身長と脳卒中 [医療小文]
小児期に身長が低かった人は、成人してから脳脳卒中を発症するリスクが高い可能性がある、
とデンマークの研究チームが報告しました。
男女いずれも7歳時の身長が高いほど脳梗塞のリスクの低下が認められたということです。
脳出血については男性のみに同様の関連が認められ、7歳時の身長が平均レベルだった人と比べ、平均よりも約5cm高かった人で脳出血リスクが約11%低いことがわかりました。
「小児期に身長が低いことは脳卒中リスクの高さを示すシグナルと考えられる。
この研究結果を知ることで、身長以外の修正可能な脳卒中のリスク因子に対する取り組みの強化につなげてほしい」
と研究リーダーは話しています。
とデンマークの研究チームが報告しました。
男女いずれも7歳時の身長が高いほど脳梗塞のリスクの低下が認められたということです。
脳出血については男性のみに同様の関連が認められ、7歳時の身長が平均レベルだった人と比べ、平均よりも約5cm高かった人で脳出血リスクが約11%低いことがわかりました。
「小児期に身長が低いことは脳卒中リスクの高さを示すシグナルと考えられる。
この研究結果を知ることで、身長以外の修正可能な脳卒中のリスク因子に対する取り組みの強化につなげてほしい」
と研究リーダーは話しています。
果物の糖質 [医療小文]
果物は「いくら食べてもよいとはいえません」と、
糖質制限食の提唱者、江部康二・高尾病院理事長が毎日新聞・医療プレミアムで述べています。
糖尿病の人が1人前の果物を食べると、食後高血糖が生じ、合併症のリスクになります。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版は、「動脈硬化性疾患予防のための生活習慣の改善」の項目で、
「糖質含有量の少ない果物を適度に摂取する」ことをすすめています。
この考え方は「生理学的事実に基づいた糖質制限理論」と合致しています。
果糖はブドウ糖の数十倍「終末糖化産物」を作りやすいことがわかっています。
果物は糖質制限のさいに注意すべき食品です。
糖質制限食の提唱者、江部康二・高尾病院理事長が毎日新聞・医療プレミアムで述べています。
糖尿病の人が1人前の果物を食べると、食後高血糖が生じ、合併症のリスクになります。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版は、「動脈硬化性疾患予防のための生活習慣の改善」の項目で、
「糖質含有量の少ない果物を適度に摂取する」ことをすすめています。
この考え方は「生理学的事実に基づいた糖質制限理論」と合致しています。
果糖はブドウ糖の数十倍「終末糖化産物」を作りやすいことがわかっています。
果物は糖質制限のさいに注意すべき食品です。
タグ:終末糖化産物
危険なほくろ [医療小文]
医学的には色素性母斑や単純黒子などと呼ばれる「ほくろ」。良性の腫瘍に分類されます。しかし、何かしら変化がみられたら、要注意です。
ほくろは、メラニン色素を生み出すメラノサイトという細胞が集まってできたもので、良性の腫瘍に分類されます。
生まれつきのものもありますが、後天的なものは小児期から思春期に増え、それ以降はあまり増えることはありません。
女性の場合、ホルモン分泌の変化によって、妊娠中に増える人もみられます。
しかし、形のおかしいほくろができた、前からあったものの一部の色が濃くなってきたなど、何かしら変化がみられたら、要注意です。
皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」が疑われる場合があります。
メラノサイト(色素細胞)が「がん化」する
皮膚は、表皮(角質層、顆粒層、有棘層、基底層)、真皮、皮下組織と、何層もの組織でできています。
メラノーマは、表皮の基底層にあるメラノサイトが、がん化したものです。
メラノサイトがあれば、全身のどこでも発症する可能性があり、ときにはまぶたや鼻腔、唇、口腔などにできることも。
また、進行が速いものでは、肺や肝臓、骨、リンパ節などに転移することも少なくないのです。
メラノーマの4つのタイプ
メラノーマは、できやすい部位や形状などによって、主に4つのタイプに分けられます。
1.末端黒子型
日本人に最も多いタイプ/足の裏や手のひら、手足の爪などにできやすい/褐色・黒褐色の小さなシミが広がっていき黒くなる/潰瘍ができることもある/爪にできる場合、黒褐色のスジが縦に入り、広がっていく
2.表在拡大型
メラニン色素の少ない白色人種に多いタイプ/胸、腹、背中などの体幹や、四肢のどこにでも発症する/小さなシミが、徐々に濃くなり、盛り上がっていく
3.結節型
部位を問わず発生する/進行が速く転移しやすいため、メラノーマの中で最も悪性度の高いタイプ/突然ほくろのような黒い盛り上がりができ、それが徐々に大きくなっていく
4.悪性黒子型
高齢者に多い/日光にさらされている顔に発生しやすく、首や手の甲などにできることもある/褐色・黒褐色のシミが濃くなりながら徐々に大きくなる/しこりやこぶになることもある/紫外線と外的刺激が発症要因に
メラノーマの罹患率は、高齢になるほど上がります。
これは紫外線の影響で、高齢者ほど紫外線を浴びてきた期間が長くなるためだと考えられています。
日焼け止めの使用で、メラノーマの発生率が下がるという報告もあります。
一方、日本人は足の裏など紫外線の影響を受けにくい部位の発症が多く、体重がかかったり、衣類でこすれるなどの刺激も要因のひとつと考えられています。
転移、再発に注意が必要
治療の基本は切除手術です。
再発防止のため、がんの縁から1~2cm程度の範囲を切除します。
また、切除した部位や範囲によって、皮膚の一部を移植することもあります。
なお、メラノーマはリンパ節に転移しやすい疾患のため、手術の際に「センチネルリンパ節生検」が行われます。
近年の研究で、がん細胞が一番初めに到達するセンチネルリンパ節に転移が認められなければ、転移の心配はほとんどないことがわかったためです。
しかし、なかには術後の早い時期に再発や転移がみられることあり、経過観察を続けることが必要となります。
また、抗がん剤による化学療法や放射線治療は、あまり有効性が高くないと考えられています。
ほかに、ニボルマブ、イピリムマブなどNKT細胞を利用した免疫療法などがありますが、その効果は一定していません。
このようなことからも、メラノーマは早期発見が非常に大切だといえるでしょう。
メラノーマを見逃さないために
メラノーマは、良性のほくろやシミとの違いがわかりづらく、見逃されやすいといえます。
しかし、注意深く観察すれば、自分でも発見できる「がん」なのです。
メラノーマは大きさや形状などが次第に変化していくので、1年に1回は全身のチェックをしましょう。
頭や背中など自分で見えない部分は、家族や身近な人と確認し合うことをおすすめします。
【早期発見しやすい特徴】
今までなかった場所にできた/足の裏や手のひらでは直径が7mm以上ある(直径の目安は6mm以上など諸説あります)/色にムラがある/輪郭がギザギザしている、にじみ出たようになっている/形が左右非対称である/爪に褐色または黒褐色の細い縦のスジ(色素線条)が入っている
【1~2年の間に変化して見られる特徴】
色=薄い褐色から濃い黒に変化する/色に濃淡が出てくる/一部の色が抜けてまだらになる
大きさ=明らかに大きくなっている(1年以内の短期間で大きくなるものは特に注意が必要)/形=輪郭がギザギザしたり、左右非対称になってくる/輪郭の一部から色が染み出して見える/一部が盛り上がったりしこりができる
かたさ=一部または全部がかたくなってくる(通常、ほくろのかたさは均一)
□爪=縦のスジの色が濃くなってくる/スジの幅が広くなってくる/爪が割れたり、爪の生え際に色が染み出したりする
早期発見のためにも、チェックポイントに当てはまるようなほくろやシミを見つけたら、速やかに皮膚科を受診してください。大きさの変化などを確認するには、写真を保存しておくと比較しやすいでしょう。
受診の際は、いつごろ現れたのか、変化に気づいた時期などを可能な限り医師に伝えるようにします。
外的な刺激もメラノーマの発生要因になると考えられているので、ほくろやシミを気にして頻繁にさわったり、傷つけたりすることはやめましょう。
ダーモスコピー検査と皮膚生検
「ダーモスコピー」は、患部を拡大して観察する医療機器で、メラノーマの診察に用いられます。専門医でも見分けのつきにくいほくろやシミの状態を、より詳しく観察できるため、早期発見に役立ちます。
それでも診断がつかない場合、患部を慎重に採取して顕微鏡でさらに詳しく調べる「皮膚生検」を行うこともあります。
ただし、皮膚科専門医であってもダーモスコピー検査を行っていない場合もあるので、事前に確認してから受診するとよいでしょう。
監修:関東中央病院皮膚科特別顧問 日野治子
ほくろは、メラニン色素を生み出すメラノサイトという細胞が集まってできたもので、良性の腫瘍に分類されます。
生まれつきのものもありますが、後天的なものは小児期から思春期に増え、それ以降はあまり増えることはありません。
女性の場合、ホルモン分泌の変化によって、妊娠中に増える人もみられます。
しかし、形のおかしいほくろができた、前からあったものの一部の色が濃くなってきたなど、何かしら変化がみられたら、要注意です。
皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」が疑われる場合があります。
メラノサイト(色素細胞)が「がん化」する
皮膚は、表皮(角質層、顆粒層、有棘層、基底層)、真皮、皮下組織と、何層もの組織でできています。
メラノーマは、表皮の基底層にあるメラノサイトが、がん化したものです。
メラノサイトがあれば、全身のどこでも発症する可能性があり、ときにはまぶたや鼻腔、唇、口腔などにできることも。
また、進行が速いものでは、肺や肝臓、骨、リンパ節などに転移することも少なくないのです。
メラノーマの4つのタイプ
メラノーマは、できやすい部位や形状などによって、主に4つのタイプに分けられます。
1.末端黒子型
