ホウレンソウと貧血 [医学・医療・雑感小文]
ホウレンソウと貧血
ホウレンソウは貧血には効かない!
ビジネスマン心得の「ほうれんそう」は、報告、連絡、相談。
緑黄色野菜の代表のホウレンソウは、鉄分が豊富だから貧血に効くとされる。
子どものころから顔色がよくない、貧血気味だといわれ、頬紅メークでなんとかごまかしているという知り合いの女性。
長年、レバーやホウレンソウをせっせと食べてきた。健康雑誌にのっていたとおり生で食べて、ご亭主に〃ウサギ女〃なんて言われていたそう。
ところが、ホウレンソウはかえって貧血によくないという研究報告があることを知り、青白い顔がよけい青くなってしまった。
「それってホントなの?」
結論を先にいうと、ホントだが、そう心配するほどのことはないようだ。
ホウレンソウには鉄分が大量に含まれている(生100㌘中2・0㍉㌘。ハクサイやキャベツなどの7倍)。
で、「鉄欠乏性貧血」の改善に効果的といわれてきた。
それがそうではないどころか、あべこべに貧血が増悪するという動物実験の結果を報告したのは、広島女子大の研究チームだ。
実験は、血液を4分の1抜いて、人工的に貧血状態にしたラット(実験用シロネズミ)を三つの群に分けて行った。
そして、それぞれ、同じ量の鉄分が摂取できるように調整した、
①ホウレンソウを混ぜた餌、
②小松菜を混ぜた餌、
③シュウ酸を加えた小松菜を混ぜた餌、
―を6週間与えて、血液を調べた。
結果、ホウレンソウを与えた群は、血液中のヘモグロビン(血色素)が、小松菜群と比べてハッキリ少なくなり、貧血症状がいっそう進んだ。
小松菜にシュウ酸を加えた群も、ホウレン草群と同じようにヘモグロビンが減少した。
つまり問題は、ホウレン草に多く含まれるシュウ酸で、これが鉄分の吸収を妨げることがわかった。
もっとも、実験は(ネズミと人間の体重比からして)人が通常食べる量に換算すると、数倍の量のホウレンソウで行われている。
健康な人が普通に食べる分にはほとんど何の問題もないし、ホウレンソウにはカロチンやビタミンCも豊富に含まれている。
ただ、貧血の改善には役立たないことがハッキリしたわけだから、その目的でホウレンソウを毎日たくさん食べ続けるのは逆効果になりかねない。
知人はウサギ女をやめた。
*
貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビン(血色素)が減少した状態。
いくつか種類があるが最も多いのが「鉄欠乏性貧血」だ。
鉄分は血色素の主成分なので、体内の鉄分が不足すると、赤血球中の血色素が減少する。
血色素は肺で酸素と結合し、全身に酸素を供給している。
貧血になると体のあちこちで酸素不足が起こる。
顔色が青白くなり、息切れ、動悸、めまい、疲労けん怠感、頭痛、耳鳴り、食欲不振、微熱……といった症状が出てくる。
注意力や集中力の低下も起こる。
急に成績が下がった学童の原因が貧血だったという話もある。
貧血かどうかは、2cc程度の採血検査でわかる。
鉄欠乏性貧血の原因はさまざまで、ケガ、痔、胃・十二指腸潰瘍などによる出血、月経、妊娠、分娩、授乳、偏食、ダイエットなど。高齢者ではがんが多い。
治療のための鉄剤の投与には、経口投与と静脈投与がある。
経口薬は3~4ヵ月間は服用しなければならない。
静脈注射は即効性があるが、過剰投与による鉄分が肝臓や心臓に沈着、機能障害を起こす恐れがある。
これで問題になったのが、長距離・マラソンの女子選手が、「やせれば記録が伸びる」と食事を減らし過度な練習をした結果、貧血になり、即効性のある治療法として鉄剤の静脈注射をするケースだ。
全日本大学女子駅伝に出場経験のある26大学を対象に調査した、順天堂大女性スポーツ研究センターによれば、女子長距離ランナーの26.8%が鉄剤注射をしたことがあるという。
2016年4月、日本陸上競技連盟は、
「長距離選手の貧血対策として広まっている鉄剤注射が選手の体をむしばんでいる」
と、高校、大学、実業団など陸上競技の協力団体などに警告文書を送付した。
むろん、鉄剤注射が正当な医療行為である場合もある。
貧血では? と思ったら自己判断で鉄剤を飲んだりせず、病院へ─。
ホウレンソウは貧血には効かない!
