たれ目・肩こり即効療法 [医学・医療・雑感小文]
平成養生訓28
たれ目肩こり、テープで治る
パソコンとか編み物などで長時間、目を酷使していると、目の奥が痛くなり、肩や首がこり、頭が痛くなったりもします。
「それを〈眼精疲労〉といっていますが、本当は〈瞼精=けんせい=疲労〉と呼ぶべきです。
まぶた(瞼)を上げ続けているための無理が原因だからです」
NHKの「ためしてガッテン」で、信州大学医学部教授の松尾清先生は、そう話しました(2008年4月2日放映)。
まぶたを開けたり閉じたりするのは、上まぶたの内側にある上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)という筋肉です。
この筋肉の先端は薄い膜状(瞼膜)になっていて、まぶたのふちの板状の組織(瞼板)につながっています。
上眼瞼挙筋が収縮し、瞼膜を引っ張って瞼板を持ち上げると、まぶたがあきます。
つまりまぶたがあいているときは、上眼瞼挙筋はずっと収縮しているわけです。
ところが、瞼膜と瞼板の結合は非常にデリケートで、はずれたり切れたりしやすい。
それでもまぶたがあくのは、上眼瞼挙筋と瞼板をつなぐミュラー筋という特殊な筋肉が、まぶたをあけるのをサポートしているからです。
が、そのミュラー筋もえんえんと負担が続くうちにくたびれて、まぶたは垂れ下がったままのたれ目(医学用語では眼瞼下垂)になってしまいます。
高齢者のたれ目は加齢のせいですが、コンタクトレンズを長期間使っている人に見られる眼瞼下垂は、上まぶたを引っ張って、レンズをつけたり、はずしたりするとき、瞼膜と瞼板の結合がはずれるためのようです。
眼瞼下垂(瞼膜性眼瞼下垂症)を治すには、まぶたを切開し、瞼板からはずれた瞼膜を元の位置に縫いつけてやればいいのです。
形成外科医の松尾先生は、この手術を数多く行ってきました。
そうしましたら手術後、まぶたのあけしめが楽になっただけではなく、「頭痛が消えた」「肩や首のこりがとれた」「体の調子がよくなった」「うつ状態がなくなった」といった感想を述べる人がとても多かったのだそうです。
教授らは、その理由を追究し、まぶたの筋肉が、脳と体にかかわるメカニズムを解明しました。
まぶたを上げるために上眼瞼挙筋を収縮させると、額の筋肉とつながっている頭の表面を覆っている筋肉も収縮します。
眼瞼下垂の人は、上眼瞼挙筋が正常に働かなくなっているので、額や頭の筋肉が強く緊張し続けます。
また、ミュラー筋には筋肉の伸縮を感知するセンサーのようなものがあるのですが、そのセンサーが引っ張られると、顔面の三叉神経や自律神経に反応して、交感神経の過剰な緊張が続くことにもなります。
結果、頭の表面をおおっている筋肉の疲労が原因の緊張型頭痛や、首筋から肩につながっている筋肉が縮み、肩こりも起こるのです。
以上はごく大雑把な話です。
もっと詳しくきちんと知りたい人は、松尾先生の著書『まぶたで健康革命』(小学館刊1300円+税)をお読みください。
「原因のはっきりしない頭痛や肩こり、うつ症状などに悩まされている人はいませんか。あなたは、まぶたを上げるのに知らず知らずのうちに無理をしているのです」と先生は言っています。
そう言われても、まぶたの手術はちょっと……と二の足を踏む人もあるでしょう。
同書には誰でもすぐできる「まぶたにかかる負担を軽くする秘密の技」が紹介されています。
セロハンテープを4~5㌢ほどの長さに切り、目をつぶった状態でテープの片端を眉毛の下に貼りつけます。
まぶたをあけながらテープを引っ張り上げ、眉毛の上の額に貼りつけます。
「テープでまぶたを引き上げて、額の筋肉が縮まないようにするのは、まぶたを上げる筋肉の負荷をゆるめる、手術に替わるよい方法だと私は思っています。だまされたと思ってやってみてください。劇的な効果があります」
やってみました。肩こり頭痛はないのですが、たれ目が引っ張り上げられると、なんだか気分がすっきりし、パソコン作業の眠気が遠のくようでした。
なお、テープに眉毛がくっつくのを避けるには、「はってはがせるテープ」が適しています。
<(株)心美寿有夢・企業情報誌『絆』30号=2010年11月発行=より再録>
たれ目肩こり、テープで治る
