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夏ばて対策 [健康短信]

 夏ばて・夏やせ対策

「夏やせ」という言葉があるのは、日本だけだそうだ。

 日本の夏の不快な暑さにはインド人もビックリしたとか。

 それくらい激暑で酷暑で猛暑だ。

 たぶん「夏ばて」も、日本語特有ではないか。

 炎のような暑さに、頭がボーッとなって、ぐったり疲れて、何もやる気が起こらない、食欲がない─が、夏ばての主症状で、頭痛、発熱、不眠、下痢などを伴うこともある。

 夏ばての対策は─、

 ①睡眠を十分とる。

 ②栄養のバランスのとれた食事をする。

 ③なるべく直射日光に当たらない。

 ④水分をきちんと補給する。

 夏ばての最大の原因の一つは睡眠不足だ。

 睡眠さえ十分にとれれば夏ばての半分は解消されるといっていい。

 早寝、朝寝、昼寝、居眠り……その他、あらゆる知恵と努力をはらって睡眠時間を確保しよう。

 暑い日がつづくと、食欲がなくなるのは、食欲と体温の調節が、同じ間脳の視床下部で行われるからだ。

 気温が高くなると、体内でビタミンB群が多く消費される。

 そのため夏にはビタミンB群(特にB1)不足による軽い脚気症状に陥りがちだ。

 また、暑いと、どうしても食事が淡泊になりがちだ。

 冷たいものや、あっさりしたものばかり食べたくなり、栄養が偏る。栄養価の低い食生活を続けていると、体の造血機能が低下して貧血を招き、体のすみずみへの栄養や酸素補給が難しくなる。

 B1不足と貧血。これが夏ばての体のだるさや脳の働きのにぶさの主因だ。

 脚気症状と貧血対策のメニューを考えよう。

 ビタミンB群を多く含む食品は、大豆、ピーナッツ、シイタケ、セロリ、ニラ、タマネギ、サツマイモ、麦など。

 肉類ではブタ肉に最も多く、レバーはビタミンの宝庫と呼ばれるほどビタミンAやB群が豊富だ。

 貧血対策の鉄分を多く含む食品は、レバーや魚介類など動物性たんぱく・脂肪、あるいはニラ、ニンジン、ピーマンなど緑黄色野菜。

 ニラレバいためは、夏バテ解消の特効料理といえる。

 食欲のないときは、冷たくてするする食べられるそうめんなどはもってこいだが、栄養的には問題がある。

 そうめんは、ご飯と同じと考えて、たとえば細切りのキャベツをどっさり添えたハムエッグなど、おかずをつけるようにしたい。

 忘れてならないのは水分補給だ。汗がどっさり出ると、水分と一緒に塩分をはじめミネラル類も失われる。

 汗をかいたとき水を飲まないと、脱水状態になって体温が上がり、体力が消耗する。

 ただ、水だけではミネラル不足は補えないし、水のがぶ飲みは胃液を薄めて、消化・吸収が落ちる。

 麦茶、ウーロン茶、ミネラルウォーターがよい。

 夏場、どうも元気がなく、ちょっと下痢気味のときは、濃い緑茶を飲んで梅干しをしゃぶるとよいと、昔、ばあさんに教わった。

 塩分とミネラル補給のリッパな知恵だったわけだ。

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真味只是淡 豆腐をどうぞ [健康短信]

 昔、ちょっと読みかじった『菜根譚』のなかにこんな言葉があった。

 醲肥辛甘非真味 真味只是淡(のうひしんかんはしんみにあらず しんみはただこれたん)

 神奇卓異非至人 至人只是常(しんきたくいはしじんにあらず しじんはただこれじょう)

 しつこい料理はほんとうの味ではない。真味はあっさりしている。

 奇抜な人間にはニセモノが多い。至人はごく平凡である。――というような意味だろう。

『広辞苑』には、

 真味=まことの味わい。

 至人=道を修めてその極致に達した人。――とある。

『菜根譚』の著者、洪自誠が、「只是淡」なるものとして思い浮かべた「真味」はなんだったか。

 それは知る由もないが、食味のあっさりした食品として一番に指を折るべきものは、豆腐だろう。

 豆腐は古代中国の発明。

 明時代の儒者、洪自誠も当然、よく食べたはずだ。

「豆腐は、本来清淡簡素を主とした製品だから、調理もまた単純な湯豆腐か汁の実、そのほかなべ料理のあしらいにした程度が食味家に喜ばれる」

 往年、高名な料理研究家だった本山荻舟氏は、そう述べている。

 豆腐の腐の字には、「あつめる」という意味もあるそうだが、生のままでは繊維質が硬すぎて消化吸収されにくいダイズを加熱処理して、このように食べやすくて、栄養価の高い食品につくり変えた(つまり豆の本体をあつめた)知恵のある先人は、伝説では約2000年前の漢の淮南王(わいなんおう)で、日本にはそれから800年後の奈良時代に渡来している。

