうです。

 高校球児は日本全国で16万~17万人いるのですが試合に出られるのは5万人にすぎないそうです。

 試合に出られぬ生徒の中に必ずや他の競技なら花開く生徒がいるはずだというのです。

 そこで「JAPAN RISING STAR PROJECT、みてろよ、自分。」と称して異種競技からの人材発掘を始めたそうです。

 例えば飛び込み競技で日本はオリンピックでメダルを取ったことが一度もありません。

 飛び込み競技では泳力は全く関係がなくほとんど体操競技です。

 そこで体操選手をリクルートして飛び込み競技をさせたところ、上位入賞者が出てきたというのです。

 日本整形外科学会で鈴木長官が「週2回以上運動している方は挙手してください」と言ったところ、8割位の方が手を挙げたのには驚きました。

 整形外科医は意識が高いんだなあと思いました。

 日本の成人の週1回以上のスポーツ実施率は51.5%、60歳代は58.4%、70歳代は71.3%で暇な老人ほど高くなります。

 問題は特に現役世代の20~50歳代でスポーツ実施率が低いことです。

 日本人は毎日平均6,800~6,900歩、歩いているのですがFUN+WALK PROJECTといって、普段より+1,000歩の運動を勧めたいというのです。

 毎日8,000歩歩けばほとんどの生活習慣病が防げるのです。

 アサヒ飲料や高島屋をはじめとして「スポーツエールカンパニー認定」といって通勤時、一駅前で降りて歩くなどの運動を勧めています。

 また今までオリンピックを契機に国民のスポーツが盛んになった国はなんとないのだそうです。

 2019年の世界ラグビー、2020年の東京オリンピックをスポーツの国民的普及の切っかけにしたいと熱い思いを長官は語ってくださいました。

 遺伝子変異、遺伝子polymorphismで急性、慢性膵炎を起こすことがあります。

例えば
・cationic trypsinogen(PRSS1)
・serine protease inhibitor Kazal type1(SPINK1)
・cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)
・chymotrypsin C・Calcium-sensing receptor・claudin-2(claudin-2はアルコールと相乗的に働く)
などです。
 なお遺伝子polymorphismには2種類あります。

① SNP(スニップ):single nucleotide polymorphism 、1カ所の塩基が別の塩基に変わったもの

② microsatellite polymorphism: 2~4個の塩基の配列が数回から数十回繰り返す

8.急性膵炎は腹痛必須、lipase/amylaseが正常上限の3倍以上、画像で膵腫脹

 急性膵炎診断には3徴候があり次の通りです。

 ① 腹痛(常にある。consistent)
 ② lipaseまたはamylaseが正常上限の最低3倍以上
 ③ CT、MRIで急性膵炎の所見:特に診断に有用
 あいまいな腹痛や、amylaseやlipaseの軽度上昇で急性/慢性膵炎と診断するなとのことです。
 
 中等度、重症膵炎は全身/局所合併症から診断します。

 全身合併症とは呼吸、心臓血管、腎障害。またそれまでの合併症増悪、例えばCOPD、心不全、慢性肝疾患の増悪などのことです。

 一方、局所合併症には膵周囲の液貯留、偽性囊胞、膵壊死・膵周囲壊死(sterileまたはinfected)などです。

 臓器不全が48時間以上継続すると予後が悪くなります。膵炎の全体の死亡率は2%ですが臓器不全が持続すると死亡率は30%にもなります。臓器不全持続と感染性膵壊死が合併すると死亡率は最も高いとのことです。

9.要注意は60歳以上、BMI≧30、Ht>44%、BUN>20mg/dL、Cr>1.8mg/dL、SIRS(+)

 急性膵炎の予後悪化因子は次のようなものがあります。

 ① 60歳以上
 ② 合併症の存在(Charlson comorbidity index 2点以上)
 ③ 肥満(BMI 30以上)
 ④ 長期アルコール過飲

 最も有用な検査値はBUN上昇、Cr上昇、Ht上昇で輸液後も改善なければ要注意です。要するに血液濃縮(hemoconcentration)があるのが危険ということです。

 特にHt 44%超、BUN 20mg/dL超、Cr 1.8mg /dL超は要注意です。

 危険因子の高齢、BMI高値、合併症の存在、SIRSの存在に注意です。急性膵炎の予後悪化要因は3rd spaceと血管容積の喪失による血液濃縮とazotemia(BUN上昇)なのです。

 十分な輸液にもかかわらず最初の48~72時間で、Ht上昇、BUN上昇、Cr上昇、SIRS継続、CTで膵臓あるいは周辺の壊死の存在は重症膵炎への進展を意味します。

 SIRSは下記の2つ以上の存在ですが急性膵炎ではたいてい存在します。

 ① 体温36度以下または38度以上
 ② 脈拍90/分以上
 ③ 呼吸20/分以上、またはPCO2 32mmHg未満
 ④ 白血球4,000/mm3以下または1万2,000以上

10.amylaseとlipase値に予後予測価値はない!

