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熱中症の見分け方 [医療小文]

 熱中症の見分け方

 暑い日にぐったりしている人が、軽症の熱中症なのか、ただちに病院へ運ぶべきか。

 その見分け方は、「まず体温、そして意識です」と、木村昭夫・国立国際医療センター救命救急センター長 。

 手で触って皮膚が熱く、乾いてかさかさしている。

 耳元で呼びかけても返事がないこん睡状態だったら、超緊急の処置を要する。

 ちゃんとした応対ができる状態だったら、それほどあわてなくてもよい。

 乳幼児は泣いているようならまず安心だが、ぐったりしていたら要注意。  ちょっとつねっても泣きもしないのはきわめて重症。すぐ救急車を呼ぼう。

 救急車を待つ間は、できる限り涼しいところに寝かせて、襟元のボタンやベルトなどをゆるめてあげる。

 体温を下げるには、動脈が皮下の近くを走っているところ(首の横、わきの下、足のつけ根)を冷やす。冷たいタオルや氷のうを当てるか、水をかけたあと、湿ったタオルをのせてうちわであおぐのもよい。

 絶対にやってはいけないのは、こん睡状態の人に水を飲ませようとすること。窒息しかねない。

 分類 程度 症状

Ⅰ度 軽症度 四肢や腹筋などに痛みをともなった痙攣(腹痛がみられることもある)

○多量の発汗の中、水(塩分などの電解質が入っていない)のみを補給した場合に、起こりやすいとされている。

○全身の痙攣は(この段階では)みられない。

失神(数秒間程度なもの)

○失神の他に、脈拍が速く弱い状態になる、呼吸回数の増加、顔色が悪くなる、唇がしびれる、めまい、などが見られることがある。

○運動をやめた直後に起こることが多いとされている。

○運動中にあった筋肉によるポンプ作用が運動を急に止めると止まってしまうことにより、一時的に脳への血流が減ること、また、長時間、あつい中での活動のため、末梢血管が広がり、相対的に全身への血液量が減少を起こすことによる。

Ⅱ度 中等度 めまい感、疲労感、虚脱感、頭重感(頭痛)、失神、吐き気、嘔吐などのいくつかの症状が重なり合って起こる

○血圧の低下、頻脈(脈の速い状態)、皮膚の蒼白、多量の発汗などのショック症状が見られる。

○脱水と塩分などの電解質が失われて、末梢の循環が悪くなり、極度の脱力状態となる。

○放置あるいは誤った判断を行なえば重症化し、Ⅲ度へ移行する危険性がある 。

Ⅲ度 重傷度 意識障害、おかしな言動や行動、過呼吸、ショック症状などが、Ⅱ度の症状に重なり合って起こる

○自己温度調節機能の破錠による中枢神経系を含めた全身の多臓器障害。

○重篤で、体内の血液が凝固し、脳、肺、肝臓、腎臓などの全身の臓器の障害を生じる多臓器不全となり、死亡に至る危険性が高い。
 
 屋外で長時間の作業に従事する人は、温度と相対湿度から算出する体感温度「熱指数」(Heat Index)が摂氏29.4度程度であっても、熱中症で死に至る可能性のあることが、米国労働安全衛生局(OSHA)のAaron Tustin氏らによる研究で明らかになった。

 同氏らが屋外作業中に熱中症になった25症例を検討したところ、死亡した14例中6例は作業時の熱指数が摂氏32.8度未満であったことが分かった。

 詳細は、米疾病対策センター(CDC)発行の「Morbidity and Mortality Weekly Report」7月6日号に掲載された。

 この研究でTustin氏らは、2011~2016年に屋外での勤務中に発生した熱中症の25症例に着目。

 このうち14例が死亡した。

 それぞれの症例について、熱中症のリスク因子の保有状況や熱への順化度(暑い作業環境に身体が適応できていたかどうか)、仕事量や作業負荷、服装について詳しく調べた。

 降圧薬や利尿薬は脱水リスクを高める可能性

 その結果、25例中12例が肥満や糖尿病、高血圧、心疾患、降圧薬や利尿薬などの特定の薬剤や違法薬物の使用といった、熱中症のリスク因子を一つ以上保有していたことが分かった。

 専門家によると、降圧薬や利尿薬は身体の体液バランスに影響し、猛暑時には脱水リスクを高める可能性があるという。

 また、発症当時には、死亡した14例中13例は中等度以上の負荷がかかる作業を行っていた。

 服装をみると、25例中4例は通気性の悪い厚手の服を着用していた。

 さらに、25症例全体では、発症時の熱指数の中央値は摂氏33.3度であったが、その幅には28.3度から43.3度までばらつきがみられた。
 
 なお、今回の研究では、熱中症予防の目安として広く用いられている暑さ指標(WBGT:気温と湿度、風速、輻射熱を考慮して数値化したもの)ではなく、温度と相対湿度から算出する体感温度「熱指数」が用いられた。

 なお、熱中症は、特に身体が高い気温に慣れていない梅雨から夏の初めの頃が特に危険で、注意する必要があるという。

 専門家の一人で米レノックス・ヒル病院救急科のRobert Glatter氏は、数多くの熱中症患者の診療に当たった経験から、「熱中症は救急搬送が必要な危険な状態だ」と強調する。

 熱中症になると体温40度以上の高熱や意識障害、大量の発汗などがみられるようになる。

 応急処置として涼しい場所に移し、氷水をかけるなどで身体を冷やし、体温を下げることが重要になるという。

 熱中症の症状と対処法

 Glatter氏は、夏場に屋外で作業するときは厚着を避けて吸湿性や通気性のよい素材の服を選び、こまめに水分補給をすることを強く勧めている。

 水分補給時には塩分を含んだ経口補水液などを摂取し、脱水をもたらすカフェインの過剰摂取は避ける必要があるとしている。その他の注意点は以下のとおり。

・気温と湿度の上昇をモニター(監視)し、予防策を講じる責任者を決める 。

・作業を始める前に、高温多湿の作業環境に作業者の身体を慣れさせる。熱中症のリスク因子がある人には特に注意を払う。

・日陰や冷房の効いた場所でこまめに休憩する。

・水分や電解質を補給できる飲み物を準備する。

(HealthDay News 2018年7月5日)Copyright [コピーライト] 2018 HealthDay. All rights reserved.

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