 先年、日本の伝統食を考える会が、「あなたのおふくろの味は?」と、おもに京阪神に住む男性500人にアンケートしたところ、1位はみそ汁、2位が冷ややっこ、湯豆腐など豆腐のおかず、3位がうどん、そばなどのめん類だった。

 豆腐はみそ汁の実にもよく使われる食材の一つだ。

 1位がらみの2位といえる。

 淡泊な味の中にさまざまにすぐれた栄養を含み、冷たくても温かくても、うまくて、あきない。

 豆腐の味は、おふくろそのものだ。

「浮世渡らば、豆腐で暮らせ。マメで、シカクで、ヤワラカで」

 豆腐は人生訓も教えてくれる。

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心がつくる病気 心身症 身体表現性障害 [健康短信]

 心の悩みのせいで体の具合が悪くなる病気「心身症」 

 「心身症」はストレスが原因になりやすい。

 一方、「うつ病」も、ストレスが誘因になることが多い。

「だから心身症とうつ病は、根っこは結構近くて、病気の性質が違う、というふうに理解してください」と、中尾睦宏・国際医療福祉大学 医学部教授(心療内科 心身症全般、ストレス医学)。

ストレスが原因になる病気で、特に心身症的側面の強い病態は、神経性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)、円形脱毛症、不妊症、高血圧、動脈硬化、気管支ぜんそくなどがある。

そのほか心気症(自分の健康状態を必要以上に心配する精神症状)、不安神経症、ヒステリー、そううつ病、統合失調症などもストレスが発症の原因となりうる病態と考えられている。

心身症でもうつ病でも不安神経症でも、そして近年注目されるようになった身体表現性障害でも、体には何の異常も認められないのに、強い痛みが生じることがある。

心がつくる体の痛みだ。

心─このあえかにして不思議なるもの!

 心因性疼痛

痛みは、①末梢神経性疼痛。②中枢性疼痛。③精神的疼痛に分類される。

①は、ケガなどのように皮膚や粘膜などが傷害されたときや、炎症やけいれんなどによって内臓に起こる痛み。

②は、脳の中の病気が原因となって起こる痛み。

脊髄や脳幹などの中枢神経に起きた病変によって手足に強い痛みを感じることが多い。

③は、心因性疼痛ともいい、器質的障害(体の器官に生じた損傷)は全く認められず、心理的な要因のみで起こる痛みだ。

また、器質的障害に伴う痛みが、心因によって増強される例も多くみられる。

痛みというのは、医療の現場で最も頻繁にみられる訴えで、難治性で慢性疼痛の場合、患者は非常な苦痛を強いられ、医師は治療に難渋する。

身体的な要素が強い痛み(器質的障害に伴う痛み)に対しては、ひたすら最先端の医療をもって原因解明の検査を進めていき、原因が突き止められたら、それを解消する治療を行えばいいわけだが、心因性の痛みはとらえどころがない。

ある意味、最も厄介な痛みといえる。

 身体表現性障害

心に原因のある痛みは三つに分けられる。

一つは、うつ病の症状として現れる痛みで、もう一つは不安障害(ハッキリした原因もなく、激しい不安がしばしば生じ、どうき、息切れ、発汗、めまいなどさまざまな症状が現れる状態)。

三つめが、うつ病でも不安障害でもないが、やはり心の病気である「身体表現性障害」の症状の一つとして現れる痛みだ。

身体表現性障害には、疼痛性障害、身体化障害(頭痛、吐き気、腹痛、月経痛など体のいくつもの臓器に関連したさまざまな症状)、転換性障害(精神的な苦痛が身体的苦痛に転換された形の障害)、身体醜形障害(自分の体や美醜に極度にこだわる症状)など多くの病態があり、いわゆる「不定愁訴」と同じ病態とみていい。

まだあまり研究が進んでいないので、臨床的に見過ごされがちなことが多いそうだ。

聞けば聞くほどややこしい感じだが、心と体の連動で起こる多種多様な病気は、心療内科の担当だ。
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赤ちゃんの認識力 [医療小文]