日本人に最も多いタイプ/足の裏や手のひら、手足の爪などにできやすい/褐色・黒褐色の小さなシミが広がっていき黒くなる/潰瘍ができることもある/爪にできる場合、黒褐色のスジが縦に入り、広がっていく
2.表在拡大型
メラニン色素の少ない白色人種に多いタイプ/胸、腹、背中などの体幹や、四肢のどこにでも発症する/小さなシミが、徐々に濃くなり、盛り上がっていく
3.結節型
部位を問わず発生する/進行が速く転移しやすいため、メラノーマの中で最も悪性度の高いタイプ/突然ほくろのような黒い盛り上がりができ、それが徐々に大きくなっていく
4.悪性黒子型
高齢者に多い/日光にさらされている顔に発生しやすく、首や手の甲などにできることもある/褐色・黒褐色のシミが濃くなりながら徐々に大きくなる/しこりやこぶになることもある/紫外線と外的刺激が発症要因に
メラノーマの罹患率は、高齢になるほど上がります。
これは紫外線の影響で、高齢者ほど紫外線を浴びてきた期間が長くなるためだと考えられています。
日焼け止めの使用で、メラノーマの発生率が下がるという報告もあります。
一方、日本人は足の裏など紫外線の影響を受けにくい部位の発症が多く、体重がかかったり、衣類でこすれるなどの刺激も要因のひとつと考えられています。
転移、再発に注意が必要
治療の基本は切除手術です。
再発防止のため、がんの縁から1~2cm程度の範囲を切除します。
また、切除した部位や範囲によって、皮膚の一部を移植することもあります。
なお、メラノーマはリンパ節に転移しやすい疾患のため、手術の際に「センチネルリンパ節生検」が行われます。
近年の研究で、がん細胞が一番初めに到達するセンチネルリンパ節に転移が認められなければ、転移の心配はほとんどないことがわかったためです。
しかし、なかには術後の早い時期に再発や転移がみられることあり、経過観察を続けることが必要となります。
また、抗がん剤による化学療法や放射線治療は、あまり有効性が高くないと考えられています。
ほかに、ニボルマブ、イピリムマブなどNKT細胞を利用した免疫療法などがありますが、その効果は一定していません。
このようなことからも、メラノーマは早期発見が非常に大切だといえるでしょう。
メラノーマを見逃さないために
メラノーマは、良性のほくろやシミとの違いがわかりづらく、見逃されやすいといえます。
しかし、注意深く観察すれば、自分でも発見できる「がん」なのです。
メラノーマは大きさや形状などが次第に変化していくので、1年に1回は全身のチェックをしましょう。
頭や背中など自分で見えない部分は、家族や身近な人と確認し合うことをおすすめします。
【早期発見しやすい特徴】
今までなかった場所にできた/足の裏や手のひらでは直径が7mm以上ある(直径の目安は6mm以上など諸説あります)/色にムラがある/輪郭がギザギザしている、にじみ出たようになっている/形が左右非対称である/爪に褐色または黒褐色の細い縦のスジ(色素線条)が入っている
【1~2年の間に変化して見られる特徴】
色=薄い褐色から濃い黒に変化する/色に濃淡が出てくる/一部の色が抜けてまだらになる
大きさ=明らかに大きくなっている(1年以内の短期間で大きくなるものは特に注意が必要)/形=輪郭がギザギザしたり、左右非対称になってくる/輪郭の一部から色が染み出して見える/一部が盛り上がったりしこりができる
かたさ=一部または全部がかたくなってくる(通常、ほくろのかたさは均一)
□爪=縦のスジの色が濃くなってくる/スジの幅が広くなってくる/爪が割れたり、爪の生え際に色が染み出したりする
早期発見のためにも、チェックポイントに当てはまるようなほくろやシミを見つけたら、速やかに皮膚科を受診してください。大きさの変化などを確認するには、写真を保存しておくと比較しやすいでしょう。
受診の際は、いつごろ現れたのか、変化に気づいた時期などを可能な限り医師に伝えるようにします。
外的な刺激もメラノーマの発生要因になると考えられているので、ほくろやシミを気にして頻繁にさわったり、傷つけたりすることはやめましょう。
ダーモスコピー検査と皮膚生検
「ダーモスコピー」は、患部を拡大して観察する医療機器で、メラノーマの診察に用いられます。専門医でも見分けのつきにくいほくろやシミの状態を、より詳しく観察できるため、早期発見に役立ちます。
それでも診断がつかない場合、患部を慎重に採取して顕微鏡でさらに詳しく調べる「皮膚生検」を行うこともあります。
ただし、皮膚科専門医であってもダーモスコピー検査を行っていない場合もあるので、事前に確認してから受診するとよいでしょう。
監修:関東中央病院皮膚科特別顧問 日野治子
タグ:悪性黒色腫(メラノーマ)
肥満⇒膵臓がん [医療小文]
10代後半の肥満で膵臓がんリスク増
10歳代の後半に肥満だった人は、成人後に膵臓(すいぞう)がんになりやすい可能性があることが、イスラエルで実施された新たな研究で示された。
男女とも肥満の人は適正体重の場合に比べて膵臓がんリスクは約4倍であることが分かった。
研究の詳細は「Cancer」オンライン版に掲載された。
ラビン医療センターおよびテルアビブ大学(いずれもイスラエル)のZohar Levi氏は、
1967~2002年に16~19歳で身体検査を受けたイスラエルのユダヤ人男性108万7,358人と女性70万7,212人を対象に、10歳代後半のBMIと成人後の膵臓がん罹患との関連を調べた。
研究では全国がん登録を用いて、2012年までの膵臓がん罹患の有無を追跡した。
中央値で23年の追跡期間中に551人が新たに膵臓がんに罹患していた。
解析の結果、適正体重の人に比べて、肥満の男性では膵臓がんの罹患リスクは3.67倍であり、女性では4.07倍であることが分かった。
また、男性は肥満ではなくともBMIが正常高値や過体重であれば膵臓がんリスクが上昇することも明らかになった。
Levi氏らは、膵臓がん症例の約11%は10歳代後半の過体重や肥満に起因するのではとの見方を示している。
専門家の一人で米膵臓がんアクションネットワークのAllison Rosenzweig氏は、
「これまでの研究でも肥満が膵臓がんリスクを増大させる可能性については報告されていた。
しかし、この研究は、思春期から青年期にかけての肥満や過体重も膵臓がんリスクに影響することを示唆する重要な結果だ」と述べている。
ただし、今回の研究は参加者を後ろ向きに追跡した観察研究であり、過体重や肥満が膵臓がんの原因であることを裏付けるものではない。
Rosenzweig氏は、
「膵臓がんは比較的まれな疾患で、米国では年間、約5万5,000人が罹患(りかん)すると推定されている。
そのため、肥満の人が膵臓がんになる確率は全体的には低く、喫緊の課題というわけではないと思われる」と述べている。
ただし、米国では膵臓がんはがんによる死亡原因の第3位を占め、5年生存率は10%を下回るとされている点を重視すべきだとしている。
Mayanei Hayeshua医療センター(イスラエル)のChanan Meydan氏はこの論文の付随論評で、青年期の体重増加は身体の炎症を引き起こし、細胞が傷害されてがんリスクが増大する可能性を指摘している。
同氏は、
「肥満による炎症プロセスと悪性腫瘍の炎症プロセスの関連を明らかにすることはとても興味深い」と述べ、
「これらの炎症の背景にあるメカニズムを解明することが、肥満とがんの関連を理解するのに役立つだろう」と付け加えている。
10歳代の後半に肥満だった人は、成人後に膵臓(すいぞう)がんになりやすい可能性があることが、イスラエルで実施された新たな研究で示された。
男女とも肥満の人は適正体重の場合に比べて膵臓がんリスクは約4倍であることが分かった。
研究の詳細は「Cancer」オンライン版に掲載された。
ラビン医療センターおよびテルアビブ大学(いずれもイスラエル)のZohar Levi氏は、
1967~2002年に16~19歳で身体検査を受けたイスラエルのユダヤ人男性108万7,358人と女性70万7,212人を対象に、10歳代後半のBMIと成人後の膵臓がん罹患との関連を調べた。
研究では全国がん登録を用いて、2012年までの膵臓がん罹患の有無を追跡した。
中央値で23年の追跡期間中に551人が新たに膵臓がんに罹患していた。
解析の結果、適正体重の人に比べて、肥満の男性では膵臓がんの罹患リスクは3.67倍であり、女性では4.07倍であることが分かった。
また、男性は肥満ではなくともBMIが正常高値や過体重であれば膵臓がんリスクが上昇することも明らかになった。
Levi氏らは、膵臓がん症例の約11%は10歳代後半の過体重や肥満に起因するのではとの見方を示している。
専門家の一人で米膵臓がんアクションネットワークのAllison Rosenzweig氏は、
「これまでの研究でも肥満が膵臓がんリスクを増大させる可能性については報告されていた。
しかし、この研究は、思春期から青年期にかけての肥満や過体重も膵臓がんリスクに影響することを示唆する重要な結果だ」と述べている。
ただし、今回の研究は参加者を後ろ向きに追跡した観察研究であり、過体重や肥満が膵臓がんの原因であることを裏付けるものではない。
Rosenzweig氏は、
「膵臓がんは比較的まれな疾患で、米国では年間、約5万5,000人が罹患(りかん)すると推定されている。
そのため、肥満の人が膵臓がんになる確率は全体的には低く、喫緊の課題というわけではないと思われる」と述べている。
ただし、米国では膵臓がんはがんによる死亡原因の第3位を占め、5年生存率は10%を下回るとされている点を重視すべきだとしている。
Mayanei Hayeshua医療センター(イスラエル)のChanan Meydan氏はこの論文の付随論評で、青年期の体重増加は身体の炎症を引き起こし、細胞が傷害されてがんリスクが増大する可能性を指摘している。
同氏は、
「肥満による炎症プロセスと悪性腫瘍の炎症プロセスの関連を明らかにすることはとても興味深い」と述べ、
「これらの炎症の背景にあるメカニズムを解明することが、肥満とがんの関連を理解するのに役立つだろう」と付け加えている。
筋トレと心臓 [医療小文]
週60分までの筋トレが心臓の健康に良い?
