うっかり飲んだ市販薬がドーピング [医療小文]
よく使う治療薬や市販薬もドーピングの対象に?
オリンピックやW杯などがあると、耳にするドーピングのニュース。
せき止め薬や育毛剤にも禁止成分が含まれると聞くと驚きます。
どのような薬に、どんな効果をもつ成分が含まれているのでしょうか。
ドーピングとは、スポーツ選手が競技能力を高める目的で、薬物を用いることを指します。
スポーツの価値を損なう、フェアプレー精神に反する、社会に悪影響を与える、選手の健康を害するという理由で厳しく禁止されています。
禁止物質は「世界ドーピング防止機構」で定められており、以下の四つに分けられています。
(1)競技会でも競技会外でも禁止されるもの
(2)競技会のみ禁止対象となるもの
(3)特定競技(航空スポーツやアーチェリーなど)において禁止されるもの
(4)検出されてもドーピング違反にはならないが濫用を避けるために監視されるもの
ドーピング薬物と指定されている薬物には、次のようなものがあります。
まずは、「たんぱく同化薬」。
これは男性化作用をもつ物質ともいわれ、筋肉や赤血球、骨量の増強作用、闘争心を高める働きがあります。
この成分が、子宮内膜症の治療薬、ぜんそくに用いられる気管支拡張薬、市販の強壮薬などに含まれていることがあります。
また「ペプチドホルモン、成長因子の類似物質」は、持久力を長持ちさせる、筋肉増強、闘争心を高めるなどの作用があります。
貧血や不妊症、重度の皮膚損傷の薬などに禁止成分が含まれています。
「β(ベータ)2作用薬」は喘息などに用いられる気管支拡張薬ですが、筋組織を増量させる目的で使用されることがあります。
「ホルモン調節薬、代謝調節薬」も筋肉増強作用をもつため、禁止される成分があります。
排卵誘発剤や糖尿病治療のインスリン、狭心症の薬などに含まれています。
「利尿薬」にも禁止成分があります。
体重別種目のあるスポーツで体内の水分を利尿薬で排泄させ体重を急速に落とす効果を見込んで使用することがあります。
重量が下のクラスに登録したり、あるいは尿量を増やして検査での禁止薬物などを検出しにくくしたりする目的で用いられます。
高血圧やメニエール病の治療薬などが含まれます。
「興奮薬」は競技会時に禁止されるもので、瞬発力や敏捷性を高める、疲労感を低減する、競争心を高めるなどの作用があります。
気管支拡張薬や胃腸薬、鼻炎の薬などに広く禁止成分が含まれています。
また、競技にリラックスして臨む目的で使われる「麻薬」は、多くの鎮痛薬に禁止成分が含まれています。
市販薬では、たとえば胃腸薬にβ2作用薬や興奮薬の禁止成分が、せき止め薬や風邪薬、のど飴などにはβ2作用薬が、増毛剤(服用・塗布)には男性ホルモンが配合されています。
滋養強壮剤は錠剤でもドリンク剤でも筋肉増強作用や興奮作用をもつものが多く含まれます。
また、漢方薬は生薬をブレンドして用いるため、禁止成分が含まれていてもわかりにくいことがあります。
サプリメントや健康食品、スポーツドリンクでも興奮剤や筋肉増強作用をもつ禁止成分が含まれていることがあります。
こうした禁止薬物のリストは、年1回「国際ドーピング防止機構」で1月1日に更新されます。
禁止薬物の種類も条件も大きく変わることがあります。
スポーツ選手がいかに日ごろから口にするものに注意しなければならないかがわかります。
治療薬はもちろんのこと、のど飴やスポーツドリンクに至るまで、安易に摂ってしまうことが選手生命を大きく左右するからです。
また、そのための正しい知識や情報の更新が欠かせません。
日本アンチ・ドーピング機構では公認スポーツファーマシスト認定制度を設け、薬剤師の協力のもと、啓蒙や情報提供などに力を入れています。
ドーピングについて子どものころからスポーツ知識のひとつとして知っておいてもよいかもしれません。
監修:東京医科大学病院 総合診療科准教授 原田芳巳
「ケータイ家庭の医学」より (C)保健同人社
「毎日新聞 医療プレミア」2018年7月4日 による