 意外だったのは、amylaseとlipaseには予後予測価値はないということです。

 小生、amylase値こそ予後を決定するのかと思っていました。CTは早期ではまだはっきりせず病態を過小評価することがあります。

 Scoring systemが幾つかありAPACHE Ⅱ、APACHE-O、Glasgow、Harmless Acute Pancreatitits Score、Japanese Severity Score、PANC3、 POP、BISAPなどがあります。

 しかしいずれも偽陽性率が高く(多くの膵炎患者は実際には軽症で終わる)、ルーチンには使われていないとのことです。

11.発症24時間以内に200~500mL/時間、計2.5~4Lの輸液を!24時間以後は意味なし

 急性膵炎の予後悪化要因は3rd space、血管容積の喪失による血液濃縮とazotemia(BUN高値)です。最初の24時間での積極的輸液は死亡率を減少させます。

 発症後、特に最初の12~24時間の輸液が重要であり24時間以後は意味がないのだそうです。

 晶質液(crystalloid)を200~500mL/時間または5~10mL/kg/時間で投与し最初の24時間で2,500~4,000mLの輸液を行います。

 なお炎症マーカー低下には生食より乳酸リンゲルが優れていたというトライアルがあるそうです。

 輸液量が適切かは、心肺モニター、時間尿量、BUN、Htをモニターします。ただし輸液過剰には注意します。

 なお輸液治療の推奨はRCTでなく専門家の意見(expert opinion)によるものであり、輸液量については患者個々で合わせる(tailor)必要があります。

 エビデンスレベルはRCTがレベルA、専門科の意見は最低ランクのEです。いずれにしても大量輸液は最初の24時間以内にしておくことが無難です。

12.軽症膵炎は痛み治まる前に経口低脂肪食OK、経鼻空腸より経鼻胃管を

「へー」と思ったのは、軽症急性膵炎では激痛、悪心嘔吐、イレウスがなければ、入院後すぐ低脂肪食を開始してよいのだそうです。

 軽症膵炎で臓器不全や膵壊死がなければ、痛みが完全に治まる前に経口摂取を開始してよいのです。

 Clear-liquid diet(清澄流動食)から徐々に固形食に上げていくよりも、低脂肪食や固形食で開始した方が安全で入院日数も短縮できるというのです。

 急性膵炎患者に対するTPN(中心静脈栄養)はリスクが高く高価で腸管栄養と比較して劣ることが知られているとのことです。

 膵炎ではありませんが、家内が大学病院で長女を出産したときのことです。

 新米助産婦さんがベッドサイドにやってきて、キチッと計量したミルクを、「今日はこれだけ飲ませてください」と置いていきました。

 一方、長男、次男は産科医院で出産したのですが、ベテラン助産婦さんがミルクを「好きなだけ飲ませてください」とドカンと置いていったのには笑ってしまいました。

 だけど別にどうってこともありませんでした。まあ、人間なんてそんなものなのでしょう。

 摂食で膵分泌を最小限にするには経鼻空腸チューブがベストではありますがRCT、メタ解析では経鼻胃管、経鼻十二指腸管で問題ないそうです。

 というわけで、膵炎ではTPNや腸管栄養に代わって単純な胃管に取って代わりました。成分栄養(elemental diet)が優れているのかは分かっていません。

 壊死性膵炎の死亡率は高いのですが予防的抗菌薬の利点はないそうです。

 壊死性膵炎に感染合併が疑われたとき以外、抗菌薬投与は推奨しません。

 ERCPは胆石による膵炎で行います。画像上、総胆管結石(choledocholithiasis)であればERCPは妥当です。

 膵臓の偽性囊胞やWONでは内視鏡下エコーをプラットホームにして最小侵襲手術が行われます。