筋力トレーニングなどのレジスタンス運動を週に60分まで行うと、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが有意に低下する可能性があることが、米アイオワ州立大学准教授のDuck-chul Lee氏らの研究で示された。
一方で、レジスタンス運動を週に60分以上行っても、これらの心血管疾患(CVD)リスクのさらなる低下はみられないことも分かった。
詳細は「Medicine & Science in Sports & Exercise」オンライン版に発表された。
Lee氏らは、レジスタンス運動による健康効果に着目。
すでに、レジスタンス運動を週に60分まで行うと脂質異常症やメタボリック症候群になるリスクが低下することを報告している。
そこで今回、同氏らはレジスタンス運動の心血管系への影響を調べるため、1987~2006年に2回以上診察を受けた男女1万2591人(平均年齢47歳)を対象に、平均で5.4年および10.5年間の追跡調査を実施した。
結果、週に1~3回または60分未満のレジスタンス運動を行った人では、全く行わなかった人と比べて、CVDイベントの発生リスクが40~70%低いことが分かった。
レジスタンス運動によるこれらのベネフィットは、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動とは独立していた。
一方、レジスタンス運動をより頻回(週に4回以上)あるいは週に60分以上行ってもCVDリスクはこれ以上低下しなかった。
Lee氏によれば、これまで筋力トレーニングはスポーツ選手が行うものと考えられ、心血管系への効果についてはあまり検討されていなかった。
同氏は「ランニングなどの有酸素運動が心血管系に良い影響を与えることは知られていた。
この結果から、筋力トレーニングにも同様のベネフィットがあることが明らかになった」と述べている。
研究には関与していない、米マウントサイナイ・リバーサイド医療グループのAlon Gitig氏も、
「筋力トレーニングには見た目をよくするだけではなく、健康へのベネフィットがあるのは明らかで、心血管の状態にも直接影響するようだ」と評価している。
また、Lee氏は、この研究では、レジスタンス運動の心臓へのベネフィットはBMIが変わらなくても認められたことを指摘。
その上で、「運動の健康効果は減量に伴うものだと考えられてきたが、そうではないことが示された」と話している。
ただし、今回の研究は、筋力トレーニングを行うと心筋梗塞や脳卒中を防げることが証明されたわけではない。
Gitig氏は「参加者の多くは白人男性で、自ら医療機関を受診した人が多かったため、より健康的だった可能性がある」として、結果の解釈には慎重になるべきだとの考えを述べている。
筋力トレーニングなどのレジスタンス運動を週に60分まで行うと、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが有意に低下する可能性があることが、米アイオワ州立大学准教授のDuck-chul Lee氏らの研究で示された。
一方で、レジスタンス運動を週に60分以上行っても、これらの心血管疾患(CVD)リスクのさらなる低下はみられないことも分かった。
詳細は「Medicine & Science in Sports & Exercise」オンライン版に発表された。
Lee氏らは、レジスタンス運動による健康効果に着目。
すでに、レジスタンス運動を週に60分まで行うと脂質異常症やメタボリック症候群になるリスクが低下することを報告している。
そこで今回、同氏らはレジスタンス運動の心血管系への影響を調べるため、1987~2006年に2回以上診察を受けた男女1万2591人(平均年齢47歳)を対象に、平均で5.4年および10.5年間の追跡調査を実施した。
結果、週に1~3回または60分未満のレジスタンス運動を行った人では、全く行わなかった人と比べて、CVDイベントの発生リスクが40~70%低いことが分かった。
レジスタンス運動によるこれらのベネフィットは、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動とは独立していた。
一方、レジスタンス運動をより頻回(週に4回以上)あるいは週に60分以上行ってもCVDリスクはこれ以上低下しなかった。
Lee氏によれば、これまで筋力トレーニングはスポーツ選手が行うものと考えられ、心血管系への効果についてはあまり検討されていなかった。
同氏は「ランニングなどの有酸素運動が心血管系に良い影響を与えることは知られていた。
この結果から、筋力トレーニングにも同様のベネフィットがあることが明らかになった」と述べている。
研究には関与していない、米マウントサイナイ・リバーサイド医療グループのAlon Gitig氏も、
「筋力トレーニングには見た目をよくするだけではなく、健康へのベネフィットがあるのは明らかで、心血管の状態にも直接影響するようだ」と評価している。
また、Lee氏は、この研究では、レジスタンス運動の心臓へのベネフィットはBMIが変わらなくても認められたことを指摘。
その上で、「運動の健康効果は減量に伴うものだと考えられてきたが、そうではないことが示された」と話している。
ただし、今回の研究は、筋力トレーニングを行うと心筋梗塞や脳卒中を防げることが証明されたわけではない。
Gitig氏は「参加者の多くは白人男性で、自ら医療機関を受診した人が多かったため、より健康的だった可能性がある」として、結果の解釈には慎重になるべきだとの考えを述べている。
テストステロン [医療小文]
テストステロンで男らしさと健やかさを保て!
人生100年時代において、いかに健康寿命を延ばすかが重視されている。
ところが、男性における多くの疾患の診療アウトカムは女性より不良だ。
最近ではメンズヘルスという言葉も生まれているが、いかにして男性の健康を守っていけばよいか。
順天堂大学泌尿器外科学の堀江重郎教授は、第12回日本性差医学・医療学会(1月19~20日)でさまざまな疫学データを紹介、テストステロンをキーワードに男性の健康について考察した。
男らしさとは「冒険」「社会性」「競争」!
ヒトの体の基本形は、女性だといわれている。
そこから男性へと変化する一次性徴(母胎内での性器の発現)、二次性徴(思春期から成人男性への発育)は、男性の精巣(睾丸)と副腎で作られたテストステロンに促される。
テストステロンは「男らしさ」をつかさどるホルモンといえるだろう。
一方、女性でも卵巣、脂肪や副腎からテストステロンは産生されており、生殖年齢における女性ではエストロゲンの10倍以上のテストステロンが、体内で働いているといわれている。
堀江教授は、男らしさの側面からテストステロンをひもとくと、その働きは3つのキーワードに表せると言う。
①狩猟、旅、新しいことへのチャレンジに関わる「冒険」
②仲間、家族、他人との関わり、縄張りに関わる「社会性」
③ギャンブル、ゲーム、スポーツ、仕事などにおける達成感や順位へのこだわりに関わる「競争」ーー。
リスクもチャレンジも大好きなテストステロン
ここで堀江教授は、ニューギニアの先住民における検討を紹介した。
対象となる先住民は、家を出て狩猟に出かける道筋でテストステロン値が上昇し、獲物を仕留めるとその値はピークに達した。
上昇の度合いは出発時に比べて有意であった。
その後徐々にテストステロン値は低下するものの、帰宅するまで高値を示していた。
一方で、獲物を仕留め損ねると、一気にテストステロン値は低下し、出発時よりもさらに低い値になった。
「獲物を得ようとするとテストステロン値が上がり、かつ獲物を得るとさらにテストステロン値が上がる。
『冒険』に関わる男らしさを示すデータだ」と教授は述べた。
その延長で、リスクを取る行為、チャレンジする行為においてもテストステロン値は上昇する。
報酬系をつかさどる脳の線状体のアクティビティとテストステロン値は相関することが明らかにされている。
はつらつとし、利他の精神で社会貢献に努め、公明正大であることは、テストステロンの働き②の「社会性」に当たる。
堀江教授が紹介した2009年に行われた二重盲検ランダム化比較試験によると、プラセボを投与した群に対して、テストステロンを投与した群で社会貢献度が高値を示した。
なお、この試験の対象は女性であったと、教授は説明を加えた。
前述の通り、テストステロンは女性にとっても重要なホルモンだが、分泌量の性差はどれほどなのだろうか。
ある疫学データでは、活性のある量を唾液で見ると、男性は30歳代では幅広く正規分布しているのに対し、女性は対数変換すると正規分布するという結果であった。
しかし、「女性の中にも本当の意味での"男勝り"な人がいる。実のところ、女性においてもとりわけ閉経後にはテストステロンが重要になる」と教授は付言した。
認知機能の向上にも関わるテストステロン
テストステロンは、身体のさまざまな組織や機能に関与する。骨、筋肉、血液、性機能、血管、脂質代謝などへの影響が知られているが、ここで堀江教授は、テストステロンの認知機能への影響を示した研究を紹介した。
モリス水迷路※を用いた実験で、テストステロン値が低い老化モデルマウスにテストステロン投与を行うと、正常モデルほどではないが、泳ぐ回数を重ねるごとに島にたどり着く時間が短縮し、認知機能の向上による学習効果が認められた。
※モリス水迷路=マウス実験用の装置。水を張ったバケツの中に、陸地を作製。マウスは本能的に陸地を求めて泳ぐことから、バケツに入れてから陸地にたどり着くまでの時間を計り、そこから認知機能を計測する。
テストステロン減少によるデメリットは多い
堀江教授は、テストステロン低下による影響についても言及した。
テストステロンが減少すると集中力が低下する、人間関係がおっくうになる、眠りが浅くなる、痛みを感じやすくなるなど、社会活動に支障を来す原因ともなりうることが分かっている。
テストステロン値低下を促す原因の1つがストレスだ。テストステロンは男性の場合ほとんどが精巣でつくられているが、ストレスによって視床下部から抑制的な指令が出る。
また、テストステロンの分泌は加齢とともに減少する。
「統計上の平均値は確かに低下しているが、テストステロン値の低下と加齢の関係にはかなり個人差があるのではないか」と教授は述べる。
コホート研究では、テストステロン値が低いほど早期に死亡するという傾向が明らかにされている。また、他の研究でも、テストステロン値が低くなるにつれて心血管死亡率、がん死亡率が高くなることが報告されている。
それだけではない。フレイル、うつ、排尿障害、筋肉量の低下、認知症、転倒など、テストステロンの減少が及ぼす悪影響ついてはさまざまな報告が明らかにしている。
教授らによる研究でも、テストステロン値が低い患者では転倒リスクが上昇することや、腎機能の低下するスピードが上昇する、すなわち臓器障害が進展するということが示された。
テストステロンをキーワードに男性の健康を解説した教授は、最後に、
「最近では、ウィメンズヘルスに呼応する形でメンズヘルスという言葉が使用され、男性の健康が注目されるようになってきている。
テストステロンはメンズヘルスのバイオマーカーとしても有用なため、テストステロン値を測り、活用することが求められる。
また、テストステロンはジェンダー、セックスいずれの男性性にも関連している。社会的にも生物的にも、男性はテストステロンをなるべく多く保つことが望ましいのではないか」と締めくくった。
人生100年時代において、いかに健康寿命を延ばすかが重視されている。
ところが、男性における多くの疾患の診療アウトカムは女性より不良だ。
最近ではメンズヘルスという言葉も生まれているが、いかにして男性の健康を守っていけばよいか。
順天堂大学泌尿器外科学の堀江重郎教授は、第12回日本性差医学・医療学会(1月19~20日)でさまざまな疫学データを紹介、テストステロンをキーワードに男性の健康について考察した。
男らしさとは「冒険」「社会性」「競争」!