赤ちゃんは生後4カ月から“見た目と音”で素材認識

 言葉を獲得する前の赤ちゃんが、見ること、聞くことを通して、「木」や「金属」といった身近にある物の素材を認識していることを、中央大などの研究グループが実験から明らかにした。

 物の素材の見た目と音の関係の理解は、生後4カ月から発達し、経験とともに処理できる素材の種類が増えていくという。

 今回の研究により、赤ちゃんが多様な感覚を通して、物体に関わる知識をどのように獲得していくのか、そのメカニズム解明につながると期待されている。研究結果は英国の科学誌Scientific Reportsに掲載された。

 素材の見た目と音が一致すると脳血流量が増加

 論文を発表したのは、中央大、日本女子大、鹿児島大--の研究者。

 ナイフやフォークなどの食器が金属素材でできているのか、あるいはプラスチックにメッキ加工されたものなのかを見分けるためには、見た目の光沢感だけでなく、物体をたたいた時に出る音も重要な手がかりとなる。

 グループは、生後4~5カ月児と6~8カ月児計32人に、木や金属をたたく音とその材質の見た目が一致した映像と、一致しない映像をそれぞれ見せ、脳の血流量を観察した。

 具体的には、脳が活発化すると酸素を必要とし、血中の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)が増えることから、oxy-Hbの値を測った。

 その結果、木の素材の場合は、木をたたく音と材質の見た目の映像が一致すると、4~5カ月児、6~8カ月児とも脳の右半球の側頭領域が活発化した。

 一方、金属をたたく音と見た目の映像が一致した場合、6~8カ月児は脳の活動量が増加したが、4~5カ月児では全く活動がみられなかった。

 木をたたく時に出る「ポコポコ」という音とともに金属をたたく映像を流すなど、音と見た目の映像が一致しない場合は、どちらの素材でも脳活動が上昇しなかった。

 また、左半球の側頭領域では、音と見た目の映像が一致、不一致どちらのケースでも、血流量の増加は見られなかった。

 これらの結果から、乳児が視覚と聴覚を通して物体の素材を認識する際には、右半球の側頭領域が関わっていると考えられるという。

 このような脳内での処理は、木の素材に対しては生後4カ月から、金属の素材では6カ月から見られ、素材によって時期が異なることも分かった。

 なぜ右半球で活動したのか。

 今回の研究を実施した中央大学研究開発機構の氏家悠太機構助教によると、成人の場合は、ある音と、その音から連想される視覚イメージとの連合には脳右側の上側頭溝(じょうそくとうこう=視覚と聴覚の結びつきに関わる脳の側頭葉にある溝の一つ)が関わっていることが分かっており、乳児でも同じメカニズムが働いている可能性が考えられるという。

 また、これまでの研究から、赤ちゃんが金属の光沢感を知覚できるのは7カ月以降であることが分かっている。

 今回、金属の音と見た目の映像が一致しても、4~5カ月児で脳活動が見られなかったのは、これが理由の一つではないかと分析している。

 氏家機構助教は「赤ちゃんは言葉を獲得する前の段階から、物の素材の見た目と音を連合できる能力を持っていることを証明できた。

 今後は、素材がどれだけ身近かどうかが、見た目と音のつながりを獲得する時期にどのように影響するのかを調べたい」と話している。

「毎日新聞デジタル版 医療プレミア」による
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食べなくても食物アレルギー!? [医療小文]

食べなくても食物アレルギー!?

 成人の食物アレルギーは臨床病型や原因食物、発症メカニズムなどが多様で、診療ではそれらを踏まえた対応が求められる。

 国立病院機構相模原病院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室長の福冨友馬氏は、小麦依存性運動誘発アレルギー(WDEIA)、花粉-FA症候群(PFAS)、アニサキスアレルギー、職業性手湿疹関連FAなどの特徴や診療上の要点を第67回日本アレルギー学会(6月22~24日)で解説した。

 小麦の摂取量、大豆の摂取時期に注意を要するアレルギー

 成人食物アレルギーの中で比較的発症頻度が高いWDEIAの多くは、小麦に含まれる蛋白質のω-5グリアジンに優位に感作されている。

 病名に「運動誘発」と付いているが、誘発要因である運動を実施していなくても発症しうるとの報告があるという。

 こうした現状を踏まえ、福冨氏は「ω-5グリアジン優位感作型のアレルギーに関する長期管理の在り方はまだ明確化されておらず、小麦の摂取を完全に避けるべきか、抗ヒスタミン薬の内服を継続しつつ少量摂取を継続してもよいのかといった点や、望ましい治療法について議論を深める必要がある」と述べた。