 13.被包化膵壊死は感染、管腔圧迫なければ治療不要、4週待って経皮ドレナージ

 急性の膵周囲液貯留は治療不要です。

 有症状の偽性囊胞は基本的に内視鏡的に可能です。

 壊死性膵炎には膵臓壊死と膵周囲脂肪壊死がありますが初期には壊死組織は液体と固体の混合です。

 4週ほどたつと壊死はより液状になり被包化しWONとなります。

 壊死が感染性でなければ、周囲管腔(胃、十二指腸、胆管)の閉塞がない限りWONの治療は不要だというのです。

 ただし壊死部の感染は治療対象ですが最初の2週間ではまれです。ふつうmonomicrobial(単一菌)で、グラム陰性桿菌、腸球菌、グラム陽性菌(staphylococcusなど)がありますが薬剤耐性菌が増えています。

 壊死組織が感染すると発熱、白血球増加、腹痛増強が出現します。

 CTで壊死組織内にエアが見られることもあります。

 壊死組織感染では広域抗菌薬を開始し穿刺培養は不要とのことです(なんで?)。

 現在、外科的治療は極力最低4週は被包化を待ちます。

 これにより壊死組織が軟化して液状になり被包化してドレナージ、デブリドマンが容易になり死亡リスクが低下します。

 患者の状態が安定していれば外科的治療はたいてい遅らせられるというのです。

 不安定な場合は経皮的ドレナージで十分なことが多いそうです。

 壊死性膵炎の60%は非侵襲的治療が可能で死亡リスクは少ないとのこと。

 壊死性膵炎には伝統的な開腹壊死組織切除よりもstep-up approachの方が成績が良いそうです。

 すなわち

① 抗菌薬
② 経皮的ドレナージ
③ 数週待って最小侵襲デブリドマン
です。

 最小侵襲デブリドマンには経皮的、内視鏡、腹腔鏡、後腹膜経由などのアプローチがあります。感染壊死の少数は抗菌薬のみで治療できるかもしれないそうです。

14.急性膵炎後2~3割は慢性膵炎になる。禁酒、禁煙!

 急性膵炎後、20~30%で膵臓のendocrine、exocrine機能低下が起こり3分の1から2分の1は慢性膵炎になります。

 その危険因子は最初の膵炎の程度、壊死の程度、膵炎の原因によります。特に長期のアルコール過飲と喫煙は慢性膵炎への移行を劇的に促進します。禁酒でリスクは大きく減少します。

15.胆石膵炎は最初の入院時に胆摘やれ!

 胆石膵炎では胆囊摘出は胆石による膵炎を予防します。

 胆摘が数週遅れると再発は30%まで高まるそうです。

 最初の入院時に胆摘を行うことで胆石関連の合併症は、退院後25~30日で胆摘を行うよりも75%減少するというのです。

 ただし重症膵炎や壊死性膵炎の場合は、状態が回復してからの胆摘が望ましいそうです。

 手術が無理なら内視鏡的に胆管のsphincterotomyでも膵炎は減らせますが再発をゼロにはできません。

 それではN Engl J Med(2016; 375: 1972-1981) 急性膵炎総説の最重要点10の反復です。

• 毎日ビール1.5L or ワイン1本 or ウイスキー200mL、5年で慢性膵炎
• 急性膵炎の原因は胆石4割、アルコール3割、デパケン、ACE阻害薬も
• 中性脂肪>1,000mg/dLで膵炎起こす。1,000mg/dL以上は下げよ
• IgG4関連疾患による自己免疫膵炎がある
• 急性膵炎は腹痛必須、lipase/amylaseが正常上限の3倍以上、画像で膵腫脹
• 要注意は60歳以上、BMI≧30、Ht>44%、BUN>20mg/dL、Cr>1.8mg/dL、SIRS(+)
• 発症24時間以内に200~500mL/時間、計2.5~4Lの輸液を! 24時間以後は意味なし
• 軽症膵炎は痛み治まる前に経口低脂肪食OK、経鼻空腸より経鼻胃管を
• 被包化膵壊死は感染、管腔圧迫なければ治療不要、4週待って経皮ドレナージ
• 胆石膵炎は最初の入院時に胆摘やれ!