ヒトの体の基本形は、女性だといわれている。
そこから男性へと変化する一次性徴(母胎内での性器の発現)、二次性徴(思春期から成人男性への発育)は、男性の精巣(睾丸)と副腎で作られたテストステロンに促される。
テストステロンは「男らしさ」をつかさどるホルモンといえるだろう。
一方、女性でも卵巣、脂肪や副腎からテストステロンは産生されており、生殖年齢における女性ではエストロゲンの10倍以上のテストステロンが、体内で働いているといわれている。
堀江教授は、男らしさの側面からテストステロンをひもとくと、その働きは3つのキーワードに表せると言う。
①狩猟、旅、新しいことへのチャレンジに関わる「冒険」
②仲間、家族、他人との関わり、縄張りに関わる「社会性」
③ギャンブル、ゲーム、スポーツ、仕事などにおける達成感や順位へのこだわりに関わる「競争」ーー。
リスクもチャレンジも大好きなテストステロン
ここで堀江教授は、ニューギニアの先住民における検討を紹介した。
対象となる先住民は、家を出て狩猟に出かける道筋でテストステロン値が上昇し、獲物を仕留めるとその値はピークに達した。
上昇の度合いは出発時に比べて有意であった。
その後徐々にテストステロン値は低下するものの、帰宅するまで高値を示していた。
一方で、獲物を仕留め損ねると、一気にテストステロン値は低下し、出発時よりもさらに低い値になった。
「獲物を得ようとするとテストステロン値が上がり、かつ獲物を得るとさらにテストステロン値が上がる。
『冒険』に関わる男らしさを示すデータだ」と教授は述べた。
その延長で、リスクを取る行為、チャレンジする行為においてもテストステロン値は上昇する。
報酬系をつかさどる脳の線状体のアクティビティとテストステロン値は相関することが明らかにされている。
はつらつとし、利他の精神で社会貢献に努め、公明正大であることは、テストステロンの働き②の「社会性」に当たる。
堀江教授が紹介した2009年に行われた二重盲検ランダム化比較試験によると、プラセボを投与した群に対して、テストステロンを投与した群で社会貢献度が高値を示した。
なお、この試験の対象は女性であったと、教授は説明を加えた。
前述の通り、テストステロンは女性にとっても重要なホルモンだが、分泌量の性差はどれほどなのだろうか。
ある疫学データでは、活性のある量を唾液で見ると、男性は30歳代では幅広く正規分布しているのに対し、女性は対数変換すると正規分布するという結果であった。
しかし、「女性の中にも本当の意味での"男勝り"な人がいる。実のところ、女性においてもとりわけ閉経後にはテストステロンが重要になる」と教授は付言した。
認知機能の向上にも関わるテストステロン
テストステロンは、身体のさまざまな組織や機能に関与する。骨、筋肉、血液、性機能、血管、脂質代謝などへの影響が知られているが、ここで堀江教授は、テストステロンの認知機能への影響を示した研究を紹介した。
モリス水迷路※を用いた実験で、テストステロン値が低い老化モデルマウスにテストステロン投与を行うと、正常モデルほどではないが、泳ぐ回数を重ねるごとに島にたどり着く時間が短縮し、認知機能の向上による学習効果が認められた。
※モリス水迷路=マウス実験用の装置。水を張ったバケツの中に、陸地を作製。マウスは本能的に陸地を求めて泳ぐことから、バケツに入れてから陸地にたどり着くまでの時間を計り、そこから認知機能を計測する。
テストステロン減少によるデメリットは多い
堀江教授は、テストステロン低下による影響についても言及した。
テストステロンが減少すると集中力が低下する、人間関係がおっくうになる、眠りが浅くなる、痛みを感じやすくなるなど、社会活動に支障を来す原因ともなりうることが分かっている。
テストステロン値低下を促す原因の1つがストレスだ。テストステロンは男性の場合ほとんどが精巣でつくられているが、ストレスによって視床下部から抑制的な指令が出る。
また、テストステロンの分泌は加齢とともに減少する。
「統計上の平均値は確かに低下しているが、テストステロン値の低下と加齢の関係にはかなり個人差があるのではないか」と教授は述べる。
コホート研究では、テストステロン値が低いほど早期に死亡するという傾向が明らかにされている。また、他の研究でも、テストステロン値が低くなるにつれて心血管死亡率、がん死亡率が高くなることが報告されている。
それだけではない。フレイル、うつ、排尿障害、筋肉量の低下、認知症、転倒など、テストステロンの減少が及ぼす悪影響ついてはさまざまな報告が明らかにしている。
教授らによる研究でも、テストステロン値が低い患者では転倒リスクが上昇することや、腎機能の低下するスピードが上昇する、すなわち臓器障害が進展するということが示された。
テストステロンをキーワードに男性の健康を解説した教授は、最後に、
「最近では、ウィメンズヘルスに呼応する形でメンズヘルスという言葉が使用され、男性の健康が注目されるようになってきている。
テストステロンはメンズヘルスのバイオマーカーとしても有用なため、テストステロン値を測り、活用することが求められる。
また、テストステロンはジェンダー、セックスいずれの男性性にも関連している。社会的にも生物的にも、男性はテストステロンをなるべく多く保つことが望ましいのではないか」と締めくくった。
脳は豆腐 [医療小文]
「転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け」
長生きのコツを聞かれて、「転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け」と答えたのは、91歳の天寿を全うした岸信介元首相だった。
老人の風邪は肺炎に進展しやすい。
転ぶと、骨折しやすく、太ももの付け根を折って寝たきりになったり、頭を打って大ごとになる例が少なくない。
脳は、豆腐のように軟らかい組織で、周りを脳脊髄液で囲まれ、頭蓋骨の中に浮かんでいる。
豆腐の入ったボウルをゴツンとぶつけると、豆腐がゴシャゴシャと動くように、頭を打つと、その衝撃で脳が1秒の10分の1とか100分の1といった速さで振動する。
頭蓋骨の中で脳が強くゆさぶられ、片方に寄る。
脳の機能が一時的に障害されて短時間、意識を失ったり、判断力が鈍ったり、記憶喪失を起こしたりする。
「脳振盪(しんとう)」と呼ばれる状態だ。
たいていすぐに回復して、大したことにはならないのだが、とっさの防御反応が鈍くなった人は、頭をまともに打って、脳の中に血液がたまる「硬膜下血腫」ができることがある。
硬膜下血腫
転んで頭を打っても、コブなどはできない。
頭の外側には何の変化も認められない。
だが脳の表面が傷つき、出血して、脳の表面と脳を覆っている硬膜の間に血液がたまり、血腫ができることがある。
硬膜下血腫という。
出血量の多い「急性硬膜下血腫」の場合、数時間内に意識を失うなどの異常が生じる。
しかし、チョロッと出血したぐらいでは症状はほとんど出ないと、脳神経外科の専門家、平川公義・東京医科歯科大学名誉教授。
「症状が出たとしても、手足の力がなんとなく弱いとか、歩くときにちょっとふらつくとか、せいぜいそんなものです」
──そして1日か2日で元に戻る。出血が吸収されてしまうからだ。
「しかし、2、3日たってもどうも頭が痛い、へんな感じがあるというようなら病院に行ってください。
何もなければそのまま何もしないで、むしろ1カ月か1カ月半たってなんだかおかしいと感じたら、CTで検査してもらい、確定診断を受けたほうがよいでしょう」
──そのとき脳では「慢性硬膜下血腫」が発生している。
脳の硬膜の内側に血の塊ができる「慢性硬膜下血腫」は、高齢者に多くみられる脳障害で、頭を打ってから1カ月、ときには2、3カ月たってから徐々に症状が現れてくる。
「頭重や頭痛も訴えますが、足がふらつき、体の片側に軽いまひが生じることもあります。
なんとなく周囲の状況がよくわからない感じで、ボーッとして反応が悪くなります。
高齢者の慢性硬膜下血腫はよく見逃されたり、誤診されて老年性痴呆と間違われることがあります。
ぼけてしまったということでほうっておかれると、治る認知症を見逃すことになります」
「また、例えば、正常圧水頭症といって、脳の中の脳脊髄液の循環が悪くなって、脳に水がたまってくる病気でも、ふらついたり、言葉がもつれたり、意識が悪くなったり、失禁したりします。
お年寄りの頭の具合がだんだんおかしくなってきたら、頭の中で何が起こっているか、詳しく調べて、原因を突き止めなければいけません」
以上、平川公義・東京医科歯科大名誉教授のアドバイス。
急告! 愛酒家諸兄
飲酒後に転倒や交通事故で頭部外傷を負うと、直後の検査では異常がないのに、半日~2日後に急死するケースがある。
頭がむくんだり腫れたりする「脳浮腫」の悪化が原因とみられていた。
松本博志・札幌医科大学教授(法医学)の研究チームは、「飲酒ラット」と「しらふラット」による実験で、そのことを確かめた。
「飲酒」したうえで頭を損傷したラットは、6時間後までは異常はなかったが、24時間後に脳浮腫が生じ、脳浮腫の原因の一つとされるたんぱく質「アクアポリン4」が大幅に増加し、約半数のラットが死んだという。
愛酒家諸兄、花見酒の季節だ。
おたがい、気をつけようぜ。
飲んだら、転ぶな!