ビジネスマン心得の「ほうれんそう」は、報告、連絡、相談。
緑黄色野菜の代表のホウレンソウは、鉄分が豊富だから貧血に効くとされる。
子どものころから顔色がよくない、貧血気味だといわれ、頬紅メークでなんとかごまかしているという知り合いの女性。
長年、レバーやホウレンソウをせっせと食べてきた。健康雑誌にのっていたとおり生で食べて、ご亭主に〃ウサギ女〃なんて言われていたそう。
ところが、ホウレンソウはかえって貧血によくないという研究報告があることを知り、青白い顔がよけい青くなってしまった。
「それってホントなの?」
結論を先にいうと、ホントだが、そう心配するほどのことはないようだ。
ホウレンソウには鉄分が大量に含まれている(生100㌘中2・0㍉㌘。ハクサイやキャベツなどの7倍)。
で、「鉄欠乏性貧血」の改善に効果的といわれてきた。
それがそうではないどころか、あべこべに貧血が増悪するという動物実験の結果を報告したのは、広島女子大の研究チームだ。
実験は、血液を4分の1抜いて、人工的に貧血状態にしたラット(実験用シロネズミ)を三つの群に分けて行った。
そして、それぞれ、同じ量の鉄分が摂取できるように調整した、
①ホウレンソウを混ぜた餌、
②小松菜を混ぜた餌、
③シュウ酸を加えた小松菜を混ぜた餌、
―を6週間与えて、血液を調べた。
結果、ホウレンソウを与えた群は、血液中のヘモグロビン(血色素)が、小松菜群と比べてハッキリ少なくなり、貧血症状がいっそう進んだ。
小松菜にシュウ酸を加えた群も、ホウレン草群と同じようにヘモグロビンが減少した。
つまり問題は、ホウレン草に多く含まれるシュウ酸で、これが鉄分の吸収を妨げることがわかった。
もっとも、実験は(ネズミと人間の体重比からして)人が通常食べる量に換算すると、数倍の量のホウレンソウで行われている。
健康な人が普通に食べる分にはほとんど何の問題もないし、ホウレンソウにはカロチンやビタミンCも豊富に含まれている。
ただ、貧血の改善には役立たないことがハッキリしたわけだから、その目的でホウレンソウを毎日たくさん食べ続けるのは逆効果になりかねない。
知人はウサギ女をやめた。
*
貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビン(血色素)が減少した状態。
いくつか種類があるが最も多いのが「鉄欠乏性貧血」だ。
鉄分は血色素の主成分なので、体内の鉄分が不足すると、赤血球中の血色素が減少する。
血色素は肺で酸素と結合し、全身に酸素を供給している。
貧血になると体のあちこちで酸素不足が起こる。
顔色が青白くなり、息切れ、動悸、めまい、疲労けん怠感、頭痛、耳鳴り、食欲不振、微熱……といった症状が出てくる。
注意力や集中力の低下も起こる。
急に成績が下がった学童の原因が貧血だったという話もある。
貧血かどうかは、2cc程度の採血検査でわかる。
鉄欠乏性貧血の原因はさまざまで、ケガ、痔、胃・十二指腸潰瘍などによる出血、月経、妊娠、分娩、授乳、偏食、ダイエットなど。高齢者ではがんが多い。
治療のための鉄剤の投与には、経口投与と静脈投与がある。
経口薬は3~4ヵ月間は服用しなければならない。
静脈注射は即効性があるが、過剰投与による鉄分が肝臓や心臓に沈着、機能障害を起こす恐れがある。
これで問題になったのが、長距離・マラソンの女子選手が、「やせれば記録が伸びる」と食事を減らし過度な練習をした結果、貧血になり、即効性のある治療法として鉄剤の静脈注射をするケースだ。
全日本大学女子駅伝に出場経験のある26大学を対象に調査した、順天堂大女性スポーツ研究センターによれば、女子長距離ランナーの26.8%が鉄剤注射をしたことがあるという。
2016年4月、日本陸上競技連盟は、
「長距離選手の貧血対策として広まっている鉄剤注射が選手の体をむしばんでいる」
と、高校、大学、実業団など陸上競技の協力団体などに警告文書を送付した。
むろん、鉄剤注射が正当な医療行為である場合もある。
貧血では? と思ったら自己判断で鉄剤を飲んだりせず、病院へ─。
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