危険なほくろ [医療小文]
医学的には色素性母斑や単純黒子などと呼ばれる「ほくろ」。良性の腫瘍に分類されます。しかし、何かしら変化がみられたら、要注意です。
ほくろは、メラニン色素を生み出すメラノサイトという細胞が集まってできたもので、良性の腫瘍に分類されます。
生まれつきのものもありますが、後天的なものは小児期から思春期に増え、それ以降はあまり増えることはありません。
女性の場合、ホルモン分泌の変化によって、妊娠中に増える人もみられます。
しかし、形のおかしいほくろができた、前からあったものの一部の色が濃くなってきたなど、何かしら変化がみられたら、要注意です。
皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」が疑われる場合があります。
メラノサイト(色素細胞)が「がん化」する
皮膚は、表皮(角質層、顆粒層、有棘層、基底層)、真皮、皮下組織と、何層もの組織でできています。
メラノーマは、表皮の基底層にあるメラノサイトが、がん化したものです。
メラノサイトがあれば、全身のどこでも発症する可能性があり、ときにはまぶたや鼻腔、唇、口腔などにできることも。
また、進行が速いものでは、肺や肝臓、骨、リンパ節などに転移することも少なくないのです。
メラノーマの4つのタイプ
メラノーマは、できやすい部位や形状などによって、主に4つのタイプに分けられます。
1.末端黒子型
日本人に最も多いタイプ/足の裏や手のひら、手足の爪などにできやすい/褐色・黒褐色の小さなシミが広がっていき黒くなる/潰瘍ができることもある/爪にできる場合、黒褐色のスジが縦に入り、広がっていく
2.表在拡大型
メラニン色素の少ない白色人種に多いタイプ/胸、腹、背中などの体幹や、四肢のどこにでも発症する/小さなシミが、徐々に濃くなり、盛り上がっていく
3.結節型
部位を問わず発生する/進行が速く転移しやすいため、メラノーマの中で最も悪性度の高いタイプ/突然ほくろのような黒い盛り上がりができ、それが徐々に大きくなっていく
4.悪性黒子型
高齢者に多い/日光にさらされている顔に発生しやすく、首や手の甲などにできることもある/褐色・黒褐色のシミが濃くなりながら徐々に大きくなる/しこりやこぶになることもある/紫外線と外的刺激が発症要因に
メラノーマの罹患率は、高齢になるほど上がります。
これは紫外線の影響で、高齢者ほど紫外線を浴びてきた期間が長くなるためだと考えられています。
日焼け止めの使用で、メラノーマの発生率が下がるという報告もあります。
一方、日本人は足の裏など紫外線の影響を受けにくい部位の発症が多く、体重がかかったり、衣類でこすれるなどの刺激も要因のひとつと考えられています。
転移、再発に注意が必要
治療の基本は切除手術です。
再発防止のため、がんの縁から1~2cm程度の範囲を切除します。
また、切除した部位や範囲によって、皮膚の一部を移植することもあります。
なお、メラノーマはリンパ節に転移しやすい疾患のため、手術の際に「センチネルリンパ節生検」が行われます。
近年の研究で、がん細胞が一番初めに到達するセンチネルリンパ節に転移が認められなければ、転移の心配はほとんどないことがわかったためです。
しかし、なかには術後の早い時期に再発や転移がみられることあり、経過観察を続けることが必要となります。
また、抗がん剤による化学療法や放射線治療は、あまり有効性が高くないと考えられています。
ほかに、ニボルマブ、イピリムマブなどNKT細胞を利用した免疫療法などがありますが、その効果は一定していません。
このようなことからも、メラノーマは早期発見が非常に大切だといえるでしょう。
メラノーマを見逃さないために
メラノーマは、良性のほくろやシミとの違いがわかりづらく、見逃されやすいといえます。
しかし、注意深く観察すれば、自分でも発見できる「がん」なのです。
メラノーマは大きさや形状などが次第に変化していくので、1年に1回は全身のチェックをしましょう。
頭や背中など自分で見えない部分は、家族や身近な人と確認し合うことをおすすめします。
【早期発見しやすい特徴】
今までなかった場所にできた/足の裏や手のひらでは直径が7mm以上ある(直径の目安は6mm以上など諸説あります)/色にムラがある/輪郭がギザギザしている、にじみ出たようになっている/形が左右非対称である/爪に褐色または黒褐色の細い縦のスジ(色素線条)が入っている
【1~2年の間に変化して見られる特徴】
色=薄い褐色から濃い黒に変化する/色に濃淡が出てくる/一部の色が抜けてまだらになる
大きさ=明らかに大きくなっている(1年以内の短期間で大きくなるものは特に注意が必要)/形=輪郭がギザギザしたり、左右非対称になってくる/輪郭の一部から色が染み出して見える/一部が盛り上がったりしこりができる
かたさ=一部または全部がかたくなってくる(通常、ほくろのかたさは均一)
□爪=縦のスジの色が濃くなってくる/スジの幅が広くなってくる/爪が割れたり、爪の生え際に色が染み出したりする
早期発見のためにも、チェックポイントに当てはまるようなほくろやシミを見つけたら、速やかに皮膚科を受診してください。大きさの変化などを確認するには、写真を保存しておくと比較しやすいでしょう。
受診の際は、いつごろ現れたのか、変化に気づいた時期などを可能な限り医師に伝えるようにします。
外的な刺激もメラノーマの発生要因になると考えられているので、ほくろやシミを気にして頻繁にさわったり、傷つけたりすることはやめましょう。
ダーモスコピー検査と皮膚生検
「ダーモスコピー」は、患部を拡大して観察する医療機器で、メラノーマの診察に用いられます。専門医でも見分けのつきにくいほくろやシミの状態を、より詳しく観察できるため、早期発見に役立ちます。
