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平安才女のイワシ挿話 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(93)

 平安才女のイワシ挿話

「日の本にはやらせたまう石清水まいらぬ人はあらじとぞ思う」というのは紫式部である。いやしい魚とされたイワシを食べているのを夫にとがめられ、イワシと石清水八幡宮をかけた歌で返したわけだ。(「余禄」=毎日新聞2003年9月2日)

「源氏物語」を書いた紫式部といえば平安朝の才女だが、愉快な逸話を残している。作り話のようでもあるけれど、イワシが好物だったらしい。(「天声人語」=朝日新聞2008年6月22日)


下魚のイワシをこっそり食べているところを見とがめられた才女が、石清水八幡宮をたたえる古歌を援用して言いつくろった─というこの話の原典は、室町時代を中心に作られた『御伽草子(おとぎぞうし)』である。

『日本古典文学大系38巻』(岩波書店刊)の同書を開いてみると、『一寸法師』や『浦島太郎』などといっしょに収められた『猿源氏草紙』のなかにこの挿話が出てくる。

だがその才女の名は「紫式部」ではない。「和泉式部」である。

では、なぜ「余禄」や「天声人語」は、紫式部なのか。

ほとんど同じ話を、江戸中期以降の書『市井雑談集(しせいぞうだんしゅう)』『和訓栞(わくんのしおり)』『三省録(さんせいろく)』などが、紫式部の逸話として紹介しているからだろう。

憶測だが、「天声人語」や「余禄」のネタ本は、昭和の時代に「お魚博士」と親しまれた、末広恭雄・東大教授の著書ではないだろうか。

「天声人語」の上掲の文のつづきは、こうだ。

「イワシは卑しい魚で、高貴な者が大っぴらには食べられない。内緒にしていたが、ある日、焼いた匂いが消えないうちに夫が戻って来てバレてしまう。だいぶ叱られたようだと、江戸期の文献をもとに、魚博士で知られた末広恭雄が書いている」。

紫式部と和泉式部、同じ平安朝の才女で、中古三十六歌仙、女房三十六歌仙とされる二人ではあっても、紫式部のほうがポピュラーだし、宮中奉仕の女官が用いた「女房詞(にょうぼうことば)」ではイワシは「むらさき」だったりもするし、で、後世の書は、和泉式部を紫式部にすりかえたのではないだろうか。

しかし、話そのものは『御伽草子』のほうがずっと面白い。

ざっとこんなふうである。

あるとき、和泉式部がイワシを食べているところへ、愛人の(のちに3人目の夫となった)藤原保昌が入ってきた。

式部はあわてて衣装のうしろにイワシを隠した。

その素振りを見て、保昌は、てっきりもう一人の愛人、道命法師からの手紙だろうとかんぐり、

「なにを隠したんだ。あやしいぞ」と強引に迫った。

式部はしかたなくイワシを見せて、

「日の本にいははれ給ふ岩清水まいらぬ人はあらじとぞ思ふ(日本でだいじに祭られている石清水八幡宮にお参りしない人はないでしょう)」と口ずさんだ。

石清水とイワシを語呂合わせして、こんなおいしい魚を食べない人はいないでしょうと、弁解したわけだ。

保昌は、式部が隠そうとしたものが、別の男からの恋文などではなかったとわかり、たちまち機嫌を直し、

「はだへをあたため、ことに女の顔色をます、薬魚なれば、用ひ給ひしをとがめしことよ(イワシは体を温め、ことに女性の肌を美しくする薬魚なのに、食べるのをへんに誤解してわるかった)」とあやまった。

そして二人は、「なおなお浅からず契(ちぎ)りしとなり」。

めでたし、めでたし…。

さて、ところで、イワシの肉は良質のたんぱく質。コレステロールを減らし、動脈硬化を防ぎ、頭の働きにもよい不飽和脂肪酸のEPAやDHAもたっぷり含んでいる。ビタミンA、B2も多い。

骨が軟らかいからじっくり煮れば骨ごと食べられる。骨粗しょう症を防ぐカルシウムの給源としても、もってこいだ。

「薬魚」とは、保昌、よくぞ言い給いけり。

欠点は「魚」へんに「弱」と書くほど鮮度が早く落ちやすいこと。生で食べるときは気をつけましょう。

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漢方の風邪薬 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(92)    

 漢方の風邪薬

 葛根湯(かっこんとう)。漢方の煎じ薬の一つ。葛根は葛(くず)の根で、それを中心に7種の生薬を調合した。悪寒や肩こりなどに用いる。(「週刊漢字の答え」=毎日新聞2014年12月8日)