長生きのコツを聞かれて、「転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け」と答えたのは、91歳の天寿を全うした岸信介元首相だった。
老人の風邪は肺炎に進展しやすい。
転ぶと、骨折しやすく、太ももの付け根を折って寝たきりになったり、頭を打って大ごとになる例が少なくない。
脳は、豆腐のように軟らかい組織で、周りを脳脊髄液で囲まれ、頭蓋骨の中に浮かんでいる。
豆腐の入ったボウルをゴツンとぶつけると、豆腐がゴシャゴシャと動くように、頭を打つと、その衝撃で脳が1秒の10分の1とか100分の1といった速さで振動する。
頭蓋骨の中で脳が強くゆさぶられ、片方に寄る。
脳の機能が一時的に障害されて短時間、意識を失ったり、判断力が鈍ったり、記憶喪失を起こしたりする。
「脳振盪(しんとう)」と呼ばれる状態だ。
たいていすぐに回復して、大したことにはならないのだが、とっさの防御反応が鈍くなった人は、頭をまともに打って、脳の中に血液がたまる「硬膜下血腫」ができることがある。
硬膜下血腫
転んで頭を打っても、コブなどはできない。
頭の外側には何の変化も認められない。
だが脳の表面が傷つき、出血して、脳の表面と脳を覆っている硬膜の間に血液がたまり、血腫ができることがある。
硬膜下血腫という。
出血量の多い「急性硬膜下血腫」の場合、数時間内に意識を失うなどの異常が生じる。
しかし、チョロッと出血したぐらいでは症状はほとんど出ないと、脳神経外科の専門家、平川公義・東京医科歯科大学名誉教授。
「症状が出たとしても、手足の力がなんとなく弱いとか、歩くときにちょっとふらつくとか、せいぜいそんなものです」
──そして1日か2日で元に戻る。出血が吸収されてしまうからだ。
「しかし、2、3日たってもどうも頭が痛い、へんな感じがあるというようなら病院に行ってください。
何もなければそのまま何もしないで、むしろ1カ月か1カ月半たってなんだかおかしいと感じたら、CTで検査してもらい、確定診断を受けたほうがよいでしょう」
──そのとき脳では「慢性硬膜下血腫」が発生している。
脳の硬膜の内側に血の塊ができる「慢性硬膜下血腫」は、高齢者に多くみられる脳障害で、頭を打ってから1カ月、ときには2、3カ月たってから徐々に症状が現れてくる。
「頭重や頭痛も訴えますが、足がふらつき、体の片側に軽いまひが生じることもあります。
なんとなく周囲の状況がよくわからない感じで、ボーッとして反応が悪くなります。
高齢者の慢性硬膜下血腫はよく見逃されたり、誤診されて老年性痴呆と間違われることがあります。
ぼけてしまったということでほうっておかれると、治る認知症を見逃すことになります」
「また、例えば、正常圧水頭症といって、脳の中の脳脊髄液の循環が悪くなって、脳に水がたまってくる病気でも、ふらついたり、言葉がもつれたり、意識が悪くなったり、失禁したりします。
お年寄りの頭の具合がだんだんおかしくなってきたら、頭の中で何が起こっているか、詳しく調べて、原因を突き止めなければいけません」
以上、平川公義・東京医科歯科大名誉教授のアドバイス。
急告! 愛酒家諸兄
飲酒後に転倒や交通事故で頭部外傷を負うと、直後の検査では異常がないのに、半日~2日後に急死するケースがある。
頭がむくんだり腫れたりする「脳浮腫」の悪化が原因とみられていた。
松本博志・札幌医科大学教授(法医学)の研究チームは、「飲酒ラット」と「しらふラット」による実験で、そのことを確かめた。
「飲酒」したうえで頭を損傷したラットは、6時間後までは異常はなかったが、24時間後に脳浮腫が生じ、脳浮腫の原因の一つとされるたんぱく質「アクアポリン4」が大幅に増加し、約半数のラットが死んだという。
愛酒家諸兄、花見酒の季節だ。
おたがい、気をつけようぜ。
飲んだら、転ぶな!
「アルコール」に注意 [医療小文]
飲み過ぎないための6つの対策
酒は適量の場合はストレス解消の効果を期待できるが、量が増えると確実に健康を損なう原因になる。
アルコールとの「上手な付き合い方」をご紹介する。
酒は適量が大切 飲み過ぎは肥満の原因に
「酒は百薬の長」と言われ、飲酒は日常生活でさまざまな行事と深い関わりをもっている。
飲酒は疲労の回復やストレスの解消あるいは人間関係を円滑にするなど、望ましい影響を与えてくれるが、その効果は適度な飲酒を守ることではじめて得られる。
アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次ぐ高カロリーの食品だ。
カロリーの他の栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。
はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのが酒だ。
さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因になる。
アルコールを飲み過ぎないための対処法
アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まり、日本人は4~5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされる。
下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは、切実な問題だ。
酒を飲むときの注意点
• 血糖降下薬を飲んでいる人は、食事を十分に摂らずに飲酒すると低血糖になるおそれがある。
食事量が低下すると、肝臓のグリコーゲンが減少し、さらにアルコールの代謝に伴う代謝経路の変化により、糖新生(糖質以外からの糖の産生)が抑制されるからだ。
• インスリン注射や経口血糖降下剤などでの薬物治療中の人は、とくに低血糖を起こしやすいので、食事をとらずに飲酒するのは避けるべきだ。
• アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴い血糖値に影響を与える。
アルコールを飲むときでも、食事は3食をきちんととることが大切。アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険が伴う。
• 酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分は酒を飲めない」ことを事前に伝えておく。
• 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用する。
• 酒を飲むときは水も飲む。アルコールには利尿作用がありトイレが近くなる。排出された水分を補わないと脱水状態になりやすい。
純アルコール量で約20gが限度
厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしている(女性は男性の2分の1から3分の2程度)。
これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)となる。
アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02~0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれる。
このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度だ。
0.05~0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりする。
酔いが進むと次第に、理性をつかさどる大脳皮質の活動は低下していく。
0.11~0.15%の「酩酊初期」では、気が大きくなって大声を出し、怒りっぽくなる。
さらに、0.16~0.30%の「酩酊期」になると、鎮静効果が強くなり麻痺が小脳まで広がり、運動失調の状態になる。呼吸が速くなり、千鳥足になったり、何度も同じことをしゃべったりするようになる。
一般的に、純アルコール量で約20gを限度とするのが上手な酒の飲み方といえる。
これは、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」でとどめておける量だ。
体重約60kgの人が日本酒にして2合の酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは約3~4時間体内にとどまる。
それより多い量のお酒を飲むと、アルコールが体内から消失するまで約6~7時間かかる。
これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性はもっと長い時間がかかる。
深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いになってしまう。
「糖質ゼロ」「カロリーオフ」といった表示をしたビールや発泡酒などの酒類が店頭をにぎわしている。
しかし、「糖質ゼロ」と表示してあっても、カロリーは「ゼロ」ではないので注意が必要だ。
健康増進法に基づく栄養表示基準では、飲料では100mL当りで糖質0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示でき、熱量(カロリー)が20kcal以下であれば「カロリーオフ」と表示できる。
実際には、量を少なくしていても糖質が含まれていたり、カロリーがある場合もある。
そもそも酒類のカロリーは、糖質の量よりもアルコール度数の方が影響は大きい。
アルコールは栄養表示基準で1g当たり7kcalで計算される。
100mLは約100gなので、アルコール分5%であれば100mL当たり35kcal、350mL(レギュラーサイズ)では123kcalが目安になる。
寝る前の飲酒は睡眠の質を下げる
アルコールは寝つくまでの時間を短縮させるので、寝酒に使っている人は少なくない。
しかし就床前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することが知られている。
つまり、寝つきは良いが夜中に目覚めてその後なかなか眠れない「中途覚醒」が起こりやすくなる。
睡眠の質を高めたいのなら、就床前にはアルコールを飲まないのが望ましい。
アルコールが体内から消失するまでにおよそ6~7時間がかかる。
就床6時間前までに飲まないようにすると、気持ちの良い睡眠を得られる。
アルコールは血圧を上昇させる
適量の酒を飲むと、一般的に血圧が低下し、善玉コレステロールのHDLコレステロールが上昇する。
適量に抑えていれば、血小板の凝集が抑制され、心臓疾患を抑えられることが知られている。
しかし、大量に飲み続けると、血管の収縮反応が高まり、心臓の拍動が速まり、逆に血圧は上昇する。
毎日の飲酒量が多い人ほど血圧の平均値が高く、高血圧のリスクが上昇することが多くの研究で確かめられている。
アルコールは中性脂肪値も上昇させる
血中の脂質が増え過ぎる脂質異常症は、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や脳卒中などのリスクを上昇させる。