それでも診断がつかない場合、患部を慎重に採取して顕微鏡でさらに詳しく調べる「皮膚生検」を行うこともあります。
ただし、皮膚科専門医であってもダーモスコピー検査を行っていない場合もあるので、事前に確認してから受診するとよいでしょう。
監修:関東中央病院皮膚科特別顧問 日野治子
ほくろは、メラニン色素を生み出すメラノサイトという細胞が集まってできたもので、良性の腫瘍に分類されます。
生まれつきのものもありますが、後天的なものは小児期から思春期に増え、それ以降はあまり増えることはありません。
女性の場合、ホルモン分泌の変化によって、妊娠中に増える人もみられます。
しかし、形のおかしいほくろができた、前からあったものの一部の色が濃くなってきたなど、何かしら変化がみられたら、要注意です。
皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」が疑われる場合があります。
メラノサイト(色素細胞)が「がん化」する
皮膚は、表皮(角質層、顆粒層、有棘層、基底層)、真皮、皮下組織と、何層もの組織でできています。
メラノーマは、表皮の基底層にあるメラノサイトが、がん化したものです。
メラノサイトがあれば、全身のどこでも発症する可能性があり、ときにはまぶたや鼻腔、唇、口腔などにできることも。
また、進行が速いものでは、肺や肝臓、骨、リンパ節などに転移することも少なくないのです。
メラノーマの4つのタイプ
メラノーマは、できやすい部位や形状などによって、主に4つのタイプに分けられます。
1.末端黒子型
日本人に最も多いタイプ/足の裏や手のひら、手足の爪などにできやすい/褐色・黒褐色の小さなシミが広がっていき黒くなる/潰瘍ができることもある/爪にできる場合、黒褐色のスジが縦に入り、広がっていく
2.表在拡大型
メラニン色素の少ない白色人種に多いタイプ/胸、腹、背中などの体幹や、四肢のどこにでも発症する/小さなシミが、徐々に濃くなり、盛り上がっていく
3.結節型
部位を問わず発生する/進行が速く転移しやすいため、メラノーマの中で最も悪性度の高いタイプ/突然ほくろのような黒い盛り上がりができ、それが徐々に大きくなっていく
4.悪性黒子型
高齢者に多い/日光にさらされている顔に発生しやすく、首や手の甲などにできることもある/褐色・黒褐色のシミが濃くなりながら徐々に大きくなる/しこりやこぶになることもある/紫外線と外的刺激が発症要因に
メラノーマの罹患率は、高齢になるほど上がります。
これは紫外線の影響で、高齢者ほど紫外線を浴びてきた期間が長くなるためだと考えられています。
日焼け止めの使用で、メラノーマの発生率が下がるという報告もあります。
一方、日本人は足の裏など紫外線の影響を受けにくい部位の発症が多く、体重がかかったり、衣類でこすれるなどの刺激も要因のひとつと考えられています。
転移、再発に注意が必要
治療の基本は切除手術です。
再発防止のため、がんの縁から1~2cm程度の範囲を切除します。
また、切除した部位や範囲によって、皮膚の一部を移植することもあります。
なお、メラノーマはリンパ節に転移しやすい疾患のため、手術の際に「センチネルリンパ節生検」が行われます。
近年の研究で、がん細胞が一番初めに到達するセンチネルリンパ節に転移が認められなければ、転移の心配はほとんどないことがわかったためです。
しかし、なかには術後の早い時期に再発や転移がみられることあり、経過観察を続けることが必要となります。
また、抗がん剤による化学療法や放射線治療は、あまり有効性が高くないと考えられています。
ほかに、ニボルマブ、イピリムマブなどNKT細胞を利用した免疫療法などがありますが、その効果は一定していません。
このようなことからも、メラノーマは早期発見が非常に大切だといえるでしょう。
メラノーマを見逃さないために
メラノーマは、良性のほくろやシミとの違いがわかりづらく、見逃されやすいといえます。
しかし、注意深く観察すれば、自分でも発見できる「がん」なのです。
メラノーマは大きさや形状などが次第に変化していくので、1年に1回は全身のチェックをしましょう。
頭や背中など自分で見えない部分は、家族や身近な人と確認し合うことをおすすめします。
【早期発見しやすい特徴】
今までなかった場所にできた/足の裏や手のひらでは直径が7mm以上ある(直径の目安は6mm以上など諸説あります)/色にムラがある/輪郭がギザギザしている、にじみ出たようになっている/形が左右非対称である/爪に褐色または黒褐色の細い縦のスジ(色素線条)が入っている
【1~2年の間に変化して見られる特徴】
色=薄い褐色から濃い黒に変化する/色に濃淡が出てくる/一部の色が抜けてまだらになる
大きさ=明らかに大きくなっている(1年以内の短期間で大きくなるものは特に注意が必要)/形=輪郭がギザギザしたり、左右非対称になってくる/輪郭の一部から色が染み出して見える/一部が盛り上がったりしこりができる
かたさ=一部または全部がかたくなってくる(通常、ほくろのかたさは均一)
□爪=縦のスジの色が濃くなってくる/スジの幅が広くなってくる/爪が割れたり、爪の生え際に色が染み出したりする
早期発見のためにも、チェックポイントに当てはまるようなほくろやシミを見つけたら、速やかに皮膚科を受診してください。大きさの変化などを確認するには、写真を保存しておくと比較しやすいでしょう。
受診の際は、いつごろ現れたのか、変化に気づいた時期などを可能な限り医師に伝えるようにします。
外的な刺激もメラノーマの発生要因になると考えられているので、ほくろやシミを気にして頻繁にさわったり、傷つけたりすることはやめましょう。