 小さいコラムの文章だから説明不足になるのはやむをえない。

 だが、それなら「悪寒や肩こり」ではなく、「風邪や首すじのこりに用いる」としてほしかった。

「悪寒や肩こり」もけっしてウソではないのだが。

漢方の風邪薬といえば、葛根湯。

昔からこれほどよく知られた薬はほかにはない。

しかし、漢方の専門医の処方はそんな単純なものではない。

人それぞれの症状に応じて使い分ける。

葛根湯は、ひき初めの風邪の次のような体質・症状の人に処方される。

① 中等度以上の体力のある人(漢方では「実証」という)。

② 頭痛、悪寒、発熱はあるが、

③ 汗の出る感じはなく、

④ 首の後ろがこっている。

この四つの条件がそろっているときに用いると、ドンピシャリ! 葛根湯のすごさが実感できるはずだ。

その薬効のメカニズムも解明されていて、葛根湯の成分の一つ、麻黄が、風邪のウイルスを食べる細胞「マクロファージ」の働きを活性化するのだという。

では、やや進んだ風邪、汗が出る風邪、たんが出る風邪、のどが痛い風邪、体力が低下した人(「虚証」)の風邪などには、どんな薬が処方されるか? いくつか挙げてみよう。

麻黄湯(まおうとう)

① 比較的ガッチリした体力のある人。

② 頭痛、悪寒、発熱はあるが、

③ 汗は出てなく、

④ 腰や膝などあちこちの関節が痛み、

⑤ ときにはセキが出たり、多少、息苦しかったりする。

葛根湯の症状と似ているが、風邪のためにあちこちの関節が痛むというのが、麻黄湯を用いるポイントだ。

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)。

① 体力はありすぎもせず、低下してもいない(「虚実間証」)の人。

② 頭痛、悪寒、発熱があり、

③ 薄いたんが多量に出たり、せき込んだりする。

以上の3処方は、体力が中等度以上ある人にしか使えない。

体力の低下している「虚証」の人の風邪には、桂枝湯(けいしとう)を用いる。

① 頭痛、悪寒、発熱があり、

② じわじわと汗ばみ、

③ 鼻がぐずつき、ときには軽い吐きけがある。

④ 皮膚がヒリヒリする感じ。

とくに「汗ばむ」という症状は、葛根湯や麻黄湯とはハッキリ異なる。

以上は、いわば「ふつうの風邪」だが、ひき初めから「のどがヒリヒリ痛む」「のどがチクチクいたむ」といった咽頭痛がある風邪には、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、麻黄附子甘草湯(まおうぶしかんぞうとう)、桂枝麻黄各半湯(けいしまおうかくはんとう)などを用いる。

さらにこじれた風邪には、この3種の薬のほか桂枝二麻黄一湯(けいしにまおういっとう)、桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいっとう)といった処方が用いられる。

もっとも、そうした風邪はもはや素人の手には負えない。風邪の自己治療は2日まで。

一夜明けても治る気配がなかったり、いきなり発熱、頭痛、腰痛、筋肉・関節痛、倦怠感、鼻水、咽頭痛、咳などが出揃ったら、それは、風邪ではない。インフルエンザだ。即、病院へ!

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首の動脈を切る!? [それ、ウソです]

それ、ウソです(91)

 首の動脈を切る!?

 最初の発作は五年前で、あやうく命を落とすところでした。心筋梗塞を起こしていたのです。救急車で心臓外科のある病院に運ばれ、特別治療室でカテーテル(治療用の細い管)による手術を受けました。首の部分の動脈を切って、心臓の冠動脈までカテーテルを入れ、ニトロの溶液を二四時間流し込んで詰まったものを溶かしました。(『壮快』1996年5月号)

 牛乳にきな粉を溶かす「きな粉ドリンク」の健康効果を称揚する読者の体験談の一節である。

 Kさん(誌面では実名=78歳)は、きな粉ドリンクで狭心症の発作が起こりにくくなったというオドロキの効果を話している。

 ほんとかな? 思わず指先にツバをつけて眉にぬってみたくもなるが、ま、それはこのさいどうでもいいことにしよう。

 どうでもよくないのは、「首の部分の動脈を切って、心臓の冠動脈までカテーテルを入れ…」である。

 首の部分の動脈って、頸動脈だろう。人体の急所ですよ。そんなところを切ったらどうなるか、子どもでもわかることじゃないか。

 これは、首の「動脈」ではなく「静脈」に、「切る」のではなく「針を刺し」、カテーテルを挿入する「スワンガンツカテーテル」のことをいっているのだろう。

 類似の医療行為による事故例がある。

「動脈に傷 患者死亡  北里大学病院(相模原市)で2013年8月、医師が60代の患者の首にカテーテルを通す際に誤って動脈を傷つけるなどして、その後患者が死亡していたことが19日、わかった。病院が発表した。
 ――中略――
 30歳の病棟医と28歳の研修医がカテーテルを首の静脈に挿入する際、準備として試験的に刺す針を過って動脈に2回刺した。―以下略」(朝日新聞2015年1月19日夕刊)。