医学紙「Medical Tribune」 より
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低脂肪食、乳がんの生存率向上 [健康短信]

低脂肪食で乳がん女性の生存率向上か

 低脂肪食を続けた乳がん患者は、脂肪の多い食事を取っていた患者に比べ、診断後10年以上生存する確率が高いことが、新たな研究で示された。

 研究を率いた米シティ・オブ・ホープ病院のRowan Chlebowski氏は、

「脂肪が少なく果物や野菜の多い食事が、乳がん女性の健康に良いことが明らかになった」と述べている。

 同氏らの研究は「JAMA Oncology」(米国医師会雑誌 腫瘍学)オンライン版に掲載された。

 女性健康イニシアチブ(Women's Health Initiative;WHI)研究では、すでに低脂肪食を取っている女性は、侵襲性の高いタイプの乳がんを発症する確率が低いことが明らかにされている。
 
 今回、Chlebowski氏らは、乳がん診断後の生存率に対する低脂肪食の効果を明らかにするため、1993~98年に米国40カ所の施設で行われたWHI研究のデータを事後解析した。

 同研究の参加者は、研究参加時に乳がんと診断されておらず、食物摂取頻度調査票への回答で、食事の総摂取カロリー量に占める脂肪の比率が32%を超えていた閉経後の女性4万8835人であった。

 参加者は、果物や野菜、未精製の穀物を多く取り、食事の総摂取カロリー量に占める脂肪の比率が20%未満になることを目指した低脂肪食群(40%、1万9541人)と、一般的な食事(総摂取カロリー量の3分の1以上が脂肪)を継続する群(60%、2万9294人)にランダムに割り付けられた。

 8.5年追跡し、参加者のうち1764人が乳がんと診断された。

 診断時の年齢は平均67.6歳で、総死亡数は516人だった。乳がんの診断から11.5年後の全生存率を比較した結果、低脂肪食群では、一般食群に比べて10年生存率が22%高かった(82%対78%、ハザード比0.78、95%信頼区間0.65~0.94、P=0.01)。

 ハザード比=統計学用語。臨床試験などで使用する相対的な危険度。

 また、低脂肪食群の方が乳がんによる死亡が少なかった。

 死亡した女性516人のうち、乳がんで死亡した女性は低脂肪食群で68人であったのに対し、一般食群では120人であった。

 食事による脂肪摂取量が少ない女性は、心血管疾患をはじめとする他の原因による死亡率も低く、期間中に心血管疾患で死亡したのは通常食群で64人であったのに対し、低脂肪食群では27人であった。

 このことから「生涯のどの時点においても、低脂肪食は健康に極めて大きなベネフィットをもたらすと言える」と、Chlebowski氏は述べている。

 専門家の一人で、米レノックス・ヒル病院のStephanie Bernik氏は、

「がんに対する直接的な効果によるものかどうかにかかわらず、健康的な食事にはがん生存者と一般集団のいずれにも、余命を延ばす効果があることは明らかである」と話す。

 また、米ノースウェル・ヘルスがん研究所のAlice Police氏は、WHIは極めて包括的かつ厳密に実施された研究であると指摘する。

 同氏は、乳がんによる死亡だけを取り出して食事との関連をみるのは難しいとしながらも、できる限り長く健康に生きるためには食事の質の改善が不可欠であると述べている。    

 「毎日新聞 医療プレミア」による。
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老化を促進する危険因子 [医療小文]

老化や病気の原因「糖化ストレス」を防ぐには
  米井嘉一 / 同志社大学教授

 