パソコンとか編み物などで長時間、目を酷使していると、目の奥が痛くなり、肩や首がこり、頭が痛くなったりもします。
「それを〈眼精疲労〉といっていますが、本当は〈瞼精=けんせい=疲労〉と呼ぶべきです。
まぶた(瞼)を上げ続けているための無理が原因だからです」
NHKの「ためしてガッテン」で、信州大学医学部教授の松尾清先生は、そう話しました(2008年4月2日放映)。
まぶたを開けたり閉じたりするのは、上まぶたの内側にある上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)という筋肉です。
この筋肉の先端は薄い膜状(瞼膜)になっていて、まぶたのふちの板状の組織(瞼板)につながっています。
上眼瞼挙筋が収縮し、瞼膜を引っ張って瞼板を持ち上げると、まぶたがあきます。
つまりまぶたがあいているときは、上眼瞼挙筋はずっと収縮しているわけです。
ところが、瞼膜と瞼板の結合は非常にデリケートで、はずれたり切れたりしやすい。
それでもまぶたがあくのは、上眼瞼挙筋と瞼板をつなぐミュラー筋という特殊な筋肉が、まぶたをあけるのをサポートしているからです。
が、そのミュラー筋もえんえんと負担が続くうちにくたびれて、まぶたは垂れ下がったままのたれ目(医学用語では眼瞼下垂)になってしまいます。
高齢者のたれ目は加齢のせいですが、コンタクトレンズを長期間使っている人に見られる眼瞼下垂は、上まぶたを引っ張って、レンズをつけたり、はずしたりするとき、瞼膜と瞼板の結合がはずれるためのようです。
眼瞼下垂(瞼膜性眼瞼下垂症)を治すには、まぶたを切開し、瞼板からはずれた瞼膜を元の位置に縫いつけてやればいいのです。
形成外科医の松尾先生は、この手術を数多く行ってきました。
そうしましたら手術後、まぶたのあけしめが楽になっただけではなく、「頭痛が消えた」「肩や首のこりがとれた」「体の調子がよくなった」「うつ状態がなくなった」といった感想を述べる人がとても多かったのだそうです。
教授らは、その理由を追究し、まぶたの筋肉が、脳と体にかかわるメカニズムを解明しました。
まぶたを上げるために上眼瞼挙筋を収縮させると、額の筋肉とつながっている頭の表面を覆っている筋肉も収縮します。
眼瞼下垂の人は、上眼瞼挙筋が正常に働かなくなっているので、額や頭の筋肉が強く緊張し続けます。
また、ミュラー筋には筋肉の伸縮を感知するセンサーのようなものがあるのですが、そのセンサーが引っ張られると、顔面の三叉神経や自律神経に反応して、交感神経の過剰な緊張が続くことにもなります。
結果、頭の表面をおおっている筋肉の疲労が原因の緊張型頭痛や、首筋から肩につながっている筋肉が縮み、肩こりも起こるのです。
以上はごく大雑把な話です。
もっと詳しくきちんと知りたい人は、松尾先生の著書『まぶたで健康革命』(小学館刊1300円+税)をお読みください。
「原因のはっきりしない頭痛や肩こり、うつ症状などに悩まされている人はいませんか。あなたは、まぶたを上げるのに知らず知らずのうちに無理をしているのです」と先生は言っています。
そう言われても、まぶたの手術はちょっと……と二の足を踏む人もあるでしょう。
同書には誰でもすぐできる「まぶたにかかる負担を軽くする秘密の技」が紹介されています。
セロハンテープを4~5㌢ほどの長さに切り、目をつぶった状態でテープの片端を眉毛の下に貼りつけます。
まぶたをあけながらテープを引っ張り上げ、眉毛の上の額に貼りつけます。
「テープでまぶたを引き上げて、額の筋肉が縮まないようにするのは、まぶたを上げる筋肉の負荷をゆるめる、手術に替わるよい方法だと私は思っています。だまされたと思ってやってみてください。劇的な効果があります」
やってみました。肩こり頭痛はないのですが、たれ目が引っ張り上げられると、なんだか気分がすっきりし、パソコン作業の眠気が遠のくようでした。
なお、テープに眉毛がくっつくのを避けるには、「はってはがせるテープ」が適しています。
<(株)心美寿有夢・企業情報誌『絆』30号=2010年11月発行=より再録>
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