 針を刺しそこなっただけでもこうなのだ。

 しつこくてわるいけど、「首の動脈を切って…」はいけません。

 スワンガンツカテーテルとは、心筋梗塞や心不全などの患者の心機能を連続的に測定するために使用する医療機器だ。スワン氏とガンツ氏が発明したのでそう呼ばれる。

 首や腕、鎖骨下などの静脈からカテーテルを挿入し、右心(心臓の右側)を経て肺動脈内に留置、肺動脈圧(肺動脈の血圧)や心拍出量(心臓から11分間に拍出される血液の量)などを測定する。

 心血管系疾患の重症患者の術前、術中、そして術後管理になくてはならないモニタリングデバイスとされている。

 心筋梗塞は、冠動脈内での血栓形成(血液の塊ができる)が原因なので、カテーテルを冠動脈内に挿入し、血栓溶解剤のウロキナーゼ(ニトロではない)を注入する方法が行われたこともある。

 現在、心筋梗塞の治療は、心臓カテーテルによる血管内治療(冠動脈インターベンション=PCI)が主流になっている。

 手首、腕、太ももの付け根の動脈からカテーテルを挿入し、冠動脈の狭窄部分を確認、血管が詰まっていたら、ただちに血栓で詰まった血管を開く治療を始める。

 PCIには、最初に開発されたバルーン拡張術(カテーテルの先端についた風船をふくらませて血管を拡張する方法)や、動脈硬化切除術(血管の中にたまったアテロームをレーザーなどで削り取る方法)などがあるが、いま最も普及しているのは、血管の狭窄部分に金網状のステント(筒)を置く「冠動脈内ステント留置術」である。

 ある日突然、激しい胸の痛みを感じたら、一刻も早く病院へ! 

 生きて病院にたどり着けさえすれば、心筋梗塞の95%は命が助かる。

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早期治療の限界 [それ、ウソです]

  それ、ウソです(90)   

 早期治療の限界

 症状が出た場合の治療には、スギ花粉症と同じ抗ヒスタミン薬などの飲み薬や人によっては鼻にスプレーをするステロイド薬などが使われる。症状がひどくなる前の早期治療で症状を緩和すれば、翌年の症状も強くならない。(「体とこころの通信簿 秋の花粉症」=朝日新聞2012年9月10日)
 秋にも花粉症がある。

それの予防と治療について解説した記事の結末の一節だが、

「早期治療で症状を緩和すれば、翌年の症状も強くならない」は、ウソだ。

対症療法の効果がそんなに長く続くわけがない。

花粉症の予防・治療法は、

①抗原の回避・除去

②薬物治療

③手術的療法

④減感作療法─の四つ。

①は抗原(花粉)の防御。

マスク、めがねを用い、花粉が体内に入るのを防ぐ。外出から戻ったら玄関先で帽子や衣服についた花粉を払い落とし、目、鼻、手を洗い、うがいをする。

②には予防薬と対症薬がある。

予防薬(抗アレルギー薬)は毎日服用して1~2週間後から効果が出てくる。

そろそろ花粉の飛散が始まると予測されるころ飲み始めると、発症が予防できる。

完全な予防はできなくても症状を軽くすることができる。

症状を抑える対症薬には、飲み薬(抗ヒスタミン薬),点鼻薬(局所性ステロイド薬)、点眼薬(抗ヒスタミン薬、局所性ステロイド薬)がある。

③は、鼻の粘膜をレーザーで薄く焼くか、切除する方法。

花粉の飛散が始まる前にこれをやっておけば、そのシーズンの発症はほぼ完全に防げる。

④は、微量の抗原エキスを注射し、体を慣らしていく方法。

最初の8ヵ月ないし10ヵ月までは毎週1回、そのあと3ヵ月は2週間に1回、さらにそのあとの3ヵ月は3週間に1回と回数をへらしていき、5、6年目からは3~4ヵ月に1回…。これを10年やれば9割の人が花粉症と手を切ることができる。

④に類する最新の治療法が「舌下免疫療法」。

スギ花粉のエキスを口内に少量から計画的に投与して、体をアレルギーの原因物質(アレルゲン)に慣らすことで症状を和らげる。

1日1回、液状の薬を口に含んで飲み込む。

治療期間は3~5年で、基本的に自宅での治療が可能。

治療薬は2014年10月に発売され、12歳以上で保険適用となった。

 ─というわけで、前掲記事の「症状がひどくなる前の早期治療」が、②の薬物治療を指しているのは言うまでもない。

 しかし、その効果が及ぶのはそのシーズン中のみであり、もう一度言うが、「翌年の症状も強くならない」なんてことは、あり得ない。

 秋の花粉症は、風邪と間違われやすい。

 このごろ、くしゃみ、鼻水、よく出るな。朝晩の冷えのせい? と思っているあなた、それ、もしかしたら、花粉症かもしれないヨ。

 風邪と花粉症の見分け方は─、

 風邪だったら2~3日すると色のついた粘り気のある鼻水に変わる。

 水っぽい透明な鼻水が3日以上も続き、目がかゆく、晴れた日にはくしゃみ連発…というような場合は、花粉症の疑いが大きい。

 秋の花粉症の原因植物は、ブタクサ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、コスモス、ススキなど。花の咲く位置が低いから花粉はそれほど遠くへは飛ばない。