 みなさんはホットケーキを作ったことがあると思います。

 ホットケーキの生地は、初めは小麦粉などを水に溶いたものですね。

 これにフライパンで熱を加えると、こんがりときつね色に変化して、こうばしい良い香りがします。

 これは、でんぷん(炭水化物)とたんぱく質が「糖化反応」をして終末糖化産物(AGEs)ができた結果です。

 AGEsは元々、食品から見つかったものなのです。

 今では200種類以上が知られています。

 食品中のAGEsは心配無用

 「AGEsなら食べたらダメなんじゃないか」と思う人もいるでしょう。

 実際に「一切AGEsを食べるな!」という過激な意見を言う人もいます。

 でも、食べ物に含まれるAGEsを目の敵にする必要はありません。

 食品中のAGEsの中には、味や香りをよくしたり、血圧の上昇を防いだり、酸化を防いだり、防腐剤として働いたりする成分があります。

 さらに、糖化ストレスを抑制する働きを持つものもあるのです。

 糖化ストレスとは「血中の糖や脂肪、有害物質であるアルデヒドの値が高い状態」です。

 避ける必要があるのは、焦げた肉や古い油で揚げた物に微量に含まれる「アクリルアミド」と呼ばれる悪いAGEsです。

 食べ物に含まれるAGEsに対しては過剰に反応しなくてもいいのですが、体内で生成されるAGEsは病気や老化の原因になります。

 ですから、必要な人はAGEsを作る糖化ストレス対策を取らなくてはいけません。

 糖化ストレスは簡単に評価できる

 糖化ストレス対策が必要な人は、どのような人でしょうか。あまり知られていませんが、糖化ストレスは簡単に評価できるのです。

 最も正確に評価するためには、血液や尿の中のアルデヒド、AGEsを測る方法があります。

 でも、検査にはお金がかかりますし、血液検査は採血の不快感もあります。

 そこでお勧めしたいのが、皮膚にたまったAGEsを測定する方法です。

 AGEsの中には、特定の光を当てると蛍光を放つ性質を持つ物があります。

 この性質を利用した機器が販売されています。

 測定器に指を入れるか腕を乗せるだけで、痛くもかゆくもなく、血圧よりも簡単に測定できます。

 現在は価格が血圧計に比べて高いため、一家に一台というわけにはいきません。

 調剤薬局やドラッグストア、フィットネスクラブ、エステサロンには機器を置いている所があるので、測ってもらうといいでしょう。

 対策は3段階

 糖化ストレス対策は3段階に分けられます。

 第1段階の対策は「原因物質(糖・脂質)の吸収を遅らせる」ことです。

 よくかんで、ゆっくり食べることが大切です。

 そして、糖化ストレスの原因になる食後の血糖値上昇を抑えるためには、野菜などの食物繊維を最初に食べたり、食前に食酢、黒酢、ヨーグルトを取ったりするのも効果があります。

 白飯やパンを単独で食べるのは避け、例えば牛丼、カレーライス、マーボー豆腐丼にすると食後の血糖値上昇を抑えられます。

 第2段階の対策は「AGEsの生成を抑制する」ことです。

 緑茶、ハーブ茶(カモミール、ドクダミ、ルイボス)、野菜や果実は抗糖化作用のある成分を多く含むので、積極的に飲んだり食べたりしましょう。

 第3段階の対策は「AGEsの分解・排せつを促進する」ことです。

 ただし、これについては、まだ確かな方法が見つかっておらず、これからの研究課題です。

 AGEsを減らすための9項目

 私は3カ月おきに前述の機器で皮膚のAGEsを測定しています。

 そして、値が悪いとき(AGEsの蓄積量が増えているとき)は以下の九つのことを実践しています。

 まずは、原因物質の取りすぎに注意することです。

(1)昼食をコンビニのパンで済ませることを控える。(私はメロンパンが好きで、油断すると、ついつい1カ月に20個ぐらい食べてしまいます。我慢して5個程度に減らすようにしています)

(2)飲み会後のラーメンを控える。(1年間に2回までと決めています。1年の前半に2回食べてしまった時は、後半に苦しみます……)

(3)お菓子を控える。(周りの人から「米井先生は、おせんべいをよく食べていますよね」と言われます。自分では気づかずに、ついつい食べ過ぎてしまうので、注意しなくてはいけませんね)

 そして、やはり、体を動かすことは大切です。

(4)近距離は歩く。(歩ける距離ならばタクシーは使わないようにしています)

(5)エスカレーターやエレベーターを使わない。(駅やビルでは、できるだけ階段で上り下りしています)

(6)できるだけ運動をする。(私は、シャツがすれて肌がかゆくなってしまうのでジョギングは苦手です。スキー、ゴルフ、水泳、ハイキングなどを楽しむようにしています)

(7)毎日15分は歩く時間を作る。(これをサボると、確実にAGEsの値が上がってしまいます)

 また、夜更かしをするのはよくありません。さらに、抗糖化のサプリメントもあります。

(8)睡眠時間を十分に確保する。(睡眠時間が短いと食後の高血糖が起きやすくなることが分かっています)

(9)抗糖化サプリメントを使う。

 生活習慣の改善を積み重ねよう

 生活習慣の改善はAGEsの蓄積量を低めに抑えることができます。

 糖化ストレス対策は、一つ一つの積み重ねで大きな効果が得られます。

 まずはAGEsの蓄積量を測ってみましょう。

 そして、良い値の人はそのままの生活を続けてください。値が悪い人は、私が実践している九つの項目を参考に、生活を見直してみましょう。

「毎日新聞 医療プレミア」より。
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しみ、しわ、目の下のくま [健康短信]

