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秋の思い [雑感小文]

 秋の思い 

 秋が来ている。

 暑い、暑いと、くる日もくる日も言い暮らしていたのは、つい昨日のことのようだが、いつの間にか秋が来ている。

 ある朝、目覚めぎわの寝床のなかで、ふと、秋の気配を感じる。

 起きてみると、空の色も山の形も、庭先の小さな景色さえも、なるほど、秋である。

 だから、秋はある朝、ふいにやって来たように思いがちだが、そうではない。

 秋は、人の気付かぬもっと前からすでに来ていたのだ。 

 兼好法師が『徒然草』に書いている。


「春暮れて後、夏になり、夏果てて、秋の来るにはあらず。

 ──略──

 木の葉のおつるも、まず落て芽ぐむにはあらず。

 下よりきざしつはるに(新芽がはらみ、その勢いに)堪ずして落つるなり」

 「生・老・病・死の移り来る事、またこれに過たり。

 四季はなほ定まれるついであり。

 死期はついでをまたず。

 死は前よりしも来らず、かねて後に迫れり。

 人皆死ある事を知りて、まつこと、しかも急ならざるに、覚えずして来る」

 ──ああ、まことにさもあろうと、秋の朝、寝起きのあごをなでつつ思うのだ...。
タグ:秋思 徒然草
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