ダーモスコピー検査と皮膚生検
「ダーモスコピー」は、患部を拡大して観察する医療機器で、メラノーマの診察に用いられます。専門医でも見分けのつきにくいほくろやシミの状態を、より詳しく観察できるため、早期発見に役立ちます。
それでも診断がつかない場合、患部を慎重に採取して顕微鏡でさらに詳しく調べる「皮膚生検」を行うこともあります。
ただし、皮膚科専門医であってもダーモスコピー検査を行っていない場合もあるので、事前に確認してから受診するとよいでしょう。
監修:関東中央病院皮膚科特別顧問 日野治子
タグ:悪性黒色腫(メラノーマ)
肥満⇒膵臓がん [医療小文]
10代後半の肥満で膵臓がんリスク増
10歳代の後半に肥満だった人は、成人後に膵臓(すいぞう)がんになりやすい可能性があることが、イスラエルで実施された新たな研究で示された。
男女とも肥満の人は適正体重の場合に比べて膵臓がんリスクは約4倍であることが分かった。
研究の詳細は「Cancer」オンライン版に掲載された。
ラビン医療センターおよびテルアビブ大学(いずれもイスラエル)のZohar Levi氏は、
1967~2002年に16~19歳で身体検査を受けたイスラエルのユダヤ人男性108万7,358人と女性70万7,212人を対象に、10歳代後半のBMIと成人後の膵臓がん罹患との関連を調べた。
研究では全国がん登録を用いて、2012年までの膵臓がん罹患の有無を追跡した。
中央値で23年の追跡期間中に551人が新たに膵臓がんに罹患していた。
解析の結果、適正体重の人に比べて、肥満の男性では膵臓がんの罹患リスクは3.67倍であり、女性では4.07倍であることが分かった。
また、男性は肥満ではなくともBMIが正常高値や過体重であれば膵臓がんリスクが上昇することも明らかになった。
Levi氏らは、膵臓がん症例の約11%は10歳代後半の過体重や肥満に起因するのではとの見方を示している。
専門家の一人で米膵臓がんアクションネットワークのAllison Rosenzweig氏は、
「これまでの研究でも肥満が膵臓がんリスクを増大させる可能性については報告されていた。
しかし、この研究は、思春期から青年期にかけての肥満や過体重も膵臓がんリスクに影響することを示唆する重要な結果だ」と述べている。
ただし、今回の研究は参加者を後ろ向きに追跡した観察研究であり、過体重や肥満が膵臓がんの原因であることを裏付けるものではない。
Rosenzweig氏は、
「膵臓がんは比較的まれな疾患で、米国では年間、約5万5,000人が罹患(りかん)すると推定されている。
そのため、肥満の人が膵臓がんになる確率は全体的には低く、喫緊の課題というわけではないと思われる」と述べている。
ただし、米国では膵臓がんはがんによる死亡原因の第3位を占め、5年生存率は10%を下回るとされている点を重視すべきだとしている。
Mayanei Hayeshua医療センター(イスラエル)のChanan Meydan氏はこの論文の付随論評で、青年期の体重増加は身体の炎症を引き起こし、細胞が傷害されてがんリスクが増大する可能性を指摘している。
同氏は、
「肥満による炎症プロセスと悪性腫瘍の炎症プロセスの関連を明らかにすることはとても興味深い」と述べ、
「これらの炎症の背景にあるメカニズムを解明することが、肥満とがんの関連を理解するのに役立つだろう」と付け加えている。
10歳代の後半に肥満だった人は、成人後に膵臓(すいぞう)がんになりやすい可能性があることが、イスラエルで実施された新たな研究で示された。
男女とも肥満の人は適正体重の場合に比べて膵臓がんリスクは約4倍であることが分かった。
研究の詳細は「Cancer」オンライン版に掲載された。
ラビン医療センターおよびテルアビブ大学(いずれもイスラエル)のZohar Levi氏は、
1967~2002年に16~19歳で身体検査を受けたイスラエルのユダヤ人男性108万7,358人と女性70万7,212人を対象に、10歳代後半のBMIと成人後の膵臓がん罹患との関連を調べた。
研究では全国がん登録を用いて、2012年までの膵臓がん罹患の有無を追跡した。
中央値で23年の追跡期間中に551人が新たに膵臓がんに罹患していた。
解析の結果、適正体重の人に比べて、肥満の男性では膵臓がんの罹患リスクは3.67倍であり、女性では4.07倍であることが分かった。
また、男性は肥満ではなくともBMIが正常高値や過体重であれば膵臓がんリスクが上昇することも明らかになった。
Levi氏らは、膵臓がん症例の約11%は10歳代後半の過体重や肥満に起因するのではとの見方を示している。
専門家の一人で米膵臓がんアクションネットワークのAllison Rosenzweig氏は、
「これまでの研究でも肥満が膵臓がんリスクを増大させる可能性については報告されていた。
しかし、この研究は、思春期から青年期にかけての肥満や過体重も膵臓がんリスクに影響することを示唆する重要な結果だ」と述べている。
ただし、今回の研究は参加者を後ろ向きに追跡した観察研究であり、過体重や肥満が膵臓がんの原因であることを裏付けるものではない。
Rosenzweig氏は、
「膵臓がんは比較的まれな疾患で、米国では年間、約5万5,000人が罹患(りかん)すると推定されている。
そのため、肥満の人が膵臓がんになる確率は全体的には低く、喫緊の課題というわけではないと思われる」と述べている。
ただし、米国では膵臓がんはがんによる死亡原因の第3位を占め、5年生存率は10%を下回るとされている点を重視すべきだとしている。
