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戦争という疫病 [雑感小文]

 戦争という疫病

玉音のまぎれがちなる汗冷ゆる  加藤秋邨

昭和20年8月15日、戦争が終わった日の句だ。

この年、日本人の平均寿命は男性24歳、女性39歳だった─という説がある。

出所不明のいささか信憑性の疑われる数字ではあるが、心情的には大いに信じたい数字でもある。

昭和12年7月に始まった日中戦争から太平洋戦争へと続く8年間に、中国大陸で、南方の島々や海で、多くの兵士が戦病死した。

沖縄は全住民を巻き込む戦場となった。

広島と長崎には原子爆弾が落とされた。

東京が、大阪が、名古屋が、焦土と化した。国中の町が(ときには村さえも)空襲を受け、焼かれた。

そうしておびただしい人びとが死んだ。殺されたのだ。

「戦陣ニ死シ職域ニ殉ジ非命ニ斃(たお)レタル者及其ノ家族ニ想ヒヲ致セバ五内(ごだい)為ニ裂ク」と終戦の紹書に、ある。

戦争は、一方では物資と食糧の欠乏を招いた。

衛生状態が悪く、医療はととのわず、伝染病が流行した。

栄養が足りないから、結核のような消耗性の病気にかかると、ほとんどの人が健康を回復できなかった。

戦争中にへった病気はノイローゼと糖尿病ぐらいのものだ。

じつに戦争ほど国民の寿命を縮めるものはない。

戦争は大疫病だ。
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