 そのうえ夏の日照りが長く続くと枯れる草も多く、花粉は減る。

 一方、気をつけなければいけないのは、スギ花粉症の季節はずれの発症だ。

 猛暑の夏のあとは、10月から11月にかけて杉の木の花が一部開花する「狂い咲き」がある。

 今夏の全国的炎暑延々はハンパじゃなかったし、スギ花粉は遠くの空からふってくる。

 この秋は、ブタクサなどよりスギ花粉症のほうが一大事になりかねない。

 気がかりな人は、早めに耳鼻咽喉科へ─。

 いまは、眠くならない、作業効率も落ちない、いい薬が出ている。
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昔の名前で……!? [それ、ウソです]

それ、ウソです(89)

 昔の名前で……!?

 禾本科植物の花粉による《乾草の風邪》はフランスでは五月に特に多いが、一方ブタクサの類や菊科の花粉による《秋の風邪》は米国で九月に見られる。(エミール・デュオ著『気候と人間』奥田穣 岡本雅典 神山恵三共訳=白水社・文庫クセジュ)

 一読、えッ、それって花粉症のことじゃないの? と思った人が多いだろう。

 そう、そのとおりだけど、この本の発行は1955年8月5日。

当時の日本には「花粉症」という名の病気はなかった。

 ♪京都にいるときゃ 忍と呼ばれたの…ではないが、《乾草の風邪》も《秋の風邪》も花粉症の“昔の名前”である。

「禾本科(かほんか)」も古い用語で、今は「イネ(稲)科」と呼ばれている。

 乾草や秋の「風邪」もおかしい(たぶん誤訳?)。

 正しくは「枯草熱」で、英国の医師ジョン・ブロストックが最初に報告した病気である。

 スコットランドの牧草地帯の村医者だった彼の診療所には、毎年、初夏のころになると、体が熱っぽく、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙目などを訴える患者がやってきた。

 患者はみな農夫だった。

 ブロストックは、そうした症状が干し草への接触によって発症することに気づいた。

 そして9年間かけて集めた28の症例を「Hay fever(ヘイ フィーバー=枯草熱)」と名づけて発表した。1819年のことである。

 その後、同様の症状は、花粉やカビ類を吸入しても起こり、干し草に接触して起こる症状も、原因は干し草に繁殖したカビであり、アレルギー性疾患の一種であることがわかった。

 ある物質に対する人間の体の異常な過敏反応を、ギリシャ語の「アロス(allos=変わった)」と「エルゴ(ergon=作用)」をくっつけて、「アレルギー(allergia)」と命名したのは、オーストリアの小児科医クレメンス・V・ピルケ。1906年である。

 一方、こちら日本で初めて花粉症が見つかったのは1961年、東大・物療内科の荒木英斉医師による「ブタクサ花粉症」で、ついで64年、東京医科歯科大・耳鼻咽喉科の斎藤洋三医師が「スギ花粉症」を報告した。

 しかし当時の患者数はまだ微々たるものだった。

 だから1955年発行の『広辞苑』第一版に「花粉症」の項目がないのは当然だが、69年発行の第二版にも76年の同補訂版にも、ない。

「枯草熱」も第一版にはなく、第二版から載っている。

 花粉症患者がいきなりどっとふえて社会問題になったのは、70年代末から80年代初めだった。

で、83年発行の第三版にようやく「花粉症」がデビューした。

 いまや国民の30%、ざっと4000万人が花粉症に悩まされ、その7割をスギ花粉症が占める。これは日本だけではない。

 ブロストックは28症例を集めるのに9年かかったが、いま英国の枯草熱(アレルギー性鼻炎)の患者は人口の24%だという。

 ところで、このごろ、くしゃみ、鼻水、よく出るのは、朝晩の冷えのせい?