Mayanei Hayeshua医療センター(イスラエル)のChanan Meydan氏はこの論文の付随論評で、青年期の体重増加は身体の炎症を引き起こし、細胞が傷害されてがんリスクが増大する可能性を指摘している。
同氏は、
「肥満による炎症プロセスと悪性腫瘍の炎症プロセスの関連を明らかにすることはとても興味深い」と述べ、
「これらの炎症の背景にあるメカニズムを解明することが、肥満とがんの関連を理解するのに役立つだろう」と付け加えている。
運動不足による疾患リスク [健康短信]
数千人、数万人規模を長年追跡…世界の成人14億人に運動不足による疾患リスク
世界で成人の4人に1人が運動不足による疾患リスクに直面しているとみられることが、世界保健機関(WHO)の研究チームの調査で明らかになった。
鉄板ストレス対策は「休養・筋トレ・有酸素運動」
14億人を超える成人が座りがちな生活による運動不足が原因で、心疾患や糖尿病、認知症、一部のがんを発症しやすい状態にあるという。
詳細は「The Lancet Global Health」オンライン版に掲載された。
WHO非感染性疾患予防部門のRegina Guthold氏らは、
今回、世界168カ国、計190万人の18歳以上の成人を対象に実施された358件の調査データを用いて、国や地域別の運動不足の人の割合について分析を行った。
結果、2016年には世界の女性の約3人に1人(31.7%)、男性の4人に1人(23.4%)が推奨される身体活動レベル(中強度運動を週に150分以上または高強度運動を週に75分以上)に達していないことが分かった。
また、東アジアと東南アジアを除く全ての地域で、女性は男性に比べて運動量が少ないことも明らかになった。
そのほか、高所得国では、2001年から16年にかけて運動不足の成人の割合は約5ポイント増加し36.8%に達したのに対し、東アジアや東南アジアといった低所得国では0.2ポイント増の16.2%にとどまっていた。
この結果について、Guthold氏らは、高所得国ではデスクワークなどで座りがちな仕事が増えたことや、車社会の発達で運動不足が加速しているのではとの見方を示している。
これらの結果を踏まえ、Guthold氏らは、
「自転車や徒歩で通勤したり、積極的にスポーツを楽しめるようなインフラ整備を国レベルで進めることが重要だ」と指摘している。
論文の共著者でWHO同部門のFiona Bull氏は、こうした取り組みにおいては、特に女性が運動できる環境を整備して、運動量の男女差を解消することが不可欠だと付け加えている。
この研究論文の付随論評を執筆したシドニー大学(オーストラリア)のMelody Ding氏によれば、一部の国や地域では女性が運動するのを妨げる社会的、文化的な障壁があり、例えば、女性の活動が著しく制限されるサウジアラビアやイラクでは、成人の約半数が運動不足であると推計されるという。
同氏はまた、
「今回の調査では低所得国よりも高所得国で運動不足の蔓延(まんえん)が深刻化しているという結果が得られたが、運動不足に関連する疾患の負荷は低中所得の国でより大きいことにも注意が必要だ」と話している。
世界で成人の4人に1人が運動不足による疾患リスクに直面しているとみられることが、世界保健機関(WHO)の研究チームの調査で明らかになった。
鉄板ストレス対策は「休養・筋トレ・有酸素運動」
14億人を超える成人が座りがちな生活による運動不足が原因で、心疾患や糖尿病、認知症、一部のがんを発症しやすい状態にあるという。
詳細は「The Lancet Global Health」オンライン版に掲載された。
WHO非感染性疾患予防部門のRegina Guthold氏らは、
今回、世界168カ国、計190万人の18歳以上の成人を対象に実施された358件の調査データを用いて、国や地域別の運動不足の人の割合について分析を行った。
結果、2016年には世界の女性の約3人に1人(31.7%)、男性の4人に1人(23.4%)が推奨される身体活動レベル(中強度運動を週に150分以上または高強度運動を週に75分以上)に達していないことが分かった。
また、東アジアと東南アジアを除く全ての地域で、女性は男性に比べて運動量が少ないことも明らかになった。
そのほか、高所得国では、2001年から16年にかけて運動不足の成人の割合は約5ポイント増加し36.8%に達したのに対し、東アジアや東南アジアといった低所得国では0.2ポイント増の16.2%にとどまっていた。
この結果について、Guthold氏らは、高所得国ではデスクワークなどで座りがちな仕事が増えたことや、車社会の発達で運動不足が加速しているのではとの見方を示している。
これらの結果を踏まえ、Guthold氏らは、
「自転車や徒歩で通勤したり、積極的にスポーツを楽しめるようなインフラ整備を国レベルで進めることが重要だ」と指摘している。
論文の共著者でWHO同部門のFiona Bull氏は、こうした取り組みにおいては、特に女性が運動できる環境を整備して、運動量の男女差を解消することが不可欠だと付け加えている。
この研究論文の付随論評を執筆したシドニー大学(オーストラリア)のMelody Ding氏によれば、一部の国や地域では女性が運動するのを妨げる社会的、文化的な障壁があり、例えば、女性の活動が著しく制限されるサウジアラビアやイラクでは、成人の約半数が運動不足であると推計されるという。
同氏はまた、
「今回の調査では低所得国よりも高所得国で運動不足の蔓延(まんえん)が深刻化しているという結果が得られたが、運動不足に関連する疾患の負荷は低中所得の国でより大きいことにも注意が必要だ」と話している。
筋トレと心臓 [医療小文]
週60分までの筋トレが心臓の健康に良い?
