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ポワロの大誤解 [それ、ウソです]

それ、ウソです(22)

 ポワロの大誤解

「膵臓はどうでもいいんです、ヘイスティングスくん。消化機能で大切なのは、肝臓ですよ。肝臓を大事にすれば健康は保てます」(NHKテレビ『名探偵ポワロ コーンワルの毒殺事件』)


 ポワロの助手、ヘイスティングスは膵臓に持病をもっていた。

 「気分はどうか」とポワロに聞かれて、「膵臓がどうも…」と答えた。

 それにポワロが返した台詞が、これだ。

 これは、ポワロの(つまりは原作者、アガサ・クリスティの?)とんでもない誤解、はっきり言えば無知である。

 膵臓から分泌される膵液には、でんぷんを分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼ、たんぱく質を分解するトリプシンやキモトリプシンといった酵素が含まれている。

 膵臓から十二指腸に送られる膵液の量は1日1~2㍑、食物の消化の90%以上はこの膵液中の酵素によって行われる。

「消化機能」で最も「大切」なのは、胃でも腸でも、まして肝臓でも、ない。膵臓なのである。

 膵臓は、胃の裏側にあるバナナのような形をした臓器で、長さは12~15㌢、重さは60~100㌘。外分泌(膵液を消化管に送り出す)と、内分泌(インスリンやグルカゴンを血管に送り出す)の二つのはたらきをする。

 インスリンは血液中の糖を処理し、血糖値を下げる。

 グルカゴンは肝臓の中の糖を分解し、血糖値を上げる。

 インスリンの分泌・作用が低下すると糖尿病になる。

 もう一度言うが、ポワロは、とんでもない暴言を吐いたのである。

 膵臓の病気でいちばん多いのは急性膵炎と慢性膵炎だ。

 どちらも暴飲暴食(特に高脂肪食)が原因または誘因となって発症する。

 急性膵炎の症状は、激しい痛みが上腹部(へそから上のほう)に起こる。

 仰向けに寝ると痛みが強くなるので、背中を丸めて横になったり、うずくまったりする。そのような痛みを「膵臓痛」という。

 急性膵炎の原因としてよく知られているのは胆石で、暴飲暴食や過労がきっかけとなって起こりやすい。

 胆石とは関係なくアルコールの飲み過ぎによっても起こる。

 ひどい二日酔いで何度も吐くようなとき、それも午前中よりむしろ午後から夕方にかけて悪化するようなときは、軽症の急性膵炎が生じている恐れがあると専門医は指摘する。

 急性膵炎を何度も繰り返していると慢性膵炎になりやすい。

 慢性膵炎は、上腹部の痛みが年中じわじわと続く。

 膵臓の細胞がこわれて繊維化してくるためだ。

「酒客の膵」といわれるようにアルコール過飲によるものが原因の50%以上を占める。

 世界各国の統計をみてもアルコールの消費量と慢性膵炎の発症率は平行している。

 毎日、油っこいうまいものを食べながら日本酒なら4合以上、ビールなら6本以上、ウイスキーならボトル3分の1くらいを飲み続けていると、7~10年で慢性膵炎になる可能性が高くなる。

 酒+脂肪食×10年=慢性膵炎というわけだ。

 大酒飲みの病気といえば、もう一つ肝硬変があるが、こちらは食べないで飲む一方の人に多い。

 酒+低栄養×20年=アルコール性肝硬変といわれている。

 むろん、酒飲み全員にこの数式が当てはまるわけではないけど、身に覚えのある向きは気をつけられたし。

 当方も人のことは言えないのだが…。
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