 花粉アレルゲンと交差反応を示す症状を有するPFASについては、同氏らが同院外来患者を対象にした検討から、カバノキ科花粉の飛散期とその直後に大豆アレルギーの発作が頻発していることを紹介。

 大豆アレルギー症状があるPFAS患者では、特に同花粉の飛散時期である5、6月には大豆摂取を控えるべきであるとした。

 アニサキスアレルギーは該当食品を避ければ予後良好

 アニサキスによる健康障害は、アニサキス自体が胃腸組織に刺入して生じるアニサキス症と、アニサキスアレルゲンへの反応として生じるアニサキスアレルギーに分類される。

 アニサキス症の治療は、一般的には虫体の摘出術が施行されるが、近年、抗アレルギー薬投与のみで改善することも報告されている(日本医科大学医学会雑誌 2012; 8: 179-180)。

 一方、アニサキスアレルギーへの対処としてコンセンサスの得られたものはないが、発症当初は加熱、非加熱の別なく魚介類の摂取を全面的に禁止し、特異的免疫グロブリン(Ig)E抗体価が十分に低下してきたら生の魚類とイカ以外は摂取を許可するなど、段階的に制限を緩和していく方法でうまくいっているという。

 さらに福冨氏は、調理業従事者などが有する手湿疹が食物アレルギー発症・増悪の強い危険因子であるとする報告を取り上げた。

 ただし、これらの特異的IgE抗体価は経皮曝露の回避により低下することが確認されている。

 そのため、同氏は「手湿疹がある場合は原因となっている食物の調理を避ける、あるいは調理時に手袋を装着するなどの対策を講じるとよい」と指摘した。(陶山慎晃)

 「Medical Tribune」2018年07月10日  

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おしっこの色でわかる「脱水と熱中症」 [健康短信]

おしっこの色が濃くなったら「脱水と熱中症」に注意
 和田裕雄 / 順天堂大学准教授

 ここ数年、夏は非常に暑い日が多く、「熱中症で〇人が救急搬送」という記事を読んだ方も多いと思います。

 西日本一帯を襲った豪雨災害の被災地も、雨は上がったものの気温が急上昇していて、避難所生活や復旧作業中の熱中症に十分な注意が必要です。

 関東地方でも梅雨明けが早く、7月に入って高温が続いています。

 熱中症の原因と対策について改めてまとめました。

 今年3月中旬、仕事で滋賀県東近江市の八日市(旧八日市市)に滞在したのですが、そこで「ももいろクローバーZ」が4月下旬に野外ライブをすることを知らせるポスターを見かけました。

 残念ながら私は野外ライブには行けませんでしたが、そのライブ会場で午後4時の開演前、20代と50代の女性2人が熱中症による体調不良を訴え、病院に運ばれたと報じられました(読売新聞2018年4月22日)。

 暑さに慣れない4~5月にも発症しやすい

 ところで、熱中症は「暑い夏日の午後の病気」と思われがちですが、体が暑さに慣れていない春から初夏にかけても発症しやすいことはあまり知られていません。

 真夏だけでなく、4~5月の晴れの日、特に午前10時から11時ごろにかけて熱中症が高い頻度で発生します。

 それだけではありません。みなさんの周りに「夏は暑くて当たり前」「寝るときにクーラーなんてつけない」と、どんなに暑くてもエアコンをつけない人はいませんか? 

 中高年の人に多い印象ですが、最近、高齢者が夜間に熱中症を発症することが多いことも知られるようになりました。

 ももクロの屋外イベントのような「マス・ギャザリング」(一定の時間、限定地域に同一目的で集まった多人数の集団)が見られる場所では、喉が渇いても飲み物を手に入れにくい▽トイレに行くのが難しい、あるいはわずらわしいため水分摂取を控える--といった理由から、熱中症になる危険性が高いことが指摘されています。

 気温29度を超えると熱中症になる人が増える

 熱中症とはどのような病気か、おさらいをしましょう。

 体温が上がった時、私たちの体は汗をかくことで体温を下げようとします。このため、暑い環境や激しい運動で大量の汗をかくと、体内の水分が不足し、急激な脱水状態に至ります。

 すると、脳をはじめとする各臓器を循環する血流量が減り、その結果、めまいや立ちくらみに始まり、進行すると頭痛や吐き気、倦怠(けんたい)感などの症状が表れます。

 さらに重症になると意識を失ったり、手当てが遅れると死に至ったりすることがあります。

 脳以外の臓器にも影響することがあります。

 熱中症の起こりやすさの予測は、湿球黒球温度(Wet Bulb Globe Temperature=WBGT)と呼ばれる暑さ指数を用います。

 人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、熱収支への影響が大きい湿度、 日射・輻射(ふくしゃ)など、気温--の三つを取り入れた指標です。

 暑さ指数(WBGT)とは?