筋力トレーニングなどのレジスタンス運動を週に60分まで行うと、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが有意に低下する可能性があることが、米アイオワ州立大学准教授のDuck-chul Lee氏らの研究で示された。
一方で、レジスタンス運動を週に60分以上行っても、これらの心血管疾患(CVD)リスクのさらなる低下はみられないことも分かった。
詳細は「Medicine & Science in Sports & Exercise」オンライン版に発表された。
Lee氏らは、レジスタンス運動による健康効果に着目。
すでに、レジスタンス運動を週に60分まで行うと脂質異常症やメタボリック症候群になるリスクが低下することを報告している。
そこで今回、同氏らはレジスタンス運動の心血管系への影響を調べるため、1987~2006年に2回以上診察を受けた男女1万2591人(平均年齢47歳)を対象に、平均で5.4年および10.5年間の追跡調査を実施した。
結果、週に1~3回または60分未満のレジスタンス運動を行った人では、全く行わなかった人と比べて、CVDイベントの発生リスクが40~70%低いことが分かった。
レジスタンス運動によるこれらのベネフィットは、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動とは独立していた。
一方、レジスタンス運動をより頻回(週に4回以上)あるいは週に60分以上行ってもCVDリスクはこれ以上低下しなかった。
Lee氏によれば、これまで筋力トレーニングはスポーツ選手が行うものと考えられ、心血管系への効果についてはあまり検討されていなかった。
同氏は「ランニングなどの有酸素運動が心血管系に良い影響を与えることは知られていた。
この結果から、筋力トレーニングにも同様のベネフィットがあることが明らかになった」と述べている。
研究には関与していない、米マウントサイナイ・リバーサイド医療グループのAlon Gitig氏も、
「筋力トレーニングには見た目をよくするだけではなく、健康へのベネフィットがあるのは明らかで、心血管の状態にも直接影響するようだ」と評価している。
また、Lee氏は、この研究では、レジスタンス運動の心臓へのベネフィットはBMIが変わらなくても認められたことを指摘。
その上で、「運動の健康効果は減量に伴うものだと考えられてきたが、そうではないことが示された」と話している。
ただし、今回の研究は、筋力トレーニングを行うと心筋梗塞や脳卒中を防げることが証明されたわけではない。
Gitig氏は「参加者の多くは白人男性で、自ら医療機関を受診した人が多かったため、より健康的だった可能性がある」として、結果の解釈には慎重になるべきだとの考えを述べている。
筋力トレーニングなどのレジスタンス運動を週に60分まで行うと、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが有意に低下する可能性があることが、米アイオワ州立大学准教授のDuck-chul Lee氏らの研究で示された。
一方で、レジスタンス運動を週に60分以上行っても、これらの心血管疾患(CVD)リスクのさらなる低下はみられないことも分かった。
詳細は「Medicine & Science in Sports & Exercise」オンライン版に発表された。
Lee氏らは、レジスタンス運動による健康効果に着目。
すでに、レジスタンス運動を週に60分まで行うと脂質異常症やメタボリック症候群になるリスクが低下することを報告している。
そこで今回、同氏らはレジスタンス運動の心血管系への影響を調べるため、1987~2006年に2回以上診察を受けた男女1万2591人(平均年齢47歳)を対象に、平均で5.4年および10.5年間の追跡調査を実施した。
結果、週に1~3回または60分未満のレジスタンス運動を行った人では、全く行わなかった人と比べて、CVDイベントの発生リスクが40~70%低いことが分かった。
レジスタンス運動によるこれらのベネフィットは、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動とは独立していた。
一方、レジスタンス運動をより頻回(週に4回以上)あるいは週に60分以上行ってもCVDリスクはこれ以上低下しなかった。
Lee氏によれば、これまで筋力トレーニングはスポーツ選手が行うものと考えられ、心血管系への効果についてはあまり検討されていなかった。
同氏は「ランニングなどの有酸素運動が心血管系に良い影響を与えることは知られていた。
この結果から、筋力トレーニングにも同様のベネフィットがあることが明らかになった」と述べている。
研究には関与していない、米マウントサイナイ・リバーサイド医療グループのAlon Gitig氏も、
「筋力トレーニングには見た目をよくするだけではなく、健康へのベネフィットがあるのは明らかで、心血管の状態にも直接影響するようだ」と評価している。
また、Lee氏は、この研究では、レジスタンス運動の心臓へのベネフィットはBMIが変わらなくても認められたことを指摘。
その上で、「運動の健康効果は減量に伴うものだと考えられてきたが、そうではないことが示された」と話している。
ただし、今回の研究は、筋力トレーニングを行うと心筋梗塞や脳卒中を防げることが証明されたわけではない。
Gitig氏は「参加者の多くは白人男性で、自ら医療機関を受診した人が多かったため、より健康的だった可能性がある」として、結果の解釈には慎重になるべきだとの考えを述べている。
PPK&GNP [健康短信]
「食うときタップリ、死ぬときポックリ」は、昔の人の願望。
お参りをすると楽に往生できる「ポックリ寺」もあったようです。
いまの「PPK(ピンピンコロリ)」は、もっと前向きの健康観に支えられています。
それよりさらにいっそう明るいニュアンスをただよわせる語が「GNP」(元気でニコニコ、ポックリ)。
「健康寿命」の理想的極致といえるようです。
反対に、長期の寝たきりで亡くなる「NNK(ネンネンコロリ)」。これだけはまっぴらごめん。
ポックリを願って 今日の無事祈り(同感!)
人はみな不思議の国から生まれきて 不思議の国へ おさらばさらば 工藤直太郎
お参りをすると楽に往生できる「ポックリ寺」もあったようです。
いまの「PPK(ピンピンコロリ)」は、もっと前向きの健康観に支えられています。
それよりさらにいっそう明るいニュアンスをただよわせる語が「GNP」(元気でニコニコ、ポックリ)。
「健康寿命」の理想的極致といえるようです。
反対に、長期の寝たきりで亡くなる「NNK(ネンネンコロリ)」。これだけはまっぴらごめん。
ポックリを願って 今日の無事祈り(同感!)