 いや、もしかしたら、それ、秋の花粉症かもしれない。

 秋の花粉症の原因は、たいていブタクサやヨモギだが、季節はずれのスギ花粉症もあり得る。

 猛暑の夏のあとは、10月から11月にかけて杉の木の花が一部開花する「狂い咲き」があるからだ。

「敏感な人は秋のうちからスギ花粉症を警戒したほうがいい」と耳鼻科医は呼びかけている。
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足から肺へ血栓症 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(88) 

 足から肺へ血栓症

 地震から一たんは逃れながら、後になつて死んだ人がゐた。高齢者のショック死。襲ひかかる現実に、肉体が耐へ切れなかつたのか。
 避難所へ行かず、車の中で寝起きするうちに、身体に不調を来たしての死。エコノミークラス症候群といふのださうである。もつと何とかした病名が付けられないものか、と思ふ。(高井有一「夢か現か」=『ちくま』2005年1月号)

 いや、「エコノミークラス症候群」は通称で、何とかした病名は、「肺血栓塞栓症」といってちゃんとあるのです。

 長時間、同じ姿勢をとることで足の静脈にできた血栓(深部静脈血栓症)が、血管を流れて肺に運ばれ、肺の動脈に詰まる病気である。

 だが新潟中越地震のさい、車中泊を続ける人たちにそれが多発したことを報じる新聞記事はほとんどすべて「エコノミークラス症候群」となっていた。

 作家がそう思ったのも無理はない。ツミ?は新聞にありか。

 「エコノミークラス症候群」という名前は、2000年のシドニー五輪を取材した英国人女性記者が、ロンドン到着直後に死亡したことをきっかけに広まった。

 が、ビジネスやファーストクラスの乗客にも起こっているし、新幹線や長距離バスなどでの発症例もある。

 関連学会は「ロングフライト血栓症」「旅行者血栓症」を提唱、いまはそう呼ばれることも多い。

 しかし実際は、それよりも日常生活の中や手術・出産などの入院中の発症率のほうが高い。

 欧米では虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脳血管障害(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)と並ぶ3大血管疾患とされている。

 日本麻酔科学会の調査(09年)によると、学会認定1155施設での年間発症数は427例で67人が死亡した。

 飛行機での発症率の約100倍も高い。

 どんな人に発症しやすいのか。

 「肥満や脂質異常症、糖尿病、寝たきりの人に発症しやすい傾向はあるが、健康な人も含め、だれにでも起きる危険性はある」と専門家は警告している。

 全身麻酔をして数時間かかるような大手術なら、消化器外科、心臓外科、整形外科、婦人科などあらゆる分野の手術で、年齢に関係なく起こりうる。

 特に発症リスクが高いのは、ひざや股関節など下肢の手術。

 ギプスが取れて、歩き始めたとたん、胸痛や息苦しさを訴えて倒れる例がままみられるそうだ。

 長時間のフライトでの発症は、成田赤十字病院や日本医大千葉北総病院などのデータ分析によると、窓際の席や女性客に多い。

 海外では男女差はないとの報告があるが、日本の女性に多いのは、身長が低く足が椅子に密着し圧迫されやすいことや、通路側の人に遠慮してトイレを我慢、席を立たないことが影響しているようだ。

 日本旅行医学会がすすめる予防7ヵ条。

 ①2~3時間ごとに歩く。

 ②不自然な姿勢で寝込んでしまったり、長時間歩かないままになってしまったりするので、睡眠薬は使用しない。

 ③水分を補給する(飛行中は1時間に80ccの水分が失われる)。

 ④ゆったりした服装を。男性はズボンのベルトをゆるめる。

 ⑤女性や高齢者は通路側に座る。

 ⑥血行を悪くするので足は組まない。

 ⑦座席でかかとやつま先の上下運動と腹式呼吸を1時間ごとに3~5分。

 手術後の発症を防ぐための弾性ストッキングの着用やマッサージなどは、多くの病院で行われている。抗血栓薬も2種類ある。

 それでも完全に血栓を予防し、肺塞栓症を防げる保証はない。

 抗血栓薬を用いれば止血が難しくなる面もあり、出血の危険性が高い人には使用できない。

 医療者まかせでなく、寝ているときは足を高いところに置く。足首を前後に動かし回すなど自力の対策も欠かせない。
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背骨の混同 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(87)

 背骨の混同 

 歩いていると急に左足の膝上が痛くなり、歩くのが困難になりました。整形外科でMRI検査をしたところ、脊椎間狭窄症と分かりました。(中尾寿和「患者の気持ち」=毎日新聞2014年9月7日)

 春先から腰痛がひどくて─略─2人の先生(医師)に診てもらったら、「椎間板ヘルニア」との診断。
 ちょうどその時、米国から専門医の福井康之先生が戻ってきて、「念のために診てもらおう」と訪ねたのが、運命の出会いでした。
 診察室に一緒にいた女房が「えっ、違うんですか」ってびっくり。
 「椎間板ヘルニアではありません。脊椎管狭窄症です」。(みの もんた『我が道』=スポーツニツポン2014年9月21日)

 中尾さんの「脊椎間狭窄症」は、明らかな誤表記。

 医師が告げた正しい病名「脊柱管狭窄症」の、「脊柱」を「脊椎」、「管」を「間」と聞き違えたのだろう。

 その誤表記が、本文だけではなく、ゴ丁寧に表題にも使われている。

 手記のマチガイに気づくどころか、そのマチガイ用語をわざわざ選んで見出しにし、それがそのままデスクの目も校閲記者の目もすんなり通過したようなのだ。

 「再思三省」を掲げる、充実した校閲部で知られる毎日新聞らしからぬミスである。

 まさか、投書欄だからと、軽視したわけではないだろうが。

 みのさんの「脊椎管狭窄症」はわりあいよくみられる誤用。

 正しくはむろん「脊柱管狭窄症」である。

 「脊柱」と「脊椎」。どう違うのか?