異常高値になると体に異常をもたらすのはコレステロールと中性脂肪だ。
そのうち中性脂肪が増え過ぎる原因のひとつは、肝臓で中性脂肪の合成が増えることだ。
そして、アルコールを飲み過ぎると、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出が促され、それとともに肝臓でのアルコール代謝が亢進し、結果として脂肪酸からの中性脂肪の合成が増え過ぎる。
過度のアルコール摂取は脂肪肝の原因になる。
なお、おつまみとして糖質や脂肪の多い高カロリーの食品を食べると、さらに脂肪肝になりやすくなるので注意が必要だ。
おつまみは野菜や大豆食品など、食物繊維が豊富で低カロリーのものが勧められる。
アルコールは低血糖の危険性を高める
アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴って血糖値に影響を与える。
多量の飲酒は糖尿病の危険性を高め、特に肝障害や膵障害が加わるとコントロールが難しい糖尿病になるため、糖尿病患者は多量飲酒は避けた方が良い。
また、アルコールは低血糖を引き起こすことがある。
特に食事を十分にとらずに飲酒すると低血糖になりやすい。
それは食事量低下のため肝臓のグリコーゲンが減少しており、さらにアルコールの代謝に伴い糖新生(糖質以外の物質からグルコースを産生する作用)が抑制されるためだ。
インスリン注射や経口血糖降下剤などでの治療中の患者では、低血糖がより起こりやすくなるので、食事をとらずに飲酒することは原則として禁止されている。
食事をとるのであれば、低脂肪で高タンパク質の食品(豆腐・枝豆・イワシなど)を食べると良い。
アルコールは糖尿病も悪化させる
アルコールは、アルコールそのものの作用のほかに、肝臓や膵臓の障害などのさまざまな因子を介して、血糖コントロールを困難にする。
糖尿病のある人は、アルコール摂取にとくに注意が必要だ。
体重を減らすことで、糖尿病を予防でき、糖尿病のある人では血糖値などのコントロールなどが改善することが知られている。
アルコールの飲み過ぎは、糖尿病患者にとって減量の妨げなるという研究を、米国のペンシルベニア大学が発表した。
研究は、糖尿病患者が生活スタイルを改善し、体重を減らすことで、心血管疾患などの発症をどれだ減らせるかを調べた「Look AHEAD」研究に参加した4,901人の男女(45~76歳)を対象に行われた。参加者は2型糖尿病もしくは肥満で、調査は4年間追跡して行われた。
食事や運動などの生活スタイルを徹底して改善するグループと、生活指導のみを受けたグループに分けて比べたところ、生活スタイルを改善してアルコールもほどほどに抑えた人は、平均して体重を5.1%減らすのに成功した。
一方で、お酒を大量に飲む人で10%以上の減量を達成したのは、たったの2人だけだった。
アルコールの飲み過ぎは、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」に直接に影響し、2型糖尿病のリスクを上昇させることも分かっている。
アルコールには、食欲を亢進する作用もある。
アルコールを多量摂取すると、脂肪細胞から分泌され食欲を抑制する作用のあるホルモン「レプチン」が減少する。
「アルコールの飲み過ぎには、長期的に体重に大きく影響します。糖尿病のある人は、なるべくお酒を控えるべきです」
と、ペンシルベニア大学行動保健科学科のアリアナ チャオ氏は述べている。
酒は適量の場合はストレス解消の効果を期待できるが、量が増えると確実に健康を損なう原因になる。
アルコールとの「上手な付き合い方」をご紹介する。
酒は適量が大切 飲み過ぎは肥満の原因に
「酒は百薬の長」と言われ、飲酒は日常生活でさまざまな行事と深い関わりをもっている。
飲酒は疲労の回復やストレスの解消あるいは人間関係を円滑にするなど、望ましい影響を与えてくれるが、その効果は適度な飲酒を守ることではじめて得られる。
アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次ぐ高カロリーの食品だ。
カロリーの他の栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。
はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのが酒だ。
さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因になる。
アルコールを飲み過ぎないための対処法
アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まり、日本人は4~5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされる。
下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは、切実な問題だ。
酒を飲むときの注意点
• 血糖降下薬を飲んでいる人は、食事を十分に摂らずに飲酒すると低血糖になるおそれがある。
食事量が低下すると、肝臓のグリコーゲンが減少し、さらにアルコールの代謝に伴う代謝経路の変化により、糖新生(糖質以外からの糖の産生)が抑制されるからだ。
• インスリン注射や経口血糖降下剤などでの薬物治療中の人は、とくに低血糖を起こしやすいので、食事をとらずに飲酒するのは避けるべきだ。
• アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴い血糖値に影響を与える。
アルコールを飲むときでも、食事は3食をきちんととることが大切。アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険が伴う。
• 酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分は酒を飲めない」ことを事前に伝えておく。
• 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用する。
• 酒を飲むときは水も飲む。アルコールには利尿作用がありトイレが近くなる。排出された水分を補わないと脱水状態になりやすい。
純アルコール量で約20gが限度
厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしている(女性は男性の2分の1から3分の2程度)。
これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)となる。
アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02~0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれる。
このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度だ。
0.05~0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりする。
酔いが進むと次第に、理性をつかさどる大脳皮質の活動は低下していく。
0.11~0.15%の「酩酊初期」では、気が大きくなって大声を出し、怒りっぽくなる。
さらに、0.16~0.30%の「酩酊期」になると、鎮静効果が強くなり麻痺が小脳まで広がり、運動失調の状態になる。呼吸が速くなり、千鳥足になったり、何度も同じことをしゃべったりするようになる。
一般的に、純アルコール量で約20gを限度とするのが上手な酒の飲み方といえる。
これは、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」でとどめておける量だ。
体重約60kgの人が日本酒にして2合の酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは約3~4時間体内にとどまる。
それより多い量のお酒を飲むと、アルコールが体内から消失するまで約6~7時間かかる。
これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性はもっと長い時間がかかる。
深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いになってしまう。
「糖質ゼロ」「カロリーオフ」といった表示をしたビールや発泡酒などの酒類が店頭をにぎわしている。
しかし、「糖質ゼロ」と表示してあっても、カロリーは「ゼロ」ではないので注意が必要だ。
健康増進法に基づく栄養表示基準では、飲料では100mL当りで糖質0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示でき、熱量(カロリー)が20kcal以下であれば「カロリーオフ」と表示できる。
実際には、量を少なくしていても糖質が含まれていたり、カロリーがある場合もある。
そもそも酒類のカロリーは、糖質の量よりもアルコール度数の方が影響は大きい。
アルコールは栄養表示基準で1g当たり7kcalで計算される。
100mLは約100gなので、アルコール分5%であれば100mL当たり35kcal、350mL(レギュラーサイズ)では123kcalが目安になる。
寝る前の飲酒は睡眠の質を下げる
アルコールは寝つくまでの時間を短縮させるので、寝酒に使っている人は少なくない。
しかし就床前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することが知られている。
つまり、寝つきは良いが夜中に目覚めてその後なかなか眠れない「中途覚醒」が起こりやすくなる。
睡眠の質を高めたいのなら、就床前にはアルコールを飲まないのが望ましい。
アルコールが体内から消失するまでにおよそ6~7時間がかかる。
就床6時間前までに飲まないようにすると、気持ちの良い睡眠を得られる。
アルコールは血圧を上昇させる
適量の酒を飲むと、一般的に血圧が低下し、善玉コレステロールのHDLコレステロールが上昇する。
適量に抑えていれば、血小板の凝集が抑制され、心臓疾患を抑えられることが知られている。
しかし、大量に飲み続けると、血管の収縮反応が高まり、心臓の拍動が速まり、逆に血圧は上昇する。
毎日の飲酒量が多い人ほど血圧の平均値が高く、高血圧のリスクが上昇することが多くの研究で確かめられている。
アルコールは中性脂肪値も上昇させる
血中の脂質が増え過ぎる脂質異常症は、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や脳卒中などのリスクを上昇させる。
異常高値になると体に異常をもたらすのはコレステロールと中性脂肪だ。
そのうち中性脂肪が増え過ぎる原因のひとつは、肝臓で中性脂肪の合成が増えることだ。