人はみな不思議の国から生まれきて 不思議の国へ おさらばさらば 工藤直太郎
タグ:PPK&GNP
テストステロン [医療小文]
テストステロンで男らしさと健やかさを保て!
人生100年時代において、いかに健康寿命を延ばすかが重視されている。
ところが、男性における多くの疾患の診療アウトカムは女性より不良だ。
最近ではメンズヘルスという言葉も生まれているが、いかにして男性の健康を守っていけばよいか。
順天堂大学泌尿器外科学の堀江重郎教授は、第12回日本性差医学・医療学会(1月19~20日)でさまざまな疫学データを紹介、テストステロンをキーワードに男性の健康について考察した。
男らしさとは「冒険」「社会性」「競争」!
ヒトの体の基本形は、女性だといわれている。
そこから男性へと変化する一次性徴(母胎内での性器の発現)、二次性徴(思春期から成人男性への発育)は、男性の精巣(睾丸)と副腎で作られたテストステロンに促される。
テストステロンは「男らしさ」をつかさどるホルモンといえるだろう。
一方、女性でも卵巣、脂肪や副腎からテストステロンは産生されており、生殖年齢における女性ではエストロゲンの10倍以上のテストステロンが、体内で働いているといわれている。
堀江教授は、男らしさの側面からテストステロンをひもとくと、その働きは3つのキーワードに表せると言う。
①狩猟、旅、新しいことへのチャレンジに関わる「冒険」
②仲間、家族、他人との関わり、縄張りに関わる「社会性」
③ギャンブル、ゲーム、スポーツ、仕事などにおける達成感や順位へのこだわりに関わる「競争」ーー。
リスクもチャレンジも大好きなテストステロン
ここで堀江教授は、ニューギニアの先住民における検討を紹介した。
対象となる先住民は、家を出て狩猟に出かける道筋でテストステロン値が上昇し、獲物を仕留めるとその値はピークに達した。
上昇の度合いは出発時に比べて有意であった。
その後徐々にテストステロン値は低下するものの、帰宅するまで高値を示していた。
一方で、獲物を仕留め損ねると、一気にテストステロン値は低下し、出発時よりもさらに低い値になった。
「獲物を得ようとするとテストステロン値が上がり、かつ獲物を得るとさらにテストステロン値が上がる。
『冒険』に関わる男らしさを示すデータだ」と教授は述べた。
その延長で、リスクを取る行為、チャレンジする行為においてもテストステロン値は上昇する。
報酬系をつかさどる脳の線状体のアクティビティとテストステロン値は相関することが明らかにされている。
はつらつとし、利他の精神で社会貢献に努め、公明正大であることは、テストステロンの働き②の「社会性」に当たる。
堀江教授が紹介した2009年に行われた二重盲検ランダム化比較試験によると、プラセボを投与した群に対して、テストステロンを投与した群で社会貢献度が高値を示した。
なお、この試験の対象は女性であったと、教授は説明を加えた。
前述の通り、テストステロンは女性にとっても重要なホルモンだが、分泌量の性差はどれほどなのだろうか。
ある疫学データでは、活性のある量を唾液で見ると、男性は30歳代では幅広く正規分布しているのに対し、女性は対数変換すると正規分布するという結果であった。
しかし、「女性の中にも本当の意味での"男勝り"な人がいる。実のところ、女性においてもとりわけ閉経後にはテストステロンが重要になる」と教授は付言した。
認知機能の向上にも関わるテストステロン
テストステロンは、身体のさまざまな組織や機能に関与する。骨、筋肉、血液、性機能、血管、脂質代謝などへの影響が知られているが、ここで堀江教授は、テストステロンの認知機能への影響を示した研究を紹介した。
モリス水迷路※を用いた実験で、テストステロン値が低い老化モデルマウスにテストステロン投与を行うと、正常モデルほどではないが、泳ぐ回数を重ねるごとに島にたどり着く時間が短縮し、認知機能の向上による学習効果が認められた。
※モリス水迷路=マウス実験用の装置。水を張ったバケツの中に、陸地を作製。マウスは本能的に陸地を求めて泳ぐことから、バケツに入れてから陸地にたどり着くまでの時間を計り、そこから認知機能を計測する。
テストステロン減少によるデメリットは多い
堀江教授は、テストステロン低下による影響についても言及した。
テストステロンが減少すると集中力が低下する、人間関係がおっくうになる、眠りが浅くなる、痛みを感じやすくなるなど、社会活動に支障を来す原因ともなりうることが分かっている。
テストステロン値低下を促す原因の1つがストレスだ。テストステロンは男性の場合ほとんどが精巣でつくられているが、ストレスによって視床下部から抑制的な指令が出る。
また、テストステロンの分泌は加齢とともに減少する。
「統計上の平均値は確かに低下しているが、テストステロン値の低下と加齢の関係にはかなり個人差があるのではないか」と教授は述べる。
コホート研究では、テストステロン値が低いほど早期に死亡するという傾向が明らかにされている。また、他の研究でも、テストステロン値が低くなるにつれて心血管死亡率、がん死亡率が高くなることが報告されている。
それだけではない。フレイル、うつ、排尿障害、筋肉量の低下、認知症、転倒など、テストステロンの減少が及ぼす悪影響ついてはさまざまな報告が明らかにしている。
教授らによる研究でも、テストステロン値が低い患者では転倒リスクが上昇することや、腎機能の低下するスピードが上昇する、すなわち臓器障害が進展するということが示された。
テストステロンをキーワードに男性の健康を解説した教授は、最後に、
「最近では、ウィメンズヘルスに呼応する形でメンズヘルスという言葉が使用され、男性の健康が注目されるようになってきている。
テストステロンはメンズヘルスのバイオマーカーとしても有用なため、テストステロン値を測り、活用することが求められる。
また、テストステロンはジェンダー、セックスいずれの男性性にも関連している。社会的にも生物的にも、男性はテストステロンをなるべく多く保つことが望ましいのではないか」と締めくくった。
人生100年時代において、いかに健康寿命を延ばすかが重視されている。
ところが、男性における多くの疾患の診療アウトカムは女性より不良だ。
最近ではメンズヘルスという言葉も生まれているが、いかにして男性の健康を守っていけばよいか。
順天堂大学泌尿器外科学の堀江重郎教授は、第12回日本性差医学・医療学会(1月19~20日)でさまざまな疫学データを紹介、テストステロンをキーワードに男性の健康について考察した。
男らしさとは「冒険」「社会性」「競争」!