 しみ、しわ、目の下のくまの予防法
 丁宗鐵 / 日本薬科大学学長

 紫外線が強くなってきました。

 みなさんはどのような紫外線対策をしていますか。

 年齢を重ねると皮膚のメンテナンス力がしだいに衰えてきます。

 紫外線によるしみやしわを防ぐには、バランスのよい食事とプラスアルファの成分が必要です。

 また、多くの女性が気にする目の下のくまには医学上の問題が潜んでいます。

 高額なサプリメントや美容医療に費用をかける前に、自分でできる基本の対策を押さえておきましょう。

 しみやしわの大敵だが骨には必要な紫外線


 日焼けをするとしみができるのは、紫外線から皮膚を守ろうと、体がメラニン色素を作るからです。

 しみとはたんぱく質が変性したようなもの。

 若い人は日焼けをしても、割と早く元に戻ります。

 皮膚にできた産物を取り除く力が強いため、数日すると色はさめるのです。

 しかし、年齢を重ねるとこうはいかなくなります。紫外線を浴びてしみができると消えにくくなり、皮膚のコラーゲンなども傷ついて、しわができやすくなります。

 皮膚のメンテナンス力が衰える年齢は、女性にとって骨の量が減り始めるころと重なります。

 骨を丈夫に維持するには、カルシウムとその吸収を助けるビタミンDが必要です。

 ビタミンDは、魚やキノコ類に多く含まれますが、食品から摂取するほかに紫外線を浴びると体内で作られ、活性化します。

 ですから、適度な紫外線は骨の健康には必要です。

 しかし、しみやしわにとっては大敵。ここが加齢による変化と紫外線の関係の難しいところです。


 ポリフェノールを補って紫外線対策を


 紫外線を浴びると体内では活性酸素が発生します。

 過剰な活性酸素は細胞を破壊し、遺伝子も傷つけます。

 それが体の酸化をもたらし、しみやしわ、病気などのきっかけになります。

 このような活性酸素を除去するために、大事な成分の一つがポリフェノールです。

 抗酸化作用があり、紫外線が強くなる時期は食事から補うことが大切です。

 ポリフェノールは、野菜や果物など植物性食品にある非栄養成分で、皮や葉などに多く含まれます。

 そもそも植物に多く含まれるのは、種を守るためです。

 植物が成長するには、光合成をしなくてはなりませんが、紫外線を浴びると種は傷つき、発芽できなくなります。

 そこで、紫外線の恵みは受けつつ、活性酸素のダメージから身を守り、生き残る戦略として、植物はポリフェノールをまとっているのです。


 ポリフェノールの上手な取り方は


 ポリフェノールは、身近なさまざまな食品に含まれています。

 緑茶の苦みや渋みの主成分であるカテキン、ブルーベリーに含まれるアントシアニン、大豆に含まれるイソフラボンもそうです。

 また、赤ワインに多い成分としてご存じの方も多いでしょう。

 ワインの産地は世界各地にありますが、オゾンホールがある地域で育ったぶどうブドウは、紫外線を多く浴びているため、ポリフェノールが豊富と言われています。

 赤ワインは、チリ産やニュージーランド産、オーストラリア産の赤ワインをを選ぶという選択もあります。

 目の下のくまは脳の疲れを表している

 しみやしわに次いで女性に多い顔の悩みは、目の下にできるくまです。

 ほとんどの人は美容上の皮膚の問題と思っていますが、実は脳にかかわる医学上の問題があります。

 目は脳の一部が前に飛び出した構造になっていて、目の周りには血管が張り巡らされています。
 
 長時間の勤務や残業、徹夜などをすると目の下の皮膚が黒っぽくなります。

 これは目の周囲がうっ血している状態。

 つまり、目の周りの血流が滞り、たまっているという怖いサインなのです。

 目の下のくまは、女性にだけとできるとは限りません。

 男性にもできます。また、目の下にくまが出でやすい人は、脳の疲れが取れないうちに、次の疲れが加わっています。

 1日の疲れはその日のうちに取るか、または1週間の疲れは週末で解消しすることを心がけ、それ以上、脳の疲れを持ち越さないようにしましょう。

 若いうちから無理をしていると、認知症など脳の病気を起こしやすいので注意してください。【聞き手=医療ライター・阿部厚香】
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