そして、アルコールを飲み過ぎると、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出が促され、それとともに肝臓でのアルコール代謝が亢進し、結果として脂肪酸からの中性脂肪の合成が増え過ぎる。
過度のアルコール摂取は脂肪肝の原因になる。
なお、おつまみとして糖質や脂肪の多い高カロリーの食品を食べると、さらに脂肪肝になりやすくなるので注意が必要だ。
おつまみは野菜や大豆食品など、食物繊維が豊富で低カロリーのものが勧められる。
アルコールは低血糖の危険性を高める
アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴って血糖値に影響を与える。
多量の飲酒は糖尿病の危険性を高め、特に肝障害や膵障害が加わるとコントロールが難しい糖尿病になるため、糖尿病患者は多量飲酒は避けた方が良い。
また、アルコールは低血糖を引き起こすことがある。
特に食事を十分にとらずに飲酒すると低血糖になりやすい。
それは食事量低下のため肝臓のグリコーゲンが減少しており、さらにアルコールの代謝に伴い糖新生(糖質以外の物質からグルコースを産生する作用)が抑制されるためだ。
インスリン注射や経口血糖降下剤などでの治療中の患者では、低血糖がより起こりやすくなるので、食事をとらずに飲酒することは原則として禁止されている。
食事をとるのであれば、低脂肪で高タンパク質の食品(豆腐・枝豆・イワシなど)を食べると良い。
アルコールは糖尿病も悪化させる
アルコールは、アルコールそのものの作用のほかに、肝臓や膵臓の障害などのさまざまな因子を介して、血糖コントロールを困難にする。
糖尿病のある人は、アルコール摂取にとくに注意が必要だ。
体重を減らすことで、糖尿病を予防でき、糖尿病のある人では血糖値などのコントロールなどが改善することが知られている。
アルコールの飲み過ぎは、糖尿病患者にとって減量の妨げなるという研究を、米国のペンシルベニア大学が発表した。
研究は、糖尿病患者が生活スタイルを改善し、体重を減らすことで、心血管疾患などの発症をどれだ減らせるかを調べた「Look AHEAD」研究に参加した4,901人の男女(45~76歳)を対象に行われた。参加者は2型糖尿病もしくは肥満で、調査は4年間追跡して行われた。
食事や運動などの生活スタイルを徹底して改善するグループと、生活指導のみを受けたグループに分けて比べたところ、生活スタイルを改善してアルコールもほどほどに抑えた人は、平均して体重を5.1%減らすのに成功した。
一方で、お酒を大量に飲む人で10%以上の減量を達成したのは、たったの2人だけだった。
アルコールの飲み過ぎは、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」に直接に影響し、2型糖尿病のリスクを上昇させることも分かっている。
アルコールには、食欲を亢進する作用もある。
アルコールを多量摂取すると、脂肪細胞から分泌され食欲を抑制する作用のあるホルモン「レプチン」が減少する。
「アルコールの飲み過ぎには、長期的に体重に大きく影響します。糖尿病のある人は、なるべくお酒を控えるべきです」
と、ペンシルベニア大学行動保健科学科のアリアナ チャオ氏は述べている。
くすぐったい感じとは? [医療小文]
これがとけたらのーべるしょうもの?!じつはなぞがおおい「くすぐり」のふしぎ
くすぐり。だれもが体験するごくありふれた戯れの行為だが、じつは謎が多い。
なぜくすぐったいと感じるのか、なぜくすぐられると笑ってしまうのか、そしてくすぐることにどんな生理的な意味が隠されているのか。
これらはダーウィンの時代から研究されてきたが、いまだに科学的に解明されていない。
くすぐりの謎
くすぐりにはわからないことが多い。
たとえば体の同じ場所をくすぐられても、くすぐったい人とくすぐったくない人がいる。
また体の中でも特にくすぐったい箇所はいくつかあるが、それらになにか特別な「くすぐりセンサー」のようなものが確認された試しはない。
そんな謎につつまれた行為を少しでも理解するために、生理学者はくすぐりを二種類に分けて考えるそうだ。
The Conversationによると、「knismesis」と分類される刺激は比較的軽く、体のどの部分でも感じることができる。
たとえば羽でやさしくコチョコチョされたり、テントウムシが肌の上をじかに動きまわる感覚がこれ。
こちらは人間のほかにもイヌやネコ、サルなど幅広い哺乳類に共通しているそうだ。
ふたつめの「gargalesis」はもっと本格的。
リズミカルなタッチが脇腹や首元などの敏感な部分に容赦なくくり返されることで、笑いたくなくても笑い出してしまう。
こちらは霊長類のみに確認されているが、動物によって笑い方はさまざまだそうだ。
くすぐりの機能
ところで、自分で自分をくすぐっても全然くすぐったく感じないのはなぜか。
それは自分の行動を自分の脳が把握している以上、「触っている」という感覚と「触られている」感覚がダブってくすぐったい感覚が相殺されてしまうからだ。(ちなみに重度の統合失調症を抱えた人は、自分で自分をくすぐることができるとの研究結果もある。)
しかし、もし触っているのが自分ではない何者かだとしたらどうか。
「触られている」という感覚を即座に認識する必要がある。
もしかしたら毒グモかもしれないし、自分に危険をもたらす可能性のある外部からの接触にいち早く反応するために、「Knismis」という感覚が発達したのかもしれないと考える科学者もいる。
「Gargalesis」に関していえば、なんと防御力を高める効果があるのではないかと考えられるそうだ。
くすぐられている人は通常くすぐる手から免れようと、あらゆる抵抗を試みる。
近くに子どもがいたら試しに「gargalesis」式にくすぐってみてはどうだろう。
脇を閉め、腹をちぢこませ、笑い転げながらも一生懸命逃げようとするではないか。
これをしつこく繰り返せば、いずれは反射神経が身について外部からのダメージを最小限に留められるかもしれない。
一種の愛情あふれるトレーニングだ。
くすぐりの意味するもの
くすぐりの理解を深めるために、これまで多くの科学者がいろんな動物をくすぐってきた。
150年ほど前にチンパンジーをくすぐってみたダーウィンは、こんな言葉を書き残している。
若いチンパンジーをくすぐってみると、脇の下が特にくすぐりに敏感であることがわかる――人間の子どもたちがそうであるように――そして笑いのような音が発せられた。
チンパンジーもくすぐられると笑う。
そして積極的に仲間とくすぐり合う行動も確認されたそうだ。
このようなくすぐり合い行動が認められている動物は霊長類のみ(人間も含む)だが、なんとネズミなどの哺乳類もくすぐると「笑う」ようなそぶりを見せる。
2018年2月に発表されたばかりの最新の研究では、ネズミの首回りをコチョコチョと刺激してからひっくり返しておなかをくすぐってやると、くすぐらなかったネズミよりも人に馴れるのが早くなったばかりか活動的になったという。
ひょっとしたら、くすぐるという行為は仲間同士の愛情をはぐくむ行為なのではないか?
このように考えた科学者も当然いた。
ところがこの仮説はどうやら違うようだ。
ロボットにくすぐられてもやっぱり人間は笑ってしまうからだ。
結局人間はなぜ進化の過程でくすぐり、くすぐられ、笑うようになったのかは依然と解明されていない。
この謎を突き止められたら次のノーベル賞はあなたのものかもしれない。
さあ、実験と称して、今日はだれの足のうらをくすぐってみようか?
くすぐり。だれもが体験するごくありふれた戯れの行為だが、じつは謎が多い。
なぜくすぐったいと感じるのか、なぜくすぐられると笑ってしまうのか、そしてくすぐることにどんな生理的な意味が隠されているのか。
これらはダーウィンの時代から研究されてきたが、いまだに科学的に解明されていない。
くすぐりの謎
くすぐりにはわからないことが多い。
たとえば体の同じ場所をくすぐられても、くすぐったい人とくすぐったくない人がいる。
また体の中でも特にくすぐったい箇所はいくつかあるが、それらになにか特別な「くすぐりセンサー」のようなものが確認された試しはない。
そんな謎につつまれた行為を少しでも理解するために、生理学者はくすぐりを二種類に分けて考えるそうだ。
The Conversationによると、「knismesis」と分類される刺激は比較的軽く、体のどの部分でも感じることができる。
たとえば羽でやさしくコチョコチョされたり、テントウムシが肌の上をじかに動きまわる感覚がこれ。
こちらは人間のほかにもイヌやネコ、サルなど幅広い哺乳類に共通しているそうだ。
ふたつめの「gargalesis」はもっと本格的。
リズミカルなタッチが脇腹や首元などの敏感な部分に容赦なくくり返されることで、笑いたくなくても笑い出してしまう。
こちらは霊長類のみに確認されているが、動物によって笑い方はさまざまだそうだ。
くすぐりの機能
ところで、自分で自分をくすぐっても全然くすぐったく感じないのはなぜか。
それは自分の行動を自分の脳が把握している以上、「触っている」という感覚と「触られている」感覚がダブってくすぐったい感覚が相殺されてしまうからだ。(ちなみに重度の統合失調症を抱えた人は、自分で自分をくすぐることができるとの研究結果もある。)
しかし、もし触っているのが自分ではない何者かだとしたらどうか。
「触られている」という感覚を即座に認識する必要がある。
もしかしたら毒グモかもしれないし、自分に危険をもたらす可能性のある外部からの接触にいち早く反応するために、「Knismis」という感覚が発達したのかもしれないと考える科学者もいる。
「Gargalesis」に関していえば、なんと防御力を高める効果があるのではないかと考えられるそうだ。
くすぐられている人は通常くすぐる手から免れようと、あらゆる抵抗を試みる。
近くに子どもがいたら試しに「gargalesis」式にくすぐってみてはどうだろう。
脇を閉め、腹をちぢこませ、笑い転げながらも一生懸命逃げようとするではないか。
これをしつこく繰り返せば、いずれは反射神経が身について外部からのダメージを最小限に留められるかもしれない。
一種の愛情あふれるトレーニングだ。
くすぐりの意味するもの
くすぐりの理解を深めるために、これまで多くの科学者がいろんな動物をくすぐってきた。
150年ほど前にチンパンジーをくすぐってみたダーウィンは、こんな言葉を書き残している。
若いチンパンジーをくすぐってみると、脇の下が特にくすぐりに敏感であることがわかる――人間の子どもたちがそうであるように――そして笑いのような音が発せられた。
チンパンジーもくすぐられると笑う。
そして積極的に仲間とくすぐり合う行動も確認されたそうだ。
このようなくすぐり合い行動が認められている動物は霊長類のみ(人間も含む)だが、なんとネズミなどの哺乳類もくすぐると「笑う」ようなそぶりを見せる。
2018年2月に発表されたばかりの最新の研究では、ネズミの首回りをコチョコチョと刺激してからひっくり返しておなかをくすぐってやると、くすぐらなかったネズミよりも人に馴れるのが早くなったばかりか活動的になったという。
ひょっとしたら、くすぐるという行為は仲間同士の愛情をはぐくむ行為なのではないか?