ヒトの体の基本形は、女性だといわれている。
そこから男性へと変化する一次性徴(母胎内での性器の発現)、二次性徴(思春期から成人男性への発育)は、男性の精巣(睾丸)と副腎で作られたテストステロンに促される。
テストステロンは「男らしさ」をつかさどるホルモンといえるだろう。
一方、女性でも卵巣、脂肪や副腎からテストステロンは産生されており、生殖年齢における女性ではエストロゲンの10倍以上のテストステロンが、体内で働いているといわれている。
堀江教授は、男らしさの側面からテストステロンをひもとくと、その働きは3つのキーワードに表せると言う。
①狩猟、旅、新しいことへのチャレンジに関わる「冒険」
②仲間、家族、他人との関わり、縄張りに関わる「社会性」
③ギャンブル、ゲーム、スポーツ、仕事などにおける達成感や順位へのこだわりに関わる「競争」ーー。
リスクもチャレンジも大好きなテストステロン
ここで堀江教授は、ニューギニアの先住民における検討を紹介した。
対象となる先住民は、家を出て狩猟に出かける道筋でテストステロン値が上昇し、獲物を仕留めるとその値はピークに達した。
上昇の度合いは出発時に比べて有意であった。
その後徐々にテストステロン値は低下するものの、帰宅するまで高値を示していた。
一方で、獲物を仕留め損ねると、一気にテストステロン値は低下し、出発時よりもさらに低い値になった。
「獲物を得ようとするとテストステロン値が上がり、かつ獲物を得るとさらにテストステロン値が上がる。
『冒険』に関わる男らしさを示すデータだ」と教授は述べた。
その延長で、リスクを取る行為、チャレンジする行為においてもテストステロン値は上昇する。
報酬系をつかさどる脳の線状体のアクティビティとテストステロン値は相関することが明らかにされている。
はつらつとし、利他の精神で社会貢献に努め、公明正大であることは、テストステロンの働き②の「社会性」に当たる。
堀江教授が紹介した2009年に行われた二重盲検ランダム化比較試験によると、プラセボを投与した群に対して、テストステロンを投与した群で社会貢献度が高値を示した。
なお、この試験の対象は女性であったと、教授は説明を加えた。
前述の通り、テストステロンは女性にとっても重要なホルモンだが、分泌量の性差はどれほどなのだろうか。
ある疫学データでは、活性のある量を唾液で見ると、男性は30歳代では幅広く正規分布しているのに対し、女性は対数変換すると正規分布するという結果であった。
しかし、「女性の中にも本当の意味での"男勝り"な人がいる。実のところ、女性においてもとりわけ閉経後にはテストステロンが重要になる」と教授は付言した。
認知機能の向上にも関わるテストステロン
テストステロンは、身体のさまざまな組織や機能に関与する。骨、筋肉、血液、性機能、血管、脂質代謝などへの影響が知られているが、ここで堀江教授は、テストステロンの認知機能への影響を示した研究を紹介した。
モリス水迷路※を用いた実験で、テストステロン値が低い老化モデルマウスにテストステロン投与を行うと、正常モデルほどではないが、泳ぐ回数を重ねるごとに島にたどり着く時間が短縮し、認知機能の向上による学習効果が認められた。
※モリス水迷路=マウス実験用の装置。水を張ったバケツの中に、陸地を作製。マウスは本能的に陸地を求めて泳ぐことから、バケツに入れてから陸地にたどり着くまでの時間を計り、そこから認知機能を計測する。
テストステロン減少によるデメリットは多い
堀江教授は、テストステロン低下による影響についても言及した。
テストステロンが減少すると集中力が低下する、人間関係がおっくうになる、眠りが浅くなる、痛みを感じやすくなるなど、社会活動に支障を来す原因ともなりうることが分かっている。
テストステロン値低下を促す原因の1つがストレスだ。テストステロンは男性の場合ほとんどが精巣でつくられているが、ストレスによって視床下部から抑制的な指令が出る。
また、テストステロンの分泌は加齢とともに減少する。
「統計上の平均値は確かに低下しているが、テストステロン値の低下と加齢の関係にはかなり個人差があるのではないか」と教授は述べる。
コホート研究では、テストステロン値が低いほど早期に死亡するという傾向が明らかにされている。また、他の研究でも、テストステロン値が低くなるにつれて心血管死亡率、がん死亡率が高くなることが報告されている。
それだけではない。フレイル、うつ、排尿障害、筋肉量の低下、認知症、転倒など、テストステロンの減少が及ぼす悪影響ついてはさまざまな報告が明らかにしている。
教授らによる研究でも、テストステロン値が低い患者では転倒リスクが上昇することや、腎機能の低下するスピードが上昇する、すなわち臓器障害が進展するということが示された。
テストステロンをキーワードに男性の健康を解説した教授は、最後に、
「最近では、ウィメンズヘルスに呼応する形でメンズヘルスという言葉が使用され、男性の健康が注目されるようになってきている。
テストステロンはメンズヘルスのバイオマーカーとしても有用なため、テストステロン値を測り、活用することが求められる。
また、テストステロンはジェンダー、セックスいずれの男性性にも関連している。社会的にも生物的にも、男性はテストステロンをなるべく多く保つことが望ましいのではないか」と締めくくった。
桜、満開! [雑感小文]
世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし 在原業平