 脊柱はひらたくいえば「背骨」のこと。

 解剖学の本はこう説明している。

 「脊柱は椎骨の集まったものである。

 椎骨は元来、脊椎骨(略して脊椎)ともいわれ、脊椎動物(ヤツメウナギから人間まで)の名前の起源となった。

 脊椎を脊柱と混用する人があるが、それは誤りであり、脊椎は脊柱を構成する一個一個の骨をさしている。」(三井但夫著『新版 人体解剖学入門』=創元医学新書)

 ─なので、

 「脊椎 ①脊柱に同じ。②椎骨に同じ」という『広辞苑』の語釈の①は、ウソといわねばならない。

 同じ混同を犯している辞典も少なくないが、定義どおりの正しい説明をしている辞典もある。

 「脊椎 脊柱をなす骨。脊椎骨」=『大辞泉』。

 「脊椎 脊柱を形成している個々の骨をさし、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語」=『日本語 語感の辞典』。

 ─というところで、「脊柱管狭窄症」の話。

 脊柱管とは、脊柱(背骨)の後ろのほうを上から下へ通っている、手の親指くらいの太さの管である。

 その中を脊髄(脳と体の各部を連絡する中枢神経)が走っている。

 ところが、脊柱管がいろいろな原因で狭くなって、脊髄から枝分かれする神経の根もと(神経根)や神経周囲の血管を圧迫するために起こる病気が、脊柱管狭窄症である。

 なかで最も多いのが、腰の馬尾神経が圧迫される「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」である。

 歩いていると、腰がだんだん痛くなり、足がしびれて、もつれる。

 しまいには足全体が痛くなって歩けなくなる。

 立ち止まって、しゃがんだり、腰かけたりして、腰を丸くして休むと症状が消えて楽になるのだが、腰を上げて歩き始めるとまた同じ症状が出て、歩けなくなる。

 この「間欠跛行(かんけつはこう)」と呼ばれる歩行障害がいちばんの症状である。

 ふつうの腰痛は、腰を前に曲げると、痛い。脊柱管狭窄症は、痛くない。

 楽になる。脊柱管の狭窄がすこし広がるからだ。腰を反らすと痛い。

 軽症のばあいは薬やコルセットなどの保存的療法、中等症以上の人には手術が勧められる。

 みのさんのような完全治癒例が多い。

 水前寺清子さん、高田純次さん、鳥越俊太郎さんなどもそうだった。
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肝臓病、長き誤解 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(86)

 肝臓病、長き誤解

 「確か昨年お亡くなりになったとか」
 「そうなんです。肝臓癌でした。お酒をそんなに飲む人ではなかったんですけど、なぜかやられてしまったんです」(林真理子『マイストーリー』=朝日新聞2014年9月27日)

 志半ばで倒れた夫について語る女性の言葉である。

 小説のなかの台詞とはいえ、この認識は古い。

 肝臓病が酒のせいにされたのは、ずいぶん昔の話である。

 肝臓がんは、肝臓に初発する原発性肝臓がんと、ほかの臓器のがんが肝臓に移ってきた転移性肝臓がんに分けられる。

 原発性肝臓がんの原因は90%以上、肝炎ウイルスである。

 まだA型肝炎とB型肝炎のウイルスしか見つかってなく、未発見のウイルスを「非A・非B型」と呼んでいた1970年代初めからそのことはわかっていた。

 アルコール性脂肪肝炎(ASH=アッシュ)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)、薬剤性肝炎などが進行した肝硬変や肝臓がんもあるが、日本人ではそれは10%程度にすぎない。