このように考えた科学者も当然いた。
ところがこの仮説はどうやら違うようだ。
ロボットにくすぐられてもやっぱり人間は笑ってしまうからだ。
結局人間はなぜ進化の過程でくすぐり、くすぐられ、笑うようになったのかは依然と解明されていない。
この謎を突き止められたら次のノーベル賞はあなたのものかもしれない。
さあ、実験と称して、今日はだれの足のうらをくすぐってみようか?
ピーマンと頭痛 [医療小文]
「ピーマンと頭痛症状の関連について」日本頭痛学会にて発表
株式会社シグナルトークは、日常生活の健康リスクをスコア化したアプリ「my healthy(マイヘルシー)」を用いて、インターネット上のビッグデータから、頭痛と生活習慣の関連について調査を行いました。
調査の結果、「週に1回以上、ピーマンを食べる」生活習慣と「頭が波打つように
痛む」症状の間に統計学上の関連を発見しました。
「my healthy」を用いて取得した統計データを使用し、ピーマンを定期的に摂食すること
が頭痛に良い影響をもつ可能性について、医学博士 團野大介(兵庫医科大学神経内科)医
師より、第45回日本頭痛学会総会にて、「臨床疫学」のセッション中「健康情報アプリによる『生活習慣と頭痛』に関するビッグデータの解析」として口頭発表が行
われました。
■医学博士 團野大介医師による日本頭痛学会総会発表の概要
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
株式会社シグナルトークでは、「my healthy」の基礎データとして、クラウドソーシング
に登録された男女600名以上から食生活、運動に関する質問688問、頭痛など身体症状に関
する438問の質問を元に生活習慣と身体症状に関するアンケート調査を行いました。
さらに、健康情報アプリ上で同じ質問セットによるアンケートを行い、有効回答者数3,941人、
有効回答283,308通りの組み合わせデータを取得しました。
取得した回答データは、医薬品開発などの医療統計でも使われるZ検定という手法を用い
て検証し、統計量2.58以上(信頼度99%以上)となった組み合わせを抽出しました。
続いて、ある症状の要因を洗い出すことが可能な統計学手法であるオッズ比を算出しました。
統計による解析から、生活習慣については、
「週に1回以上、ピーマンを食べていますか?」に対して「はい」と答えた人、
症状については「頭が波打つように痛むことは多いですか? に対して「いいえ」と答えた人の組み合わせについて、全3,557件の回答を得て、信頼度99%、オッズ比1.468という結果となりました。
オッズ比が1以上であることは、「ピーマンを食べることが少ない」という行動は「頭が波打つように痛むことが多い」という健康状態のリスクとなり得ることを示します。
インターネットを用いた健康行動と症状との関連に関する調査手法については、医学博士
團野大介医師(兵庫医科大学神経内科)、医学博士 竹島多賀夫医師(医療法人寿会 富永病
院副院長、日本頭痛学会会長)にご検討いただきました。
團野大介医師の考察によれば、唐辛子の摂食により頭痛症状が収まったとの過去の報告が
存在することから、唐辛子に含まれるカプサイシンが作用した可能性が示されています。
ピーマンはカプサイシンの含有量は少ないとされるため、ピーマンと頭痛症状の軽減につ
いてカプサイシンが関係するかどうかについては不明です。
こうした推論について、さらなる研究が必要であるとの見解です。
■ピーマンと頭痛症状との関係についてシグナルトークによる調査
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
シグナルトークによる「my healthy」を用いた調査から、日常的にピーマンを食べる習慣
は、頭痛の症状の頻度を減らすことにおいて有効だと考えられます。
ピーマンは代表的な緑黄色野菜のひとつですが、ピーマンと同様に、アンケートで「週に3回以上、緑黄色野菜を食べていますか?」の質問に対し、「はい」と答えた人も「頭が波打つように痛む」
症状を感じることが少ないという結果となりました。(オッズ比1.643)
シグナルトークとしては、独自にピーマンが頭痛症状に対して良好な影響をもたらすのは
なぜか、という点について海外の研究論文も含めた文献調査を行いました。
日常的にピーマンを多く食べることにより、頭痛症状に有効とされるビタミンB2の摂取量が増えることがひとつの理由として考えられています。
ピーマンには「通年、手に入りやすく摂取しやすい」「代表的な調理法である『油いため』の場合、ビタミンB2の調理損失が少ない」という特徴があります。
このことから、一食あたりの摂取量は小さくとも、1日あたりのビタミンB2の摂取量を増やすことにつながる可能性があります。
シグナルトークでは、今後も健康アプリおよびインターネット調査などの手法を用いて生
活習慣と身体症状に関する調査を進め、新たな健康に資する習慣の調査発見に努めて参り
ます。
株式会社シグナルトークは、日常生活の健康リスクをスコア化したアプリ「my healthy(マイヘルシー)」を用いて、インターネット上のビッグデータから、頭痛と生活習慣の関連について調査を行いました。
調査の結果、「週に1回以上、ピーマンを食べる」生活習慣と「頭が波打つように
痛む」症状の間に統計学上の関連を発見しました。
「my healthy」を用いて取得した統計データを使用し、ピーマンを定期的に摂食すること
が頭痛に良い影響をもつ可能性について、医学博士 團野大介(兵庫医科大学神経内科)医
師より、第45回日本頭痛学会総会にて、「臨床疫学」のセッション中「健康情報アプリによる『生活習慣と頭痛』に関するビッグデータの解析」として口頭発表が行
われました。
■医学博士 團野大介医師による日本頭痛学会総会発表の概要
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株式会社シグナルトークでは、「my healthy」の基礎データとして、クラウドソーシング
に登録された男女600名以上から食生活、運動に関する質問688問、頭痛など身体症状に関
する438問の質問を元に生活習慣と身体症状に関するアンケート調査を行いました。
さらに、健康情報アプリ上で同じ質問セットによるアンケートを行い、有効回答者数3,941人、
有効回答283,308通りの組み合わせデータを取得しました。
取得した回答データは、医薬品開発などの医療統計でも使われるZ検定という手法を用い
て検証し、統計量2.58以上(信頼度99%以上)となった組み合わせを抽出しました。
続いて、ある症状の要因を洗い出すことが可能な統計学手法であるオッズ比を算出しました。
統計による解析から、生活習慣については、
「週に1回以上、ピーマンを食べていますか?」に対して「はい」と答えた人、
症状については「頭が波打つように痛むことは多いですか? に対して「いいえ」と答えた人の組み合わせについて、全3,557件の回答を得て、信頼度99%、オッズ比1.468という結果となりました。
オッズ比が1以上であることは、「ピーマンを食べることが少ない」という行動は「頭が波打つように痛むことが多い」という健康状態のリスクとなり得ることを示します。
インターネットを用いた健康行動と症状との関連に関する調査手法については、医学博士
團野大介医師(兵庫医科大学神経内科)、医学博士 竹島多賀夫医師(医療法人寿会 富永病
院副院長、日本頭痛学会会長)にご検討いただきました。
團野大介医師の考察によれば、唐辛子の摂食により頭痛症状が収まったとの過去の報告が
存在することから、唐辛子に含まれるカプサイシンが作用した可能性が示されています。
ピーマンはカプサイシンの含有量は少ないとされるため、ピーマンと頭痛症状の軽減につ
いてカプサイシンが関係するかどうかについては不明です。
こうした推論について、さらなる研究が必要であるとの見解です。
■ピーマンと頭痛症状との関係についてシグナルトークによる調査
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シグナルトークによる「my healthy」を用いた調査から、日常的にピーマンを食べる習慣
は、頭痛の症状の頻度を減らすことにおいて有効だと考えられます。
ピーマンは代表的な緑黄色野菜のひとつですが、ピーマンと同様に、アンケートで「週に3回以上、緑黄色野菜を食べていますか?」の質問に対し、「はい」と答えた人も「頭が波打つように痛む」
症状を感じることが少ないという結果となりました。(オッズ比1.643)
シグナルトークとしては、独自にピーマンが頭痛症状に対して良好な影響をもたらすのは
なぜか、という点について海外の研究論文も含めた文献調査を行いました。
日常的にピーマンを多く食べることにより、頭痛症状に有効とされるビタミンB2の摂取量が増えることがひとつの理由として考えられています。
ピーマンには「通年、手に入りやすく摂取しやすい」「代表的な調理法である『油いため』の場合、ビタミンB2の調理損失が少ない」という特徴があります。
このことから、一食あたりの摂取量は小さくとも、1日あたりのビタミンB2の摂取量を増やすことにつながる可能性があります。
シグナルトークでは、今後も健康アプリおよびインターネット調査などの手法を用いて生
活習慣と身体症状に関する調査を進め、新たな健康に資する習慣の調査発見に努めて参り
ます。