 湿球黒球温度はやや複雑なので、簡単な指標を使うと、気温がおおむね29度を超えると、熱中症を発症する人が増えることが知られています。室温を28度以下にするのは熱中症対策にもなるのですね。

 ところで、「クールビズで室温28度とすること」と「エアコンの設定を28度にする」ことは少し異なる場合があります。

 室内が均一の温度でないこと、夏日などで28度を超えてからエアコンのスイッチを入れても、室温が上昇してしまうことなどが原因です。

 おしっこの色が濃くなったら熱中症に注意!

 予防には、以下の対策が有効です。

(1)暑さを避ける

(2)服装を工夫する

(3)こまめに水分を補給する

(4)急に暑くなる日に注意する

(5)暑さに備えた体作りを心がける

(6)個人の条件(持病や当日の体の状態)を考慮する

(7)集団活動の場ではお互いに無理強いしない--。

 水分補給のタイミングについて、熱中症予防のパンフレットなどには皮膚や舌が乾燥したら、などと書かれています。

 私は、普段から自分のおしっこの色を見ておくよう勧めています。

 脱水になると、おしっこの色が通常の色から黄色、茶褐色に変化します。

「いつもより色が濃いな」と思ったら、積極的に水分を補給しましょう。

 私が研修医のころは、発熱した患者さんの体温を1度下げるには、500mlの汗をかくと同時に、同じ量の水分を投与する必要があると習いました。

 それだけ、体が暑さに対応するには多くの水が必要なのです。

 ただし、ここで気を付けたいのは、汗には塩分が含まれるため、水分だけでなく塩分も補給する必要があるということです。

 水分補給時には、水1リットルに食塩3gを混ぜた水分(糖分で味付けすると飲みやすい)を飲むとよいでしょう。スポーツドリンクも有効です。

 また、周りで熱中症の人がいたらすぐ水分と塩分を補給し、涼しいところで休息させます。

 意識レベルの低下など重い障害が疑われる場合は、迷わず救急車を呼び、医療機関に運んで診てもらいましょう。

「毎日新聞 医療プレミア」2018年7月10日
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寿命が伸びる酒の量 [医療小文]

週に1~3杯の少量飲酒に余命延長効果?

 飲酒量はどの程度であれば健康に有益なのか--。

 この問題を検証した最新研究の結果が「PLOS Medicine」6月19日オンライン版に発表された。

 この研究では、週に1~3杯程度の少量飲酒者は、全く飲酒しない人と比べて長生きする傾向はあるが、ある種のがんに罹患するリスクは、飲酒量がわずかでも上昇する可能性があることが示されたという。

 クイーンズ大学(英領北アイルランド)のAndrew Kunzmann氏らは今回、米国前立腺がん・肺がん・大腸がん・卵巣がん(PLCO)スクリーニング試験のデータを用いて住民ベースの大規模コホート研究を実施し、生涯の平均飲酒量とがん罹患および死亡のリスクとの関連について検討した。

 対象は、同試験に参加した55~74歳の男女9万9654人(女性68.7%)。83万6740人年の追跡期間中(中央値8.9年)に約10%(9599人)が死亡し、約13%(1万2763人)ががんに罹患した。

 解析の結果、全く飲酒しない人の全死亡リスクは、飲酒量が週に1~3杯(1杯はビールで約350mL、ワインで約150mLに相当)の少量飲酒者に比べて約25%高いことが分かった。

 また、飲酒量が1日に2~3杯未満の大量飲酒者では、少量飲酒者と比べて全死亡リスクは男性で19%、女性で38%高く、飲酒量と全死亡リスクとの間にはJ字型曲線(Jカーブ)の関係が認められた。

 一方で、がんリスクについては、特に咽頭がんや口腔がん、食道がん、肝がんといったアルコールに関連するがんになるリスクは飲酒量が増えるほど上昇した。

 さらに、がん罹患と死亡の複合リスクは、少量飲酒者と比べて全く飲酒しない人で9%高く、ほとんど飲酒しない人(週に1杯未満)では8%、大量飲酒者では10%、1日に3杯以上とより大量に飲酒する人では21%それぞれ高く、これらの複合リスクは少量飲酒者で最も低かった。

 この結果について、Kunzmann氏は「少量の飲酒が健康に有益であることを証明するものではない」と強調し、少量飲酒者は高収入で、健康的な食生活を送り、運動量が多い傾向がみられ、これらの要因が余命の延長をもたらした可能性を指摘している。

 では、適度な飲酒で心疾患リスクが低減したとするこれまでの研究結果を、どう解釈すべきなのか?