医療プレミア=は、医療ジャンルで新聞に掲載されていないデジタル独自記事
オリンピックやW杯などがあると、耳にするドーピングのニュース。
せき止め薬や育毛剤にも禁止成分が含まれると聞くと驚きます。
どのような薬に、どんな効果をもつ成分が含まれているのでしょうか。
ドーピングとは、スポーツ選手が競技能力を高める目的で、薬物を用いることを指します。
スポーツの価値を損なう、フェアプレー精神に反する、社会に悪影響を与える、選手の健康を害するという理由で厳しく禁止されています。
禁止物質は「世界ドーピング防止機構」で定められており、以下の四つに分けられています。
(1)競技会でも競技会外でも禁止されるもの
(2)競技会のみ禁止対象となるもの
(3)特定競技(航空スポーツやアーチェリーなど)において禁止されるもの
(4)検出されてもドーピング違反にはならないが濫用を避けるために監視されるもの
ドーピング薬物と指定されている薬物には、次のようなものがあります。
まずは、「たんぱく同化薬」。
これは男性化作用をもつ物質ともいわれ、筋肉や赤血球、骨量の増強作用、闘争心を高める働きがあります。
この成分が、子宮内膜症の治療薬、ぜんそくに用いられる気管支拡張薬、市販の強壮薬などに含まれていることがあります。
また「ペプチドホルモン、成長因子の類似物質」は、持久力を長持ちさせる、筋肉増強、闘争心を高めるなどの作用があります。
貧血や不妊症、重度の皮膚損傷の薬などに禁止成分が含まれています。
「β(ベータ)2作用薬」は喘息などに用いられる気管支拡張薬ですが、筋組織を増量させる目的で使用されることがあります。
「ホルモン調節薬、代謝調節薬」も筋肉増強作用をもつため、禁止される成分があります。
排卵誘発剤や糖尿病治療のインスリン、狭心症の薬などに含まれています。
「利尿薬」にも禁止成分があります。
体重別種目のあるスポーツで体内の水分を利尿薬で排泄させ体重を急速に落とす効果を見込んで使用することがあります。
重量が下のクラスに登録したり、あるいは尿量を増やして検査での禁止薬物などを検出しにくくしたりする目的で用いられます。
高血圧やメニエール病の治療薬などが含まれます。
「興奮薬」は競技会時に禁止されるもので、瞬発力や敏捷性を高める、疲労感を低減する、競争心を高めるなどの作用があります。
気管支拡張薬や胃腸薬、鼻炎の薬などに広く禁止成分が含まれています。
また、競技にリラックスして臨む目的で使われる「麻薬」は、多くの鎮痛薬に禁止成分が含まれています。
市販薬では、たとえば胃腸薬にβ2作用薬や興奮薬の禁止成分が、せき止め薬や風邪薬、のど飴などにはβ2作用薬が、増毛剤(服用・塗布)には男性ホルモンが配合されています。
滋養強壮剤は錠剤でもドリンク剤でも筋肉増強作用や興奮作用をもつものが多く含まれます。
また、漢方薬は生薬をブレンドして用いるため、禁止成分が含まれていてもわかりにくいことがあります。
サプリメントや健康食品、スポーツドリンクでも興奮剤や筋肉増強作用をもつ禁止成分が含まれていることがあります。
こうした禁止薬物のリストは、年1回「国際ドーピング防止機構」で1月1日に更新されます。
禁止薬物の種類も条件も大きく変わることがあります。
スポーツ選手がいかに日ごろから口にするものに注意しなければならないかがわかります。
治療薬はもちろんのこと、のど飴やスポーツドリンクに至るまで、安易に摂ってしまうことが選手生命を大きく左右するからです。
また、そのための正しい知識や情報の更新が欠かせません。
日本アンチ・ドーピング機構では公認スポーツファーマシスト認定制度を設け、薬剤師の協力のもと、啓蒙や情報提供などに力を入れています。
ドーピングについて子どものころからスポーツ知識のひとつとして知っておいてもよいかもしれません。
監修:東京医科大学病院 総合診療科准教授 原田芳巳
「ケータイ家庭の医学」より (C)保健同人社
「毎日新聞 医療プレミア」2018年7月4日 による
医療プレミア=は、医療ジャンルで新聞に掲載されていないデジタル独自記事