食べなくても食物アレルギー!? [医療小文]
食べなくても食物アレルギー!?
成人の食物アレルギーは臨床病型や原因食物、発症メカニズムなどが多様で、診療ではそれらを踏まえた対応が求められる。
国立病院機構相模原病院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室長の福冨友馬氏は、小麦依存性運動誘発アレルギー(WDEIA)、花粉-FA症候群(PFAS)、アニサキスアレルギー、職業性手湿疹関連FAなどの特徴や診療上の要点を第67回日本アレルギー学会(6月22~24日)で解説した。
小麦の摂取量、大豆の摂取時期に注意を要するアレルギー
成人食物アレルギーの中で比較的発症頻度が高いWDEIAの多くは、小麦に含まれる蛋白質のω-5グリアジンに優位に感作されている。
病名に「運動誘発」と付いているが、誘発要因である運動を実施していなくても発症しうるとの報告があるという。
こうした現状を踏まえ、福冨氏は「ω-5グリアジン優位感作型のアレルギーに関する長期管理の在り方はまだ明確化されておらず、小麦の摂取を完全に避けるべきか、抗ヒスタミン薬の内服を継続しつつ少量摂取を継続してもよいのかといった点や、望ましい治療法について議論を深める必要がある」と述べた。
花粉アレルゲンと交差反応を示す症状を有するPFASについては、同氏らが同院外来患者を対象にした検討から、カバノキ科花粉の飛散期とその直後に大豆アレルギーの発作が頻発していることを紹介。
大豆アレルギー症状があるPFAS患者では、特に同花粉の飛散時期である5、6月には大豆摂取を控えるべきであるとした。
アニサキスアレルギーは該当食品を避ければ予後良好
アニサキスによる健康障害は、アニサキス自体が胃腸組織に刺入して生じるアニサキス症と、アニサキスアレルゲンへの反応として生じるアニサキスアレルギーに分類される。
アニサキス症の治療は、一般的には虫体の摘出術が施行されるが、近年、抗アレルギー薬投与のみで改善することも報告されている(日本医科大学医学会雑誌 2012; 8: 179-180)。
一方、アニサキスアレルギーへの対処としてコンセンサスの得られたものはないが、発症当初は加熱、非加熱の別なく魚介類の摂取を全面的に禁止し、特異的免疫グロブリン(Ig)E抗体価が十分に低下してきたら生の魚類とイカ以外は摂取を許可するなど、段階的に制限を緩和していく方法でうまくいっているという。
さらに福冨氏は、調理業従事者などが有する手湿疹が食物アレルギー発症・増悪の強い危険因子であるとする報告を取り上げた。
ただし、これらの特異的IgE抗体価は経皮曝露の回避により低下することが確認されている。
そのため、同氏は「手湿疹がある場合は原因となっている食物の調理を避ける、あるいは調理時に手袋を装着するなどの対策を講じるとよい」と指摘した。(陶山慎晃)
「Medical Tribune」2018年07月10日
成人の食物アレルギーは臨床病型や原因食物、発症メカニズムなどが多様で、診療ではそれらを踏まえた対応が求められる。
国立病院機構相模原病院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室長の福冨友馬氏は、小麦依存性運動誘発アレルギー(WDEIA)、花粉-FA症候群(PFAS)、アニサキスアレルギー、職業性手湿疹関連FAなどの特徴や診療上の要点を第67回日本アレルギー学会(6月22~24日)で解説した。
小麦の摂取量、大豆の摂取時期に注意を要するアレルギー
成人食物アレルギーの中で比較的発症頻度が高いWDEIAの多くは、小麦に含まれる蛋白質のω-5グリアジンに優位に感作されている。
病名に「運動誘発」と付いているが、誘発要因である運動を実施していなくても発症しうるとの報告があるという。
こうした現状を踏まえ、福冨氏は「ω-5グリアジン優位感作型のアレルギーに関する長期管理の在り方はまだ明確化されておらず、小麦の摂取を完全に避けるべきか、抗ヒスタミン薬の内服を継続しつつ少量摂取を継続してもよいのかといった点や、望ましい治療法について議論を深める必要がある」と述べた。
花粉アレルゲンと交差反応を示す症状を有するPFASについては、同氏らが同院外来患者を対象にした検討から、カバノキ科花粉の飛散期とその直後に大豆アレルギーの発作が頻発していることを紹介。
大豆アレルギー症状があるPFAS患者では、特に同花粉の飛散時期である5、6月には大豆摂取を控えるべきであるとした。
アニサキスアレルギーは該当食品を避ければ予後良好
アニサキスによる健康障害は、アニサキス自体が胃腸組織に刺入して生じるアニサキス症と、アニサキスアレルゲンへの反応として生じるアニサキスアレルギーに分類される。
アニサキス症の治療は、一般的には虫体の摘出術が施行されるが、近年、抗アレルギー薬投与のみで改善することも報告されている(日本医科大学医学会雑誌 2012; 8: 179-180)。
一方、アニサキスアレルギーへの対処としてコンセンサスの得られたものはないが、発症当初は加熱、非加熱の別なく魚介類の摂取を全面的に禁止し、特異的免疫グロブリン(Ig)E抗体価が十分に低下してきたら生の魚類とイカ以外は摂取を許可するなど、段階的に制限を緩和していく方法でうまくいっているという。
さらに福冨氏は、調理業従事者などが有する手湿疹が食物アレルギー発症・増悪の強い危険因子であるとする報告を取り上げた。
ただし、これらの特異的IgE抗体価は経皮曝露の回避により低下することが確認されている。
そのため、同氏は「手湿疹がある場合は原因となっている食物の調理を避ける、あるいは調理時に手袋を装着するなどの対策を講じるとよい」と指摘した。(陶山慎晃)
「Medical Tribune」2018年07月10日