 肝炎の原因となる肝炎ウイルスは、A型からE型まで5種類ある

 F型、G型、TT型の発見も報告されているが確定してない。

 A型とE型は、ウイルスに汚染された水や食物から経口感染する。

 発熱、全身倦怠感、食欲低下などの症状や黄疸が出るが、一度かかると免疫ができて二度とかからない。

 B型、C型、D型は血液や体液を介して感染する。

 が、D型は日本には存在しない特殊なウイルスなので、日本人にとって実際的な問題となる肝炎はB型とC型である。

 B型肝炎は、乳幼児期に感染するとキャリア(ウイルスの持続感染者)になる確率が高い。

 成人の感染の多くはA型などと同じ一過性で終わるが、まれに劇症肝炎を発症、命にかかわる。

 キャリアの母親からの感染を防ぐための赤ちゃんへのワクチン接種が1986年に始まり、キャリアになる子はいなくなった。

 2016年からはすべての0歳児へのB型肝炎ワクチンの定期接種が実施される。

 近い将来、B型肝炎ウイルスが原因の肝臓病は消滅するだろう。

 残るはC型のみで、これが最も厄介だ。感染した人の70%が慢性肝炎になり、適切な治療を受けないと、10年から30年の間に肝硬変、肝臓がんへと進行する。

 原発性肝臓がんの原因の70%以上がC型、20%がB型である。

 現在、C型肝炎ウイルスの感染者は約190万人~230万人と推定され、その8割以上が40歳以上、高齢者ほど感染率が高いことがわかっている。

 そのうち約150万人は、自分が感染していることを知らず、治療の機会を逃していると考えられている。

 高齢者ほど感染率が高いのは、献血時のウイルスのチェックが行われるようになったのが、B型は1972年、C型は92年からなので、それ以前の輸血による感染者が多いためである。

 92年以前に輸血や血液製剤の治療を受けた人は、ウイルス検査を受けて感染の有無を確かめるべきである。

 結果が陽性なら早期治療の機会が得られるし、陰性だったら肝臓がんの心配はまずしなくてもよい。

 ─というところで、話は戻る。

 酒が肝臓病の主犯とされたのは、長きにわたる誤解であった。

 半面、適量を超える飲酒が肝障害を招きやすいのも、れっきとした事実である。

 最初は脂肪肝になり、それでも飲み続けていると肝炎になり、さらに飲み続けると肝硬変になり、ついには肝臓がんになる。

 肝臓は“沈黙の臓器”、よほどのことがない限り音を上げない。

「お酒を常習的に飲んでいる人は、症状がなくても定期的に検査を受けてください。酒でいためた肝臓は、酒をやめれば回復します」。

 肝臓病の専門医、栗原毅先生(前慶応義塾大学教授、栗原クリニック東京日本橋院長)の言葉である。
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COPDは「たばこ病」 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(85)

 COPDは「たばこ病」

 NHKの健康番組で木田厚瑞(こうずい)医師の話を見た。
 「肺気腫や喘息、気管支炎などを総称して、COPDという呼称で世界的に統一されています。駅の階段や坂道が苦しく、特に同年代の人に遅れてしまう方はCOPDを疑うべきです」。まさに私のことである。(松平康隆「監督と選手」=『文藝春秋』2003年11月号)

 いいえ、「喘息」はCOPDには含まれません。

 「気管支炎」も正しくは「慢性気管支炎」とすべきです。

 インフルエンザなどにかかったときに起こる「急性気管支炎」は、COPDとはまったく別の病気だからです。

 呼吸器内科のすぐれた専門医である木田医師(日本医科大学教授)が、そんな言い間違いをするわけはないので、これは松平監督の聞き違いだったのでしょうね。

 COPDは、英語のChronic(コロニク)=慢性、Obstructive(オブストラクティヴ)=閉塞性、Pulmonary(パルモナリィ)=肺、Disease(ディジィズ)=疾患の頭文字をとった略語、日本語だと「慢性閉塞性肺疾患」。

 気管支や肺の空気の通りが慢性的に悪くなり、呼吸がしにくくなる病気の総称である。

 以前は、咳と痰が長期間にわたって続く気管支の病気を「慢性気管支炎」、それがさらに進行し、肺が破壊されて呼吸が十分できなくなる病気を「肺気腫」と、診断していた。

 だが実際にはこの二つの病気は混在しているケースが多く、明確に分けることが難しい。

 世界の専門家会議は、二つをまとめてCOPDと呼ぶことにし、2001年、「COPDの診断、管理(治療)、予防のための国際ガイドライン」を発表した。

 WHO(世界保健機関)と世界銀行の調査では、全世界の死亡原因に占めるCOPDの順位は、1990年は第6位、2004年には第4位である。

 しかし、最近は割合よく知られるようになっているが、当初は一般の人だけではなく、医師のあいだの認知度も低かった。

 事実、上掲の文によれば、松平氏が階段や坂で息苦しさを感じるようになったのは60歳のときで、「何人かの医師」に診てもらったが、

 「心電図もレントゲンも問題なく、『六十歳だから息切れぐらい当然ですよ』と慰められて終り」だった。

 偶然、テレビで知った木田医師の診察を受けてCOPDとわかり、こう述べている。

 「この時は実にスッキリした感じだった。約十年間、老化現象か病気かで悩んできた症状に診断がついたのだ。

 バレーボールでも、敵さえ判れば戦いようは必ずある。

 『COPDは完治しません。しかしこれ以上悪化しないよう、人生の質を大切にしていきましょう』と言う木田先生に、『これからはあなたが監督、私が選手です』と指導をお願いした」。

