まぶたのピクピク、なんだ、これ? [健康短信]
まぶたのピクピクはストレス警報
工藤千秋 / くどうちあき脳神経外科クリニック院長
ストレスがかかったとき、体は「アラーム」としてさまざまな反応を示します。
血圧の上昇や動悸(どうき)などがよく知られていますが、顔の一部がピクピク動く「顔面痙攣(けいれん)」もその一つです。
脳の病気はごく少数
ピクピクする場所は、9割が上下のまぶた、それ以外はほとんどが口の端です。
どちらであれ動くのは片側で、痛みはありません。
持続時間は1回数秒から数十秒程度です。
この症状を訴える患者さんの多くは、脳の病気を心配して来られます。
しかし、95%以上の方はストレスが原因で、脳の病気がある方は5%未満です。
なぜストレスで顔がピクピクするのでしょうか。
頭部には多くの神経が走っています。
このうち、顔の筋肉を動かすのは「顔面神経」と呼ばれる運動神経です。
この神経はストレスが強くなると異常に興奮し、不必要に筋肉を動かしてしまうのです。
顔面痙攣は、過重なストレスがかかっていることを教えてくれるアラームといっていいでしょう。
ただし、少数ではありますが、脳に問題がある場合もあります。
ストレス性は多くが女性動脈と神経のぶつかりです。
動脈には、心臓が収縮して血液を送り出すときのドーンドーンという力が加わります。
これを「ハンマーエフェクト」といいます。
脳の動脈と顔面神経は併走していますが、動脈硬化が進むと血管が蛇行し、カーブしたところが神経にぶつかることがあります。
すると、神経にハンマーエフェクトが伝わり、その場所が痙攣するのです。
このほか、脳腫瘍も原因になります。
その多くは良性ですが、悪性の場合もあります。
顔面痙攣を起こしやすい人の性別や年代は、原因によって異なります。
ストレス性のものは圧倒的に女性が多く、とくにまぶたの痙攣はほとんどが若い女性です。
動脈と神経のぶつかりは、動脈硬化が進み始める50代以降に多いのですが、若い女性でも何らかのはずみで起こることがあります。
顔面痙攣が起こったら、まず生活環境を振り返って、ストレス過多ではないかチェックしてください。
職場の人間関係は良好ですか?
オーバーワークではありませんか?
よく眠れていますか?
−−思い当たる原因があったら、取り除く努力をしましょう。
それでも改善しないときや、自分の努力ではストレス源をどうにもできないときは受診をおすすめします。
脳外科では、MRIなどの画像検査を行い、脳に問題がなかったら、「クロナゼパム」など運動神経の興奮を抑える抗痙攣薬を処方します。
1日1回、3〜4日服用すれば通常、症状は治まります。
しかし、ストレスがかかるとまた症状が出るので、残った薬は「お守り」として手元に置いておきましょう。
「これを飲めば治る」と安心できるだけで症状が出なくなる人もいますし、症状が出たらまた3〜4日飲めばいいのです。
ただし、薬は対症療法にすぎません。
大事なのは症状が出ないようにすることなので、根治のためにはストレス源の除去が必要です。
頑張り屋さん、リラックスしましょう
画像検査で脳に問題が見つかった場合は、悪性の腫瘍を除いて手術をします。
動脈と神経のぶつかりには、耳の後ろに直径3、4センチの穴を開け、顕微鏡で内部を見ながら動脈と神経を離し、間にクッション材をはさむ手術です。
これでハンマーエフェクトの力が弱まり、症状が治まります。
手術時間は3〜6時間、入院は約1週間です。
良性の脳腫瘍も手術で治りますが、悪性の場合は手術以外で最適な治療法を探します。
ストレス社会と言われる現代、顔面痙攣に悩まされる人が増えています。
とくに、真面目で几帳面な頑張り屋さんに多いのが特徴です。
顔面痙攣は、そんな人への「頑張りすぎですよ」というアラーム。
まぶたや口の端がピクピクしたら、張り詰めた緊張の糸を緩めて、自分をリラックスさせてあげましょう。【聞き手=医療ライター・竹本和代】