 専門家の一人でビクトリア大学(カナダ)のTimothy Stockwell氏は

「多くの研究は、ある時点の飲酒状況に基づき解析されており、以前は飲酒していたが健康上の理由などで禁酒した人も“全く飲酒しない人”に含まれていた可能性がある」と指摘する。

 なお、同氏がこのような点を考慮して実施した研究では、中等量の飲酒による健康へのベネフィットは消失したという。

 Kunzmann氏もこの考えに同意しているが、今回の研究では対象者に尋ねた生涯の飲酒量に基づいて解析したと話している。

 少量飲酒の有益性を示した今回の結果について、Kunzmann氏は慎重な解釈を求めており、飲酒習慣のある人は飲酒量を最小限にとどめることや、健康面でのベネフィットを期待して、赤ワインを毎晩2杯以上飲むのは止めた方がよいと助言している。

 Stockwell氏も「少量飲酒の有益性を裏付ける科学的根拠に基づいたコンセンサスはない」と強調し、健康に良いかもしれないという理由で飲酒量を増やしてはならないと話している。

(HealthDay News )Copyright [コピーライト] 2018

「毎日新聞 医療プレミア」による

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うっかり飲んだ市販薬がドーピング [医療小文]

よく使う治療薬や市販薬もドーピングの対象に?

オリンピックやW杯などがあると、耳にするドーピングのニュース。

せき止め薬や育毛剤にも禁止成分が含まれると聞くと驚きます。

どのような薬に、どんな効果をもつ成分が含まれているのでしょうか。

ドーピングとは、スポーツ選手が競技能力を高める目的で、薬物を用いることを指します。

スポーツの価値を損なう、フェアプレー精神に反する、社会に悪影響を与える、選手の健康を害するという理由で厳しく禁止されています。

禁止物質は「世界ドーピング防止機構」で定められており、以下の四つに分けられています。

(1)競技会でも競技会外でも禁止されるもの

(2)競技会のみ禁止対象となるもの

(3)特定競技(航空スポーツやアーチェリーなど)において禁止されるもの

(4)検出されてもドーピング違反にはならないが濫用を避けるために監視されるもの

ドーピング薬物と指定されている薬物には、次のようなものがあります。

まずは、「たんぱく同化薬」。

これは男性化作用をもつ物質ともいわれ、筋肉や赤血球、骨量の増強作用、闘争心を高める働きがあります。

この成分が、子宮内膜症の治療薬、ぜんそくに用いられる気管支拡張薬、市販の強壮薬などに含まれていることがあります。

また「ペプチドホルモン、成長因子の類似物質」は、持久力を長持ちさせる、筋肉増強、闘争心を高めるなどの作用があります。

貧血や不妊症、重度の皮膚損傷の薬などに禁止成分が含まれています。

「β(ベータ)2作用薬」は喘息などに用いられる気管支拡張薬ですが、筋組織を増量させる目的で使用されることがあります。

「ホルモン調節薬、代謝調節薬」も筋肉増強作用をもつため、禁止される成分があります。

排卵誘発剤や糖尿病治療のインスリン、狭心症の薬などに含まれています。

「利尿薬」にも禁止成分があります。

体重別種目のあるスポーツで体内の水分を利尿薬で排泄させ体重を急速に落とす効果を見込んで使用することがあります。

重量が下のクラスに登録したり、あるいは尿量を増やして検査での禁止薬物などを検出しにくくしたりする目的で用いられます。

高血圧やメニエール病の治療薬などが含まれます。

「興奮薬」は競技会時に禁止されるもので、瞬発力や敏捷性を高める、疲労感を低減する、競争心を高めるなどの作用があります。

気管支拡張薬や胃腸薬、鼻炎の薬などに広く禁止成分が含まれています。

また、競技にリラックスして臨む目的で使われる「麻薬」は、多くの鎮痛薬に禁止成分が含まれています。

市販薬では、たとえば胃腸薬にβ2作用薬や興奮薬の禁止成分が、せき止め薬や風邪薬、のど飴などにはβ2作用薬が、増毛剤(服用・塗布)には男性ホルモンが配合されています。