 そして適切治療を始めて3年、

 「今は坂道も歩道橋もずいぶん楽に歩ける。年に六、七回は海外にも出かけ、人生の質は落ちていないどころか、むしろ上昇している思いだ」。

 以来8年、「優等生患者」だった松平さんは、充実した余生を生き抜き、2011年12月31日に亡くなった。

 COPDの患者の8~9割は喫煙者なので別名「たばこ病」と呼ばれる。

 が、長年喫煙しているからといって、必ずなるわけではない。

 なるか、ならないかは、本人のもつ遺伝的な素因=感受性がかかわっている。

 しかし人によって感受性が違う原因はわからず、感受性の有無を調べる方法もない。

 したがってだれでもたばこの吸いすぎは控えるべきである─というのが、COPDの予防・治療の基本的な考え方である。

 壊れた肺は元には戻らないが、軽症のうちから適切な管理を行えば、進行を防ぐことができる。

 まずは禁煙。おかしい? と感じたらすぐ専門医(呼吸器内科)を受診しよう。
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〈おわび〉の検証 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(84)

 〈おわび〉の検証

 今年2月、心臓の大動脈瘤が破裂。命の危険にさらされたが、奇跡的に助かった。ただ、後遺症で体の自由がきかなくなった。(「暗闇で協力 連帯感深める」=毎日新聞2014年8月6日)

 はて、「心臓の大動脈瘤(りゅう)」はおかしいだろう?

 それを言うなら「胸部大動脈瘤」だろうよ。心臓に大動脈なんてありゃせんがね。

 心臓を出たところから始まるのが大動脈でっせ、と、胸中つぶやいた。なぜか、どこかの方言で─。

 DIA(ダイアログ・イン・ザ・ダーク)というワークショップと、それを日本で運営するDIAジャパン代表の志村真介さん紹介の記事の一節である。

 そしたら,2日後の8月8日。

 〈おわび 6日「暗闇で協力 連帯感深める」の記事で、志村真介さんの病気について、「心臓の大動脈瘤が破裂」とあるのは「心血管系の病気」の誤りでした。また「後遺症で体の自由がきかなくなった」は誤りで削除します。おわびして訂正します。〉

 あ、そうですか。だけど心血管系の病気って、またずいぶんと幅の広い病名を持ってきたもんだね。

 それって、ちぃっとばかりギマン的じゃねぇ?

 なぜ「誤り」だったのか、わかりませんよ。

 だって、大動脈瘤の破裂も心血管系の病気の一つなんだから。

 心血管系の病気とは、心臓または血管に生じる病気の総称。

 心疾患(心臓の内部で起こる病気)と、血管疾患(心臓から出た全身の血管で起こる病気)に分けられる。

 心疾患は、不整脈(期外収縮、心房細動、心室細動など)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心臓弁膜症、心筋症(肥大型、拡張型)、心膜炎、心臓ぜんそく、心臓神経症その他さまざま…

 血管疾患は、以下のようにこれまたさまざまいっぱい……。

 動脈硬化症、大動脈瘤(胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤)、大動脈解離、解離性大動脈瘤、末梢動脈瘤、大動脈縮窄(しゅくさく)症、大動脈炎症候群(脈なし病、高安病)、動脈血栓症、動脈塞栓症、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、レイノー病、動静脈瘻、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症……などなど。

 とても一つひとつの病気について説明する紙幅はないが、たとえば、心房細動や心臓弁膜症などのため心臓でできた血栓が、脳の動脈に流れ込むと脳塞栓症(脳梗塞の一種)になる。

 長嶋茂雄さんの脳梗塞は心房細動が原因だった。

 心臓から全身に血液を送る大動脈の一部がこぶのように膨らむ大動脈瘤は、主に動脈硬化が原因とされ、60歳以上の男性に比較的多くみられる。

 できる場所は、心臓に近い胸部と、胸部と腹部にまたがる胸腹部、へそ周辺の腹部とがある。患者数は腹部が最も多い。

 ほとんどは無症状だが、腹部大動脈瘤は、へそのあたりに拍動する腫瘤を触れて発見されることが、ままある。

 胸部大動脈瘤は外からは触れない。

 健康診断などの胸部X線検査で疑われて、CTやMRI、大動脈造影で確定診断が行われる。

 発見が遅れて、こぶが破裂すると、致死率が非常に高い。

 淀川長治さんは胸部大動脈瘤破裂、司馬遼太郎さんは腹部大動脈瘤破裂で亡くなった。

 大動脈の壁の内側の膜に亀裂ができ、血液が流れ込み、内膜と外膜がはがれるのが、大動脈解離。

 解離した血管の一部がこぶ状になるのが、解離性大動脈瘤である。

 加藤茶さんは大動脈解離、野村克也さんは解離性大動脈瘤と報じられた。

 ところで、小生、先日「血液循環測定」というのを受けた。判定は「あなたの末梢血液循環機能は年齢に比べて非常に良好です」。これはもう多年愛用の「梅肉黒酢」の効果以外は考えられない。大々的感謝!
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