石(いわ)走(ばし)る垂水の上のさわらびの萌えいずる春になりにけるかも 志貴皇子
春風の 花を散らすと 見る夢は さめても胸の さわぐなりけり 西行
さまざまのこと思ひだす桜かな 松尾芭蕉
雪とけて村いっぱいの子どもかな 小林一茶
春来(きた)る童子の群れて来る如(ごと)く 相生垣瓜人
春や昔 十五万石の 城下哉(かな) 正岡子規
春風や 闘志いだきて丘に立つ 高浜虚子
チューリップ 喜びだけを持っている 細見綾子
石(いわ)走(ばし)る垂水の上のさわらびの萌えいずる春になりにけるかも 志貴皇子
春風の 花を散らすと 見る夢は さめても胸の さわぐなりけり 西行
さまざまのこと思ひだす桜かな 松尾芭蕉
雪とけて村いっぱいの子どもかな 小林一茶
春来(きた)る童子の群れて来る如(ごと)く 相生垣瓜人
春や昔 十五万石の 城下哉(かな) 正岡子規
春風や 闘志いだきて丘に立つ 高浜虚子
チューリップ 喜びだけを持っている 細見綾子
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果物⇒がん予防 [健康短信]
果物ががん予防に効果があることは、よく知られています。
世界がん研究基金と米国がん研究協会の判定では、口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肺のがんに対して、「果物はリスクを下げる可能性が大である」としています。
日本人のエビデンス(科学的証拠)に基づく評価でも食道がんのリスクを下げるのは「ほぼ確実」、胃がんと肺がんも「可能性あり」と判定されています。
果物ががん予防に効果を発揮する要因で最も大きいのは「抗酸化ビタミン」、ビタミンCの存在です。
体内で発生する活性酸素やフリーラジカルといったがんを作り出す物質を消し去ることを「抗酸化」といいますが、ビタミンCは抗酸化作用と免疫力を高める働きも持っているので、総合的にがん予防に寄与する可能性が高いといえるようです。
世界がん研究基金と米国がん研究協会の判定では、口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肺のがんに対して、「果物はリスクを下げる可能性が大である」としています。
日本人のエビデンス(科学的証拠)に基づく評価でも食道がんのリスクを下げるのは「ほぼ確実」、胃がんと肺がんも「可能性あり」と判定されています。
果物ががん予防に効果を発揮する要因で最も大きいのは「抗酸化ビタミン」、ビタミンCの存在です。
体内で発生する活性酸素やフリーラジカルといったがんを作り出す物質を消し去ることを「抗酸化」といいますが、ビタミンCは抗酸化作用と免疫力を高める働きも持っているので、総合的にがん予防に寄与する可能性が高いといえるようです。
アーモンド+チョコ [健康短信]
アーモンドの摂取によるLDL(悪玉)コレステロールの低下を、米ペンシルベニア大の研究チームが報告しました。
30~70歳の肥満者48人を、
①非治療食(米国の平均的な食事内容)
②アーモンド42.5g/日を取り入れたアーモンド食
③ココアパウダー18g/日とダークチョコレート43g/日を取り入れたチョコレート食
④アーモンド、チョコレート+ココアに分けて、4週間ずつ食べてもらいました。
結果、アーモンドを単独あるいはダークチョコレート・カカオとともに摂取すれば、脂質異常症が改善することが示されました。
が、
「総カロリー量を厳格に制限することが大前提。食べ過ぎは禁物です」と研究チームのリーダは話しています。
30~70歳の肥満者48人を、
①非治療食(米国の平均的な食事内容)
②アーモンド42.5g/日を取り入れたアーモンド食
③ココアパウダー18g/日とダークチョコレート43g/日を取り入れたチョコレート食
④アーモンド、チョコレート+ココアに分けて、4週間ずつ食べてもらいました。
結果、アーモンドを単独あるいはダークチョコレート・カカオとともに摂取すれば、脂質異常症が改善することが示されました。
が、
「総カロリー量を厳格に制限することが大前提。食べ過ぎは禁物です」と研究チームのリーダは話しています。
おやつの食べ方 [健康短信]
管理栄養士の9割が「おやつを「おやつを日常的に食べている」ことが、「ダイエットプラス」の調査で明らかになりました。
「ダイエットプラス」は、「正しく食べる」をコンセプトに管理栄養士がダイエットや健康管理をサポートするために運営しています。
おやつを食べるタイミングは「午後」がもっとも多く、67人(63.2%)、続いて「夕食前後」18人(17%)、もっとも少なかったのは「深夜」で4人(3.8%)。
お勧めのおやつの1位は「ゼリー」と「フルーツ」、3位はナッツ類。
おやつを食べ過ぎたときには「夕食を中心に、次の食事内容や量で調整する」などして対処しているそうです。
「ダイエットプラス」は、「正しく食べる」をコンセプトに管理栄養士がダイエットや健康管理をサポートするために運営しています。
おやつを食べるタイミングは「午後」がもっとも多く、67人(63.2%)、続いて「夕食前後」18人(17%)、もっとも少なかったのは「深夜」で4人(3.8%)。
お勧めのおやつの1位は「ゼリー」と「フルーツ」、3位はナッツ類。
おやつを食べ過ぎたときには「夕食を中心に、次の食事内容や量で調整する」などして対処しているそうです。
タグ:おやつ