滋養強壮剤は錠剤でもドリンク剤でも筋肉増強作用や興奮作用をもつものが多く含まれます。

また、漢方薬は生薬をブレンドして用いるため、禁止成分が含まれていてもわかりにくいことがあります。

サプリメントや健康食品、スポーツドリンクでも興奮剤や筋肉増強作用をもつ禁止成分が含まれていることがあります。

こうした禁止薬物のリストは、年1回「国際ドーピング防止機構」で1月1日に更新されます。
禁止薬物の種類も条件も大きく変わることがあります。

スポーツ選手がいかに日ごろから口にするものに注意しなければならないかがわかります。

治療薬はもちろんのこと、のど飴やスポーツドリンクに至るまで、安易に摂ってしまうことが選手生命を大きく左右するからです。

また、そのための正しい知識や情報の更新が欠かせません。

日本アンチ・ドーピング機構では公認スポーツファーマシスト認定制度を設け、薬剤師の協力のもと、啓蒙や情報提供などに力を入れています。

ドーピングについて子どものころからスポーツ知識のひとつとして知っておいてもよいかもしれません。

監修:東京医科大学病院 総合診療科准教授 原田芳巳
「ケータイ家庭の医学」より (C)保健同人社

「毎日新聞 医療プレミア」2018年7月4日 による

医療プレミア=は、医療ジャンルで新聞に掲載されていないデジタル独自記事
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「諷詠」三代の祇園祭=片山由美子 [雑感小文]

「諷詠」三代の祇園祭=片山由美子

いよいよ夏本番。

7月は祭(まつり)の季節である。

春祭はその年の豊作や豊漁を祈願し、秋祭は収穫に感謝することから始まっているのに対し、夏祭は疫病や悪霊を退散させることが起源になっているものが多い。

それだけ、昔は夏に疫病が流行し、人々を不安にさせたであろうことが想像できる。

7月の祭といえば博多祇園山笠などもよく知られているが、一か月にわたって祭一色となる京都の祇園祭は、やはり特別ではないだろうか。

祇園祭を詠んだ俳句は多いが、まず思い浮かべるのは後藤比奈夫(1917年~)の

東山回して鉾を回しけり  である。

山鉾(やまほこ)巡行の見せ場のひとつである鉾回しを、「東山回して」という大胆なアングルで描いてみせた。

後藤比奈夫は、

滝の上に水現れて落ちにけり  

の名句で知られる後藤夜半(1895~1976年)を父にもち、独特の作風で知られる。

比奈夫の子息立夫も、お家芸というべき作風を受け継ぐ俳人となった。

その立夫は、夜半が創刊した俳誌「諷詠(ふうえい)」の三代目主宰を2012年に継承したが、病に倒れ、16年の6月に72歳で死去した。

祭が大好きだったという立夫の第2句集のタイトルは『祭の色』。

そして一周忌の昨年、遺句集の『祇園囃子(はやし)』が刊行された。

立夫は絵を画(か)くことが得意で、この句集は自身の鉾の装画に包まれている。

それを手に取ると感慨深いものがある。

囃子方こぼれさうにも鉾回す

鉾町の二條若狭屋てふ干菓子

集中にこんな句があり、何度も通ったであろう祇園祭の雰囲気をさりげなく伝えている。

そして句集の最後の句であり、辞世となったのが

ころはよし祇園囃子に誘はれて

朗らかだった作者が、ちょっとそのあたりまでと言って雑踏に紛れてしまったかのようだ。

立夫の俳句は、ウイットに富んだ発想と、口語調を交えた独特の文体が特徴である。

驚いたやうに風船割れにけり

風吹いて噴水の横向きになる

会ひに行くやうに茅(ち)の輪を潜(くぐ)りたる

売れ残りさうなもの売り盆の市

水着てふこんなに小さきものを着る

見立ての面白さだけではなく、当たり前と思えることを五・七・五のリズムに乗せると、言葉がにわかにいきいきと立ち上がってくることを示す俳句である。

有季定型という伝統に、いかに現代性を吹き込むかを考え続けていたと思われる。

父の比奈夫は、百一歳の今も俳句の新しさを求め続けている。

ところどころ渇筆雨の大文字

大文字からの連想で「渇筆」を思うなど、まさに比奈夫流である。

昨年刊行した句集『あんこーる』はタイトルからして絶妙。

前句集の『白寿』に最後の句集と書いてしまったので、という次第。

百歳を前に、

もて余すほどでなけれど日の永し  

と詠むなど、その柔軟な発想が「諷詠」を支えてきたのである。

立夫亡き後、長女の和田華凜(かりん)が四代目主宰となった。

つなぎし手離し祭の中へ消ゆ

は父の最期を詠んだ作品。

長い歴史をもつ祇園祭が今年も滞りなく行われる中で、俳誌の伝統の継承などをふと思った。

毎日新聞2018年7月4日 東京夕刊
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まぶたのピクピク、なんだ、これ? [健康短信]