【毎日新聞 医療プレミア】 による
工藤千秋 / くどうちあき脳神経外科クリニック院長
ストレスがかかったとき、体は「アラーム」としてさまざまな反応を示します。
血圧の上昇や動悸(どうき)などがよく知られていますが、顔の一部がピクピク動く「顔面痙攣(けいれん)」もその一つです。
脳の病気はごく少数
ピクピクする場所は、9割が上下のまぶた、それ以外はほとんどが口の端です。
どちらであれ動くのは片側で、痛みはありません。
持続時間は1回数秒から数十秒程度です。
この症状を訴える患者さんの多くは、脳の病気を心配して来られます。
しかし、95%以上の方はストレスが原因で、脳の病気がある方は5%未満です。
なぜストレスで顔がピクピクするのでしょうか。
頭部には多くの神経が走っています。
このうち、顔の筋肉を動かすのは「顔面神経」と呼ばれる運動神経です。
この神経はストレスが強くなると異常に興奮し、不必要に筋肉を動かしてしまうのです。
顔面痙攣は、過重なストレスがかかっていることを教えてくれるアラームといっていいでしょう。
ただし、少数ではありますが、脳に問題がある場合もあります。
ストレス性は多くが女性動脈と神経のぶつかりです。
動脈には、心臓が収縮して血液を送り出すときのドーンドーンという力が加わります。
これを「ハンマーエフェクト」といいます。
脳の動脈と顔面神経は併走していますが、動脈硬化が進むと血管が蛇行し、カーブしたところが神経にぶつかることがあります。
すると、神経にハンマーエフェクトが伝わり、その場所が痙攣するのです。
このほか、脳腫瘍も原因になります。
その多くは良性ですが、悪性の場合もあります。
顔面痙攣を起こしやすい人の性別や年代は、原因によって異なります。
ストレス性のものは圧倒的に女性が多く、とくにまぶたの痙攣はほとんどが若い女性です。
動脈と神経のぶつかりは、動脈硬化が進み始める50代以降に多いのですが、若い女性でも何らかのはずみで起こることがあります。
顔面痙攣が起こったら、まず生活環境を振り返って、ストレス過多ではないかチェックしてください。
職場の人間関係は良好ですか?
オーバーワークではありませんか?
よく眠れていますか?
−−思い当たる原因があったら、取り除く努力をしましょう。
それでも改善しないときや、自分の努力ではストレス源をどうにもできないときは受診をおすすめします。
脳外科では、MRIなどの画像検査を行い、脳に問題がなかったら、「クロナゼパム」など運動神経の興奮を抑える抗痙攣薬を処方します。
1日1回、3〜4日服用すれば通常、症状は治まります。
しかし、ストレスがかかるとまた症状が出るので、残った薬は「お守り」として手元に置いておきましょう。
「これを飲めば治る」と安心できるだけで症状が出なくなる人もいますし、症状が出たらまた3〜4日飲めばいいのです。
ただし、薬は対症療法にすぎません。
大事なのは症状が出ないようにすることなので、根治のためにはストレス源の除去が必要です。
頑張り屋さん、リラックスしましょう
画像検査で脳に問題が見つかった場合は、悪性の腫瘍を除いて手術をします。
動脈と神経のぶつかりには、耳の後ろに直径3、4センチの穴を開け、顕微鏡で内部を見ながら動脈と神経を離し、間にクッション材をはさむ手術です。
これでハンマーエフェクトの力が弱まり、症状が治まります。
手術時間は3〜6時間、入院は約1週間です。
良性の脳腫瘍も手術で治りますが、悪性の場合は手術以外で最適な治療法を探します。
ストレス社会と言われる現代、顔面痙攣に悩まされる人が増えています。
とくに、真面目で几帳面な頑張り屋さんに多いのが特徴です。
顔面痙攣は、そんな人への「頑張りすぎですよ」というアラーム。
まぶたや口の端がピクピクしたら、張り詰めた緊張の糸を緩めて、自分をリラックスさせてあげましょう。【聞き手=医療ライター・竹本和代】
【毎日新聞 医療プレミア】 による