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「腰痛常識」が変わった! [それ、ウソです]

 それ、ウソです(65) 

 「腰痛の常識」が変わった!

 腰痛の大半は背骨に関係しているもので、非常に強く痛む急性期と、鈍い痛みが長くつづく慢性期の二つに分けられます。
 治療法の方針は、急性期にはなるべく背骨に負担をかけないこと。
 ですから、患者さんによく申し上げるのです。「死んだつもりで寝ていなさい」と。(「日本名医列島44 腰痛・肩こりを体操で治す名医 石田肇・日本医大整形外科教授」=『壮快』1982年9月号)  

 なんと大昔の記事を引っ張り出してきたものだと呆れる向きもあるだろうが、これがごく近年までえんえんと信じられてきた整形外科の「常識」であった。

 ドイツ人が「魔女の一撃(ヘキセンシュス)」と呼ぶぎっくり腰などの急性腰痛は、一撃をくらったとたん、動けなくなる。

 痛みが治まるまではひたすら安静を保つよう指導された。

 ところが、安静期間が長くなるほど治りが遅くなり、再発を招きやすく、腰痛が慢性化することがわかって、いまは「動ける範囲内で動く」が世界の常識になっている。

 日本整形外科学会と日本腰痛学会が5年がかりでまとめた『腰痛診療ガイドライン2012』にも、「急性腰痛は、痛みがなくなるまで安静にするのではなく、できるだけ早く体を動かす」とある。

 なぜ、安静がよくないのか? 

「大きな理由の一つとして<髄核>のずれが考えられます」と、関東労災病院勤労者筋・骨格系疾患研究センター長の松平浩先生。

 背骨は30個以上の短い骨(椎骨=ついこつ)のつながりで、椎骨と椎骨の間には薄い円盤状の椎間板がはさまっている。

 椎間板の中央には、ゼリー状の髄核があり、それを線維輪という硬い組織が囲んでいる。

 髄核の特徴は移動しやすいことなので、パソコン作業などで長時間前かがみの姿勢を続けると、髄核が椎間板の後ろ側に向かってずれてくる。

 一方、長時間の立ち仕事などでは髄核は椎間板の前側に向かってずれる。

 ぎっくり腰も、くしゃみや重い物を持ち上げるといった急な動作によって、髄核がずれて起こる。

 髄核が大きくずれて線維輪が傷つくと、線維輪には神経の末端が接しているため、激痛が生じる。

 髄核がよりいっそう大きくずれて、線維輪を突破して外に飛び出した状態が、椎間板ヘルニアだ。

 ぎっくり腰や慢性腰痛の場合、椎間板ヘルニアほど髄核は大きくずれてない。

 適切に体を動かせば元の位置に戻すことができる。

 痛いからといって安静を保ちすぎると、髄核のずれが元に戻りにくくなり、痛みが慢性化し、新たに線維輪が傷ついて強い痛みが再発する。

 髄核のずれを戻すには、腰を反らすか、かがめるシンプルな体操が効果的。

 髄核が後ろ側にずれた前かがみの作業などのあとは、足を軽く開き、上体をゆっくり反らす。

 息を吐きながら1~2回、繰り返す。

 髄核が前側にずれた長時間の立ち仕事のあとなどは、イスに腰かけ、足を肩幅より広めに開き、ゆっくり背中を丸める。

 これも息を吐きながら1~2回繰り返す。

 歯みがきになぞらえて「腰みがき」と名づけた、このシンプル体操を日常の習慣にすれば、腰痛の予防・改善効果が得られる。

 腰痛の8割以上は原因不明、心配し過ぎるとかえって悪化しやすい。

 しかし、がん、骨折、ヘルニアなど原因のある腰痛は、早く見つけて元の病気を治さなければいけない。

 自分の腰痛はどちらかの見分け方、ぎっくり腰や慢性腰痛を自分で治す方法など、松平浩著『「腰痛持ち」をやめる本』(マキノ出版)は、最新の調査研究に基づく最良のガイドブックだ。
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