まぶたのピクピクはストレス警報
工藤千秋 / くどうちあき脳神経外科クリニック院長

 ストレスがかかったとき、体は「アラーム」としてさまざまな反応を示します。

 血圧の上昇や動悸(どうき)などがよく知られていますが、顔の一部がピクピク動く「顔面痙攣(けいれん)」もその一つです。

 脳の病気はごく少数

 ピクピクする場所は、9割が上下のまぶた、それ以外はほとんどが口の端です。

 どちらであれ動くのは片側で、痛みはありません。

 持続時間は1回数秒から数十秒程度です。

 この症状を訴える患者さんの多くは、脳の病気を心配して来られます。

 しかし、95%以上の方はストレスが原因で、脳の病気がある方は5%未満です。

 なぜストレスで顔がピクピクするのでしょうか。

 頭部には多くの神経が走っています。

 このうち、顔の筋肉を動かすのは「顔面神経」と呼ばれる運動神経です。

 この神経はストレスが強くなると異常に興奮し、不必要に筋肉を動かしてしまうのです。

 顔面痙攣は、過重なストレスがかかっていることを教えてくれるアラームといっていいでしょう。

 ただし、少数ではありますが、脳に問題がある場合もあります。
 
 ストレス性は多くが女性動脈と神経のぶつかりです。

 動脈には、心臓が収縮して血液を送り出すときのドーンドーンという力が加わります。

 これを「ハンマーエフェクト」といいます。

 脳の動脈と顔面神経は併走していますが、動脈硬化が進むと血管が蛇行し、カーブしたところが神経にぶつかることがあります。

 すると、神経にハンマーエフェクトが伝わり、その場所が痙攣するのです。

 このほか、脳腫瘍も原因になります。

 その多くは良性ですが、悪性の場合もあります。

 顔面痙攣を起こしやすい人の性別や年代は、原因によって異なります。

 ストレス性のものは圧倒的に女性が多く、とくにまぶたの痙攣はほとんどが若い女性です。

 動脈と神経のぶつかりは、動脈硬化が進み始める50代以降に多いのですが、若い女性でも何らかのはずみで起こることがあります。

 顔面痙攣が起こったら、まず生活環境を振り返って、ストレス過多ではないかチェックしてください。

 職場の人間関係は良好ですか? 

 オーバーワークではありませんか?

 よく眠れていますか?

 −−思い当たる原因があったら、取り除く努力をしましょう。

 それでも改善しないときや、自分の努力ではストレス源をどうにもできないときは受診をおすすめします。

 脳外科では、MRIなどの画像検査を行い、脳に問題がなかったら、「クロナゼパム」など運動神経の興奮を抑える抗痙攣薬を処方します。

 1日1回、3〜4日服用すれば通常、症状は治まります。

 しかし、ストレスがかかるとまた症状が出るので、残った薬は「お守り」として手元に置いておきましょう。

「これを飲めば治る」と安心できるだけで症状が出なくなる人もいますし、症状が出たらまた3〜4日飲めばいいのです。

 ただし、薬は対症療法にすぎません。

 大事なのは症状が出ないようにすることなので、根治のためにはストレス源の除去が必要です。

 頑張り屋さん、リラックスしましょう

 画像検査で脳に問題が見つかった場合は、悪性の腫瘍を除いて手術をします。

 動脈と神経のぶつかりには、耳の後ろに直径3、4センチの穴を開け、顕微鏡で内部を見ながら動脈と神経を離し、間にクッション材をはさむ手術です。

 これでハンマーエフェクトの力が弱まり、症状が治まります。

 手術時間は3〜6時間、入院は約1週間です。

 良性の脳腫瘍も手術で治りますが、悪性の場合は手術以外で最適な治療法を探します。

 ストレス社会と言われる現代、顔面痙攣に悩まされる人が増えています。

 とくに、真面目で几帳面な頑張り屋さんに多いのが特徴です。

 顔面痙攣は、そんな人への「頑張りすぎですよ」というアラーム。

 まぶたや口の端がピクピクしたら、張り詰めた緊張の糸を緩めて、自分をリラックスさせてあげましょう。【聞き手=医療ライター・竹本和代】

【毎日新聞 医療プレミア】 による
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